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第1章 民間伝承研究部編
転生少女のお手伝い3
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肌が真っ青になった男性に慌てて駆け寄ると、その体は見た目に違わず凍える程に冷えていました。
「大丈夫ですか!って、んなわけ無いですね。イデシメさん、彼を運んで。カール君、お湯玉!」
「任せろ。水魔法 水球生成、沸騰!」
宙にいくつかの水の球が浮かび上がり、ぼこぼこと沸き立ちました。丁度いい温度には調整されている筈です。
私はそれと同時並行で自分の服の端を引きちぎりました。スキルを行使するために。
「〈能力授与〉 形状変化、漏水無効」
見た目では何も変わりませんが、これで確かにスキルが付与されました。〈形状変化〉で服の切れ端を袋の形にし、その中にカール君が作ったお湯を注ぎます。〈漏水無効〉があるのでお湯が漏れることはありません。即席のお湯玉が出来ました。
同じ物を数個作成、イデシメさんが奥に運んでいた男性を温め始めました。
「後は……服も着替えさせとくか。リリィ、この人が着れそうな服あるか?毛布でもいい」
「あ、両方ありますよ……ほいっ」
〈無限格納〉から取り出した物を全部丸めてまとめて渡しました。
「よっと、ありがとう。でも何で都合よく丁度のサイズの服あるんだ?」
「前に家を掃除したときに捨てる予定だった服とかを全部放り込んだので」
「案外適当なんだな」
私のスキルって日常でも使えますからね。魔力量に反比例するおかげで日用品がチートスキル持てちゃったり。
少し雪溶けてきた空気の中でイデシメさんがふと訊ねました。
「後は様子見でね?」
「まあそうだな。応急処置はやったし、いざって時は俺が回復魔法使えばどうにかなる」
エーレさんとの修行の成果の1つです。母さんも私も大抵の魔法は使えますが回復魔法だけは相性が悪く、これは才能と同じでどうしようもありません。
「他に心配なのは後遺症ですかね。見たところ魔法による被害でしょうし」
「だな。たちの悪い魔法ならまだ何か仕掛けられてる可能性もある。容態が安定したら教会に連れて行こう」
「分かりました」
「そうしよう」
この世界では回復魔法が主な治療方法。回復術士はこの魔法に特化した冒険者です。対して、より専門的な治療も含めて行っているのが教会です。役割としては回復術士がその場で死なないようにするため、教会が確実に治すためといった感じでしょうか。
以前私が治療を受けたときは前者で充分事足りました。しかしこの世界には魔法があります。悪い魔術師がその気になれば「その時は治ったように見えるけど実際は1週間ほどかけてじわじわと体を蝕む魔法」なんてのも出来るわけです。
そうした厄介な魔法の存在を検査、場合によっては治してもらうためにも教会に連れて行かないといけないのです。
30分程経ったでしょうか。さっき私が自分で引きちぎった服はとっくに元どおりになっています。〈自動修復〉のスキルを付与しておいて正解でした。これがあれば変身シーンで服が無くなるタイプの魔法少女も安心です。魔力をほんの少し持っていかれるますが。
そんな時、男性が目を覚ましました。顔色もかなりよくなってきています。
「ギャアー!……って、ここは?」
「あ、目が覚めましたか。ここはトレントの葉という薬屋です。私たちはEランクパーティーの解の約束、このお店の手伝いをしています。あなたがここに来ていきなり倒れたので手当てをしていました」
「そ、そうなのかい。そりゃあ助かったよ。ありがとな」
「いえいえ。あなたが無事で何よりです」
男性に目立った後遺症は見受けられませんでした。会話もスラスラと出来、体も動かせるようです。
教会に行くよう勧めると男性は快く了承してくれました。もしも魔術師に襲われたのなら後で憲兵が話を聞きに来るでしょう。私たちの仕事は終わりです。指名手配犯確保のクエストが発行されない限り。
「私が送って行きますよ。空間魔法が使えるので」
「おいおい嬢ちゃん、んな冗談は通じねえぜ。あんたらEランクパーティーで、個人ではまだFランクの新人だろ?それがあの魔術師の中でも殆ど使える奴がいねえっていう空間魔法を……」
「カール君、イデシメさん、留守番お願いします」
「おう」
「いってらっしゃい」
「さて、では行きますか」
男性は私たちのやり取りに顔をキョロキョロさせています。
「空間魔法 転移」
すっかり慣れた魔法を発動し、教会の前に瞬間移動しました。
「な……何じゃこりゃー⁉︎」
あ、隣で男性が目を丸くしてますね。カール君によるとこれが正常な反応だそうですが。
「嬢ちゃん本当に空間魔法使えたのかい。なあ、本当にFランクか?」
「冒険者になる前から師匠に鍛えられていたので。さあさあ、患者はさっさと目の前の建物へ」
「お、おう」
男性は終始珍しいものを見るような目で私を見ていました。
男性を引き渡して教会を出た私はうんと体を伸ばしました。
「んーっ!後は帰るだけですね」
転移を使えば一瞬です。
「行きますか。空間魔法 テレポ……」
「どけー!」
「?」
喧しい怒鳴り声が耳に殴りかかってきました。その声によって振り返った直後、1人の男が半ば突進するかのように背後から迫ってきました。
「うおおっ⁉︎」
避けるのは造作もありません。私が片足を軸に体をくるりと回転させると、男は目もくれずに目の前を通り過ぎて行きました。
「そいつ捕まえてください、泥棒です!」
男が視界の端を出ようとしたとき、今度は凛とした声が耳を突き刺しました。
男を追いかけるように走ってきたのは絵に描いたようなメイドさんです。
まさか本物のメイドさんですか⁉︎確かにこの世界には貴族や王様がいますし存在は知っていましたが、これは私の人生初の本物メイドさんです。うわあ、ふりっふりでふわっふわのロングスカート、肌は真っ白で新品のお皿みたいです。
ん?ていうか今彼女、あの男が泥棒って言いました?
「〈超音速〉」
容赦無く行使される加速度のベクトル。私の速度は真っ直ぐ男を見据えつつ人外となりました。
群衆が知覚も出来ないうちに私と男の距離は触れられる程にまで近づきました。これなら確実に当てられるでしょう。誤射はまずいので。
手をかざし、心の中で言霊を発しました。
(雷魔法 麻痺)
「大丈夫ですか!って、んなわけ無いですね。イデシメさん、彼を運んで。カール君、お湯玉!」
「任せろ。水魔法 水球生成、沸騰!」
宙にいくつかの水の球が浮かび上がり、ぼこぼこと沸き立ちました。丁度いい温度には調整されている筈です。
私はそれと同時並行で自分の服の端を引きちぎりました。スキルを行使するために。
「〈能力授与〉 形状変化、漏水無効」
見た目では何も変わりませんが、これで確かにスキルが付与されました。〈形状変化〉で服の切れ端を袋の形にし、その中にカール君が作ったお湯を注ぎます。〈漏水無効〉があるのでお湯が漏れることはありません。即席のお湯玉が出来ました。
同じ物を数個作成、イデシメさんが奥に運んでいた男性を温め始めました。
「後は……服も着替えさせとくか。リリィ、この人が着れそうな服あるか?毛布でもいい」
「あ、両方ありますよ……ほいっ」
〈無限格納〉から取り出した物を全部丸めてまとめて渡しました。
「よっと、ありがとう。でも何で都合よく丁度のサイズの服あるんだ?」
「前に家を掃除したときに捨てる予定だった服とかを全部放り込んだので」
「案外適当なんだな」
私のスキルって日常でも使えますからね。魔力量に反比例するおかげで日用品がチートスキル持てちゃったり。
少し雪溶けてきた空気の中でイデシメさんがふと訊ねました。
「後は様子見でね?」
「まあそうだな。応急処置はやったし、いざって時は俺が回復魔法使えばどうにかなる」
エーレさんとの修行の成果の1つです。母さんも私も大抵の魔法は使えますが回復魔法だけは相性が悪く、これは才能と同じでどうしようもありません。
「他に心配なのは後遺症ですかね。見たところ魔法による被害でしょうし」
「だな。たちの悪い魔法ならまだ何か仕掛けられてる可能性もある。容態が安定したら教会に連れて行こう」
「分かりました」
「そうしよう」
この世界では回復魔法が主な治療方法。回復術士はこの魔法に特化した冒険者です。対して、より専門的な治療も含めて行っているのが教会です。役割としては回復術士がその場で死なないようにするため、教会が確実に治すためといった感じでしょうか。
以前私が治療を受けたときは前者で充分事足りました。しかしこの世界には魔法があります。悪い魔術師がその気になれば「その時は治ったように見えるけど実際は1週間ほどかけてじわじわと体を蝕む魔法」なんてのも出来るわけです。
そうした厄介な魔法の存在を検査、場合によっては治してもらうためにも教会に連れて行かないといけないのです。
30分程経ったでしょうか。さっき私が自分で引きちぎった服はとっくに元どおりになっています。〈自動修復〉のスキルを付与しておいて正解でした。これがあれば変身シーンで服が無くなるタイプの魔法少女も安心です。魔力をほんの少し持っていかれるますが。
そんな時、男性が目を覚ましました。顔色もかなりよくなってきています。
「ギャアー!……って、ここは?」
「あ、目が覚めましたか。ここはトレントの葉という薬屋です。私たちはEランクパーティーの解の約束、このお店の手伝いをしています。あなたがここに来ていきなり倒れたので手当てをしていました」
「そ、そうなのかい。そりゃあ助かったよ。ありがとな」
「いえいえ。あなたが無事で何よりです」
男性に目立った後遺症は見受けられませんでした。会話もスラスラと出来、体も動かせるようです。
教会に行くよう勧めると男性は快く了承してくれました。もしも魔術師に襲われたのなら後で憲兵が話を聞きに来るでしょう。私たちの仕事は終わりです。指名手配犯確保のクエストが発行されない限り。
「私が送って行きますよ。空間魔法が使えるので」
「おいおい嬢ちゃん、んな冗談は通じねえぜ。あんたらEランクパーティーで、個人ではまだFランクの新人だろ?それがあの魔術師の中でも殆ど使える奴がいねえっていう空間魔法を……」
「カール君、イデシメさん、留守番お願いします」
「おう」
「いってらっしゃい」
「さて、では行きますか」
男性は私たちのやり取りに顔をキョロキョロさせています。
「空間魔法 転移」
すっかり慣れた魔法を発動し、教会の前に瞬間移動しました。
「な……何じゃこりゃー⁉︎」
あ、隣で男性が目を丸くしてますね。カール君によるとこれが正常な反応だそうですが。
「嬢ちゃん本当に空間魔法使えたのかい。なあ、本当にFランクか?」
「冒険者になる前から師匠に鍛えられていたので。さあさあ、患者はさっさと目の前の建物へ」
「お、おう」
男性は終始珍しいものを見るような目で私を見ていました。
男性を引き渡して教会を出た私はうんと体を伸ばしました。
「んーっ!後は帰るだけですね」
転移を使えば一瞬です。
「行きますか。空間魔法 テレポ……」
「どけー!」
「?」
喧しい怒鳴り声が耳に殴りかかってきました。その声によって振り返った直後、1人の男が半ば突進するかのように背後から迫ってきました。
「うおおっ⁉︎」
避けるのは造作もありません。私が片足を軸に体をくるりと回転させると、男は目もくれずに目の前を通り過ぎて行きました。
「そいつ捕まえてください、泥棒です!」
男が視界の端を出ようとしたとき、今度は凛とした声が耳を突き刺しました。
男を追いかけるように走ってきたのは絵に描いたようなメイドさんです。
まさか本物のメイドさんですか⁉︎確かにこの世界には貴族や王様がいますし存在は知っていましたが、これは私の人生初の本物メイドさんです。うわあ、ふりっふりでふわっふわのロングスカート、肌は真っ白で新品のお皿みたいです。
ん?ていうか今彼女、あの男が泥棒って言いました?
「〈超音速〉」
容赦無く行使される加速度のベクトル。私の速度は真っ直ぐ男を見据えつつ人外となりました。
群衆が知覚も出来ないうちに私と男の距離は触れられる程にまで近づきました。これなら確実に当てられるでしょう。誤射はまずいので。
手をかざし、心の中で言霊を発しました。
(雷魔法 麻痺)
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