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第3章 研究所の陰謀
第29話 最高傑作の人間兵器
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あれから数日後、生物兵器研究所で研究員達の間で会議が行われていた。最高傑作の人間兵器であるハンニバルと、致命傷の状態から復活を果たし改造人間となったマティアスの話題でだ。
「オスカー博士、新たなる最高傑作の人間兵器が生まれたというのは本当か?」
白衣を着た研究員の1人がオスカーに声を掛ける。
「あぁ、ハンニバルとマティアスの戦闘データは解析済みだ。中東のテロリストどもを騙してハンバーガー工場を攻めさせて、あの2人とぶつけるように仕向けた甲斐があったもんさ。俺達の仕事は戦争が起きてナンボだからな」
オスカーの口から衝撃の事実が出た。先日のハンバーガー工場乗っ取り事件は全てオスカーが仕組んだものだったのだ。テロリスト達はオスカーの実験の捨て駒に過ぎなかった。
「最近、俺の手によって改造人間となったマティアスのことだ。パワーや体力はハンニバルに若干劣るものの、身体能力や新型兵器を使いこなす技量は圧倒的にハンニバルを上回っていると見た。しかも改造手術を受けた者特有の精神疾患の兆候がほぼ見られない。まさに彼こそ最高傑作の人間兵器と言えるだろう」
オスカーがマティアスの強さをその場にいる研究員達に説明すると、彼らは歓喜の声を上げた。
「だが、ハンニバルはそれ以上に強くなれると俺は確信している。あいつは1970年代に作られた旧型の改造人間でありながらあの戦闘力を誇るからな。最新の技術を取り入れれば更に強くなるのは間違いない」
「オスカー博士、まさかハンニバルに更なる改造手術を施す気か!? 無茶な改造手術は精神に弊害が及ぶことは分かっているだろう? これ以上の改造は止めた方が……」
「待て、まだハンニバルを改造すると決めたわけじゃない。次の検証結果次第でまた考える」
オスカーはそう言うが、周りには不穏な空気が漂っていた。他の研究員達は最悪の事態にだけはならないようにと、ただひたすら祈り続けていた。
そして翌日、マティアスとハンニバルの元にオスカーから連絡が来た。研究の為の手伝いをして欲しいとのことで、詳細は現地で話すとのことだ。
2人は軍用車に乗って軍事基地から生物兵器研究所へ向かった。そしてオスカーの部屋に入り、彼と対面する。
「よく来たね。今回の仕事内容なんだが、お前達同士の戦いを見てみたいんだ。勝った方には報酬を渡そう。どうだ、やってくれないか?」
「それって俺達同士で殴り合えってことなのかよ!? 俺も強くなったマティアスと戦ってみたいとは思っていたけどよ……」
「なるほど、お互い戦うことで今まで見えなかった部分が見えてくるかも知れないな」
2人とも自分の相棒と戦うことに少し気が引けていたが、同時にお互いどちらが強いのか気になっていた。2人は戸惑いを見せつつも今回の依頼に承諾する。
「おお、やってくれるか! では一旦外へ移動しよう」
オスカーの言う通り、3人は研究所の外の広々とした場所へ移動する。武器を使って戦うのは危険なので、2人は武器を端に置き、お互いに素手で戦うことになった。
オスカーは2人から離れた場所で審判のような立ち位置を取っており、手にはビデオカメラを持っている。
「では、どちらかがギブアップするまで戦ってくれ。それではファイト!」
オスカーの掛け声と共に、2人は同時に動き始めた。ハンニバルがパンチを仕掛けると、マティアスもパンチで対抗する。
互いの拳が激しくぶつかり合い、拳に強い衝撃が生じた。2人のパワーの差もあって、拳に受けたダメージはマティアスの方が上だ。
しばらく殴り合いを続けていると、マティアスはパワーではハンニバルに勝てないと分かったのか、今度は防御体勢に入りハンニバルの猛攻をガードし続ける。
「マティアスもあれからすげー強くなったよな。だがパワーでは負けていないぜ!」
「相変わらずハンニバルは馬鹿力だな。だが私は改造人間になる前から、お前に少しでも近づこうと己を鍛えてきたんだ。磨いてきた技でお前に勝つ!」
マティアスはハンニバルのパンチを受け流すと、素早くハンニバルの側面に回って顔にパンチを食らわせる。
「やるな……! だが、その程度では俺は倒せねぇぜ!」
ハンニバルは顔を殴られて怯んだが、彼も負けじとカウンターパンチを放った。
マティアスはその攻撃を両手でガードするも、あまりのパワーに後方へ吹っ飛ばされてしまう。
マティアスは受け身を取りすぐに立ち上がるが、ハンニバルがすぐさまダッシュでマティアスを追いかけて飛び掛かってきた。
ここでハンニバルに押さえつけられたら、パワーで劣るマティアスに勝ち目は無いだろう。
マティアスはハンニバルの飛び掛かりを側面に回避し、ハンニバルが空振りをした一瞬の隙を狙って横から飛び蹴りを食らわせた。
ハンニバルが横腹を強く蹴られて体勢を崩している隙に、マティアスは更にパンチやキックを組み合わせた連続技で追撃を仕掛けていく。
ハンニバルも相手の攻撃に怯みつつも反撃を仕掛けようとしたが、マティアスは反撃される直前でサマーソルトキックを放ち、ハンニバルを真上に打ち上げた。
マティアスは上空に吹っ飛んだハンニバルに向かってジャンプし、ハンニバルを空中で掴み直して一緒に落下し、そのまま地面に強く叩き付けた。
「ぐあああっ!! ギブアップだ! マティアス、どこでそんな技を覚えたんだ……?」
地面に叩きつけられたハンニバルはギブアップ宣言をした。まだ戦う体力は残っているはずだが、このまま戦い続けても勝てないと彼は判断したのだろう。
「休暇中に見ていたテレビアニメのヒーローの動きを参考にしたんだ。改造人間の肉体は凄いな。普通の人間では真似出来ない非現実的な動きさえも、見様見真似で簡単に取得出来てしまうのだからな」
マティアスはアメコミのヒーローを参考に新しい技を取得していた。パワータイプのハンニバルに殴り合いで勝つには、素早い身のこなしとテクニックが必要不可欠だ。
マティアスが娯楽目的で見ていたアニメがここで役に立っていた。
「2人ともお疲れさん。良い戦いを見せてもらったよ。マティアスの急激な進化にはドクター驚きだよ!」
オスカーも2人の戦いをカメラに収めることが出来てご満悦だ。
「さて、検証は終わったし、一旦研究室に戻ろうか」
オスカーは2人を連れて自分の研究室に戻る。そこで2人に礼を言い、今回の報酬をマティアスに渡した。それをハンニバルが羨ましそうに見つめている。
「そんな目で見なくとも、後でお前にも分けてやるから心配するな。今日は良い戦いが出来たな」
「あぁ、今回はお前に勝ちを譲ってやったが、次は負けないからな!」
2人とも戦いに満足している様子だが、戦いに負けたハンニバルだけは悔しそうな表情をしている。
少し前までは自分より弱かったマティアスが改造手術で急に強くなり、最高傑作の人間兵器と呼ばれていた自分を超えてしまったことで、ハンニバルは自信を失いかけていた。
その様子にオスカーが気づき、声を掛ける。
「ハンニバル、お前だけここに残ってくれないか? ちょっと話がある。マティアスはもう帰って良いぞ」
オスカーはハンニバルに残るように持ち掛ける。彼が何を考えているのか、マティアスはとても気になっていた。
「マティアス、俺のことは大丈夫だぜ。車の鍵は渡しておくから、今日は1人で帰りな。俺は後で歩いて帰るぜ」
ハンニバルはマティアスの表情を読み取ったのか、安心させようと元気に振る舞った。
しかし、その表情の奥からは心の闇を感じさせる。
「あぁ、分かった。お前もすぐに帰って来いよ」
マティアスはハンニバルのことが気がかりだったが、車の鍵を受け取って研究所を後にし、1人で軍用車を運転して軍事基地へ帰って行った。
この時、マティアスは思いもしなかった。いつものハンニバルとの会話がこれで最後になってしまうことを……。
「オスカー博士、新たなる最高傑作の人間兵器が生まれたというのは本当か?」
白衣を着た研究員の1人がオスカーに声を掛ける。
「あぁ、ハンニバルとマティアスの戦闘データは解析済みだ。中東のテロリストどもを騙してハンバーガー工場を攻めさせて、あの2人とぶつけるように仕向けた甲斐があったもんさ。俺達の仕事は戦争が起きてナンボだからな」
オスカーの口から衝撃の事実が出た。先日のハンバーガー工場乗っ取り事件は全てオスカーが仕組んだものだったのだ。テロリスト達はオスカーの実験の捨て駒に過ぎなかった。
「最近、俺の手によって改造人間となったマティアスのことだ。パワーや体力はハンニバルに若干劣るものの、身体能力や新型兵器を使いこなす技量は圧倒的にハンニバルを上回っていると見た。しかも改造手術を受けた者特有の精神疾患の兆候がほぼ見られない。まさに彼こそ最高傑作の人間兵器と言えるだろう」
オスカーがマティアスの強さをその場にいる研究員達に説明すると、彼らは歓喜の声を上げた。
「だが、ハンニバルはそれ以上に強くなれると俺は確信している。あいつは1970年代に作られた旧型の改造人間でありながらあの戦闘力を誇るからな。最新の技術を取り入れれば更に強くなるのは間違いない」
「オスカー博士、まさかハンニバルに更なる改造手術を施す気か!? 無茶な改造手術は精神に弊害が及ぶことは分かっているだろう? これ以上の改造は止めた方が……」
「待て、まだハンニバルを改造すると決めたわけじゃない。次の検証結果次第でまた考える」
オスカーはそう言うが、周りには不穏な空気が漂っていた。他の研究員達は最悪の事態にだけはならないようにと、ただひたすら祈り続けていた。
そして翌日、マティアスとハンニバルの元にオスカーから連絡が来た。研究の為の手伝いをして欲しいとのことで、詳細は現地で話すとのことだ。
2人は軍用車に乗って軍事基地から生物兵器研究所へ向かった。そしてオスカーの部屋に入り、彼と対面する。
「よく来たね。今回の仕事内容なんだが、お前達同士の戦いを見てみたいんだ。勝った方には報酬を渡そう。どうだ、やってくれないか?」
「それって俺達同士で殴り合えってことなのかよ!? 俺も強くなったマティアスと戦ってみたいとは思っていたけどよ……」
「なるほど、お互い戦うことで今まで見えなかった部分が見えてくるかも知れないな」
2人とも自分の相棒と戦うことに少し気が引けていたが、同時にお互いどちらが強いのか気になっていた。2人は戸惑いを見せつつも今回の依頼に承諾する。
「おお、やってくれるか! では一旦外へ移動しよう」
オスカーの言う通り、3人は研究所の外の広々とした場所へ移動する。武器を使って戦うのは危険なので、2人は武器を端に置き、お互いに素手で戦うことになった。
オスカーは2人から離れた場所で審判のような立ち位置を取っており、手にはビデオカメラを持っている。
「では、どちらかがギブアップするまで戦ってくれ。それではファイト!」
オスカーの掛け声と共に、2人は同時に動き始めた。ハンニバルがパンチを仕掛けると、マティアスもパンチで対抗する。
互いの拳が激しくぶつかり合い、拳に強い衝撃が生じた。2人のパワーの差もあって、拳に受けたダメージはマティアスの方が上だ。
しばらく殴り合いを続けていると、マティアスはパワーではハンニバルに勝てないと分かったのか、今度は防御体勢に入りハンニバルの猛攻をガードし続ける。
「マティアスもあれからすげー強くなったよな。だがパワーでは負けていないぜ!」
「相変わらずハンニバルは馬鹿力だな。だが私は改造人間になる前から、お前に少しでも近づこうと己を鍛えてきたんだ。磨いてきた技でお前に勝つ!」
マティアスはハンニバルのパンチを受け流すと、素早くハンニバルの側面に回って顔にパンチを食らわせる。
「やるな……! だが、その程度では俺は倒せねぇぜ!」
ハンニバルは顔を殴られて怯んだが、彼も負けじとカウンターパンチを放った。
マティアスはその攻撃を両手でガードするも、あまりのパワーに後方へ吹っ飛ばされてしまう。
マティアスは受け身を取りすぐに立ち上がるが、ハンニバルがすぐさまダッシュでマティアスを追いかけて飛び掛かってきた。
ここでハンニバルに押さえつけられたら、パワーで劣るマティアスに勝ち目は無いだろう。
マティアスはハンニバルの飛び掛かりを側面に回避し、ハンニバルが空振りをした一瞬の隙を狙って横から飛び蹴りを食らわせた。
ハンニバルが横腹を強く蹴られて体勢を崩している隙に、マティアスは更にパンチやキックを組み合わせた連続技で追撃を仕掛けていく。
ハンニバルも相手の攻撃に怯みつつも反撃を仕掛けようとしたが、マティアスは反撃される直前でサマーソルトキックを放ち、ハンニバルを真上に打ち上げた。
マティアスは上空に吹っ飛んだハンニバルに向かってジャンプし、ハンニバルを空中で掴み直して一緒に落下し、そのまま地面に強く叩き付けた。
「ぐあああっ!! ギブアップだ! マティアス、どこでそんな技を覚えたんだ……?」
地面に叩きつけられたハンニバルはギブアップ宣言をした。まだ戦う体力は残っているはずだが、このまま戦い続けても勝てないと彼は判断したのだろう。
「休暇中に見ていたテレビアニメのヒーローの動きを参考にしたんだ。改造人間の肉体は凄いな。普通の人間では真似出来ない非現実的な動きさえも、見様見真似で簡単に取得出来てしまうのだからな」
マティアスはアメコミのヒーローを参考に新しい技を取得していた。パワータイプのハンニバルに殴り合いで勝つには、素早い身のこなしとテクニックが必要不可欠だ。
マティアスが娯楽目的で見ていたアニメがここで役に立っていた。
「2人ともお疲れさん。良い戦いを見せてもらったよ。マティアスの急激な進化にはドクター驚きだよ!」
オスカーも2人の戦いをカメラに収めることが出来てご満悦だ。
「さて、検証は終わったし、一旦研究室に戻ろうか」
オスカーは2人を連れて自分の研究室に戻る。そこで2人に礼を言い、今回の報酬をマティアスに渡した。それをハンニバルが羨ましそうに見つめている。
「そんな目で見なくとも、後でお前にも分けてやるから心配するな。今日は良い戦いが出来たな」
「あぁ、今回はお前に勝ちを譲ってやったが、次は負けないからな!」
2人とも戦いに満足している様子だが、戦いに負けたハンニバルだけは悔しそうな表情をしている。
少し前までは自分より弱かったマティアスが改造手術で急に強くなり、最高傑作の人間兵器と呼ばれていた自分を超えてしまったことで、ハンニバルは自信を失いかけていた。
その様子にオスカーが気づき、声を掛ける。
「ハンニバル、お前だけここに残ってくれないか? ちょっと話がある。マティアスはもう帰って良いぞ」
オスカーはハンニバルに残るように持ち掛ける。彼が何を考えているのか、マティアスはとても気になっていた。
「マティアス、俺のことは大丈夫だぜ。車の鍵は渡しておくから、今日は1人で帰りな。俺は後で歩いて帰るぜ」
ハンニバルはマティアスの表情を読み取ったのか、安心させようと元気に振る舞った。
しかし、その表情の奥からは心の闇を感じさせる。
「あぁ、分かった。お前もすぐに帰って来いよ」
マティアスはハンニバルのことが気がかりだったが、車の鍵を受け取って研究所を後にし、1人で軍用車を運転して軍事基地へ帰って行った。
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