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親が決めた婚約者のモイツ伯爵家嫡男ランセルと私は、政略結婚ながらも仲良くしていた。
この人ならば、結婚してからも愛し愛され幸せになれるのではと信じていた。

私にはイル男爵家令嬢キリナという幼馴染みが居た。
彼女とは幼少期より親しくしていたし、結婚してからも親友として付き合っていくのだと信じていた。

だからこそ、私は2人を会わせたのだ。

まさか2人が私を裏切るなんて思いもしないで…。

2人の裏切りに気が付いたのは、我がバルック侯爵家で開かれた夜会での事。

普段なら男爵家であるキリナは招待しないが、彼女がどうしても参加したい!といって頼んで来たので、私は両親に頼んで彼女を参加させたのだ。

勿論、婚約者のランセルは、私のパートナーとして参加していた。

一通りの方々に挨拶を済ませ、ランセルを残し化粧室へと向かった。

広間に戻り、ランセルを捜すが姿が見えない。
化粧室にでも行ったのかしら?と思い、キリナを捜すが彼女の姿も見えない事に気が付いた。

高位貴族の夜会など参加する事が殆んど無い男爵家のキリナだ。
疲れてしまったのかもしれない。
心配になりキリナを捜していれば、庭の方で話し声が聞こえた。

良かった。疲れたキリナにランセルが付き添っているのね。

そう思い、声のする方へと歩き出す。

「ああキリナ!今日の君は、とても綺麗だ。他の奴が君をチラチラと見ているのにとても腹が立ったよ。キリナは俺の物だと何度言いそうになったか。ああキリナ、君が好きだ。愛しているよ」

「嬉しいわ。ランセル、私も貴方を愛しているわ。何度セシリアに、ランセルは私の物よ!と叫びそうになった事か…」

そう言うと2人は抱き合い口付けをした。

どういう事なの?私は2人に裏切られていたの?

私は、訳が分からず、ふらつきながら屋敷に戻った。

顔色が悪い私に気が付いたお兄様が駆け寄って来てくれた。

私が、今、見てきた事をお兄様に話すと、お兄様は直ぐにお父様とモイツ伯爵を呼びに行った。

何も知らずに庭からランセルとキリナが戻って来た。

「あ、あれ?皆、揃ってどうしたのですか?」

「ランセル。お前、庭で何をしていたのだ?」

「あ、あの~キ、キリナが人に酔ったと言うので庭で休ませて居たのです」

「それは抱き締めて人工呼吸をしないと行けない程に具合が悪かったのか!?」

「なっ……はぁー、知られてしまったのならしょうがありません。父上、私はキリナ・イルを愛しています。セシリアとの婚約は解消し、キリナとの結婚を許して下さい!」

開き直るランセルに、お父様もお兄様も激怒し、不貞を働いたランセルと私は婚約破棄となった。
勿論、それ相当の慰謝料がモイツ伯爵家とイル男爵家に請求された。

モイツ伯爵家は、新事業の援助を我がバルック侯爵家に頼んでいたが、それも白紙となった。

イル男爵家は、元々そんなに裕福な男爵家では無い。
莫大な慰謝料を払う事が出来ず、持っていた僅かな領地をバルック侯爵家に譲る事となり、没落し家族は平民となった。
残った支払いはキリナが払う。

ランセルと結婚をすれば、直ぐにでも全て払える。
伯爵夫人になれば、今までとは違い、裕福な暮らしが出来るわ♪

キリナは、知らなかったのだ。

モイツ伯爵家は、新事業が上手く行っておらず、バルック侯爵家の援助無しでは伯爵家維持も厳しい事を…。
そしてランセルも、セシリアとの結婚がモイツ伯爵家存続の為だという事を、すっかり忘れてしまっていたのだ。

バルック侯爵に援助を断られたモイツ伯爵は、他の貴族達に援助を申し込んだが、バルック侯爵家を敵に回し手を差し伸べる者などいなかった。

負債は、どんどん膨れ上がっていった。
疲れ果てたモイツ伯爵は、家督を息子のランセルに譲り、領地の外れに小さな家を買い、夫人と余生を過ごす為に領地へと戻って行った。
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