65 / 167
第1章 民間伝承研究部編
積元傾子のリスタート4
しおりを挟む
縦軸君、本当に転生させてくれたのね。
「見て、この子今笑ったわ」
「はは、本当だな。君によく似てるな」
「あら、でも目はあなたにそっくりよ」
「そうかな。あ、耳はお義父さんに似てるよ。」
私を抱き抱えながら2人の男女が嬉しそうに話している。この世界の私の両親だろう。
縦軸君によると私はクォーターエルフらしいので、2人のどちらかは人間でもう一方はハーフエルフということになる。
「愛してるわ、リムノ」
母がそう言った。これも縦軸君の力なのか、教わらなくても言葉が分かる。私がリムノという名前を知れたのもこのためだった。
エルフの里は深い森の中にある。他の種族との交流は少なめで少し人見知りだけど、決して排他的というわけではないみたいだ。ごく稀に迷い込んだ旅人などを手助けしている。もしかしてお婆ちゃんとお父さんも……
ただし里の外に出ることは無いみたいで、私も外の世界を見ることなく今年で10歳となった。
「リムノももうそんなに大きくなったか」
「ほんと、この前まであんなにちっちゃな赤ちゃんだったのに」
「もう母さんったら!」
我が家は平和そのものだ。元々エルフという種族が争いを好まないらしく、混血云々で我が家が里から迫害されることも無かった。
「そういえばリムノ、もうすぐ霊弓ノ儀だぞ。練習は頑張ってるか」
「うん。毎日お母さんに教えてもらってるわ」
「この子は筋がいいわ。私に教えられることなんてほとんど無いんだから」
霊弓ノ儀というのはエルフの里で代々催されているお祭りだ。遥か昔、凶悪な魔物を退治して一族を救ったとされるエルフの英雄を讃える祭りで、歌や踊りが行われる。
で、そこで行われるメインイベントがある。その年に10歳になる子供たちが集まって弓の腕を競うのだ。なんでもかの英雄様が弓の名手で、その方のような腕を持ったエルフがまた生まれることを願ってのものらしい。
エルフが弓にこだわるのもこれが理由で、その英雄の弓は今でも里の宝物庫に大切に保管されているとか。
そして私も現在、お祭りに備えて特訓中だ。ただ才能がかなりあるようで、母からも基本的な知識を除けばあまり多くは教わっていなかった。
「リムノはすごいなあ。父さんにも冒険者で弓士やってる知り合いがいたんだけど、そいつよりも上手かもしれないな」
「ほんと、どんなに遠くの的でも当てちゃうんだもん。きっとプリンキピア様の御加護のおかげだわ」
プリンキピア様というのは件の英雄の名前だ。まあ私が弓の才能に恵まれてることに理由があるとするなら、それは英雄じゃなくて何処ぞの坊やの仕業だろうけど。
そしてもう1つ、私がどんなに遠くの的でも当てられるのには理由がある。
「お母さんお父さん、私の目、変かもしれないわ」
「リムノの目が?」
「リムノ、どういうことだ?」
「あのね、こう目にぐうって力を込めると見たいものが何処にあるのか分かるの。たとえそれが見えない場所にあっても」
両親は何となく察しがついたらしい。
「よく聞きなさいリムノ」
母が切り出す。
「それはスキルかもしれないわ」
やっぱりか。縦軸君が「千里眼のようなスキル」と言っていたから薄々そうではないかと思っていたのだ。
「明日教会に行って調べてもらいましょう」
というわけで翌日私は両親と教会にやってきた。人間の世界の宗教が信仰されてるのもエルフが決して排他的ではない証だろう。
加えて教会はスキルの鑑定や呪いの治療などを請け負ってくれる。あって損は無いのだ。実際父の故郷(つまり人間のまち)では子供は5歳になると教会で鑑定してもらうものらしい。
両親が神父に挨拶し、とんとん拍子で私の鑑定の準備が進んでいく。ちなみに神父もエルフだ。
何やら水晶玉を使った短い儀式が終わると、私の頭の中に鑑定結果が流れ込んできた。
そして判明したスキルがこれだ。
〈立体座標〉
探している存在およびその座標が見える。瞬きで発動させることができる。
確かに千里眼だ。狙撃用の武器である弓を使う者としてこんなに有利なスキルは無い。
それからの5日間、私はスキルの練習にも力を入れた。割とあっさり使いこなせるようになり、弓との連携も検討し始めている。
だがそれ以上に気になることがあった。
(愛ちゃんはいるのかしら)
縦軸君のお姉さんだ。もしもいたら探してほしいと頼まれていたものの、そもそも転生したのかも不明だし縦軸君もできればしてほしいぐらいにしか考えていなかっただろう。
別に私も彼女の捜索に生涯を賭すつもりは無い。ただもしいたなら、私の〈立体座標〉でぱぱっと見つかるはずだ。試してみるのも一興だろう。
「むむむ……はっ!」
目に魔力を集中させる。父譲りの黒い目が赤と青に染まっていく。
そして1秒も経たないうちにある少女の姿が見えてきた。
「見て、この子今笑ったわ」
「はは、本当だな。君によく似てるな」
「あら、でも目はあなたにそっくりよ」
「そうかな。あ、耳はお義父さんに似てるよ。」
私を抱き抱えながら2人の男女が嬉しそうに話している。この世界の私の両親だろう。
縦軸君によると私はクォーターエルフらしいので、2人のどちらかは人間でもう一方はハーフエルフということになる。
「愛してるわ、リムノ」
母がそう言った。これも縦軸君の力なのか、教わらなくても言葉が分かる。私がリムノという名前を知れたのもこのためだった。
エルフの里は深い森の中にある。他の種族との交流は少なめで少し人見知りだけど、決して排他的というわけではないみたいだ。ごく稀に迷い込んだ旅人などを手助けしている。もしかしてお婆ちゃんとお父さんも……
ただし里の外に出ることは無いみたいで、私も外の世界を見ることなく今年で10歳となった。
「リムノももうそんなに大きくなったか」
「ほんと、この前まであんなにちっちゃな赤ちゃんだったのに」
「もう母さんったら!」
我が家は平和そのものだ。元々エルフという種族が争いを好まないらしく、混血云々で我が家が里から迫害されることも無かった。
「そういえばリムノ、もうすぐ霊弓ノ儀だぞ。練習は頑張ってるか」
「うん。毎日お母さんに教えてもらってるわ」
「この子は筋がいいわ。私に教えられることなんてほとんど無いんだから」
霊弓ノ儀というのはエルフの里で代々催されているお祭りだ。遥か昔、凶悪な魔物を退治して一族を救ったとされるエルフの英雄を讃える祭りで、歌や踊りが行われる。
で、そこで行われるメインイベントがある。その年に10歳になる子供たちが集まって弓の腕を競うのだ。なんでもかの英雄様が弓の名手で、その方のような腕を持ったエルフがまた生まれることを願ってのものらしい。
エルフが弓にこだわるのもこれが理由で、その英雄の弓は今でも里の宝物庫に大切に保管されているとか。
そして私も現在、お祭りに備えて特訓中だ。ただ才能がかなりあるようで、母からも基本的な知識を除けばあまり多くは教わっていなかった。
「リムノはすごいなあ。父さんにも冒険者で弓士やってる知り合いがいたんだけど、そいつよりも上手かもしれないな」
「ほんと、どんなに遠くの的でも当てちゃうんだもん。きっとプリンキピア様の御加護のおかげだわ」
プリンキピア様というのは件の英雄の名前だ。まあ私が弓の才能に恵まれてることに理由があるとするなら、それは英雄じゃなくて何処ぞの坊やの仕業だろうけど。
そしてもう1つ、私がどんなに遠くの的でも当てられるのには理由がある。
「お母さんお父さん、私の目、変かもしれないわ」
「リムノの目が?」
「リムノ、どういうことだ?」
「あのね、こう目にぐうって力を込めると見たいものが何処にあるのか分かるの。たとえそれが見えない場所にあっても」
両親は何となく察しがついたらしい。
「よく聞きなさいリムノ」
母が切り出す。
「それはスキルかもしれないわ」
やっぱりか。縦軸君が「千里眼のようなスキル」と言っていたから薄々そうではないかと思っていたのだ。
「明日教会に行って調べてもらいましょう」
というわけで翌日私は両親と教会にやってきた。人間の世界の宗教が信仰されてるのもエルフが決して排他的ではない証だろう。
加えて教会はスキルの鑑定や呪いの治療などを請け負ってくれる。あって損は無いのだ。実際父の故郷(つまり人間のまち)では子供は5歳になると教会で鑑定してもらうものらしい。
両親が神父に挨拶し、とんとん拍子で私の鑑定の準備が進んでいく。ちなみに神父もエルフだ。
何やら水晶玉を使った短い儀式が終わると、私の頭の中に鑑定結果が流れ込んできた。
そして判明したスキルがこれだ。
〈立体座標〉
探している存在およびその座標が見える。瞬きで発動させることができる。
確かに千里眼だ。狙撃用の武器である弓を使う者としてこんなに有利なスキルは無い。
それからの5日間、私はスキルの練習にも力を入れた。割とあっさり使いこなせるようになり、弓との連携も検討し始めている。
だがそれ以上に気になることがあった。
(愛ちゃんはいるのかしら)
縦軸君のお姉さんだ。もしもいたら探してほしいと頼まれていたものの、そもそも転生したのかも不明だし縦軸君もできればしてほしいぐらいにしか考えていなかっただろう。
別に私も彼女の捜索に生涯を賭すつもりは無い。ただもしいたなら、私の〈立体座標〉でぱぱっと見つかるはずだ。試してみるのも一興だろう。
「むむむ……はっ!」
目に魔力を集中させる。父譲りの黒い目が赤と青に染まっていく。
そして1秒も経たないうちにある少女の姿が見えてきた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
恋してしまった、それだけのこと
雄樹
恋愛
小学3年生の女の子が、母の妹に恋をした。
星野未来(ほしのみく)は、母の妹である水瀬沙織(みなせさおり)に恋をした。
出会ったとき、未来は8歳。
沙織は20歳の大学生だった。
優しくて、少し不器用で、どこか寂しそうなその人が好きな人は、私ではなく…私の「母」だった。
一生でたったひとつの初恋。
言葉にできない想いを抱えたまま、少女は季節を重ねていく。
あなたは私の叔母で。
あなたは私と同性で。
あなたは私と12歳も歳が離れていて。
あなたが好きな人は…私じゃなくて。
それでも、この初恋を諦めることは出来なかった。
これは、ひとりの少女の、恋のはじまりと記憶の物語。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる