転生遺族の循環論法

はたたがみ

文字の大きさ
上 下
16 / 142
第1章 民間伝承研究部編

転生遺族のむかしむかし4

しおりを挟む
「それじゃあ、縦軸と三角さんの入部を祝して、かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
「かんぱーい……て、ちょっと待てい!」
「あら、どうしたの虚君?」
「三角さんもみんなもしれっといるけどさ、ここ、だから!」

 現在、民研一同は縦軸とていりの歓迎会を催していた。縦軸の家で。言い出しっぺは作子だ。そして歓迎会は建前である。既に縦軸とていりの入部から既に1ヶ月以上経っているが、久しぶりに虚家に遊びに行きたかったのだ。

「何言ってるのよ縦軸。賑やかでいいじゃない。作子ちゃん、たくさん食べていってね」
「ありがとうございます素子さん。とっても美味しいです」
「もう、褒めたっておかわりしか出ないわよ」

 やけに機嫌が良さそうな縦軸の母素子もとこ。突如押しかけてきた民研達に驚きつつも、



「素子さんごめん、縦軸たちの歓迎会やりたいんだけどいい?」
「まあ歓迎会?よくわからないけど、作子ちゃんが言うならもちろんよ。さあみんな入って入って。縦軸準備するからあなたも働いて。ごめんね作子ちゃん、手伝ってもらってもいい?」
「喜んで!」



 と、言うわけで素子自ら歓迎会を仕切り始めたのだ。

「ていりちゃん、縦軸と同じクラスなんでしょ?この子学校ではどんな感じ?」
「そうですね……真面目に勉強してますよ」
「そうなの。うふふ、まさか縦軸にこんな可愛いクラスメイトができるなんて」
「、、、、、!あ、ありがとうございます」
「ていりちゃん、既視感がすごいよ?」
「ふふ、積元さんだって可愛いわよ。それにほら、積元さんって何だか縦軸に妹ができたみたい」
「ほんと⁉︎えへへ……」

 そうして素子がていりたちと打ち解けようとしていたところ、が口を開いた。

「あのー?」
「ん、どうした?母さんの料理は美味いよ」
「いや、ええと……何で私までここに?」

 困惑した様子でそう問いかけるのは、先の自殺未遂少女、十二乗ひとめぐりおとである。作子は何故か民研だけでなく、彼女も虚家に連れてきていた。

「十二乗さん、こういうのは人数が多い方が良いって相場が決まってるのよ」
「でも……」
「いいのよいいのよ。第一あの状況であなただけ置いてくのは酷じゃない。遠慮せずに、ほれほれ」
「……いただきます」

 作子に押し負けた音だった。



 賑やかな時間は過ぎていく。素子も混ざり、学校のことや他愛の無い話で盛り上がったのだった。



「素子さん、今日はありがとうございました。私は微たちを送っていきます」
「ええ、またいつでもいらっしゃい」
「じゃあね縦軸、勉強しろよ」
「分かってるよ。ほら、さっさと三角さん達送ってきな」
「また明日、虚君」
「縦軸君、バイバイ」
「お邪魔しました」

 ドアが閉まり、虚家は先程より静かになった。
 片付けをしていた縦軸に、素子がやけにウキウキとした様子で話しかける。

「ねえ縦軸」
「何?」
「どっちが本命なの?」
「…………え?」
「もう、とぼけちゃって。三角さんと積元さん、どっちのことがなの?」
「……はああ⁉︎」

 露骨に混乱する縦軸。そしてその様子は素子を調子に乗せていく。

「三角さんは凛としてて綺麗だし、積元さんは何だか可愛い妹って感じだし、縦軸はどっちがなのかなーって。十二乗さんは初対面なんでしょ?じゃあやっぱり2人のどっちかに決まりだわ!」
「待て待て待て待て。僕は2人のことをそんな風には……」
「ええ~、そうなの?あんな美少女たちに囲まれてるのに…………!もしかして」
「え?」

 何かを閃いたような顔で縦軸の肩を掴む素子。その顔には揺るぎない意志が宿っている。

「そうね!何てったって歳は離れてても幼馴染みたいなものだからね」
「い、いや、母さん、何を言ってるの?僕には訳が分からないよ」
「母さんは縦軸のことを応援するわ。絶対に、作子ちゃんのことを射止めなさい!」
「…………違う、そうじゃなーーーい!」

 残業を終えて帰ってきた父秀樹ひできが見たのは、めっちゃ必死に何かを説明する縦軸の姿だった。



 ていりたちは音と別れ、3人になっていた。

「いやー、今日は楽しかったー!ね、微」
「うん!縦軸君のお母さんの料理、すっごい美味しかった!」
「それにしても驚きました。虚君の知り合いが先生をやってたなんて」
「あはは、鳩高に入学したってのは知ってたけどね。まさか微のところに集まるとは……」

 そんな会話をしていたとき、作子はあることが気になり、2人に訊いてみようと思った。縦軸本人や、をした直後の音がいる前では訊きづらかったのだ。
 立ち止まり、2人と向かい合う。

「ねえ、2人とも」
「ん?」
「どうしたんですか?」

 縦軸本人も嫌がって話さないだろう。だがその時はこれを機に自分が話せばいい。

「縦軸のお姉さんのこと、知ってる?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...