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第1章 民間伝承研究部編
転生少女と卒業試験3
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闘技場へと向かう途中、私たちはとても静かでした。しずかに揺れる炎のように強かな闘志が脈打っています。
「行くか」
「はい」
「勝とう」
「アウ!」
私たちはついに入場していきました。そして私たちの相手となる冒険者は……
「リリィちゃーん、みんなー、やっほー!」
「ズコーーーーーー!」
リムノさんだったー!何この鮮やかもへちまもないフラグ回収ゥゥ!
「どうした、リリィ!」
「急に転んでどうしたがぁ⁉︎」
「アゥ!」
「な、何でもないです、あはははは……」
いかんいかん。こんなゆっるゆるな雰囲気では試験に臨めません。気を引き締めねば。
「みなさん、失礼しました。気を取り直していきましょう」
「おう、相手はソロだ」
「数では私らぁが勝っちゅう」
「グウゥゥゥ」
「あらあら、心配しないで。他の試験官はパーティーでやってたみたいだけど、私はソロでも十分強いから」
ぐぬぬ……ビッグマウスがビッグマウスで終わってないです。以前キナと対峙したときと似たようなオーラ。間違いありません、Aランクのそれです。
リムノさんは弓を持ち、私たちもそれぞれの武器を構えます。イデシメさんは糸、カール君は杖、そして私はヒノキの棒・双剣を。
私たちを見渡したあと、審判の方が厳かに告げます。
「これよりリリィ、カール、イデシメの卒業試験を開始する。両者準備はよいな?
では、試合開始ィィィィ!!!!」
試合開始とともに、弓を構え矢をつがえたリムノさんは消えました。
「……!イデシメさん、後r……」
「え……?」
「まず1人目」
とつじよ吹き荒れる暴風。気がつくと吹っ飛ばされたイデシメさんが闘技場の壁に叩きつけられていました。
「イデシメ!クソ、いつの間に後ろに⁉︎」
「あら、やっぱりリリィちゃんしか見えてなかったのかしら」
「くっ……!」
簡単に言えば、回り込んだのです。弓矢を構えいつでも矢を射ることができる姿勢のまま私たちの背後まで高速で移動してきたのです。
「私は弓士だから基本じっと獲物を待つんだけどね。
どうせなら獲物に確実に当たる位置に自分で動いた方が効率的でしょ?」
「……カール君、あなたはイデシメさんの回復に。ここは私とコヨ君で止めます」
「分かった!」
「あらあら、本当にできるかしらぁっ!」
再びリムノさんの姿が消える。いや、消えたんじゃない。それぐらい速く動いてるだけだ。目で、追いかけろっ!
次の移動先は……カール君がイデシメさんに向かう直線上!
「〈超音速〉!〈筋力増強〉!」
速度操作のスキルで加速、そしてパワーを引き上げた上で
「ぶん殴る!」
双剣を振り下ろす、その一瞬の間のことでした。
「来ると思った」
緑の光を纏った彼女の矢は私を見つめていました。
(……!空間魔法 転移!)
僅か0.1秒後には私がいた場所を矢が通過し、空気が爆ぜるかの如く荒れ狂っていました。
「わぁ無詠唱……いつの間に?」
「キナに襲われたときに叱られましてね」
土壇場でのチャレンジでしたが上手くいきました。しかしまだ不安定ですね。やはり詠唱ありでいきましょう。
「そちらこそ、魔術付与を組み合わせてくるとは。風魔法ですか?」
「ええ。頭部命中なんてしたら致命傷だけど、これならあまりダメージを与えずに吹っ飛ばせるから」
優しい世界。
「さあさあ、踊りなさいリリィちゃん!」
次々飛んでくる魔術付与された矢。訂正、やっぱり優しくないです!
「くっ……やられませぇぇぇん!」
基本は逃げの一手。どうしても避けられない奴だけをヒノキの棒・双剣で打ち返していきます。ですが……
「ふんっ!ぐあっ!」
着弾と同時に爆ぜる風魔法、これが厄介極まりないです。打ち返すたびに吹っ飛ばされないように踏ん張らないといけないからです。
リムノさんを中心に円を描くように逃げていますが、彼女もそれを分かっているかのよつに私の移動先に矢を当てて来ます。
距離が開きもしませんが詰まりもしません。ならば……!
「コヨ君!」
「ガゥ!」
背後から迫りくる上位種のフェンリル。これなら流石のリムノさんも意識が向く。たとえ一瞬でも。その隙に
「空間魔法 転移!」
「!」
一気にリムノさんの目の前に転移します。コヨ君のおかげで彼女の移動を遅らせることができました。
「ちっ……」
リムノさんが脚に力を入れました。距離を置きたいようですけど、もう遅いです。
「雷魔法 麻痺!」
私の腕から伸びていく無知の如き一筋の雷。これなら彼女を捕らえられる。
雷の命中に合わせ、私も踏ん張り腕に力を込めます。ここで決める!
「ふふっ……」
笑いました。嫌な予感しかない笑みです。
その直後でした。リムノさんを爆心地として炎が爆ぜたのは。
「行くか」
「はい」
「勝とう」
「アウ!」
私たちはついに入場していきました。そして私たちの相手となる冒険者は……
「リリィちゃーん、みんなー、やっほー!」
「ズコーーーーーー!」
リムノさんだったー!何この鮮やかもへちまもないフラグ回収ゥゥ!
「どうした、リリィ!」
「急に転んでどうしたがぁ⁉︎」
「アゥ!」
「な、何でもないです、あはははは……」
いかんいかん。こんなゆっるゆるな雰囲気では試験に臨めません。気を引き締めねば。
「みなさん、失礼しました。気を取り直していきましょう」
「おう、相手はソロだ」
「数では私らぁが勝っちゅう」
「グウゥゥゥ」
「あらあら、心配しないで。他の試験官はパーティーでやってたみたいだけど、私はソロでも十分強いから」
ぐぬぬ……ビッグマウスがビッグマウスで終わってないです。以前キナと対峙したときと似たようなオーラ。間違いありません、Aランクのそれです。
リムノさんは弓を持ち、私たちもそれぞれの武器を構えます。イデシメさんは糸、カール君は杖、そして私はヒノキの棒・双剣を。
私たちを見渡したあと、審判の方が厳かに告げます。
「これよりリリィ、カール、イデシメの卒業試験を開始する。両者準備はよいな?
では、試合開始ィィィィ!!!!」
試合開始とともに、弓を構え矢をつがえたリムノさんは消えました。
「……!イデシメさん、後r……」
「え……?」
「まず1人目」
とつじよ吹き荒れる暴風。気がつくと吹っ飛ばされたイデシメさんが闘技場の壁に叩きつけられていました。
「イデシメ!クソ、いつの間に後ろに⁉︎」
「あら、やっぱりリリィちゃんしか見えてなかったのかしら」
「くっ……!」
簡単に言えば、回り込んだのです。弓矢を構えいつでも矢を射ることができる姿勢のまま私たちの背後まで高速で移動してきたのです。
「私は弓士だから基本じっと獲物を待つんだけどね。
どうせなら獲物に確実に当たる位置に自分で動いた方が効率的でしょ?」
「……カール君、あなたはイデシメさんの回復に。ここは私とコヨ君で止めます」
「分かった!」
「あらあら、本当にできるかしらぁっ!」
再びリムノさんの姿が消える。いや、消えたんじゃない。それぐらい速く動いてるだけだ。目で、追いかけろっ!
次の移動先は……カール君がイデシメさんに向かう直線上!
「〈超音速〉!〈筋力増強〉!」
速度操作のスキルで加速、そしてパワーを引き上げた上で
「ぶん殴る!」
双剣を振り下ろす、その一瞬の間のことでした。
「来ると思った」
緑の光を纏った彼女の矢は私を見つめていました。
(……!空間魔法 転移!)
僅か0.1秒後には私がいた場所を矢が通過し、空気が爆ぜるかの如く荒れ狂っていました。
「わぁ無詠唱……いつの間に?」
「キナに襲われたときに叱られましてね」
土壇場でのチャレンジでしたが上手くいきました。しかしまだ不安定ですね。やはり詠唱ありでいきましょう。
「そちらこそ、魔術付与を組み合わせてくるとは。風魔法ですか?」
「ええ。頭部命中なんてしたら致命傷だけど、これならあまりダメージを与えずに吹っ飛ばせるから」
優しい世界。
「さあさあ、踊りなさいリリィちゃん!」
次々飛んでくる魔術付与された矢。訂正、やっぱり優しくないです!
「くっ……やられませぇぇぇん!」
基本は逃げの一手。どうしても避けられない奴だけをヒノキの棒・双剣で打ち返していきます。ですが……
「ふんっ!ぐあっ!」
着弾と同時に爆ぜる風魔法、これが厄介極まりないです。打ち返すたびに吹っ飛ばされないように踏ん張らないといけないからです。
リムノさんを中心に円を描くように逃げていますが、彼女もそれを分かっているかのよつに私の移動先に矢を当てて来ます。
距離が開きもしませんが詰まりもしません。ならば……!
「コヨ君!」
「ガゥ!」
背後から迫りくる上位種のフェンリル。これなら流石のリムノさんも意識が向く。たとえ一瞬でも。その隙に
「空間魔法 転移!」
「!」
一気にリムノさんの目の前に転移します。コヨ君のおかげで彼女の移動を遅らせることができました。
「ちっ……」
リムノさんが脚に力を入れました。距離を置きたいようですけど、もう遅いです。
「雷魔法 麻痺!」
私の腕から伸びていく無知の如き一筋の雷。これなら彼女を捕らえられる。
雷の命中に合わせ、私も踏ん張り腕に力を込めます。ここで決める!
「ふふっ……」
笑いました。嫌な予感しかない笑みです。
その直後でした。リムノさんを爆心地として炎が爆ぜたのは。
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