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第1章 民間伝承研究部編
幽霊先祖と探り合い
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前略、Bランクになりました。
え? ついこの前までFランクだった人間が何言ってんだ? いやー、私たちとしたことがクエスト頑張りすぎちゃって。あれよあれよという間に昇格してしまいました。
「今日も、クエスト?」
「はい。最近何故かギルドも忙しそうですし、私たちも怠けていられませんから!」
「分かった。でも、頑張りすぎ、気をつけて」
エーレさんったら心配性ですね。無理はしないよう気をつけてますよ。
「分かりました。ではいってきます」
「うん。いってらっしゃい」
というわけで今日も元気にクエストへ向かうのでした。
ドアの閉まる音が見送りの終わりを告げる。今日も家中が静かになった。自分が死んでからリリィたちが引っ越してくるまではこれが普通だったのだが、今やエーレはこれに寂しさすら覚えるようになっていた。
「お留守番、退屈だな。研究、進めよう」
死後もずっと続けてきた習慣だ。事故防止のためにリリィたちには入るなと言っているが、この家にはエーレ専用の研究室がある。リリィたちがやってきてからは彼ら(主にカール)の修行に時間を割くことも多くなったが、暇な時は研究に明け暮れている。
「答えなんて、分かってて、意味無い。なのに……」
足掻く、というのはこういうことを意味するのだろう。
エーレとて彼がもたらした情報が確かなのはとうに分かっている。分かってはいるのだが、それでも受け入れたくないと喚く自分がいる。
そんな自分が間違っていると思ったことは1度も無い。だがそのせいで手放したものは絶えず頭の中に浮かんでくる。じゃあどうすればよかったんだという問いには答えないまま。
「いっそ教えなかったら。私があいつの、あの子の才能を、見抜かな、ければ……」
やめようと、心が落ち着くまでどのくらいかかっただろうか。周りの家具が無造作に転がっている。粉々になっているものまである。気づかないうちに魔法が暴発したらしい。
「あはは、やっちゃった。回復魔法――」
散らかった家具が修復されながら元の場所に戻っていく。
無生物まで修復できる回復魔法を習得できた者はあまり知らない。自分の子孫たちは魔法の才能を受け継いだ。だがそもそも、彼らは回復魔法を使えない。
「ほんとに、あいつ、厄介なのを」
懐かしい顔を思い出してしまう。今直したばかりの家具をまた壊してしまいそうになった。
「さて、そろそろ、研究を」
研究室に向かおうとしたとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰?」
「私よ」
「分かった。入って」
ドアが開く。訪れた人物にエーレは暖かい眼差しを向ける。
「いらっしゃい、セシリア。くつろいで」
家の主である幽霊はリリィの母を暖かく迎え入れた。
「最近あの子はどう?」
「うん、元気だよ。今日も、クエスト、行った」
「そう。あの子ったらやけに強い魔物引き寄せるから心配なのよね」
「うん……何で、だろうね」
去年の研修で遭遇した上位吸血鬼のときもそうだったが、先日出会したメイドの魔物もギルドでは大騒ぎとなった。
人に化けた魔物が王都に潜伏している。しかも彼女を目撃したフェンリル曰く、こちらも上位個体らしい。
「まあそれはそれとして、いや関係無くないかもしれないけど」
「ん?」
「星は踊る。空間は舞う。共に生まれし光は離れ離れに――」
エーレの目の前にセシリアの杖が突きつけられていた。魔法陣が浮かびあがる。この家を周囲の建物ごと消し飛ばす気らしい。
「あの子に何があるの? いや、あの子は何なの?」
とても抽象的な質問だ。だがエーレには彼女が何を言いたいのかはおおよそ見当がついた。
「9年前に、話した。あの子は」
「転生者、でしょ? 覚えてるわよ」
セシリアの表情がよけいに厳しくなる。やはりこの程度でははぐらかしきれないらしい。
「確かに10歳にすらならずにあれが消えた理由はそれで納得よ。
でもそれだけじゃ説明できないわよね? 上位の魔物が立て続けに接触してきたことは」
「……どっちも、偶然、だよ」
「キナの方が組織で動いてるのは明白よ。下調べと多少のお芝居でいくらでも偶然は装えるわ。メイドの方も彼女の仲間と考えればそれで説明はつく。それに――」
セシリアにどこかしら余裕が現れる。エーレは何かしくじったと悟った。
「何であなた今偶然って言い切ったの? あの子と奴らの出会いが必然だからと知ってたから?」
「……っ」
「おまけにあなたはいつも私たちを見守るだけ。余程のことが無い限り出張ってくることは無かった。どうしてリリィは自分から引き寄せたの? ここをあの子たちに教えたリムノはグル?」
「あの人は関係無……!」
やってしまった。
「そう……リムノは関係無いのね」
ポーカーフェイスの下で動揺していなかったといえば嘘になる。しかしこの失言は許されなかった。あまりにも痛い。
関係無いと言ってしまえば、つまりリムノは知らない自分の企みがあると認めてしまったようなものだからだ。
実際はリムノも全て知った上で協力しているのだが、それは今どうでもいい。問題は今からセシリアが自分に何かあると確信を持って探りを入れてくるということだ。
「キナとメイドはあなたの差金?」
「僕に、獣使いの技術は、無い。まして、魔物の、使役なんか」
「彼女たちには人間や亜人と同等の知能がある。獣使いがどうこうできないのは知ってるわよ。でも、例外はある」
「……」
「信じたくはないんだけど――」
「……」
信じたくない結論が既に出ているということだ。隠し事の多い幽霊はそれを聞く準備を既に済ませていた。
「エーレ、あなたまさか、魔王と繋がってないでしょうね?」
セシリアの魔法は既に一瞬で発動できる。負傷するための肉体があったとしても無事でいる自信がエーレにはあるが、この家が無くなるのはあまりよくない。
そう思った彼女は――杖に指をそっと立てた。
魔法は消滅した。
「僕を、何だと思ってるの?」
「何かだと思うにはほど遠いくらいあなたのことを知らないから疑ってるのよ」
「話したく、ないからだよ。しんどいから」
しばしの沈黙。やがて場に満ちた緊張感を飛ばすかのようにセシリアがため息を吐き、ソファに体重を預けた。
「んもぅ相変わらずね。本当に昔何があったのよ?」
「離婚。子どもの、ことで、揉めて」
「出てったダンナさんのことは訊いてませんっ! ……もういいわ。今日はこの辺で勘弁してあげる」
「うん。また、来てね」
「はいはい。じゃあまたね、ご先祖様」
セシリアは空間魔法で帰っていった。再び静かになった部屋でエーレは1人言葉を投げ捨てる。
「僕と、魔王か。だったら、よかったんだけど……でも」
自分の服を強く掴むエーレ。
「僕だって――意地を、張りたいんだ」
え? ついこの前までFランクだった人間が何言ってんだ? いやー、私たちとしたことがクエスト頑張りすぎちゃって。あれよあれよという間に昇格してしまいました。
「今日も、クエスト?」
「はい。最近何故かギルドも忙しそうですし、私たちも怠けていられませんから!」
「分かった。でも、頑張りすぎ、気をつけて」
エーレさんったら心配性ですね。無理はしないよう気をつけてますよ。
「分かりました。ではいってきます」
「うん。いってらっしゃい」
というわけで今日も元気にクエストへ向かうのでした。
ドアの閉まる音が見送りの終わりを告げる。今日も家中が静かになった。自分が死んでからリリィたちが引っ越してくるまではこれが普通だったのだが、今やエーレはこれに寂しさすら覚えるようになっていた。
「お留守番、退屈だな。研究、進めよう」
死後もずっと続けてきた習慣だ。事故防止のためにリリィたちには入るなと言っているが、この家にはエーレ専用の研究室がある。リリィたちがやってきてからは彼ら(主にカール)の修行に時間を割くことも多くなったが、暇な時は研究に明け暮れている。
「答えなんて、分かってて、意味無い。なのに……」
足掻く、というのはこういうことを意味するのだろう。
エーレとて彼がもたらした情報が確かなのはとうに分かっている。分かってはいるのだが、それでも受け入れたくないと喚く自分がいる。
そんな自分が間違っていると思ったことは1度も無い。だがそのせいで手放したものは絶えず頭の中に浮かんでくる。じゃあどうすればよかったんだという問いには答えないまま。
「いっそ教えなかったら。私があいつの、あの子の才能を、見抜かな、ければ……」
やめようと、心が落ち着くまでどのくらいかかっただろうか。周りの家具が無造作に転がっている。粉々になっているものまである。気づかないうちに魔法が暴発したらしい。
「あはは、やっちゃった。回復魔法――」
散らかった家具が修復されながら元の場所に戻っていく。
無生物まで修復できる回復魔法を習得できた者はあまり知らない。自分の子孫たちは魔法の才能を受け継いだ。だがそもそも、彼らは回復魔法を使えない。
「ほんとに、あいつ、厄介なのを」
懐かしい顔を思い出してしまう。今直したばかりの家具をまた壊してしまいそうになった。
「さて、そろそろ、研究を」
研究室に向かおうとしたとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰?」
「私よ」
「分かった。入って」
ドアが開く。訪れた人物にエーレは暖かい眼差しを向ける。
「いらっしゃい、セシリア。くつろいで」
家の主である幽霊はリリィの母を暖かく迎え入れた。
「最近あの子はどう?」
「うん、元気だよ。今日も、クエスト、行った」
「そう。あの子ったらやけに強い魔物引き寄せるから心配なのよね」
「うん……何で、だろうね」
去年の研修で遭遇した上位吸血鬼のときもそうだったが、先日出会したメイドの魔物もギルドでは大騒ぎとなった。
人に化けた魔物が王都に潜伏している。しかも彼女を目撃したフェンリル曰く、こちらも上位個体らしい。
「まあそれはそれとして、いや関係無くないかもしれないけど」
「ん?」
「星は踊る。空間は舞う。共に生まれし光は離れ離れに――」
エーレの目の前にセシリアの杖が突きつけられていた。魔法陣が浮かびあがる。この家を周囲の建物ごと消し飛ばす気らしい。
「あの子に何があるの? いや、あの子は何なの?」
とても抽象的な質問だ。だがエーレには彼女が何を言いたいのかはおおよそ見当がついた。
「9年前に、話した。あの子は」
「転生者、でしょ? 覚えてるわよ」
セシリアの表情がよけいに厳しくなる。やはりこの程度でははぐらかしきれないらしい。
「確かに10歳にすらならずにあれが消えた理由はそれで納得よ。
でもそれだけじゃ説明できないわよね? 上位の魔物が立て続けに接触してきたことは」
「……どっちも、偶然、だよ」
「キナの方が組織で動いてるのは明白よ。下調べと多少のお芝居でいくらでも偶然は装えるわ。メイドの方も彼女の仲間と考えればそれで説明はつく。それに――」
セシリアにどこかしら余裕が現れる。エーレは何かしくじったと悟った。
「何であなた今偶然って言い切ったの? あの子と奴らの出会いが必然だからと知ってたから?」
「……っ」
「おまけにあなたはいつも私たちを見守るだけ。余程のことが無い限り出張ってくることは無かった。どうしてリリィは自分から引き寄せたの? ここをあの子たちに教えたリムノはグル?」
「あの人は関係無……!」
やってしまった。
「そう……リムノは関係無いのね」
ポーカーフェイスの下で動揺していなかったといえば嘘になる。しかしこの失言は許されなかった。あまりにも痛い。
関係無いと言ってしまえば、つまりリムノは知らない自分の企みがあると認めてしまったようなものだからだ。
実際はリムノも全て知った上で協力しているのだが、それは今どうでもいい。問題は今からセシリアが自分に何かあると確信を持って探りを入れてくるということだ。
「キナとメイドはあなたの差金?」
「僕に、獣使いの技術は、無い。まして、魔物の、使役なんか」
「彼女たちには人間や亜人と同等の知能がある。獣使いがどうこうできないのは知ってるわよ。でも、例外はある」
「……」
「信じたくはないんだけど――」
「……」
信じたくない結論が既に出ているということだ。隠し事の多い幽霊はそれを聞く準備を既に済ませていた。
「エーレ、あなたまさか、魔王と繋がってないでしょうね?」
セシリアの魔法は既に一瞬で発動できる。負傷するための肉体があったとしても無事でいる自信がエーレにはあるが、この家が無くなるのはあまりよくない。
そう思った彼女は――杖に指をそっと立てた。
魔法は消滅した。
「僕を、何だと思ってるの?」
「何かだと思うにはほど遠いくらいあなたのことを知らないから疑ってるのよ」
「話したく、ないからだよ。しんどいから」
しばしの沈黙。やがて場に満ちた緊張感を飛ばすかのようにセシリアがため息を吐き、ソファに体重を預けた。
「んもぅ相変わらずね。本当に昔何があったのよ?」
「離婚。子どもの、ことで、揉めて」
「出てったダンナさんのことは訊いてませんっ! ……もういいわ。今日はこの辺で勘弁してあげる」
「うん。また、来てね」
「はいはい。じゃあまたね、ご先祖様」
セシリアは空間魔法で帰っていった。再び静かになった部屋でエーレは1人言葉を投げ捨てる。
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自分の服を強く掴むエーレ。
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