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第1章 民間伝承研究部編
転生少女と研修1
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エウレアールの学園に入学してから6年目、私は最高学年の6年生になりました。友達のイデシメさん、コヨ君、カール君とも相変わらず仲良くやってます。
「おはようございます、皆さん!」
「あ、リリィちゃん!おはよう!」
「おっす」
イデシメさんはこの6年間でとても大人っぽくなりました。まあ今年でまだ11歳なんですけど。銀髪は短く揃えてボブにし、その顔はまるでお人形さんのようです。
カール君もかっこよくなりました。体つきも逞しくなり、その顔にもどこか野生児のような雰囲気が出てきました。
「リ、リリィちゃん、おおおおお、おはよう!」
「きゃー!リリィさん、おはようございます!ああ、今日もお美しい!」
「リリィ君、実は今度僕の家で……」
クラスメイトたちともすっかり仲良くなりました。前世ではあんなことになってしまったので、今はとても幸せです。しかし熱でも流行っているのでしょうか?話しかけてくる人の7割ぐらいは顔を赤くしています。回復術師さんに見てもらってください。
「なあリリィ、今日の予定は覚えてるよな?」
「もちろんです!」
「確か……各々が現地で研修、やったでねぇ?」
私たちもあと1年で卒業(予定)。冒険者としての実戦訓練が必要です。そこで今回の研修です。
冒険者たちは、ギルドから発行されるクエストと呼ばれる依頼をこなして生計を立てています。その依頼は薬草採取、魔物討伐、ペット探し、除霊など様々です(後半は気にしてはいけません)。
私たちは今回の研修で現役の冒険者さん引率のもと、クエストをこなしていくのです。引率の冒険者は学園が身辺調査などをして認めた本物の実力者たちです。ちなみに研修先はバラバラです。集団で同じところに行くこともあれば、マンツーマンなこともあります。私は幸運にも2人と一緒です。
「そして私たちの引率は……」
「……魔弓士リムノ」
その名が広まったのはつい1、2年ほど前のことです。難易度の高いクエストを次々と達成し、史上最年少でAランクへと上り詰めた凄腕。未来のSランク入りも噂される程の逸材だとか。そんな方とご一緒できるとは光栄です!
「そんなすごい人と……こじゃんと緊張するちや……」
「それについてなんだが、ちょっと気になる話を聞いたんだ」
「気になる話、ですか?まさかカール君、またですか?」
「ぎくっ!」
カール君は〈交渉〉のスキルを持っています。本気を出せば先生方から機密事項を引き出すこともできると言うわけです。私たちに関すること以外では使いたがりませんが。
「まあいいです。それで、その話というのは?」
「ああ、2人ともちょっとこっちに」
声を小さくしながらカール君が話し始めます。
「その前にリリィ、ちょっと訊きてえんだが、お前、また何かしたか?」
「はい?」
カール君、その言い方は何ですか?まるで私が他にもやらかしをしているみたいではありませんか。全く……1年の時の校外学習でオークを単独討伐して以来何もしていないというのに……多分。
「まあ聞け。先生から聞いたんだがな、リムノさんはお前のことを誘ってきたそうだ」
「……へ?」
「だから、リムノさん本人が『リリィと組みたい』って言ったそうだ」
「……ええええええ⁉︎」
どどどどどど、どいうことですか?私、リムノさんなんて人とは会ったことありませんよ?もしかして母さんか父さんと知り合い?いや、あの2人は子煩悩とはいえ七光り紛いの行動はしないはず。一体……
「それで学園側が俺とイデシメのことを話したら、『じゃあ2人も一緒に』って言ってきたそうだ」
何故リムノさんが私のことを?確かに私は学園の生徒にはそれなりに認知されていますが学園の外では無名のはず。ううん……
「か、考えても仕方ないわえ!学園が認めたんやったら悪い人じゃないろうし、会って話したらいいがやない?」
……イデシメさんの言う通りですね。ここであれこれと考えても意味がありません。
「そうですね!余計なことは考えずに研修を頑張りましょう!」
「おう、それでこそリリィだぜ!」
「うん、一緒に頑張ろう!」
ホームルームの時間になるとグラッド先生が入ってきます。担任は6年間変わらないこともあるそうです。
「いいかお前たち、知っての通り今日から研修期間だ。お前たちは本職の冒険者と共にクエストに臨んでもらう。中には危険なクエストも存在する。気を引き締めてかかれ、いいな?」
「「「はい!」」」
リムノさんとの待ち合わせ場所は王都内某所の孤児院です。なんでもリムノさんがちょくちょく来ているとか。
「えっと……この辺ですよね」
「ああ、もうすぐ着くはずだ。にしても……やっぱり目立つな」
「ふふふ、私たち有名人やね、コヨ。」
「バウ!」
私たちが先程から見られている訳、それは間違いなくコヨ君でしょう。彼は私たちと出会ったときはまだ子供で、それこそそこらの犬と変わりありませんでしたが、今では普通のオオカミの2倍程にまで成長しています。つまりめちゃくちゃデカいのです。
「ふふふ、私がコヨと一緒におれるのは、カール君が先生らぁと〈交渉〉してくれたおかげで。ありがとう」
「お、おう……」
そうこうしているうちに件の孤児院に着いた訳ですが、
「おいごらぁ!いつまで待たせるつもりダァ!」
「とっとと耳揃えて返さんかいゴラァ!」
あ、借金取りですね。いや、「耳揃えて」とか言ってる時点で確定でしょ?見てみると30代程の女性が1人、借金取りに詰め寄られています。
「お願いします!今月返せるのはこれが精一杯なんです。どうかもう1月待ってください!」
「そのセリフ何回目なんだ、アァ?俺ら舐めてんのか?」
「どうしてもってんならガキどももらってくしか無えわな。そういう趣味の連中に高く売れそうだ」
「そ、それだけは!子供たちだけは勘弁してください!」
うわぁ……なんとテンプレなやり取りでしょう。もはや時代劇ですか?まあこれは仕方ありません。あまり騒ぎになりたくはありませんが彼女を見過ごすことなどできません。
「イデシメさん、カール君」
「分かっちゅう」
「ああ、助けよう」
そうして私たちが女性に近づこうとしたその時、孤児院の扉が開いて誰か出てきました。
「あなたたちですか?件の借金取りというのは」
「アァン?誰だてめえ?」
「通りすがりの冒険者です。悪漢がいるから助けてほしいと頼まれまして」
「おいおい冒険者サマよぅ、ちょいと勘違いしてねえか?俺たちは自分の仕事してるだけだぜ?悪いのは借金返さねえそこのババアだろ」
「そうだそうだ、てめえは俺たちの仕事奪おうってのか?」
何ですかあの見苦しい言い訳は。
「あなたたちの仕事ねえ……」
そう言いながら冒険者の女性が懐から何やら紙を取り出してきました。
「そ、それは⁉︎」
「この利子、ちょっと高すぎませんか?私が調べた限りでは法律違反のようでしたけど」
「ば、馬鹿な!その契約書は俺たちしか持っていないはず!」
控え渡してなかったんですか。とんでもない輩ですね。
「今すぐここに衛兵呼んでもいいんですよ?どうしますか?」
「グヌヌ……チ、チクショー!覚えてやがれー!」
借金取りたちは去って行きました。テンプレな捨て台詞を残して。
「彼らの店にはすでに衛兵がガサ入れに入っています。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
孤児院の女性に頭を下げられて困っていた冒険者の女性が、ようやく私たちに気づいた模様です。
「あら、あなたたちは……」
「あ、は、初めまして。私たち、エウレアール冒険者学園からきました。リリィです」
「イデシメです。こっちは友達のコヨ」
「バウ!」
「カールです」
「それで、あなたはもしかして……」
「ええそうよ。初めまして、冒険者のリムノです」
こうして私たちの研修は始まったのでした。
「おはようございます、皆さん!」
「あ、リリィちゃん!おはよう!」
「おっす」
イデシメさんはこの6年間でとても大人っぽくなりました。まあ今年でまだ11歳なんですけど。銀髪は短く揃えてボブにし、その顔はまるでお人形さんのようです。
カール君もかっこよくなりました。体つきも逞しくなり、その顔にもどこか野生児のような雰囲気が出てきました。
「リ、リリィちゃん、おおおおお、おはよう!」
「きゃー!リリィさん、おはようございます!ああ、今日もお美しい!」
「リリィ君、実は今度僕の家で……」
クラスメイトたちともすっかり仲良くなりました。前世ではあんなことになってしまったので、今はとても幸せです。しかし熱でも流行っているのでしょうか?話しかけてくる人の7割ぐらいは顔を赤くしています。回復術師さんに見てもらってください。
「なあリリィ、今日の予定は覚えてるよな?」
「もちろんです!」
「確か……各々が現地で研修、やったでねぇ?」
私たちもあと1年で卒業(予定)。冒険者としての実戦訓練が必要です。そこで今回の研修です。
冒険者たちは、ギルドから発行されるクエストと呼ばれる依頼をこなして生計を立てています。その依頼は薬草採取、魔物討伐、ペット探し、除霊など様々です(後半は気にしてはいけません)。
私たちは今回の研修で現役の冒険者さん引率のもと、クエストをこなしていくのです。引率の冒険者は学園が身辺調査などをして認めた本物の実力者たちです。ちなみに研修先はバラバラです。集団で同じところに行くこともあれば、マンツーマンなこともあります。私は幸運にも2人と一緒です。
「そして私たちの引率は……」
「……魔弓士リムノ」
その名が広まったのはつい1、2年ほど前のことです。難易度の高いクエストを次々と達成し、史上最年少でAランクへと上り詰めた凄腕。未来のSランク入りも噂される程の逸材だとか。そんな方とご一緒できるとは光栄です!
「そんなすごい人と……こじゃんと緊張するちや……」
「それについてなんだが、ちょっと気になる話を聞いたんだ」
「気になる話、ですか?まさかカール君、またですか?」
「ぎくっ!」
カール君は〈交渉〉のスキルを持っています。本気を出せば先生方から機密事項を引き出すこともできると言うわけです。私たちに関すること以外では使いたがりませんが。
「まあいいです。それで、その話というのは?」
「ああ、2人ともちょっとこっちに」
声を小さくしながらカール君が話し始めます。
「その前にリリィ、ちょっと訊きてえんだが、お前、また何かしたか?」
「はい?」
カール君、その言い方は何ですか?まるで私が他にもやらかしをしているみたいではありませんか。全く……1年の時の校外学習でオークを単独討伐して以来何もしていないというのに……多分。
「まあ聞け。先生から聞いたんだがな、リムノさんはお前のことを誘ってきたそうだ」
「……へ?」
「だから、リムノさん本人が『リリィと組みたい』って言ったそうだ」
「……ええええええ⁉︎」
どどどどどど、どいうことですか?私、リムノさんなんて人とは会ったことありませんよ?もしかして母さんか父さんと知り合い?いや、あの2人は子煩悩とはいえ七光り紛いの行動はしないはず。一体……
「それで学園側が俺とイデシメのことを話したら、『じゃあ2人も一緒に』って言ってきたそうだ」
何故リムノさんが私のことを?確かに私は学園の生徒にはそれなりに認知されていますが学園の外では無名のはず。ううん……
「か、考えても仕方ないわえ!学園が認めたんやったら悪い人じゃないろうし、会って話したらいいがやない?」
……イデシメさんの言う通りですね。ここであれこれと考えても意味がありません。
「そうですね!余計なことは考えずに研修を頑張りましょう!」
「おう、それでこそリリィだぜ!」
「うん、一緒に頑張ろう!」
ホームルームの時間になるとグラッド先生が入ってきます。担任は6年間変わらないこともあるそうです。
「いいかお前たち、知っての通り今日から研修期間だ。お前たちは本職の冒険者と共にクエストに臨んでもらう。中には危険なクエストも存在する。気を引き締めてかかれ、いいな?」
「「「はい!」」」
リムノさんとの待ち合わせ場所は王都内某所の孤児院です。なんでもリムノさんがちょくちょく来ているとか。
「えっと……この辺ですよね」
「ああ、もうすぐ着くはずだ。にしても……やっぱり目立つな」
「ふふふ、私たち有名人やね、コヨ。」
「バウ!」
私たちが先程から見られている訳、それは間違いなくコヨ君でしょう。彼は私たちと出会ったときはまだ子供で、それこそそこらの犬と変わりありませんでしたが、今では普通のオオカミの2倍程にまで成長しています。つまりめちゃくちゃデカいのです。
「ふふふ、私がコヨと一緒におれるのは、カール君が先生らぁと〈交渉〉してくれたおかげで。ありがとう」
「お、おう……」
そうこうしているうちに件の孤児院に着いた訳ですが、
「おいごらぁ!いつまで待たせるつもりダァ!」
「とっとと耳揃えて返さんかいゴラァ!」
あ、借金取りですね。いや、「耳揃えて」とか言ってる時点で確定でしょ?見てみると30代程の女性が1人、借金取りに詰め寄られています。
「お願いします!今月返せるのはこれが精一杯なんです。どうかもう1月待ってください!」
「そのセリフ何回目なんだ、アァ?俺ら舐めてんのか?」
「どうしてもってんならガキどももらってくしか無えわな。そういう趣味の連中に高く売れそうだ」
「そ、それだけは!子供たちだけは勘弁してください!」
うわぁ……なんとテンプレなやり取りでしょう。もはや時代劇ですか?まあこれは仕方ありません。あまり騒ぎになりたくはありませんが彼女を見過ごすことなどできません。
「イデシメさん、カール君」
「分かっちゅう」
「ああ、助けよう」
そうして私たちが女性に近づこうとしたその時、孤児院の扉が開いて誰か出てきました。
「あなたたちですか?件の借金取りというのは」
「アァン?誰だてめえ?」
「通りすがりの冒険者です。悪漢がいるから助けてほしいと頼まれまして」
「おいおい冒険者サマよぅ、ちょいと勘違いしてねえか?俺たちは自分の仕事してるだけだぜ?悪いのは借金返さねえそこのババアだろ」
「そうだそうだ、てめえは俺たちの仕事奪おうってのか?」
何ですかあの見苦しい言い訳は。
「あなたたちの仕事ねえ……」
そう言いながら冒険者の女性が懐から何やら紙を取り出してきました。
「そ、それは⁉︎」
「この利子、ちょっと高すぎませんか?私が調べた限りでは法律違反のようでしたけど」
「ば、馬鹿な!その契約書は俺たちしか持っていないはず!」
控え渡してなかったんですか。とんでもない輩ですね。
「今すぐここに衛兵呼んでもいいんですよ?どうしますか?」
「グヌヌ……チ、チクショー!覚えてやがれー!」
借金取りたちは去って行きました。テンプレな捨て台詞を残して。
「彼らの店にはすでに衛兵がガサ入れに入っています。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
孤児院の女性に頭を下げられて困っていた冒険者の女性が、ようやく私たちに気づいた模様です。
「あら、あなたたちは……」
「あ、は、初めまして。私たち、エウレアール冒険者学園からきました。リリィです」
「イデシメです。こっちは友達のコヨ」
「バウ!」
「カールです」
「それで、あなたはもしかして……」
「ええそうよ。初めまして、冒険者のリムノです」
こうして私たちの研修は始まったのでした。
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