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第1章 民間伝承研究部編
転生遺族のむかしむかし4
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「それじゃあ、縦軸と三角さんの入部を祝して、かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
「かんぱーい……て、ちょっと待てい!」
「あら、どうしたの虚君?」
「三角さんもみんなもしれっといるけどさ、ここ、僕ん家だから!」
現在、民研一同は縦軸とていりの歓迎会を催していた。縦軸の家で。言い出しっぺは作子だ。そして歓迎会は建前である。既に縦軸とていりの入部から既に1ヶ月以上経っているが、久しぶりに虚家に遊びに行きたかったのだ。
「何言ってるのよ縦軸。賑やかでいいじゃない。作子ちゃん、たくさん食べていってね」
「ありがとうございます素子さん。とっても美味しいです」
「もう、褒めたっておかわりしか出ないわよ」
やけに機嫌が良さそうな縦軸の母素子。突如押しかけてきた民研達に驚きつつも、
「素子さんごめん、縦軸たちの歓迎会やりたいんだけどいい?」
「まあ歓迎会?よくわからないけど、作子ちゃんが言うならもちろんよ。さあみんな入って入って。縦軸準備するからあなたも働いて。ごめんね作子ちゃん、手伝ってもらってもいい?」
「喜んで!」
と、言うわけで素子自ら歓迎会を仕切り始めたのだ。
「ていりちゃん、縦軸と同じクラスなんでしょ?この子学校ではどんな感じ?」
「そうですね……真面目に勉強してますよ」
「そうなの。うふふ、まさか縦軸にこんな可愛いクラスメイトができるなんて」
「、、、、、!あ、ありがとうございます」
「ていりちゃん、既視感がすごいよ?」
「ふふ、積元さんだって可愛いわよ。それにほら、積元さんって何だか縦軸に妹ができたみたい」
「ほんと⁉︎えへへ……」
そうして素子がていりたちと打ち解けようとしていたところ、彼女が口を開いた。
「あのー?」
「ん、どうした?母さんの料理は美味いよ」
「いや、ええと……何で私までここに?」
困惑した様子でそう問いかけるのは、先の自殺未遂少女、十二乗音である。作子は何故か民研だけでなく、彼女も虚家に連れてきていた。
「十二乗さん、こういうのは人数が多い方が良いって相場が決まってるのよ」
「でも……」
「いいのよいいのよ。第一あの状況であなただけ置いてくのは酷じゃない。遠慮せずに、ほれほれ」
「……いただきます」
作子に押し負けた音だった。
賑やかな時間は過ぎていく。素子も混ざり、学校のことや他愛の無い話で盛り上がったのだった。
「素子さん、今日はありがとうございました。私は微たちを送っていきます」
「ええ、またいつでもいらっしゃい」
「じゃあね縦軸、勉強しろよ」
「分かってるよ。ほら、さっさと三角さん達送ってきな」
「また明日、虚君」
「縦軸君、バイバイ」
「お邪魔しました」
ドアが閉まり、虚家は先程より静かになった。
片付けをしていた縦軸に、素子がやけにウキウキとした様子で話しかける。
「ねえ縦軸」
「何?」
「どっちが本命なの?」
「…………え?」
「もう、とぼけちゃって。三角さんと積元さん、どっちのことが好きなの?」
「……はああ⁉︎」
露骨に混乱する縦軸。そしてその様子は素子を調子に乗せていく。
「三角さんは凛としてて綺麗だし、積元さんは何だか可愛い妹って感じだし、縦軸はどっちがなのかなーって。十二乗さんは初対面なんでしょ?じゃあやっぱり2人のどっちかに決まりだわ!」
「待て待て待て待て。僕は2人のことをそんな風には……」
「ええ~、そうなの?あんな美少女たちに囲まれてるのに…………!もしかして」
「え?」
何かを閃いたような顔で縦軸の肩を掴む素子。その顔には揺るぎない意志が宿っている。
「そうね!何てったって歳は離れてても幼馴染みたいなものだからね」
「い、いや、母さん、何を言ってるの?僕には訳が分からないよ」
「母さんは縦軸のことを応援するわ。絶対に、作子ちゃんのことを射止めなさい!」
「…………違う、そうじゃなーーーい!」
残業を終えて帰ってきた父秀樹が見たのは、めっちゃ必死に何かを説明する縦軸の姿だった。
ていりたちは音と別れ、3人になっていた。
「いやー、今日は楽しかったー!ね、微」
「うん!縦軸君のお母さんの料理、すっごい美味しかった!」
「それにしても驚きました。虚君の知り合いが先生をやってたなんて」
「あはは、鳩高に入学したってのは知ってたけどね。まさかよりにもよって微のところに集まるとは……」
そんな会話をしていたとき、作子はあることが気になり、2人に訊いてみようと思った。縦軸本人や、あんなことをした直後の音がいる前では訊きづらかったのだ。
立ち止まり、2人と向かい合う。
「ねえ、2人とも」
「ん?」
「どうしたんですか?」
縦軸本人も嫌がって話さないだろう。だがその時はこれを機に自分が話せばいい。
「縦軸のお姉さんのこと、知ってる?」
「「「かんぱーい!」」」
「かんぱーい……て、ちょっと待てい!」
「あら、どうしたの虚君?」
「三角さんもみんなもしれっといるけどさ、ここ、僕ん家だから!」
現在、民研一同は縦軸とていりの歓迎会を催していた。縦軸の家で。言い出しっぺは作子だ。そして歓迎会は建前である。既に縦軸とていりの入部から既に1ヶ月以上経っているが、久しぶりに虚家に遊びに行きたかったのだ。
「何言ってるのよ縦軸。賑やかでいいじゃない。作子ちゃん、たくさん食べていってね」
「ありがとうございます素子さん。とっても美味しいです」
「もう、褒めたっておかわりしか出ないわよ」
やけに機嫌が良さそうな縦軸の母素子。突如押しかけてきた民研達に驚きつつも、
「素子さんごめん、縦軸たちの歓迎会やりたいんだけどいい?」
「まあ歓迎会?よくわからないけど、作子ちゃんが言うならもちろんよ。さあみんな入って入って。縦軸準備するからあなたも働いて。ごめんね作子ちゃん、手伝ってもらってもいい?」
「喜んで!」
と、言うわけで素子自ら歓迎会を仕切り始めたのだ。
「ていりちゃん、縦軸と同じクラスなんでしょ?この子学校ではどんな感じ?」
「そうですね……真面目に勉強してますよ」
「そうなの。うふふ、まさか縦軸にこんな可愛いクラスメイトができるなんて」
「、、、、、!あ、ありがとうございます」
「ていりちゃん、既視感がすごいよ?」
「ふふ、積元さんだって可愛いわよ。それにほら、積元さんって何だか縦軸に妹ができたみたい」
「ほんと⁉︎えへへ……」
そうして素子がていりたちと打ち解けようとしていたところ、彼女が口を開いた。
「あのー?」
「ん、どうした?母さんの料理は美味いよ」
「いや、ええと……何で私までここに?」
困惑した様子でそう問いかけるのは、先の自殺未遂少女、十二乗音である。作子は何故か民研だけでなく、彼女も虚家に連れてきていた。
「十二乗さん、こういうのは人数が多い方が良いって相場が決まってるのよ」
「でも……」
「いいのよいいのよ。第一あの状況であなただけ置いてくのは酷じゃない。遠慮せずに、ほれほれ」
「……いただきます」
作子に押し負けた音だった。
賑やかな時間は過ぎていく。素子も混ざり、学校のことや他愛の無い話で盛り上がったのだった。
「素子さん、今日はありがとうございました。私は微たちを送っていきます」
「ええ、またいつでもいらっしゃい」
「じゃあね縦軸、勉強しろよ」
「分かってるよ。ほら、さっさと三角さん達送ってきな」
「また明日、虚君」
「縦軸君、バイバイ」
「お邪魔しました」
ドアが閉まり、虚家は先程より静かになった。
片付けをしていた縦軸に、素子がやけにウキウキとした様子で話しかける。
「ねえ縦軸」
「何?」
「どっちが本命なの?」
「…………え?」
「もう、とぼけちゃって。三角さんと積元さん、どっちのことが好きなの?」
「……はああ⁉︎」
露骨に混乱する縦軸。そしてその様子は素子を調子に乗せていく。
「三角さんは凛としてて綺麗だし、積元さんは何だか可愛い妹って感じだし、縦軸はどっちがなのかなーって。十二乗さんは初対面なんでしょ?じゃあやっぱり2人のどっちかに決まりだわ!」
「待て待て待て待て。僕は2人のことをそんな風には……」
「ええ~、そうなの?あんな美少女たちに囲まれてるのに…………!もしかして」
「え?」
何かを閃いたような顔で縦軸の肩を掴む素子。その顔には揺るぎない意志が宿っている。
「そうね!何てったって歳は離れてても幼馴染みたいなものだからね」
「い、いや、母さん、何を言ってるの?僕には訳が分からないよ」
「母さんは縦軸のことを応援するわ。絶対に、作子ちゃんのことを射止めなさい!」
「…………違う、そうじゃなーーーい!」
残業を終えて帰ってきた父秀樹が見たのは、めっちゃ必死に何かを説明する縦軸の姿だった。
ていりたちは音と別れ、3人になっていた。
「いやー、今日は楽しかったー!ね、微」
「うん!縦軸君のお母さんの料理、すっごい美味しかった!」
「それにしても驚きました。虚君の知り合いが先生をやってたなんて」
「あはは、鳩高に入学したってのは知ってたけどね。まさかよりにもよって微のところに集まるとは……」
そんな会話をしていたとき、作子はあることが気になり、2人に訊いてみようと思った。縦軸本人や、あんなことをした直後の音がいる前では訊きづらかったのだ。
立ち止まり、2人と向かい合う。
「ねえ、2人とも」
「ん?」
「どうしたんですか?」
縦軸本人も嫌がって話さないだろう。だがその時はこれを機に自分が話せばいい。
「縦軸のお姉さんのこと、知ってる?」
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