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第1章 民間伝承研究部編
転生少女の新生活2
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前略、母校の初代学長が幽霊になってました。
「マジすか……そういや初代学長のことよく知らねえな。新しい魔法発明したり学園創設したりしてるってのに教科書には1ページも載ってなかったし」
「自分のこと教えるくらいなら他の内容に時間割いて欲しかったそうよ」
うわあ、既に意気投合してませんか?でもそのエピソード聞く限りはいい人っぽいですね。ちょっと変わってるかもしれませんが。
「あ、ちなみに結構見た目は若かったわよ。闇魔法の応用で死後の霊体の姿を操作云々って言ってたわ」
「魔術師の端くれとして言わせてもらいますけど……今の時代でもその技術再現できる人いなくても不思議じゃないですよ」
カール君がやけに疲れた表情をしています。情報過多だったでしょうか。彼、面倒見が良い反面苦労人の趣がありますから。学園にいた頃何度私のやらかしで迷惑をかけたか……。
そんな時、ずっと黙って話を聞いていたイデシメさんが不安げに口を開きました。
「あ、あの、その人は魔物が住んでても気にしませんか。私はコヨと一緒におりたいし……」
確かにそうですね。イデシメさんはフェンリルのコヨ君と一緒ですからね。人によってはそれだけで入居拒否って可能性もあります。
「問題無いわ。魔物には慣れてるし仲良くする自信があるって言ってたから」
本当何者なんですか?そうリムノさんに訊こうとしたところ、やんわりと止められました。
「どうせなら本人に訊いたら?今から行くんだし」
「そ、そうですね。ごめんなさい色々聞いちゃって」
「いいのよ。さあ、そんな事より行きましょう!」
件の物件は王都の郊外、人気の少ない通りにぽつんと建っていました。思ってたより大きなお家です。確かにこれならコヨ君でも窮屈に思わないでしょう。けど……
「やべえ魔力だだ漏れなんすけど……俺がもっと強かったら速攻で消しますよこの家」
「それは諦めた方がいいわよ。ティンダロスを連射しても傷一つつかなかったから」
連射したんですか⁉︎エルフの秘宝を⁉︎そしてびくともしない家ッ!
「だって家主さんが試しにやってみろって言うんだもん。でも変ね。前来た時はこんなに魔力垂れ流してなかったんだけど」
「お、俺、今日は帰った方がいいかなーって」
「カール君、ここはあなたのお家でもあるのよ。つまりあなたが帰る場所はここ」
「ですよね……はあ」
カール君、苦労人ですね。え、私が言うな?ははは。
「取り敢えず入ってみましょう。ただいまー!」
リムノさんが躊躇なくドアを開けて帰宅しました。私たちも慌てて中へ入ります。そしてその内装なのですが、
「すごい……綺麗」
「落ち着いた雰囲気でゆったりできるな。快適そうだ」
「コヨ、気に入ったかえ?」
「アウ!」
「でもやっぱり変ね。前来た時とだいぶ内装変わってるような」
「うん。君たちに、合わせて、みた」
幽霊さんはとてもナチュラルに白昼堂々登場しました。始めからそこにいたかのように自然に会話に混ざってきました。普通なら驚くことでしょうけど、不思議と誰も恐怖を微塵も覚えませんでした。
「魔法で、感情に少し、干渉した。だから、僕のこと、怖く、ないでしょ?」
幽霊さんの見た目はリムノさんと同じくらいでした。前世で言うところの高校生くらいですね。言葉が時々詰まるところと話す時に顔を合わせない(多分合わせられないのでしょう)ところが所謂人見知りさんって感じです。あと僕っ娘ですね。
「魔力、びっくりさせて、ごめん。僕が死んでから、初めての住人、だから、喜ばせたくて、その、リフォームしてた」
その技術、ドワーフの皆さんが聞いたらどう思うでしょうか(歓喜します)。
「取り敢えず上がって。えっと、話そう」
幽霊さんに案内されて私たちはリビングへと向かいました。やはり相当広いですね。おしゃれな暖炉もあります。窓辺に流れ込む日光が気持ちいいのかコヨ君がお昼寝を始めました。
「初めまして、リリィといいます。リムノさんとパーティーを組んでいます」
「同じく、カールです」
「イデシメです。あっちは友達のコヨです。フェンリルですけど、人は襲いません」
「分かってる。リムノから、聞いてたし、敵意は、無い、見たら、分かる。あと、その……可愛い」
おや、思いの外コヨ君の好感度が高いですね。
「あと、敬語、いらない。苦手」
やはり人付き合いが苦手な方のようですね。お言葉に甘えて私たちは敬語をやめることにしました。
「僕は、ここの、昔の住人で、えっと、死ぬまで住んでた。安心して、大往生」
事故物件ではないと安心させてくれたのでしょうか。たとえそうでも目の前に死んだ本人がいらっしゃるんですけどね。
「改めて、よろしく。僕は、エーレ」
凄腕の魔術師であり冒険者学園の初代学長であり少し人見知りな幽霊の同居人。そんな彼女の名前を知った瞬間でした。
「マジすか……そういや初代学長のことよく知らねえな。新しい魔法発明したり学園創設したりしてるってのに教科書には1ページも載ってなかったし」
「自分のこと教えるくらいなら他の内容に時間割いて欲しかったそうよ」
うわあ、既に意気投合してませんか?でもそのエピソード聞く限りはいい人っぽいですね。ちょっと変わってるかもしれませんが。
「あ、ちなみに結構見た目は若かったわよ。闇魔法の応用で死後の霊体の姿を操作云々って言ってたわ」
「魔術師の端くれとして言わせてもらいますけど……今の時代でもその技術再現できる人いなくても不思議じゃないですよ」
カール君がやけに疲れた表情をしています。情報過多だったでしょうか。彼、面倒見が良い反面苦労人の趣がありますから。学園にいた頃何度私のやらかしで迷惑をかけたか……。
そんな時、ずっと黙って話を聞いていたイデシメさんが不安げに口を開きました。
「あ、あの、その人は魔物が住んでても気にしませんか。私はコヨと一緒におりたいし……」
確かにそうですね。イデシメさんはフェンリルのコヨ君と一緒ですからね。人によってはそれだけで入居拒否って可能性もあります。
「問題無いわ。魔物には慣れてるし仲良くする自信があるって言ってたから」
本当何者なんですか?そうリムノさんに訊こうとしたところ、やんわりと止められました。
「どうせなら本人に訊いたら?今から行くんだし」
「そ、そうですね。ごめんなさい色々聞いちゃって」
「いいのよ。さあ、そんな事より行きましょう!」
件の物件は王都の郊外、人気の少ない通りにぽつんと建っていました。思ってたより大きなお家です。確かにこれならコヨ君でも窮屈に思わないでしょう。けど……
「やべえ魔力だだ漏れなんすけど……俺がもっと強かったら速攻で消しますよこの家」
「それは諦めた方がいいわよ。ティンダロスを連射しても傷一つつかなかったから」
連射したんですか⁉︎エルフの秘宝を⁉︎そしてびくともしない家ッ!
「だって家主さんが試しにやってみろって言うんだもん。でも変ね。前来た時はこんなに魔力垂れ流してなかったんだけど」
「お、俺、今日は帰った方がいいかなーって」
「カール君、ここはあなたのお家でもあるのよ。つまりあなたが帰る場所はここ」
「ですよね……はあ」
カール君、苦労人ですね。え、私が言うな?ははは。
「取り敢えず入ってみましょう。ただいまー!」
リムノさんが躊躇なくドアを開けて帰宅しました。私たちも慌てて中へ入ります。そしてその内装なのですが、
「すごい……綺麗」
「落ち着いた雰囲気でゆったりできるな。快適そうだ」
「コヨ、気に入ったかえ?」
「アウ!」
「でもやっぱり変ね。前来た時とだいぶ内装変わってるような」
「うん。君たちに、合わせて、みた」
幽霊さんはとてもナチュラルに白昼堂々登場しました。始めからそこにいたかのように自然に会話に混ざってきました。普通なら驚くことでしょうけど、不思議と誰も恐怖を微塵も覚えませんでした。
「魔法で、感情に少し、干渉した。だから、僕のこと、怖く、ないでしょ?」
幽霊さんの見た目はリムノさんと同じくらいでした。前世で言うところの高校生くらいですね。言葉が時々詰まるところと話す時に顔を合わせない(多分合わせられないのでしょう)ところが所謂人見知りさんって感じです。あと僕っ娘ですね。
「魔力、びっくりさせて、ごめん。僕が死んでから、初めての住人、だから、喜ばせたくて、その、リフォームしてた」
その技術、ドワーフの皆さんが聞いたらどう思うでしょうか(歓喜します)。
「取り敢えず上がって。えっと、話そう」
幽霊さんに案内されて私たちはリビングへと向かいました。やはり相当広いですね。おしゃれな暖炉もあります。窓辺に流れ込む日光が気持ちいいのかコヨ君がお昼寝を始めました。
「初めまして、リリィといいます。リムノさんとパーティーを組んでいます」
「同じく、カールです」
「イデシメです。あっちは友達のコヨです。フェンリルですけど、人は襲いません」
「分かってる。リムノから、聞いてたし、敵意は、無い、見たら、分かる。あと、その……可愛い」
おや、思いの外コヨ君の好感度が高いですね。
「あと、敬語、いらない。苦手」
やはり人付き合いが苦手な方のようですね。お言葉に甘えて私たちは敬語をやめることにしました。
「僕は、ここの、昔の住人で、えっと、死ぬまで住んでた。安心して、大往生」
事故物件ではないと安心させてくれたのでしょうか。たとえそうでも目の前に死んだ本人がいらっしゃるんですけどね。
「改めて、よろしく。僕は、エーレ」
凄腕の魔術師であり冒険者学園の初代学長であり少し人見知りな幽霊の同居人。そんな彼女の名前を知った瞬間でした。
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