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第1章 民間伝承研究部編
転生遺族と部員勧誘
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縦軸が高校生となってから数日が経った。最初の2、3日は部活の紹介やオリエンテーションで終わった。そろそろ授業が本格的に始まる頃だ。
「ごちそうさま。それじゃ行って来ます」
「うん、いってらっしゃい」
「気をつけてな」
縦軸はいつも通り家を出て学校へと向かう。
「おはよう、虚君。異世界について何か分かった?」
「ああ、三角さん、おはよう。残念ながら未だ何も分からずだよ」
途中で三角ていりに会い、そのまま2人で学校へ向かう。実は入学式の朝に話して以来、2人はよく話すようになったのだ。尤もていりが執拗に異世界の情報を縦軸に訊いてくるのがほとんどだが。どうやら彼女のこの話題を拒否しなかったのは縦軸だけだったようだ。
校門では上級生たちが熱心に新入部員を勧誘していた。
「陸上部どうですかー?」
「そこの君、弓道に興味ない?」
「アニ研募集中!推しについて語ろう!私は駆逐艦たちが大好きだーーー!」
「騒がしいわね」
「そうだね。三角さんは何か興味ある部活とか無いの?」
「特に無いわ。異世界のことが分かる部活でもあれば話は別だけど。そういうあなたは?」
「そうだな……特に無いかな。運動部は嫌いだし、文化部もこれってやつが無いし」
「そう」
そんな会話を交わしながら縦軸たちは教室へと向かう。
「1ー7」と書かれたプレートのある教室に入ると、既に何人か登校していた。そして彼らにしつこく話しかけている女子生徒がいた。
「どうですか?あなたも私の部活にはいりませんか?」
「いや、俺は別に」
「ああっ、そこの人!ウチの部活はあなたに向いてると思います!是非どうですか?」
「いや、私バスケ部に決めてるので」
「ねえ、そこの君ーーー!」
どうやら手当たり次第に声をかけまくっているようだ。実にやかましい。縦軸は三角に小声で話しかける。
「三角さん、あの人って」
「2年5組の積元微さん。部活紹介で目立ってたわね」
縦軸たちは入学式の2日後にあった部活紹介を思い出していた。ここでは、各部活の部員たちが体育館で1年全員に対して自分たちの部の魅力を各々の方法でアピールするのだ。
そんな中、他の有象無象とは一線を画す者がいた。その名は積元微。彼女は両手で大量の紙束や本を抱えて現れたのだ。そして彼女はそれらを床に置くと1つを手に取って1年に見せつける。
「見て見て!これね、チュパカブラっていうUMAの絵なんだ!ヤギの血を吸う者って意味なんだって。それでこっちの写真はね、ラーガルフリョートオルムリンっていう怪物の写真だよ。あ、それでねそれでね、こっちは……」
数分後、教師が静止するまで彼女は未確認生物やら妖怪やらの紹介をしまくった。
「え、もう時間⁉︎そんな~、じゃあみんな、民間伝承研究部をよろしくね!」
そして彼女は大量の資料を抱えて去っていった。
「趣味全開って感じだったよね」
「そうね、まあ興味ないけど」
ていりが縦軸を冷たくあしらっていると、微が縦軸たちに気づいて近づいて来た。
「ねえねえ、君たち。民間伝承研究部に入って見みない?絶対合ってると思うよ!」
「いや、あの、その……」
「お断りします」
縦軸が困惑してる隙にていりが勧誘を一刀両断する。
「私は忙しいんです。異世界のことを調べないといけないので部活に打ち込んでる暇はないんです」
容赦ないていりの言葉に、しかし微は目を輝かせた。
「ねえねえねえ!今『異世界』って言ったよね?何?君も異世界のこと知ってるの?」
「君も…?」
「知ってるんだね?よし、2人とも採用!放課後部室においで!」
「え、僕もですか?」
「ちょっと待ってください。あなた、異世界のこと何か知ってるんですか?」
「あ、私勧誘しなくちゃいけないからもう行くね!部室は案内するから、じゃあね!」
微は走り去っていった。
「な……何だったんだ。凄かったね、三角さん……ん?どうかしたの?」
「あの人、異世界について何か知っている?」
「三角さん?」
「積元微……彼女は一体?」
「おーい、三角さーん?」
「虚君、彼女には、民間伝承研究部には何かあるわ。調べるわよ」
「だから何故僕まで」
放課後、微に連れられ縦軸とていりは民間伝承研究部の部室へとやって来ていた。校舎の隅っこの誰も来ないであろう空き教室を部室にしたようだ。
ドアの横には「民間伝承研究部」と書かれた表札らしき物がある。
「ようこそ、民間伝承研究部へ!さあさあ、中に入って。いろいろ話そ」
「よ、よろしくお願いします」
「失礼します」
縦軸とていりが中に入ると、そこは中々趣味に満ちた光景だった。本棚に敷き詰められた本は『ノストラダムスと世界戦争の秘密』、『フランス政府はジェヴォーダンの獣を隠している』など怪しいタイトルの本や、オカルト雑誌として有名な『月刊レムリア』もある。そして壁際にはおそらく部活紹介の時に使った物と思われる大量の資料が置かれている。
「とりあえず座って。まずは自己紹介しよ!私は2年5組の積元微!はい、次は2人の番だよ」
微は容赦なく自分のペースで進行していく。
「えっと、僕は1年7組の虚縦軸です。よろしくお願いします」
「同じく1年7組の三角ていり。それで、今朝の話の続きを聞きましょうか。異世界のこと何か知ってるんですか?」
「うん、知ってるよ!」
あっさり認めた微にていりが食いつく。
「詳しく教えてください。どんな魔法があるんですか、魔物は、冒険者ギルドってどんな感じですか?」
「ちょ、ちょっと、落ち着きなよ三角さん」
そんなていりと縦軸に対し、微は言い放つ。
「そんなに気になるなら、いっぺん実際に見てみる?」
「ごちそうさま。それじゃ行って来ます」
「うん、いってらっしゃい」
「気をつけてな」
縦軸はいつも通り家を出て学校へと向かう。
「おはよう、虚君。異世界について何か分かった?」
「ああ、三角さん、おはよう。残念ながら未だ何も分からずだよ」
途中で三角ていりに会い、そのまま2人で学校へ向かう。実は入学式の朝に話して以来、2人はよく話すようになったのだ。尤もていりが執拗に異世界の情報を縦軸に訊いてくるのがほとんどだが。どうやら彼女のこの話題を拒否しなかったのは縦軸だけだったようだ。
校門では上級生たちが熱心に新入部員を勧誘していた。
「陸上部どうですかー?」
「そこの君、弓道に興味ない?」
「アニ研募集中!推しについて語ろう!私は駆逐艦たちが大好きだーーー!」
「騒がしいわね」
「そうだね。三角さんは何か興味ある部活とか無いの?」
「特に無いわ。異世界のことが分かる部活でもあれば話は別だけど。そういうあなたは?」
「そうだな……特に無いかな。運動部は嫌いだし、文化部もこれってやつが無いし」
「そう」
そんな会話を交わしながら縦軸たちは教室へと向かう。
「1ー7」と書かれたプレートのある教室に入ると、既に何人か登校していた。そして彼らにしつこく話しかけている女子生徒がいた。
「どうですか?あなたも私の部活にはいりませんか?」
「いや、俺は別に」
「ああっ、そこの人!ウチの部活はあなたに向いてると思います!是非どうですか?」
「いや、私バスケ部に決めてるので」
「ねえ、そこの君ーーー!」
どうやら手当たり次第に声をかけまくっているようだ。実にやかましい。縦軸は三角に小声で話しかける。
「三角さん、あの人って」
「2年5組の積元微さん。部活紹介で目立ってたわね」
縦軸たちは入学式の2日後にあった部活紹介を思い出していた。ここでは、各部活の部員たちが体育館で1年全員に対して自分たちの部の魅力を各々の方法でアピールするのだ。
そんな中、他の有象無象とは一線を画す者がいた。その名は積元微。彼女は両手で大量の紙束や本を抱えて現れたのだ。そして彼女はそれらを床に置くと1つを手に取って1年に見せつける。
「見て見て!これね、チュパカブラっていうUMAの絵なんだ!ヤギの血を吸う者って意味なんだって。それでこっちの写真はね、ラーガルフリョートオルムリンっていう怪物の写真だよ。あ、それでねそれでね、こっちは……」
数分後、教師が静止するまで彼女は未確認生物やら妖怪やらの紹介をしまくった。
「え、もう時間⁉︎そんな~、じゃあみんな、民間伝承研究部をよろしくね!」
そして彼女は大量の資料を抱えて去っていった。
「趣味全開って感じだったよね」
「そうね、まあ興味ないけど」
ていりが縦軸を冷たくあしらっていると、微が縦軸たちに気づいて近づいて来た。
「ねえねえ、君たち。民間伝承研究部に入って見みない?絶対合ってると思うよ!」
「いや、あの、その……」
「お断りします」
縦軸が困惑してる隙にていりが勧誘を一刀両断する。
「私は忙しいんです。異世界のことを調べないといけないので部活に打ち込んでる暇はないんです」
容赦ないていりの言葉に、しかし微は目を輝かせた。
「ねえねえねえ!今『異世界』って言ったよね?何?君も異世界のこと知ってるの?」
「君も…?」
「知ってるんだね?よし、2人とも採用!放課後部室においで!」
「え、僕もですか?」
「ちょっと待ってください。あなた、異世界のこと何か知ってるんですか?」
「あ、私勧誘しなくちゃいけないからもう行くね!部室は案内するから、じゃあね!」
微は走り去っていった。
「な……何だったんだ。凄かったね、三角さん……ん?どうかしたの?」
「あの人、異世界について何か知っている?」
「三角さん?」
「積元微……彼女は一体?」
「おーい、三角さーん?」
「虚君、彼女には、民間伝承研究部には何かあるわ。調べるわよ」
「だから何故僕まで」
放課後、微に連れられ縦軸とていりは民間伝承研究部の部室へとやって来ていた。校舎の隅っこの誰も来ないであろう空き教室を部室にしたようだ。
ドアの横には「民間伝承研究部」と書かれた表札らしき物がある。
「ようこそ、民間伝承研究部へ!さあさあ、中に入って。いろいろ話そ」
「よ、よろしくお願いします」
「失礼します」
縦軸とていりが中に入ると、そこは中々趣味に満ちた光景だった。本棚に敷き詰められた本は『ノストラダムスと世界戦争の秘密』、『フランス政府はジェヴォーダンの獣を隠している』など怪しいタイトルの本や、オカルト雑誌として有名な『月刊レムリア』もある。そして壁際にはおそらく部活紹介の時に使った物と思われる大量の資料が置かれている。
「とりあえず座って。まずは自己紹介しよ!私は2年5組の積元微!はい、次は2人の番だよ」
微は容赦なく自分のペースで進行していく。
「えっと、僕は1年7組の虚縦軸です。よろしくお願いします」
「同じく1年7組の三角ていり。それで、今朝の話の続きを聞きましょうか。異世界のこと何か知ってるんですか?」
「うん、知ってるよ!」
あっさり認めた微にていりが食いつく。
「詳しく教えてください。どんな魔法があるんですか、魔物は、冒険者ギルドってどんな感じですか?」
「ちょ、ちょっと、落ち着きなよ三角さん」
そんなていりと縦軸に対し、微は言い放つ。
「そんなに気になるなら、いっぺん実際に見てみる?」
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