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第1章 民間伝承研究部編
転生少女の初戦闘
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エウレアール冒険者学園に入学してから2、3ヶ月、私は今日も学業に励んでいます。
「母さん、父さん、行ってきます!」
「ええ、いってらっしゃい」
「気をつけてな」
学園に着き、教室に向かうと2人(と1匹)がこちらに気づきました。
「よう、リリィ」
「リリィちゃん、おはよう!」
「アウ!」
彼らは私のクラスメイトであり友達のカール君、イデシメさん、そしてフェンリルのコヨ君です。入学式の日に色々あってから仲良くなりました。
カール君は魔法が得意で、イデシメさんは魔物を操ることができます。コヨ君、オスだそうです、はイデシメさんの友達です。
「2人とも、おはようございます。今日は校外学習ですね。楽しみです!」
「確か近くの森に行くがでね?」
「ああ、薬草とか毒があって危ない植物とかの勉強らしいぞ」
私たちの通う学園は冒険者の育成を目的としています。6歳から11歳までの6年制。冒険者として必要な戦闘のスキルや魔法はもちろん、読み書き計算やその他諸々の教養も身につけることができます。何でも学園を創設したのは冒険者ギルドの初代ギルドマスターで、その人物が教育の必要さを国に力説したおかげで学園が作られたそうです。
そして今日は校外学習。カール君も言ってましたが近くの森で薬草やその他の動植物についての勉強です。ちなみにバナナはおやつに入りません。
しばらくするとグラッド先生が入ってきました。今は引退した身ですが、昔は凄腕の冒険者だったそうです。
「よし、全員いるな?みんな知ってると思うが今日は校外学習だ。王都の西にある森に向かう。冒険者になるからには動物や植物のこともよく知っとかなきゃいかねえからな。準備ができたら校門に集まれ。分かったか?」
「「「はーい!」」」
私たちが校門に集まると、グラッド先生が説明を始めます。
「では今から森に向かう。が、少し遠いのである人に手伝ってもらう」
ある人?誰でしょうか?
「紹介しよう。Aランク冒険者のゴードンとセシリアだ!」
………………え?
「みんなー、よろしくなー!」
「リリィー、やっほー!」
2人が姿を現します。……て待って待って待って待って!何でも母さんと父さんがここにいるんですか?それにAランク冒険者⁉︎2人ってそんなに強かったんですか⁉︎
「ふ、2人とも何でここにいるの?」
「はっはっは、驚いたかリリィ?」
「ごめんね、びっくりさせたかったの」
「2人は冒険者としても一流だからな。引率を頼んだんだ。まあセシリアはしばらく休業していたが大丈夫だろう」
「え、ええっと、2人ともそんなに強いの⁉︎」
私の一言に今度はクラスメイトたちが驚きの声をあげました。
「リ、リリィちゃん知らんかったがぁ?」
「そうだぞ、ゴードンさんとセシリアさんは王都どころかエウレアール王国の中でも5本の指に入る実力だぞ!」
「え、えええ?」
何と我が家の家族について私よりクラスメイトの方が詳しかったようです。
「ふふふ、それじゃあみんな準備はいい?今から森に向かうわよ」
私が驚いていると母さんが話し始めました。
「セシリアは空間魔法が使えるからな。みんなを一瞬で森に連れて行けるってわけだ」
「「「おおー!」」」
グラッド先生の一言に私は少し首を傾げます。
「じゃあみんな近くに集まって」
取り敢えず後でカール君あたりに訊いてみましょう。彼なら詳しいでしょうし。
「じゃあ行くわよ。空間魔法 転移!」
その瞬間、私たちの足元が光り輝きます。そして一瞬の後、私たちは森の中に立っていました。
「はーい、到着よー!」
「うおー、すっげー!」
「本当に一瞬で森に来ちゃった!」
「俺、初めて空間魔法見たぜ!」
みんなが転移に盛り上がっています。
「みんな注目!取り敢えず一通り薬草の種類を教えていく。それが済んだら自由行動だ。あんまり遠くに行くなよ!」
「「「はあーーーい!」」」
それから私たちは、グラッド先生の説明を聞き終えると自由行動となりました。まあ先生たちの目に届く範囲で、ですが。
「ねえ、カール君、イデシメさん」
コヨ君と遊んでいた2人に声を掛けます。
「ん、どうした?」
「訊きたいんですが、空間魔法ってそんなにすごいんですか?」
さっきのグラッド先生の発言からすると、空間魔法の使い手は相当貴重なようです。そうでないとわざわざAランクの母さんを呼び出したりはしないでしょうから。ですが……
「は?何言ってんだ?空間魔法なんてよっぽど腕利きの魔術師でなけりゃ使えねえにきまってんだろ。常識だぜ?」
「リリィちゃん、知らんかったがぁ?」
「だ、だって、私、使えますし」
「…………ん?」
「だから、使えるんです。空間魔法」
「「…………はああああ⁉︎」」
「な、何でそんなに驚くんですか……」
「当たり前だ馬鹿!お前まだ6歳だろ!何でもう空間魔法覚えてんだ⁉︎」
「ええっと……母さんに教えてもらったんです。入学試験までの1年間みっちりと。ちなみに父さんには前衛の戦い方を」
その言葉を聞いた途端、2人は空を仰いでどこか絶望したような雰囲気を漂わせ始めました。
「……あのAランク冒険者ゴードンさんとセシリアさんに直々に教えてもらうとは」
「贅沢過ぎるちや……」
こ、これは……私何かやっちゃいました?
「ふ、2人とも元気出してください!ああ、そうだ!私から父さんと母さんに頼んどきます。剣でも魔法でも何でいいから2人も教えてもらいましょう!」
「「……!」」
途端に2人の目が輝きます。
「本当か⁉︎本当にいいのか⁉︎」
「わわわ私、コヨのサポートできるようになりたくて。ゴードンさんとセシリアさんに色々教えてほしいがよ!」
「ち、近いです2人とも!ええ勿論です。私から2人に頼んでおきます」
「よっしゃーーー!ありがとなリリィ!」
「リリィ大好き!」
2人とも歓喜が過ぎますね。まさか私がそんなすごい人たちから特訓を受けていたなんて。
その時でした。
「グオオオオ!」
森の奥から不快な唸り声が聞こえてきました。
「うわあああ!」
生徒の1人が泣きながらこちらに走ってきます。そしてその背後には、
「グオオオオ!」
豚の頭と丸々と太った大きな肉体。オークです。さてはあの子、先生たちの目の届かないところまで行ってしまいましたね?
しかしこれはまずいです。あの子、追いつかれますよ。つまり死にます。
「グラッド!」
「分かってる!」
グラッド先生が一気に加速、生徒の元へ向かいます。そして、無事に無事に保護しました。生徒を抱えると一瞬でこちらに戻ってきます。その最中、先生が叫びます。
「ゴードン!」
「まかせろ!豚風情が近づくな!」
父さんが腰から剣を抜き、そのままオークの腹を斬りつけます。やたらと汚いものが飛び散ります。
「グエエエエ!」
大ダメージを受けてオークが倒れ込みます。その一瞬にて、
「ハッ!」
「グヘッ⁉︎」
父さんが首を跳ねました。まさに秒殺です。
「みんな、もう大丈夫だ!」
「うおーすっゲー!流石Aランク!」
「あんな大きなオークを一瞬で倒すなんて!」
みんなが大いに盛り上がります。確かにこれは凄い。父さん、強すぎです。
「お父さんすごい!かっこいいよ!」
「なっ……!俺が……かっこいい?」
バタン
「あ、あなたーーー!」
おや、父さんが召されてしまいました。母さんが駆け寄って心配そうに見つめてます。オシドリなアホウドリですね……て、あれは!
「2人とも、後ろ!」
「ブオオオ!」
もう1匹オークがいました。まずい、2人とも反応が少し遅れている。
これは……私が動かねば!
「雷魔法 麻痺!」
かざされた私の手から放たれた細い電撃が、母さんと父さんを避けてオークに命中します。
「ブヘエエエエ!」
オークが見事に痺れてくれました。そしてそのまま倒れ込みます。今なら殺れる!
「空間魔法 転移門!」
オークの上の空間が歪み、黒い穴が展開します。そして、そこから落ちてきたのは……
私の名前はヘレナ・ミスリル。ミスリル公爵家の令嬢だ。そして昨日、婚約者だった第一王子から婚約を破棄され、身に覚えのない罪で死刑となった。現在、断頭台に立っている。
私の処刑を見にきた見物客たちが溢れかえっている。その最前列には件の第一王子と、最近王子との仲が噂される男爵令嬢が並んで立っていた。男爵令嬢がこちらを見てほくそ笑む。
あの女狐、謀ったか……。それに王子も王子だ。あんなやつに釣られてしまうとは……。あんな馬鹿との婚約など、無くなって良かったかもしれない。
私の首が、断頭台に固定される。
「最後に何か言い残すことは?」
「……いいえ、もう悔いはない」
少し嘘をついた。
次の瞬間、断頭台の刃をぶら下げていた縄が断ち切られる。刃がこちら目掛けて落ちてくる。
ああ……終わった。
そう思っていた時期が私にもあった。だけど何故かいつまで経っても私の首は離れない。
「な、何だあれは⁉︎」
誰かが叫ぶ。私の上方には、刃を飲み込んだ黒い穴が広がっていた。
この後、数々の証拠によって私の濡れ衣が晴らされ、王子と男爵令嬢は身分を剥奪された。ちなみに私は人望に恵まれ、幼馴染との間に3人の子を授かることとなったのだが、それはまた別のお話。
転移門から落ちてきたのは、なんかやけに大きい刃でした。これあれじゃないですか?ギロチンでは?もしや誰かの処刑を妨害したのでしょうか……。相手が極悪人でないことを祈ります。
「母さん、父さん、大丈夫?怪我は?」
「お、おおう、大丈夫だ」
「どこも怪我してないわよ」
2人が無事なら何よりです。
「はあ~、良かったです。……ん?みなさん、どうしたんですか?」
何故かクラスメイトたちが目を点にしています。どうしたんでしょうか?
「あの……私、何かしました?」
後で聞いたのですが、土壇場で魔法を、それも空間魔法を一発で成功させた6歳など未確認だそうです。
「俺はすんげえ集中してやっと使えるのに……」
カール君のあの表情を見たときは謎の罪悪感を覚えました。
「母さん、父さん、行ってきます!」
「ええ、いってらっしゃい」
「気をつけてな」
学園に着き、教室に向かうと2人(と1匹)がこちらに気づきました。
「よう、リリィ」
「リリィちゃん、おはよう!」
「アウ!」
彼らは私のクラスメイトであり友達のカール君、イデシメさん、そしてフェンリルのコヨ君です。入学式の日に色々あってから仲良くなりました。
カール君は魔法が得意で、イデシメさんは魔物を操ることができます。コヨ君、オスだそうです、はイデシメさんの友達です。
「2人とも、おはようございます。今日は校外学習ですね。楽しみです!」
「確か近くの森に行くがでね?」
「ああ、薬草とか毒があって危ない植物とかの勉強らしいぞ」
私たちの通う学園は冒険者の育成を目的としています。6歳から11歳までの6年制。冒険者として必要な戦闘のスキルや魔法はもちろん、読み書き計算やその他諸々の教養も身につけることができます。何でも学園を創設したのは冒険者ギルドの初代ギルドマスターで、その人物が教育の必要さを国に力説したおかげで学園が作られたそうです。
そして今日は校外学習。カール君も言ってましたが近くの森で薬草やその他の動植物についての勉強です。ちなみにバナナはおやつに入りません。
しばらくするとグラッド先生が入ってきました。今は引退した身ですが、昔は凄腕の冒険者だったそうです。
「よし、全員いるな?みんな知ってると思うが今日は校外学習だ。王都の西にある森に向かう。冒険者になるからには動物や植物のこともよく知っとかなきゃいかねえからな。準備ができたら校門に集まれ。分かったか?」
「「「はーい!」」」
私たちが校門に集まると、グラッド先生が説明を始めます。
「では今から森に向かう。が、少し遠いのである人に手伝ってもらう」
ある人?誰でしょうか?
「紹介しよう。Aランク冒険者のゴードンとセシリアだ!」
………………え?
「みんなー、よろしくなー!」
「リリィー、やっほー!」
2人が姿を現します。……て待って待って待って待って!何でも母さんと父さんがここにいるんですか?それにAランク冒険者⁉︎2人ってそんなに強かったんですか⁉︎
「ふ、2人とも何でここにいるの?」
「はっはっは、驚いたかリリィ?」
「ごめんね、びっくりさせたかったの」
「2人は冒険者としても一流だからな。引率を頼んだんだ。まあセシリアはしばらく休業していたが大丈夫だろう」
「え、ええっと、2人ともそんなに強いの⁉︎」
私の一言に今度はクラスメイトたちが驚きの声をあげました。
「リ、リリィちゃん知らんかったがぁ?」
「そうだぞ、ゴードンさんとセシリアさんは王都どころかエウレアール王国の中でも5本の指に入る実力だぞ!」
「え、えええ?」
何と我が家の家族について私よりクラスメイトの方が詳しかったようです。
「ふふふ、それじゃあみんな準備はいい?今から森に向かうわよ」
私が驚いていると母さんが話し始めました。
「セシリアは空間魔法が使えるからな。みんなを一瞬で森に連れて行けるってわけだ」
「「「おおー!」」」
グラッド先生の一言に私は少し首を傾げます。
「じゃあみんな近くに集まって」
取り敢えず後でカール君あたりに訊いてみましょう。彼なら詳しいでしょうし。
「じゃあ行くわよ。空間魔法 転移!」
その瞬間、私たちの足元が光り輝きます。そして一瞬の後、私たちは森の中に立っていました。
「はーい、到着よー!」
「うおー、すっげー!」
「本当に一瞬で森に来ちゃった!」
「俺、初めて空間魔法見たぜ!」
みんなが転移に盛り上がっています。
「みんな注目!取り敢えず一通り薬草の種類を教えていく。それが済んだら自由行動だ。あんまり遠くに行くなよ!」
「「「はあーーーい!」」」
それから私たちは、グラッド先生の説明を聞き終えると自由行動となりました。まあ先生たちの目に届く範囲で、ですが。
「ねえ、カール君、イデシメさん」
コヨ君と遊んでいた2人に声を掛けます。
「ん、どうした?」
「訊きたいんですが、空間魔法ってそんなにすごいんですか?」
さっきのグラッド先生の発言からすると、空間魔法の使い手は相当貴重なようです。そうでないとわざわざAランクの母さんを呼び出したりはしないでしょうから。ですが……
「は?何言ってんだ?空間魔法なんてよっぽど腕利きの魔術師でなけりゃ使えねえにきまってんだろ。常識だぜ?」
「リリィちゃん、知らんかったがぁ?」
「だ、だって、私、使えますし」
「…………ん?」
「だから、使えるんです。空間魔法」
「「…………はああああ⁉︎」」
「な、何でそんなに驚くんですか……」
「当たり前だ馬鹿!お前まだ6歳だろ!何でもう空間魔法覚えてんだ⁉︎」
「ええっと……母さんに教えてもらったんです。入学試験までの1年間みっちりと。ちなみに父さんには前衛の戦い方を」
その言葉を聞いた途端、2人は空を仰いでどこか絶望したような雰囲気を漂わせ始めました。
「……あのAランク冒険者ゴードンさんとセシリアさんに直々に教えてもらうとは」
「贅沢過ぎるちや……」
こ、これは……私何かやっちゃいました?
「ふ、2人とも元気出してください!ああ、そうだ!私から父さんと母さんに頼んどきます。剣でも魔法でも何でいいから2人も教えてもらいましょう!」
「「……!」」
途端に2人の目が輝きます。
「本当か⁉︎本当にいいのか⁉︎」
「わわわ私、コヨのサポートできるようになりたくて。ゴードンさんとセシリアさんに色々教えてほしいがよ!」
「ち、近いです2人とも!ええ勿論です。私から2人に頼んでおきます」
「よっしゃーーー!ありがとなリリィ!」
「リリィ大好き!」
2人とも歓喜が過ぎますね。まさか私がそんなすごい人たちから特訓を受けていたなんて。
その時でした。
「グオオオオ!」
森の奥から不快な唸り声が聞こえてきました。
「うわあああ!」
生徒の1人が泣きながらこちらに走ってきます。そしてその背後には、
「グオオオオ!」
豚の頭と丸々と太った大きな肉体。オークです。さてはあの子、先生たちの目の届かないところまで行ってしまいましたね?
しかしこれはまずいです。あの子、追いつかれますよ。つまり死にます。
「グラッド!」
「分かってる!」
グラッド先生が一気に加速、生徒の元へ向かいます。そして、無事に無事に保護しました。生徒を抱えると一瞬でこちらに戻ってきます。その最中、先生が叫びます。
「ゴードン!」
「まかせろ!豚風情が近づくな!」
父さんが腰から剣を抜き、そのままオークの腹を斬りつけます。やたらと汚いものが飛び散ります。
「グエエエエ!」
大ダメージを受けてオークが倒れ込みます。その一瞬にて、
「ハッ!」
「グヘッ⁉︎」
父さんが首を跳ねました。まさに秒殺です。
「みんな、もう大丈夫だ!」
「うおーすっゲー!流石Aランク!」
「あんな大きなオークを一瞬で倒すなんて!」
みんなが大いに盛り上がります。確かにこれは凄い。父さん、強すぎです。
「お父さんすごい!かっこいいよ!」
「なっ……!俺が……かっこいい?」
バタン
「あ、あなたーーー!」
おや、父さんが召されてしまいました。母さんが駆け寄って心配そうに見つめてます。オシドリなアホウドリですね……て、あれは!
「2人とも、後ろ!」
「ブオオオ!」
もう1匹オークがいました。まずい、2人とも反応が少し遅れている。
これは……私が動かねば!
「雷魔法 麻痺!」
かざされた私の手から放たれた細い電撃が、母さんと父さんを避けてオークに命中します。
「ブヘエエエエ!」
オークが見事に痺れてくれました。そしてそのまま倒れ込みます。今なら殺れる!
「空間魔法 転移門!」
オークの上の空間が歪み、黒い穴が展開します。そして、そこから落ちてきたのは……
私の名前はヘレナ・ミスリル。ミスリル公爵家の令嬢だ。そして昨日、婚約者だった第一王子から婚約を破棄され、身に覚えのない罪で死刑となった。現在、断頭台に立っている。
私の処刑を見にきた見物客たちが溢れかえっている。その最前列には件の第一王子と、最近王子との仲が噂される男爵令嬢が並んで立っていた。男爵令嬢がこちらを見てほくそ笑む。
あの女狐、謀ったか……。それに王子も王子だ。あんなやつに釣られてしまうとは……。あんな馬鹿との婚約など、無くなって良かったかもしれない。
私の首が、断頭台に固定される。
「最後に何か言い残すことは?」
「……いいえ、もう悔いはない」
少し嘘をついた。
次の瞬間、断頭台の刃をぶら下げていた縄が断ち切られる。刃がこちら目掛けて落ちてくる。
ああ……終わった。
そう思っていた時期が私にもあった。だけど何故かいつまで経っても私の首は離れない。
「な、何だあれは⁉︎」
誰かが叫ぶ。私の上方には、刃を飲み込んだ黒い穴が広がっていた。
この後、数々の証拠によって私の濡れ衣が晴らされ、王子と男爵令嬢は身分を剥奪された。ちなみに私は人望に恵まれ、幼馴染との間に3人の子を授かることとなったのだが、それはまた別のお話。
転移門から落ちてきたのは、なんかやけに大きい刃でした。これあれじゃないですか?ギロチンでは?もしや誰かの処刑を妨害したのでしょうか……。相手が極悪人でないことを祈ります。
「母さん、父さん、大丈夫?怪我は?」
「お、おおう、大丈夫だ」
「どこも怪我してないわよ」
2人が無事なら何よりです。
「はあ~、良かったです。……ん?みなさん、どうしたんですか?」
何故かクラスメイトたちが目を点にしています。どうしたんでしょうか?
「あの……私、何かしました?」
後で聞いたのですが、土壇場で魔法を、それも空間魔法を一発で成功させた6歳など未確認だそうです。
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