転生遺族の循環論法

はたたがみ

文字の大きさ
上 下
1 / 150
第1章 民間伝承研究部編

虚愛の自殺

しおりを挟む
 私は今から自殺します。私の名前はうつろあい。15歳、中学3年生です。何で自殺するかですって?いじめに決まっています。

 いじめの始まりは中学1年です。私はちっちゃな頃から運動音痴で、体育の時間はよくみんなに笑われていました。そんな自分を変えるべく、私はバドミントン部に入部しました。個人競技なら弱くてもみんなの足を引っ張らずに済みますし(団体戦なんて言葉はその後知りました)。

 そのバドミントン部には同じ1年で、天才ともいえる人物がいました。彼女は幼い頃からバドミントンに打ち込んできたらしく、不幸にも彼女と対戦した時は1点も取れずに負けました(21点3セットです)。

 さて、そんな彼女にも欠点がありました。単刀直入に言うと、性格がクズそのものだったのです。

私が走り込みで1人置いていかれたときには

「遅っ!え、人間ってあんなに遅く走れるの?」

私が腕立て伏せをしていると

「ちょっとー、ちゃんとできてないじゃん。まじウケる!」

私が彼女に負けたときには

「うぇーい!豚が勝てると思うなよ!」

まあこんな感じで暴言を吐かれていたのです。それだけに留まらず、私の教科書やノートを盗む、休み時間に自主的に勉強していただけでからかってくるなど、徐々にいじめはエスカレートしていきました。

 え?案外大したことないじゃないかですって?

 いるんですよ、そういう連中。いいですか、こういうのは他所と比べて云々ではなく、ひがいしゃが苦痛を感じるかどうかの問題なんです!

 まあ兎に角そういったいじめを毎日受けていました。するといつの間にか、同じクラスの半分以上がいじめに加わるようになりました。
 友達ももちろんいましたが、彼女とていじめに自分から巻き込まれにいくほど馬鹿ではありません。

「ごめんね、愛。助けてあげられなくて……」

ある日の帰り道、涙を流しながら私に謝って来た彼女の顔は今でも覚えています。私も彼女の判断を肯定しています。


 とはいえいじめは無くなりません。先生に頼ることも考えましたが、それはそれで嫌です。実は私、小学生の時に宿題の出来が悪くて当時の担任に叱られて以来、教師というものにそれなりの嫌悪感があるのです。いじめを告発して面談になったり、担任が家に様子を見に来るようなことになれば、今より酷い状況といえます。


 まあそういう訳で、私は自殺するのです。そして現在、横断歩道の手前にいます。目の前には赤々と光る信号、そして向こうからはトラック。もう覚悟はできています。さあ、いきましょう!


 私は一歩ふみだしました。トラックのクラクションが聞こえます。

そしてその直後、私の体に激痛が走ります。

良かった、最近は自動ブレーキなるものが開発されているらしいですからもしかしたらと心配していたんです。意識が遠くなり、周りの人たちの叫び声がずっと遠くに聞こえます。

 もう大丈夫。やっとあの辛い日々から解放されます。走馬灯が駆け巡ります。思い出したのは家族、特に弟の姿でした。年の離れた弟でしたが、私にとても懐いてくれ、

「大きくなったらお姉ちゃんと結婚する!」

なんて言ってくれた事もありました。

ごめんね、縦軸たてじく。お姉ちゃん、もう耐えられないんだ。せめて、私の分まで幸せになって。じゃあね、縦軸。

 私の意識は暗闇に沈み、そして、再び浮かび上がったのでした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...