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第四章 半年後
5. 確かめてみる? ☆
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青砥が口にした考えが大きすぎて、お日さま寮への帰り道はみな口数が少なくなっていた。山口に関して言えば霧島がお日さま寮とは別の方向へ歩いた事で一緒に住んでいないことを痛感しているのかもしれない。山口に別れを言い、樹と青砥は二階でエレベーターを降りた。
「何?」
「何でもないです」
「ずっと見てただろ?」
「その……本当に戻ってきたんだなって思って」
へぇ、と青砥がちょっと意地悪な笑みを零した。
「部屋に寄ってく? 本当に帰ってきたか存分に確かめたらいい」
月の灯りが窓から射しこむ。吸い寄せられるように窓際に行くとドリシアメンバーが並んだ広告が青白いライトで照らされていた。そのすれすれを青く輝く車が通り抜けていく。窓ガラスには青砥の好きなリス型の縫いぐるみ、リリーが映っていた。
「な。ちゃんと家具もセットされてるだろ?」
「りりーもちゃんといますね。前より数が少なくなったように思いますけど」
「プレゼントって送られてくることが無くなったからな」
こんなことを話していたいわけではないのに、緊張から会話が上滑りする。まるで初めてデートをする高校生のように視線をさ迷わせてると、青砥が樹の隣に並んだ。明かりのついてない部屋、窓ガラスにうっすらと映る二人の影は夜の街に重なってまるで透明人間にでもなったかのようだ。
「刑務所の事件の時、本当は樹、やばかっただろ?」
「え?」
「やっぱり」
「ははは、何でもお見通しですね」
「全部ってわけでもないけどな。あくまで予測で真実ではないから」
窓に手をつくと指先から冷たさが侵入してくる。あの時ユーリが現れなければ、この感覚も今この時もない。
そう思った瞬間、あの時の感覚が戻り口の中に血を感じた。
「俺、アオさんのことが好きです」
驚くほど熱の伴わない告白だった。青砥の顔を見ることもなく、樹は窓の外をずっと見ている。
伝えよう、伝えなくちゃと思っていた言葉が自身の口からもう既に零れていたことに樹は気が付かないでいた。だから意を徹して青砥の方を向いた時、突然奪われた唇に驚いて息を吸い損ねた。空気を求める樹のくぐもった声が青砥の熱に溶けていく。
「も、だ、から……息できねぇっていってんだろ!!」
「俺も。俺も樹が好きだ」
「あ……」
自分の唇に触れる。樹はほんのりと頬を染め、だけど視線を逸らすことなく青砥を見つめた。
「……知ってます」
自身を預けるような口づけは樹からのもので青砥が優しく受け止める。少し離れれば今度は青砥が追いかけ、舌を絡ませ合いながら何度も互いを奪い合った。
「腕、外していい?」
「ど、うぞ」
上がった息。
青砥の手がシャツの中に入りハーネスを器用に外した。ガチャっと音を立てて床に置かれれば否応なしに期待が高まる。
「これから何するか分かる?」
羞恥心を爪で優しく引っかくような聞き方だ。樹の体を胸に抱いたまま頭を撫でると、赤く染まった耳が見える。樹が青砥に問いに答えないことなど想定内だ。むしろ樹なら恥ずかしがって何も言わない、そんな樹が見たくて意地悪を言っただけだった。
「分かってるから、聞かないででください。俺だって……」
ちゃんと伝えなければ。
青砥に会えない間に起こった出来事のせいで樹は自分の気持ちを伝えなくてはいけないという思いに囚われていた。行動だけじゃ足りない、言葉だけでも足りない。
青砥から離れシャツのボタンを外していけば、月の明かりが樹の肌を這う。誘うようにベッドに乗ると服を脱いだ青砥が覆いかぶさった。
「どうして欲しい?」
「……いっぱい、触ってほしい、です」
軽く唇が触れたかと思えば、その感覚は左にずれ首筋から濡れた音が上がる。青砥の舌が動くたびに樹はほぅっとした息を零した。
「ここは? どう触ってほしい?」
青砥の指が置かれたのはほんの少しある膨らみのてっぺんだ。くいくいと微かに上下に揺らしながら樹からの言葉を待つが流石にまだ羞恥が勝つのか唇は固く閉じられたままだ。
「さっきまでの素直な樹はどこにいったの? ちゃんと言ってくれないと分かんないよ」
キュッとした唇をかむ。
恥ずかしい、でも……。
伝えなければという感情は場面を選ばず何度も浮かび上がる。盲目に、忠実に。
「く、口でくわえて、し、舌で……も、アオさ、ああんっ」
何とか言葉を紡いだものの途中で根を上げたその時だった。あっという間に生暖かい咥内に包まれ、樹の声が跳ねた。
「へぇ、こんな風にされるのが好きなんだ」
濡れた先端に息がかかり、身をよじった瞬間にじゅっと音を立てて吸い上げられる。言葉に出来なかった願望を体現され、樹は体を逸らせて甘い息を吐いた。
とろり、樹の中心から零れた蜜が下着を濡らす。その間も青砥は樹の先端を吸い上げ、舌先でいたぶり、反対側の胸の突起にさえ手を伸ばした。
「も、それ以上はっ」
「どうして? いっぱい触ってほしいんでしょ?」
青砥の指は反対の胸の突起には触れず、そのまわりをくるくると回る。触って欲しいもののすれすれを何度も行き来されれば意識はそればかりを追い、樹は体を揺らした。体を揺らしても触れないように青砥の指は動く。
はしたない、その言葉は樹の中のずっと奥の方へすぅっと身を潜ませた。
「こっちの、こっちも、触って」
「何?」
「何でもないです」
「ずっと見てただろ?」
「その……本当に戻ってきたんだなって思って」
へぇ、と青砥がちょっと意地悪な笑みを零した。
「部屋に寄ってく? 本当に帰ってきたか存分に確かめたらいい」
月の灯りが窓から射しこむ。吸い寄せられるように窓際に行くとドリシアメンバーが並んだ広告が青白いライトで照らされていた。そのすれすれを青く輝く車が通り抜けていく。窓ガラスには青砥の好きなリス型の縫いぐるみ、リリーが映っていた。
「な。ちゃんと家具もセットされてるだろ?」
「りりーもちゃんといますね。前より数が少なくなったように思いますけど」
「プレゼントって送られてくることが無くなったからな」
こんなことを話していたいわけではないのに、緊張から会話が上滑りする。まるで初めてデートをする高校生のように視線をさ迷わせてると、青砥が樹の隣に並んだ。明かりのついてない部屋、窓ガラスにうっすらと映る二人の影は夜の街に重なってまるで透明人間にでもなったかのようだ。
「刑務所の事件の時、本当は樹、やばかっただろ?」
「え?」
「やっぱり」
「ははは、何でもお見通しですね」
「全部ってわけでもないけどな。あくまで予測で真実ではないから」
窓に手をつくと指先から冷たさが侵入してくる。あの時ユーリが現れなければ、この感覚も今この時もない。
そう思った瞬間、あの時の感覚が戻り口の中に血を感じた。
「俺、アオさんのことが好きです」
驚くほど熱の伴わない告白だった。青砥の顔を見ることもなく、樹は窓の外をずっと見ている。
伝えよう、伝えなくちゃと思っていた言葉が自身の口からもう既に零れていたことに樹は気が付かないでいた。だから意を徹して青砥の方を向いた時、突然奪われた唇に驚いて息を吸い損ねた。空気を求める樹のくぐもった声が青砥の熱に溶けていく。
「も、だ、から……息できねぇっていってんだろ!!」
「俺も。俺も樹が好きだ」
「あ……」
自分の唇に触れる。樹はほんのりと頬を染め、だけど視線を逸らすことなく青砥を見つめた。
「……知ってます」
自身を預けるような口づけは樹からのもので青砥が優しく受け止める。少し離れれば今度は青砥が追いかけ、舌を絡ませ合いながら何度も互いを奪い合った。
「腕、外していい?」
「ど、うぞ」
上がった息。
青砥の手がシャツの中に入りハーネスを器用に外した。ガチャっと音を立てて床に置かれれば否応なしに期待が高まる。
「これから何するか分かる?」
羞恥心を爪で優しく引っかくような聞き方だ。樹の体を胸に抱いたまま頭を撫でると、赤く染まった耳が見える。樹が青砥に問いに答えないことなど想定内だ。むしろ樹なら恥ずかしがって何も言わない、そんな樹が見たくて意地悪を言っただけだった。
「分かってるから、聞かないででください。俺だって……」
ちゃんと伝えなければ。
青砥に会えない間に起こった出来事のせいで樹は自分の気持ちを伝えなくてはいけないという思いに囚われていた。行動だけじゃ足りない、言葉だけでも足りない。
青砥から離れシャツのボタンを外していけば、月の明かりが樹の肌を這う。誘うようにベッドに乗ると服を脱いだ青砥が覆いかぶさった。
「どうして欲しい?」
「……いっぱい、触ってほしい、です」
軽く唇が触れたかと思えば、その感覚は左にずれ首筋から濡れた音が上がる。青砥の舌が動くたびに樹はほぅっとした息を零した。
「ここは? どう触ってほしい?」
青砥の指が置かれたのはほんの少しある膨らみのてっぺんだ。くいくいと微かに上下に揺らしながら樹からの言葉を待つが流石にまだ羞恥が勝つのか唇は固く閉じられたままだ。
「さっきまでの素直な樹はどこにいったの? ちゃんと言ってくれないと分かんないよ」
キュッとした唇をかむ。
恥ずかしい、でも……。
伝えなければという感情は場面を選ばず何度も浮かび上がる。盲目に、忠実に。
「く、口でくわえて、し、舌で……も、アオさ、ああんっ」
何とか言葉を紡いだものの途中で根を上げたその時だった。あっという間に生暖かい咥内に包まれ、樹の声が跳ねた。
「へぇ、こんな風にされるのが好きなんだ」
濡れた先端に息がかかり、身をよじった瞬間にじゅっと音を立てて吸い上げられる。言葉に出来なかった願望を体現され、樹は体を逸らせて甘い息を吐いた。
とろり、樹の中心から零れた蜜が下着を濡らす。その間も青砥は樹の先端を吸い上げ、舌先でいたぶり、反対側の胸の突起にさえ手を伸ばした。
「も、それ以上はっ」
「どうして? いっぱい触ってほしいんでしょ?」
青砥の指は反対の胸の突起には触れず、そのまわりをくるくると回る。触って欲しいもののすれすれを何度も行き来されれば意識はそればかりを追い、樹は体を揺らした。体を揺らしても触れないように青砥の指は動く。
はしたない、その言葉は樹の中のずっと奥の方へすぅっと身を潜ませた。
「こっちの、こっちも、触って」
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