23 / 149
第1章 民間伝承研究部編
転生少女と研修1
しおりを挟む 隣に立つ課長に視線を向ける。
課長は私の視線を受けて、「佐々木くんに僕の姿は見えてないよ」と言った。そして証拠を見せるように自分のデスクの引き出しを開ける江里菜の傍に行き、 課長は江里菜の肩を叩き、「佐々木くん、久しぶり」と声を掛けた。
江里菜は全く無反応に引き出しの中を漁っていた。
「あった! やっぱりここだったんだ」
江里菜が独り言のように言った。
「じゃあ、帰ります。お疲れ様でした」
江里菜がドアに向かって歩き出した。
「あの、佐々木さん」
「何ですか?」
江里菜が振り向いた。
「見えない?」
視線を課長の方に向けた。
課長は笑顔を浮かべて江里菜の前に立ち、バンザイをしたり、ジャンプしながら、「やあ、佐々木くん、僕の事見える?」と聞いた。
「何を?」
江里菜がきょとんとした表情を浮かべた。
「佐々木さん、本当に見えないの?」
「だから何をです?」
江里菜が眉を寄せる。
「えーと、その課長……」
「課長?」
「いえ、あの、くも。佐々木さんの肩に小さな蜘蛛が」
「えーっ、ヤダー!」
江里菜が凄い勢いで肩を払った。
「ねえ、取れました? 取れました?」
「は、はい。取れました」
「びっくりした。じゃあお先に」
江里菜がオフィスを出て行った。
課長がこっちを向いた。
「ね、島本くんにしか僕は見えないんだよ」
「なんでですか?」
「それは僕にもわからない。残念ながら娘も、両親も兄弟も僕に気づかなかったんだ。 もしかして島本くん、霊感が強いんじゃない? 時々、僕みたいな死んじゃった人見える事があったりしない?」
「しませんよ。死んじゃった人が見えたのは課長が初めてです」
「うーん、そうか」
課長がポリポリと頭をかく。
「後はあれかな」
課長が小声で言った。
「あれ?」
「いや、何でもない」
「何です? 気になります」
「いや、いいんだ」
「教えて下さい」
「だから、何でもないって。そんな事より早く仕事を終わらせなさい。今はあまり残業ができないだろ」
急に課長が上司の表情をした。
渋々パソコンに向かった。
課長は自分の席だった所に座り、腕を組んで何かを考えていた。
課長は私の視線を受けて、「佐々木くんに僕の姿は見えてないよ」と言った。そして証拠を見せるように自分のデスクの引き出しを開ける江里菜の傍に行き、 課長は江里菜の肩を叩き、「佐々木くん、久しぶり」と声を掛けた。
江里菜は全く無反応に引き出しの中を漁っていた。
「あった! やっぱりここだったんだ」
江里菜が独り言のように言った。
「じゃあ、帰ります。お疲れ様でした」
江里菜がドアに向かって歩き出した。
「あの、佐々木さん」
「何ですか?」
江里菜が振り向いた。
「見えない?」
視線を課長の方に向けた。
課長は笑顔を浮かべて江里菜の前に立ち、バンザイをしたり、ジャンプしながら、「やあ、佐々木くん、僕の事見える?」と聞いた。
「何を?」
江里菜がきょとんとした表情を浮かべた。
「佐々木さん、本当に見えないの?」
「だから何をです?」
江里菜が眉を寄せる。
「えーと、その課長……」
「課長?」
「いえ、あの、くも。佐々木さんの肩に小さな蜘蛛が」
「えーっ、ヤダー!」
江里菜が凄い勢いで肩を払った。
「ねえ、取れました? 取れました?」
「は、はい。取れました」
「びっくりした。じゃあお先に」
江里菜がオフィスを出て行った。
課長がこっちを向いた。
「ね、島本くんにしか僕は見えないんだよ」
「なんでですか?」
「それは僕にもわからない。残念ながら娘も、両親も兄弟も僕に気づかなかったんだ。 もしかして島本くん、霊感が強いんじゃない? 時々、僕みたいな死んじゃった人見える事があったりしない?」
「しませんよ。死んじゃった人が見えたのは課長が初めてです」
「うーん、そうか」
課長がポリポリと頭をかく。
「後はあれかな」
課長が小声で言った。
「あれ?」
「いや、何でもない」
「何です? 気になります」
「いや、いいんだ」
「教えて下さい」
「だから、何でもないって。そんな事より早く仕事を終わらせなさい。今はあまり残業ができないだろ」
急に課長が上司の表情をした。
渋々パソコンに向かった。
課長は自分の席だった所に座り、腕を組んで何かを考えていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる