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第1章 民間伝承研究部編
転生遺族と自称ライバル4
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期末テストを乗り切ったある日、虚縦軸は生徒会に呼び出された。
(このタイミングで何の用だよ……)
ていりと除の攻防に巻き込まれたせいで縦軸の毎日は普段より賑やかになってしまった。ちなみに縦軸としては喜ばしくない。
そんな最中での生徒会からの呼び出しである。なるべく厄介ごとにはならないで欲しいが、校内において絶大な権力を有する生徒会に関わった時点でそれは諦めてもいいだろう。何を隠そう縦軸は1度彼らと積元家のあれこれに巻き込まれている。おまけに最近、謎の激務を押し付けられたこともある。
「失礼します。虚です」
「おう、よく来たな縦軸」
「ふふふ、君のことを待っていたよ」
いつもと変わらない調子の対と弦。
「君には大切な任務を任せたいんだ」
「記には既に準備を頼んでてな、人手が足りねえんだ。頼む虚、力を貸してくれ」
「あ、いや、手伝いはいいんですけど。その……何ですか、ソレ」
2人の目は真剣だった。同じ場にいるだけで足から動かなくなりそうだ。それほどの気迫、それほどに鬼気迫る佇まい。
だからこそミスマッチだった。対の虹色アフロと弦のパーティー用三角帽子が。
「ん?もしかして知らねえのか?」
「やれやれ、どうやらまだまだ僕たちの方が1枚上手のようだね」
「入江先輩、知的に微笑みながら鼻メガネをかけるのはいかがかと……むぐっ!」
困惑する縦軸へピロピロ笛を押しつけながら対が話始める。
「もうすぐ微の誕生日なんだよ。んでサプライズを計画中ってわけ」
何故ピロピロ笛を咥える羽目になったのかよく分からないが、対たちの格好の謎は解けた。微の誕生日パーティーのための準備なのだろう。
「事情はわかりました。でも僕、今ちょっと忙しくて」
「三角のことだろ。本人からもこっち手伝わせて欲しいって言質はとってるよ」
「はあ……」
先手を打たれていたことを知り、縦軸は脱力感を覚えた。この調子だと抗う術が残されている可能性は低い。勝ち負けを争うとき特有の力みが音を立てて抜けていくかのようだった。
腹を括った縦軸は弦を見据えた。
「……わかりました。精一杯頑張ります」
「俯きながら言ってきたらどうしてやろうかと思っていたけど、君は本当にいい奴だね。微と仲良くしてくれて嬉しいよ」
知らぬ間に試されていたと分かる縦軸。さっきまでより柔らかくなった弦の笑顔が逆に怖かった。
「それで、肝心の先輩の誕生日っていつなんですか?」
「ああ、そうだな。教えとかねえと。微の誕生日はな……」
7月14日だよ
「え?」
スキルを持っている。そんな共通点を持つ初めての相手だったから、微に対してはどこか不思議な親しみを覚えていた。誤解を恐れずに言うと、家族のようにも思えた。
けどそれはそれだ。例えば、人並外れた視力の持ち主が自分と同等の目を持つ人間に出会ったとしよう。もしかすると感慨深いかもしれないが、ときめきはしないだろう。共通点に温もりがないのだ。
縦軸と微の場合もそうだ。どちらもスキル持ちと知って、それで親しくなったとしても神秘よりもっと知的な不思議さが勝ってしまう。
けど今回は違った。スキルよりもよっぽど可能性が高いとしても、誕生日が同じ相手に出会うというのは特別に思われた。
(このタイミングで何の用だよ……)
ていりと除の攻防に巻き込まれたせいで縦軸の毎日は普段より賑やかになってしまった。ちなみに縦軸としては喜ばしくない。
そんな最中での生徒会からの呼び出しである。なるべく厄介ごとにはならないで欲しいが、校内において絶大な権力を有する生徒会に関わった時点でそれは諦めてもいいだろう。何を隠そう縦軸は1度彼らと積元家のあれこれに巻き込まれている。おまけに最近、謎の激務を押し付けられたこともある。
「失礼します。虚です」
「おう、よく来たな縦軸」
「ふふふ、君のことを待っていたよ」
いつもと変わらない調子の対と弦。
「君には大切な任務を任せたいんだ」
「記には既に準備を頼んでてな、人手が足りねえんだ。頼む虚、力を貸してくれ」
「あ、いや、手伝いはいいんですけど。その……何ですか、ソレ」
2人の目は真剣だった。同じ場にいるだけで足から動かなくなりそうだ。それほどの気迫、それほどに鬼気迫る佇まい。
だからこそミスマッチだった。対の虹色アフロと弦のパーティー用三角帽子が。
「ん?もしかして知らねえのか?」
「やれやれ、どうやらまだまだ僕たちの方が1枚上手のようだね」
「入江先輩、知的に微笑みながら鼻メガネをかけるのはいかがかと……むぐっ!」
困惑する縦軸へピロピロ笛を押しつけながら対が話始める。
「もうすぐ微の誕生日なんだよ。んでサプライズを計画中ってわけ」
何故ピロピロ笛を咥える羽目になったのかよく分からないが、対たちの格好の謎は解けた。微の誕生日パーティーのための準備なのだろう。
「事情はわかりました。でも僕、今ちょっと忙しくて」
「三角のことだろ。本人からもこっち手伝わせて欲しいって言質はとってるよ」
「はあ……」
先手を打たれていたことを知り、縦軸は脱力感を覚えた。この調子だと抗う術が残されている可能性は低い。勝ち負けを争うとき特有の力みが音を立てて抜けていくかのようだった。
腹を括った縦軸は弦を見据えた。
「……わかりました。精一杯頑張ります」
「俯きながら言ってきたらどうしてやろうかと思っていたけど、君は本当にいい奴だね。微と仲良くしてくれて嬉しいよ」
知らぬ間に試されていたと分かる縦軸。さっきまでより柔らかくなった弦の笑顔が逆に怖かった。
「それで、肝心の先輩の誕生日っていつなんですか?」
「ああ、そうだな。教えとかねえと。微の誕生日はな……」
7月14日だよ
「え?」
スキルを持っている。そんな共通点を持つ初めての相手だったから、微に対してはどこか不思議な親しみを覚えていた。誤解を恐れずに言うと、家族のようにも思えた。
けどそれはそれだ。例えば、人並外れた視力の持ち主が自分と同等の目を持つ人間に出会ったとしよう。もしかすると感慨深いかもしれないが、ときめきはしないだろう。共通点に温もりがないのだ。
縦軸と微の場合もそうだ。どちらもスキル持ちと知って、それで親しくなったとしても神秘よりもっと知的な不思議さが勝ってしまう。
けど今回は違った。スキルよりもよっぽど可能性が高いとしても、誕生日が同じ相手に出会うというのは特別に思われた。
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