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シャルラインのお披露目パーティー当日。
朝から屋敷の中は大忙し。
シャルラインも私も磨きに磨かれて…脇役のわたしよりも主役のシャルラインにもっと手を掛けて欲しい。
「さぁお嬢様、ドレスに着替えましょう。」
そう言って侍女が持って来たドレスは、私が誂えたクリーム色のドレスでは無かった。
「早朝にヤーバン伯爵子息様から届きました。もう愛が溢れていますね。ある意味、怖いくらいに独占欲丸出しですけれど…。」
「ドミニク様から私に?シャルラインにではなく私に?本当に?間違えてない!?」
何を分からない事を言っているのだと怪訝そうな顔をして侍女達は手際良く私にドレスを着付ける。
そのドレスは、紺色の布地にドミニク様の髪色のシルバーで華やかに刺繍が施されていた。
それと一緒に贈られてきたダイヤのネックレスにイヤリング。
これって総額いくらなの!?
め、目眩がしそうなんですけれど…。
着替えが済むと、私は直ぐにアラン兄様の元に急いだ。
「アラン兄様!変です!!可笑しいです!!!ドミニク様からシャルラインにではなく、私宛にドレスが…はっ!これはもしや最後のプレゼントでしょうか!?慰謝料のつもりで…」
「そんな事有るかぁー!!そんな恐ろしいほど独占欲丸出しのドレスを好きでもない奴に贈る馬鹿はいない!お前もいい加減に現実を見ろっ!あいつの眼にはお前しか見えていないぞ。ドミニクがシャルラインを好きだなんて妄想…うわぁー、あーそうだった。俺は、リリーを出迎えないとなぁー、あー忙しい、忙しい。」
「もう急に叫んで何なんですの?」とアラン兄様を追い掛け様かと思い、振り返ろうとして後ろから抱き締められる。
「僕が誰を好きだって?可笑しいな?僕の愛はマリーラに届いていなかったのかな?」
「あ、あのドミニク様?ドミニク様の愛は(シャルラインに)ちゃんと届いていると思いますわよ。」
「本当に?ちゃんと届いている?」
「ええ、間違いないと思います。なので離し…ん、んふっ…」
ドミニク様は私の向きを変えると口付けをした。
『な、何?何で?どうして!?私、口付けされてる?』
「あ~マリーラ、可愛い♡可愛過ぎて発表まで待てなかった。でも口付けくらい良いよね?愛し合っているんだもの、遅かれ早かれだよね。」
「良い訳あるかぁー!!」と後から来たヤーバン伯爵に頭を殴られているドミニク様は、とても痛そうだ。
ヤーバン伯爵夫妻に謝られた。
「愚息が本当に済まない…。」と言う伯爵。
そうよね、これから婚約解消するのに、私のファーストキスを奪うなんて、なんて罪つくりな人なのだ。
パーティーが始まる。
お父様は、お義母様とシャルラインを紹介した。
会場に来ていた子息達のどよめき。
『うふふ、そうでしょう、そうでしょう。うちのシャルラインは天使の様な可愛い子なのよ。でも残念ね。シャルラインにはもう決まった人が…』
「そしてもう1つめでたい御報告があります。この度、ヤーバン伯爵家嫡男ドミニク殿と我が娘マリーラの結婚式の日取りが決まりましたので御報告致します。」
ん?
いつの間にか私の隣に来ていたドミニク様。
その横にはヤーバン伯爵夫妻。
あれあれ?
「…結婚式?えーっと誰と誰の?」
「もちろん君と僕の。君が卒業した次の日に挙げるんだよ。もう卒業したら1日だって待ってられないからね。本当に良く耐えていると思うよ。本当なら今すぐにでも連れ帰って部屋に閉じ込めてしまいたいのにさぁー。さすがにそんな事をすればマリーラに嫌われると皆が言うから耐えてる。」
「お義姉様、おめでとうございます。でも本当に良いのですか?ドミニク様は重いというか、キモいというか、私は大好きなお義姉様が不幸になるのではないかと心配ですわ。お義姉様、もう1度、考え直した方が良ろしいのではないでしょうか?今ならまだ間に合いますわ!」
「酷いなぁー。シャルライン嬢とはマリーラ愛を語り合った仲ではないか。」
「だからですわ。ドミニク様のお義母姉様への愛を微笑ましいと思えたのは最初だけで、話をする内に独占欲が凄いし、重いし、キモいし…。私のお義姉様愛とは全然違いましたわっ!」
「あなた達、好き合っていたのでは無いの!?」
「「はあぁー!?有り得(ません)ない」」
私の勘違い!?
あんなに仲睦まじく絵になっていた2人が、私の目の前で罵り合っている。
「だから言ったろう。ドミニクがお前以外を好きになるなんて有り得ない事だと。なんたってドミニクは、お前と初めて会った時に『僕のお嫁さん』と言って離れなかったんだからなっ」
そんなの覚えていない。
「で、でも私はシャルラインに意地悪して…」
「意地悪?いつですか?お義姉様は、男爵家から来た私に色々と教えて下さって、とても優しくして下さいました。優しくされた覚えはあるのですが、意地悪された覚えは有りませんよ?私の様な者を受け入れてくれて可愛がってくれて感謝しか有りませんわ。」
なんて事なの!
私のしてきた事は嫌がらせや意地悪にも思われていなかったなんて。
「アハハ!マリーラ、良かったなぁー!!」
そう言って笑うアラン兄様を睨んでポコポコと叩いていると、ドミニク様が肩を抱き寄せて来た。
「マリーラ。兄と言えど他の男と仲良くするのは頂けないなぁ~。僕を、僕だけを見て、愛しのマリーラ♡」
これは、皆の言う通り、少し?愛が重めかも知れない。
けれど嬉しい!と思う私も、愛が重めなのかも知れない。
End
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
朝から屋敷の中は大忙し。
シャルラインも私も磨きに磨かれて…脇役のわたしよりも主役のシャルラインにもっと手を掛けて欲しい。
「さぁお嬢様、ドレスに着替えましょう。」
そう言って侍女が持って来たドレスは、私が誂えたクリーム色のドレスでは無かった。
「早朝にヤーバン伯爵子息様から届きました。もう愛が溢れていますね。ある意味、怖いくらいに独占欲丸出しですけれど…。」
「ドミニク様から私に?シャルラインにではなく私に?本当に?間違えてない!?」
何を分からない事を言っているのだと怪訝そうな顔をして侍女達は手際良く私にドレスを着付ける。
そのドレスは、紺色の布地にドミニク様の髪色のシルバーで華やかに刺繍が施されていた。
それと一緒に贈られてきたダイヤのネックレスにイヤリング。
これって総額いくらなの!?
め、目眩がしそうなんですけれど…。
着替えが済むと、私は直ぐにアラン兄様の元に急いだ。
「アラン兄様!変です!!可笑しいです!!!ドミニク様からシャルラインにではなく、私宛にドレスが…はっ!これはもしや最後のプレゼントでしょうか!?慰謝料のつもりで…」
「そんな事有るかぁー!!そんな恐ろしいほど独占欲丸出しのドレスを好きでもない奴に贈る馬鹿はいない!お前もいい加減に現実を見ろっ!あいつの眼にはお前しか見えていないぞ。ドミニクがシャルラインを好きだなんて妄想…うわぁー、あーそうだった。俺は、リリーを出迎えないとなぁー、あー忙しい、忙しい。」
「もう急に叫んで何なんですの?」とアラン兄様を追い掛け様かと思い、振り返ろうとして後ろから抱き締められる。
「僕が誰を好きだって?可笑しいな?僕の愛はマリーラに届いていなかったのかな?」
「あ、あのドミニク様?ドミニク様の愛は(シャルラインに)ちゃんと届いていると思いますわよ。」
「本当に?ちゃんと届いている?」
「ええ、間違いないと思います。なので離し…ん、んふっ…」
ドミニク様は私の向きを変えると口付けをした。
『な、何?何で?どうして!?私、口付けされてる?』
「あ~マリーラ、可愛い♡可愛過ぎて発表まで待てなかった。でも口付けくらい良いよね?愛し合っているんだもの、遅かれ早かれだよね。」
「良い訳あるかぁー!!」と後から来たヤーバン伯爵に頭を殴られているドミニク様は、とても痛そうだ。
ヤーバン伯爵夫妻に謝られた。
「愚息が本当に済まない…。」と言う伯爵。
そうよね、これから婚約解消するのに、私のファーストキスを奪うなんて、なんて罪つくりな人なのだ。
パーティーが始まる。
お父様は、お義母様とシャルラインを紹介した。
会場に来ていた子息達のどよめき。
『うふふ、そうでしょう、そうでしょう。うちのシャルラインは天使の様な可愛い子なのよ。でも残念ね。シャルラインにはもう決まった人が…』
「そしてもう1つめでたい御報告があります。この度、ヤーバン伯爵家嫡男ドミニク殿と我が娘マリーラの結婚式の日取りが決まりましたので御報告致します。」
ん?
いつの間にか私の隣に来ていたドミニク様。
その横にはヤーバン伯爵夫妻。
あれあれ?
「…結婚式?えーっと誰と誰の?」
「もちろん君と僕の。君が卒業した次の日に挙げるんだよ。もう卒業したら1日だって待ってられないからね。本当に良く耐えていると思うよ。本当なら今すぐにでも連れ帰って部屋に閉じ込めてしまいたいのにさぁー。さすがにそんな事をすればマリーラに嫌われると皆が言うから耐えてる。」
「お義姉様、おめでとうございます。でも本当に良いのですか?ドミニク様は重いというか、キモいというか、私は大好きなお義姉様が不幸になるのではないかと心配ですわ。お義姉様、もう1度、考え直した方が良ろしいのではないでしょうか?今ならまだ間に合いますわ!」
「酷いなぁー。シャルライン嬢とはマリーラ愛を語り合った仲ではないか。」
「だからですわ。ドミニク様のお義母姉様への愛を微笑ましいと思えたのは最初だけで、話をする内に独占欲が凄いし、重いし、キモいし…。私のお義姉様愛とは全然違いましたわっ!」
「あなた達、好き合っていたのでは無いの!?」
「「はあぁー!?有り得(ません)ない」」
私の勘違い!?
あんなに仲睦まじく絵になっていた2人が、私の目の前で罵り合っている。
「だから言ったろう。ドミニクがお前以外を好きになるなんて有り得ない事だと。なんたってドミニクは、お前と初めて会った時に『僕のお嫁さん』と言って離れなかったんだからなっ」
そんなの覚えていない。
「で、でも私はシャルラインに意地悪して…」
「意地悪?いつですか?お義姉様は、男爵家から来た私に色々と教えて下さって、とても優しくして下さいました。優しくされた覚えはあるのですが、意地悪された覚えは有りませんよ?私の様な者を受け入れてくれて可愛がってくれて感謝しか有りませんわ。」
なんて事なの!
私のしてきた事は嫌がらせや意地悪にも思われていなかったなんて。
「アハハ!マリーラ、良かったなぁー!!」
そう言って笑うアラン兄様を睨んでポコポコと叩いていると、ドミニク様が肩を抱き寄せて来た。
「マリーラ。兄と言えど他の男と仲良くするのは頂けないなぁ~。僕を、僕だけを見て、愛しのマリーラ♡」
これは、皆の言う通り、少し?愛が重めかも知れない。
けれど嬉しい!と思う私も、愛が重めなのかも知れない。
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