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第1章 民間伝承研究部編
積元傾子のリスタート4
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縦軸君、本当に転生させてくれたのね。
「見て、この子今笑ったわ」
「はは、本当だな。君によく似てるな」
「あら、でも目はあなたにそっくりよ」
「そうかな。あ、耳はお義父さんに似てるよ。」
私を抱き抱えながら2人の男女が嬉しそうに話している。この世界の私の両親だろう。
縦軸君によると私はクォーターエルフらしいので、2人のどちらかは人間でもう一方はハーフエルフということになる。
「愛してるわ、リムノ」
母がそう言った。これも縦軸君の力なのか、教わらなくても言葉が分かる。私がリムノという名前を知れたのもこのためだった。
エルフの里は深い森の中にある。他の種族との交流は少なめで少し人見知りだけど、決して排他的というわけではないみたいだ。ごく稀に迷い込んだ旅人などを手助けしている。もしかしてお婆ちゃんとお父さんも……
ただし里の外に出ることは無いみたいで、私も外の世界を見ることなく今年で10歳となった。
「リムノももうそんなに大きくなったか」
「ほんと、この前まであんなにちっちゃな赤ちゃんだったのに」
「もう母さんったら!」
我が家は平和そのものだ。元々エルフという種族が争いを好まないらしく、混血云々で我が家が里から迫害されることも無かった。
「そういえばリムノ、もうすぐ霊弓ノ儀だぞ。練習は頑張ってるか」
「うん。毎日お母さんに教えてもらってるわ」
「この子は筋がいいわ。私に教えられることなんてほとんど無いんだから」
霊弓ノ儀というのはエルフの里で代々催されているお祭りだ。遥か昔、凶悪な魔物を退治して一族を救ったとされるエルフの英雄を讃える祭りで、歌や踊りが行われる。
で、そこで行われるメインイベントがある。その年に10歳になる子供たちが集まって弓の腕を競うのだ。なんでもかの英雄様が弓の名手で、その方のような腕を持ったエルフがまた生まれることを願ってのものらしい。
エルフが弓にこだわるのもこれが理由で、その英雄の弓は今でも里の宝物庫に大切に保管されているとか。
そして私も現在、お祭りに備えて特訓中だ。ただ才能がかなりあるようで、母からも基本的な知識を除けばあまり多くは教わっていなかった。
「リムノはすごいなあ。父さんにも冒険者で弓士やってる知り合いがいたんだけど、そいつよりも上手かもしれないな」
「ほんと、どんなに遠くの的でも当てちゃうんだもん。きっとプリンキピア様の御加護のおかげだわ」
プリンキピア様というのは件の英雄の名前だ。まあ私が弓の才能に恵まれてることに理由があるとするなら、それは英雄じゃなくて何処ぞの坊やの仕業だろうけど。
そしてもう1つ、私がどんなに遠くの的でも当てられるのには理由がある。
「お母さんお父さん、私の目、変かもしれないわ」
「リムノの目が?」
「リムノ、どういうことだ?」
「あのね、こう目にぐうって力を込めると見たいものが何処にあるのか分かるの。たとえそれが見えない場所にあっても」
両親は何となく察しがついたらしい。
「よく聞きなさいリムノ」
母が切り出す。
「それはスキルかもしれないわ」
やっぱりか。縦軸君が「千里眼のようなスキル」と言っていたから薄々そうではないかと思っていたのだ。
「明日教会に行って調べてもらいましょう」
というわけで翌日私は両親と教会にやってきた。人間の世界の宗教が信仰されてるのもエルフが決して排他的ではない証だろう。
加えて教会はスキルの鑑定や呪いの治療などを請け負ってくれる。あって損は無いのだ。実際父の故郷(つまり人間のまち)では子供は5歳になると教会で鑑定してもらうものらしい。
両親が神父に挨拶し、とんとん拍子で私の鑑定の準備が進んでいく。ちなみに神父もエルフだ。
何やら水晶玉を使った短い儀式が終わると、私の頭の中に鑑定結果が流れ込んできた。
そして判明したスキルがこれだ。
〈立体座標〉
探している存在およびその座標が見える。瞬きで発動させることができる。
確かに千里眼だ。狙撃用の武器である弓を使う者としてこんなに有利なスキルは無い。
それからの5日間、私はスキルの練習にも力を入れた。割とあっさり使いこなせるようになり、弓との連携も検討し始めている。
だがそれ以上に気になることがあった。
(愛ちゃんはいるのかしら)
縦軸君のお姉さんだ。もしもいたら探してほしいと頼まれていたものの、そもそも転生したのかも不明だし縦軸君もできればしてほしいぐらいにしか考えていなかっただろう。
別に私も彼女の捜索に生涯を賭すつもりは無い。ただもしいたなら、私の〈立体座標〉でぱぱっと見つかるはずだ。試してみるのも一興だろう。
「むむむ……はっ!」
目に魔力を集中させる。父譲りの黒い目が赤と青に染まっていく。
そして1秒も経たないうちにある少女の姿が見えてきた。
「見て、この子今笑ったわ」
「はは、本当だな。君によく似てるな」
「あら、でも目はあなたにそっくりよ」
「そうかな。あ、耳はお義父さんに似てるよ。」
私を抱き抱えながら2人の男女が嬉しそうに話している。この世界の私の両親だろう。
縦軸君によると私はクォーターエルフらしいので、2人のどちらかは人間でもう一方はハーフエルフということになる。
「愛してるわ、リムノ」
母がそう言った。これも縦軸君の力なのか、教わらなくても言葉が分かる。私がリムノという名前を知れたのもこのためだった。
エルフの里は深い森の中にある。他の種族との交流は少なめで少し人見知りだけど、決して排他的というわけではないみたいだ。ごく稀に迷い込んだ旅人などを手助けしている。もしかしてお婆ちゃんとお父さんも……
ただし里の外に出ることは無いみたいで、私も外の世界を見ることなく今年で10歳となった。
「リムノももうそんなに大きくなったか」
「ほんと、この前まであんなにちっちゃな赤ちゃんだったのに」
「もう母さんったら!」
我が家は平和そのものだ。元々エルフという種族が争いを好まないらしく、混血云々で我が家が里から迫害されることも無かった。
「そういえばリムノ、もうすぐ霊弓ノ儀だぞ。練習は頑張ってるか」
「うん。毎日お母さんに教えてもらってるわ」
「この子は筋がいいわ。私に教えられることなんてほとんど無いんだから」
霊弓ノ儀というのはエルフの里で代々催されているお祭りだ。遥か昔、凶悪な魔物を退治して一族を救ったとされるエルフの英雄を讃える祭りで、歌や踊りが行われる。
で、そこで行われるメインイベントがある。その年に10歳になる子供たちが集まって弓の腕を競うのだ。なんでもかの英雄様が弓の名手で、その方のような腕を持ったエルフがまた生まれることを願ってのものらしい。
エルフが弓にこだわるのもこれが理由で、その英雄の弓は今でも里の宝物庫に大切に保管されているとか。
そして私も現在、お祭りに備えて特訓中だ。ただ才能がかなりあるようで、母からも基本的な知識を除けばあまり多くは教わっていなかった。
「リムノはすごいなあ。父さんにも冒険者で弓士やってる知り合いがいたんだけど、そいつよりも上手かもしれないな」
「ほんと、どんなに遠くの的でも当てちゃうんだもん。きっとプリンキピア様の御加護のおかげだわ」
プリンキピア様というのは件の英雄の名前だ。まあ私が弓の才能に恵まれてることに理由があるとするなら、それは英雄じゃなくて何処ぞの坊やの仕業だろうけど。
そしてもう1つ、私がどんなに遠くの的でも当てられるのには理由がある。
「お母さんお父さん、私の目、変かもしれないわ」
「リムノの目が?」
「リムノ、どういうことだ?」
「あのね、こう目にぐうって力を込めると見たいものが何処にあるのか分かるの。たとえそれが見えない場所にあっても」
両親は何となく察しがついたらしい。
「よく聞きなさいリムノ」
母が切り出す。
「それはスキルかもしれないわ」
やっぱりか。縦軸君が「千里眼のようなスキル」と言っていたから薄々そうではないかと思っていたのだ。
「明日教会に行って調べてもらいましょう」
というわけで翌日私は両親と教会にやってきた。人間の世界の宗教が信仰されてるのもエルフが決して排他的ではない証だろう。
加えて教会はスキルの鑑定や呪いの治療などを請け負ってくれる。あって損は無いのだ。実際父の故郷(つまり人間のまち)では子供は5歳になると教会で鑑定してもらうものらしい。
両親が神父に挨拶し、とんとん拍子で私の鑑定の準備が進んでいく。ちなみに神父もエルフだ。
何やら水晶玉を使った短い儀式が終わると、私の頭の中に鑑定結果が流れ込んできた。
そして判明したスキルがこれだ。
〈立体座標〉
探している存在およびその座標が見える。瞬きで発動させることができる。
確かに千里眼だ。狙撃用の武器である弓を使う者としてこんなに有利なスキルは無い。
それからの5日間、私はスキルの練習にも力を入れた。割とあっさり使いこなせるようになり、弓との連携も検討し始めている。
だがそれ以上に気になることがあった。
(愛ちゃんはいるのかしら)
縦軸君のお姉さんだ。もしもいたら探してほしいと頼まれていたものの、そもそも転生したのかも不明だし縦軸君もできればしてほしいぐらいにしか考えていなかっただろう。
別に私も彼女の捜索に生涯を賭すつもりは無い。ただもしいたなら、私の〈立体座標〉でぱぱっと見つかるはずだ。試してみるのも一興だろう。
「むむむ……はっ!」
目に魔力を集中させる。父譲りの黒い目が赤と青に染まっていく。
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