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第1章 民間伝承研究部編
転生遺族と入学式
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鳴り響く目覚まし時計のアラームを切り、虚縦軸はベッドから起き上がる。生物学的には今日の自分と昨日までの自分はあまり変わらない。せいぜい古くなった細胞が交代しているくらいだ。しかし、社会的に見れば彼は今日から高校生となる。
制服に着替え1階のリビングに降りると、母の素子が朝食を並べており、父の秀樹が新聞を読んでいた。
「縦軸、起きた?早く食べちゃいなさい」
「おぅ、縦軸おはよう。制服似合ってるじゃないか」
「うん、おはよう。母さん、父さん」
ありふれた日常らしい会話を交わす3人。すると、素子が口を開く。
「愛も、喜んでるわよ。きっと」
「……うん、そうだね」
縦軸は少し考えてありふれた返答をした。
「じゃあ行ってくるよ。入学式から遅刻する訳にはいかないし」
「うん、そうね。気をつけてね。あとから母さんたちも見に行くから」
「分かった。じゃあ、いってきます」
縦軸は柔らかく微笑みながらドアをくぐり、ドアノブから手を離すと同時に歩き出した。
縦軸は通学路を進みながら独り言を呟いていた。
「うーん……経験値は貯まってんだけどなあ。やっぱレベルってある程度上がったら伸び悩むもんだなあ」
その時、
「はあ?知らないわよ!私厨二病じゃないから!」
途端に前方から怒鳴り声が聞こえる。見ると、2人の女子生徒が言い争っているようだ。制服は縦軸と同じ高校のものである。
「そう。じゃあ、あなたの知り合いで誰か知ってる人いないかしら?」
「だから知らないって!それじゃ!」
怒鳴っていた方の女子が去っていく。取り残された方の女子は微動だにしていなかった。
その女子は後ろ姿からも気品が感じとれ、風にたなびく黒髪のストレートヘアが一際目を引いた。彼女が辺りを見回す。目が合ってしまった。すると、彼女が縦軸へ近づいてきた。
「ねえ、君、ちょっといいかしら?」
「え、僕ですか⁉︎は、はい!」
自分の顔を覗き込んで話しかけて来た女子に対して不自然な反応の縦軸。その女子は少しきつい目つきで、一見無愛想に見えるがそれがむしろ彼女の美しさを後押ししていた。いわゆる美人というやつだ。
「君に尋ねたい事があるの」
「僕にですか?」
「そう。君、異世界について何か知らない?」
「……はい?」
「だから、異世界のことを何か知らないかしらって訊いてるのよ」
縦軸は訳が分からなかったが、分かったこともあった。恐らく先程の口論の原因はこれだろう。きっと彼女はこのような質問を手当たり次第にしまくり、それが面倒くさくて先程のように怒りを買っているのだ。
(とにかく、常識的に返答しよう)
「何を言ってるんですか?異世界なんて僕は知りませんよ。そもそも何でそんなこと訊くんですか?」
「私は異世界の存在を信じてるの」
「は?」
「君だって小説とかゲームでよく見たことあるでしょ?魔法が存在して、勇者と魔王が戦う異世界。あれは別にラノベやRPGの中だけの存在じゃないわ。実在するの。私はそう信じてる。だから異世界について情報を集めているの。君は何か知らない?」
普通という価値観を勝手に決めて人に押し付けるのは良くない。しかしこの時ばかりは縦軸も思った。普通じゃない奴が来たと。
「えっと……ごめんなさい、全然知りません」
「そう、じゃあもういいわ。呼び止めてごめんなさい」
「あ、待って!」
「何?」
「名前は?僕は虚縦軸です。あなたは?」
「……三角ていり。それが何?」
「三角さんの事信じます。異世界、絶対あります」
「………そう」
そう言って彼女は去っていった。
「それでは、これより鳩乃杜高等学校入学式を始めます」
形式じみた時間が延々と過ぎていく。縦軸はとても退屈していた。
「続きまして、新入生代表挨拶。新入生代表、三角ていりさん」
「はい」
そこにいたのは、今朝出会った少女三角ていりだった。異世界の存在を信じ、何故か異世界について情報を集めているという謎の人物あるいは厨二病である。
「暖かな春の日に、こうして高校生となれたことを嬉しく思います。我々新入生一堂は…」
意外にも淡々と挨拶をこなしていくていり。縦軸としては、今朝道行く人に「異世界の事何か知らない?」と尋ねまくっていたイメージがあるので、優等生とは思わなかったのだ。
ていりが挨拶を終えて全員を見渡す。縦軸は一瞬目が合ったような気がした。
入学式を終えて予め振り分けられた教室に向かう。
教室では、担任が自己紹介を始めた。
「みんな始めまして。今日からお前たちの担任になった函田孝一だ。授業では物理を担当している。1年間よろしくな。よし、じゃあみんなの顔と名前を覚えときたいし、1人ずつ簡単に自己紹介してくれ」
そして1人ずつ簡単に名乗っていく。すると、あの人物がいることに気づいた。
「三角ていりです。よろしくお願いします」
どうやら、縦軸と彼女はクラスメイトらしい。
こうして縦軸の高校生活は幕を開けた。
制服に着替え1階のリビングに降りると、母の素子が朝食を並べており、父の秀樹が新聞を読んでいた。
「縦軸、起きた?早く食べちゃいなさい」
「おぅ、縦軸おはよう。制服似合ってるじゃないか」
「うん、おはよう。母さん、父さん」
ありふれた日常らしい会話を交わす3人。すると、素子が口を開く。
「愛も、喜んでるわよ。きっと」
「……うん、そうだね」
縦軸は少し考えてありふれた返答をした。
「じゃあ行ってくるよ。入学式から遅刻する訳にはいかないし」
「うん、そうね。気をつけてね。あとから母さんたちも見に行くから」
「分かった。じゃあ、いってきます」
縦軸は柔らかく微笑みながらドアをくぐり、ドアノブから手を離すと同時に歩き出した。
縦軸は通学路を進みながら独り言を呟いていた。
「うーん……経験値は貯まってんだけどなあ。やっぱレベルってある程度上がったら伸び悩むもんだなあ」
その時、
「はあ?知らないわよ!私厨二病じゃないから!」
途端に前方から怒鳴り声が聞こえる。見ると、2人の女子生徒が言い争っているようだ。制服は縦軸と同じ高校のものである。
「そう。じゃあ、あなたの知り合いで誰か知ってる人いないかしら?」
「だから知らないって!それじゃ!」
怒鳴っていた方の女子が去っていく。取り残された方の女子は微動だにしていなかった。
その女子は後ろ姿からも気品が感じとれ、風にたなびく黒髪のストレートヘアが一際目を引いた。彼女が辺りを見回す。目が合ってしまった。すると、彼女が縦軸へ近づいてきた。
「ねえ、君、ちょっといいかしら?」
「え、僕ですか⁉︎は、はい!」
自分の顔を覗き込んで話しかけて来た女子に対して不自然な反応の縦軸。その女子は少しきつい目つきで、一見無愛想に見えるがそれがむしろ彼女の美しさを後押ししていた。いわゆる美人というやつだ。
「君に尋ねたい事があるの」
「僕にですか?」
「そう。君、異世界について何か知らない?」
「……はい?」
「だから、異世界のことを何か知らないかしらって訊いてるのよ」
縦軸は訳が分からなかったが、分かったこともあった。恐らく先程の口論の原因はこれだろう。きっと彼女はこのような質問を手当たり次第にしまくり、それが面倒くさくて先程のように怒りを買っているのだ。
(とにかく、常識的に返答しよう)
「何を言ってるんですか?異世界なんて僕は知りませんよ。そもそも何でそんなこと訊くんですか?」
「私は異世界の存在を信じてるの」
「は?」
「君だって小説とかゲームでよく見たことあるでしょ?魔法が存在して、勇者と魔王が戦う異世界。あれは別にラノベやRPGの中だけの存在じゃないわ。実在するの。私はそう信じてる。だから異世界について情報を集めているの。君は何か知らない?」
普通という価値観を勝手に決めて人に押し付けるのは良くない。しかしこの時ばかりは縦軸も思った。普通じゃない奴が来たと。
「えっと……ごめんなさい、全然知りません」
「そう、じゃあもういいわ。呼び止めてごめんなさい」
「あ、待って!」
「何?」
「名前は?僕は虚縦軸です。あなたは?」
「……三角ていり。それが何?」
「三角さんの事信じます。異世界、絶対あります」
「………そう」
そう言って彼女は去っていった。
「それでは、これより鳩乃杜高等学校入学式を始めます」
形式じみた時間が延々と過ぎていく。縦軸はとても退屈していた。
「続きまして、新入生代表挨拶。新入生代表、三角ていりさん」
「はい」
そこにいたのは、今朝出会った少女三角ていりだった。異世界の存在を信じ、何故か異世界について情報を集めているという謎の人物あるいは厨二病である。
「暖かな春の日に、こうして高校生となれたことを嬉しく思います。我々新入生一堂は…」
意外にも淡々と挨拶をこなしていくていり。縦軸としては、今朝道行く人に「異世界の事何か知らない?」と尋ねまくっていたイメージがあるので、優等生とは思わなかったのだ。
ていりが挨拶を終えて全員を見渡す。縦軸は一瞬目が合ったような気がした。
入学式を終えて予め振り分けられた教室に向かう。
教室では、担任が自己紹介を始めた。
「みんな始めまして。今日からお前たちの担任になった函田孝一だ。授業では物理を担当している。1年間よろしくな。よし、じゃあみんなの顔と名前を覚えときたいし、1人ずつ簡単に自己紹介してくれ」
そして1人ずつ簡単に名乗っていく。すると、あの人物がいることに気づいた。
「三角ていりです。よろしくお願いします」
どうやら、縦軸と彼女はクラスメイトらしい。
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