転生遺族の循環論法

はたたがみ

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第1章 民間伝承研究部編

転生遺族と生徒会2

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 民間伝承研究部の部室のドアを勢いよく開け放ったのは、眼鏡をかけたなにやら機嫌の悪そうな女子だった。

「あ、つい!どうしたの?」
「どうしたのもこうしたもないわ!なんであんたまだこの部屋使ってんのよ!」

「あの、積元先輩?ここって僕たちの部室ですよね?なんかその人、ここから出て行けって言ってるように聞こえるんですけど。ていうかその人誰ですか?」
「ん、あんたたち1年?」
「はい。1年の虚縦軸です」
「同じく、1年の三角ていりです。そちらは?」
「あたしは2年の指村しむらついだよ、よろしく。で、そこの馬鹿に用があんのよ。てか、あんたたち何でいんのよ?」

 あたしには訳が分からないよと言わんばかりに2人に尋ねる対。

「部員ですよ。それが何か?」
「えっと、僕も部員です」
「……はあああああ⁉︎部員てまさか民間伝承研究部こいつの⁉︎待って待って待って意味わかんない。いや、そりゃね、真っ当に民話とか研究してるんだったらわかるよ?でもここってどうせ微の趣味に付き合わされてるだけだろ?何が楽しいのさ!」

 兎に角微と民間伝承研究部をコケにする対。一方で縦軸とていりも返答に困っていた。

(どうしよう……流石に「異世界のこと調べてます!」なんて言えない。)
「三角さん、どうs」
「異世界のこと調べてます」
「おい三角ィーーー!」
「積元先輩のスキル〈天文台〉は異世界の様子を知ることができます。だから異世界のことを知りたい私にとって積元先輩はとても貴重な人材です」

 堂々と言い放つていり。彼女はこういう時に遠慮しないのだ。入学式の日の朝の奇行も、ヤバいやつと思われるのを恐れていなかったためである。

 すると、対がていりに詰め寄り、静かに問う。

「……どっちが始めた?」

 途端に不穏な空気を漂わせる対。実はこの時、ていりは対にとっての地雷を踏んでいたのだ。しかし、そんなことで動揺するていりではない。だからこそ、両者の間に流れる空気が余計に悪くなる。


「……あ、あの、2人とも止めましょうよ!そうだ!指村先輩でしたよね?確かさっき積元先輩にご用があるとのことでしたけど」

流石にヤバいと感じた縦軸が止めに入る。

「……え?ああ、そうだったな、悪かったよ。おい微、ちょっと顔貸せ。げんが呼んでるぞ」
「おおー!弦君が!分かった、すぐ行く」

「積元先輩、弦さんというのは?」
入江いりえげん、生徒会長だよ。あんたたちも覚えときな」

「積元先輩って生徒会長と知り合いだったんですね。あの、用というのは一体どんな……」
「ん?ああそうか。あんたたちここの部員だったね。じゃああんたたちも来な」

 訳のわからないまま、取り敢えずついていく縦軸とていり。



 対に連れられてやってきた部屋には「生徒会室」と書かれていた。

「おーい弦、連れてきたぞ」
「うん、ありがとね対。微、元気かい?何だか知らない子もいるようだけど」

 縦軸たちの正面には、もはや生徒会長というよりは理事長のような貫禄で椅子にふんぞりかえる男子生徒がいた。彼こそこの学校の生徒会長、入江弦だ。

「やっほー弦君。急に呼び出してどうしたの?」
「どうしたもこうしたも無いですよ、微」

 弦の横に佇む男子が1人。

「あいつは生徒会書記の左位さくらいしるすだよ」

 名前を知らない縦軸とていりのために対が教える。

「実は微に大事な話があるんだ。まあその前にその2人を紹介してくれないか?」
「ふっふっふ、聞いて驚け、彼らは我が民間伝承研究部の栄えある新入部員なのです!」

 ドヤ顔で縦軸とていりを見せつける微であった。

「初めまして、1年の虚縦軸です」
「三角ていりです。よろしくお願いします」

「おやおや、まさか部員が増えるとはね」
「だろう?あたしも驚いたよ」

 どうやら縦軸たちの入部は相当イレギュラーな出来事だったようだ。

「僕は生徒会長の入江弦だ。よろしくね。なるほど、部員だから彼らも連れてきたって訳だね?」
「どのみち知るだろ。どうせならあんたの口から説明しな」
「そうだね。微、それに縦軸君とていりさんもよく聞いて」


 すると、弦は何やら神妙な面持ちになり、そして彼らに伝えるべき内容を言い放つ。


「民間伝承研究部は廃部にする」
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