転生遺族の循環論法

はたたがみ

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第1章 民間伝承研究部編

転生少女と研修2

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 魔弓士リムノ、史上最年少のAランク冒険者。その二つ名が示すとおり天才的な弓使いであり、その力は弓の名手として知られるエルフの血筋によるものだとか。パーティーは組まず、常にソロで活動する変わり者。

「ふふ、よろしくね、3人とも」

 第一印象は、ホワホワとした優しい女性って感じです。年齢は15か16歳といったところでしょうか。サラッサラの金髪がよく似合う美人で、耳は尖っています。やはりエルフですね。

「あ、もしかしてエルフに会うのは初めて?まあ私は祖父がエルフってだけで、4分の1しか血は流れてないんだけどね。お爺ちゃんに似たのかしら?」

 なるほど、隔世遺伝ってやつですか。にしても穏やかですね。先程借金取りどもを追い払ったときはもっと怖そうな感じでしたけど。


 現在私たちは孤児院内の食堂を貸してもらっています。子供たちの声が聞こえてきます。

「あの、リムノさん、ここを待ち合わせに選んだのは……」

 カール君が話し始めます。まあ彼に任せておけば大丈夫でしょう。

「ああ、最近よく手伝いに来てるの。子供が好きなのよ。あの借金取りどものこともあったし」

 うむ、何だか母性が溢れてますね。リムノママといったところでしょうか。

「それじゃあこれからクエストを受けに行くわけだけど、お互いに何が出来るか確認しておきましょう。スキルに関しては言える範囲で良いわよ」

 なるほど、これからは言ってみれば同じパーティーのようなものです。互いの能力は知っておくべきでしょう。

「じゃあまず俺から。スキルは〈交渉〉。話し合いを都合よく進められます。あと魔法は色々使えます」
「私のスキルは〈魔物主パートナー〉。外におるコヨで分かっちゅうと思うんですけど、魔物を仲間にできます。あんまり強いと無理やけど。あと、自分でも戦えます。武器はちょっと変わっちゅうけど」
「変わった武器?」
「はい、ええと……」

 イデシメさんが解説を始めます。この武器については以前、イデシメさんから相談を受けて私が作りました。コヨ君だけでなく自分も戦えるようになりたいとのことだったので。まあ家にあった物に〈能力授与プレゼント〉を使っただけですが。

「……こんな感じです」
「へえ、面白いわ。うふふ」
「じゃあ次は私ですね。ええと……」

 そういえば、私のスキルについて誰かに話すのはイデシメさんとカール君以外では初めてです。

「私のスキルは〈能力授与プレゼント〉。スキルを与えるスキルです。魔力量が少ないほど、強いスキルをたくさん与えられます。例えば……」

 腰に付けている麻袋に手をかざします。すると、袋に魔法陣が浮かび上がりそこから和太鼓のバチ程度の大きさのヒノキの棒が2本出現します。

「この袋に与えたスキルは〈無限格納エイトボックス〉。生き物以外なら幾らでも収納できます。食べ物とか入れてても腐りませんし冷めたり温まったりはしません。この武器はヒノキの棒・双剣って呼んでます。スキルは〈筋力増強ブースト〉。身体能力を強化します。この他にも色々あります。あ、それと魔法も色々使えますよ。空間魔法とか」

 私が説明を終えると、何故かリムノさんの目が点になっていました。

「ねえイデシメさん、カール君……」
「言いたいことは分かります。慣れるしかありません。こいつの規格外にいちいち突っ込むのは、不可能です」
「そう……大変なのね」

 何故に意気投合しているんですか?まるで私が歩くやらかし工場みたいじゃないですか!異世界ものの主人公じゃあるまいし……転生者ですけど。

「そ、それで、リムノさんの能力は何ですか?」
「ああそうそう。私のスキルはね……」

 説明し終えた後、リムノさんはこう提案してきました。

「じゃあ、実戦で確認しましょう」



 私たちは冒険者ギルドにやってきました。ここに来るのは初めてです。

「あそこのボードにクエストが張り出されてるわ。受けたいクエストを選んだら受付に依頼書を持っていってね。いい感じのやつ見つけてくるからちょっと待ってて」


 しばらくしてからリムノさんが戻ってきました。手には1枚の依頼書が握られています。

「それでは、クエスト内容を発表します!」

 何故か急に改まったリムノさんによって内容が告げられます。

「『シシハルの村がゴブリンの大群に襲われているので討伐して欲しい』」

 いきなりハードです。
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