【完結】可愛い義妹の為ならば悪女を演じてみせますわ!

山葵

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「はぁー。シャルライン、貴女は何て鈍臭いのかしら?そんな事で伯爵令嬢として恥ずかしくないのかしら?貴女のせいで我がエルバン伯爵家が笑われるのよ!?もっと勉強なさいっ!!」

涙目になりながらもダンスにマナーに頑張っているシャルライン。

『ああ、なんて可愛いのかしら。もう可愛い過ぎて、まるで天使だわぁ~』

義妹の為ならば、意地悪な姉と言われても構わない。
涙目になりながら私を睨みつける顔に心は痛むけれど、ここは鬼にならないと行けない。

なぜなら幼馴染で伯爵令嬢というだけで平凡な顔の私と婚約したヤーバン伯爵家嫡男のドミニク様。
私なんかよりも、ドミニク様には天使の様なシャルライン相応しい。

とても優しく美丈夫なドミニク様とシャルラインが並んだ姿は神々しくて直視出来ないと私は思っている。

何も考えていない兄のアランは「そうかぁー?ちっとも眩しくないぞ?侍医を呼んで診てもらうか?それよりも、お前は平気なのか?」と言うけれど、私としてはアラン兄様の眼が可笑しいと思うし、あの2人の姿を見れるならば寧ろ嬉しいわ。


シャルラインがエルバン伯爵家にやって来たのは半年前の事。
お父様と、シャルラインの母が再婚したのだ。

男爵令嬢だったシャルラインは、貴族としての嗜みは有れど、高位貴族令嬢としての嗜みは1から勉強しなければならない。

伯爵令嬢として、いつの日か嫁ぐ時に酷い有り様で有れば、シャルラインもエルバン伯爵家も馬鹿にされてしまう。

シャルライン程の可愛い子で有れば、多数の高位貴族子息から釣書が届くだろう。

今からシャルラインのお披露目パーティーが楽しみだわ♪


ある晴れた日。
私の婚約者であるドミニク様との恒例のお茶会。
天気も良いので、庭園の東屋でお茶会をしていた。

「お義姉様。あっ!ご、ごめんなさい。お義姉様の姿が見えたので、お客様がいらっしゃるとは…」

「ドミニク様。この度、わたくしの義理の妹になりましたシャルラインです。シャルライン、こちらは、私の婚約者でヤーバン伯爵家御子息ドミニク様です。挨拶なさい。」

「始めまして、シャルライン嬢。ドミニク・ヤーバンだ。マリーラの話していた通り、可愛いらしいお嬢さんだね。」

シャルラインは、恥ずかしそうに顔を赤らめながら挨拶すると、東屋から立ち去ろうとする。

ドミニク様に許可を貰い、3人でお茶をする事にした。ドミニク様がシャルラインに話を振れば、可愛く顔を赤らめて俯きながら答えるシャルライン。

『こ、これは、もしやドミニク様に一目惚れとか?あれ?でも、私よりもこの2人の方がお似合いじゃない。ドミニク様も私よりもシャルラインに良く話し掛けているし、これは、もしかして2人の間に恋心が…あらあら、もしかして私は邪魔者?2人の仲を引き裂く悪女かしら。小さい頃よりドミニク様の事に好意を抱いていたけれど、ドミニク様の幸せを願うならばシャルラインに婚約者の座を渡すべきでよね。優しいドミニク様ならばシャルラインの事も大切にし幸せにしてくれる。そうよっ!私の好きな2人の幸せを願うならば、私が身を引きましょう。その為には、私が悪女になって婚約解消して貰わなければっ!』

それからの私はシャルラインに厳しくあたり、口を開けば小言を言った。

ドミニク様とのお茶会にはシャルラインも同席させ、途中で用が出来たと1人退席する。

屋敷の中から見える2人の姿は、とても仲睦まじく微笑ましかった。

「マリーラ。ドミニクから、最近マリーラの様子が可笑しいと相談されたのだが、何か悩みでもあるのか?ドミニクは、マリーラが自分の他に好きな人でも出来たのかと心配していたが、昔からドミニクを好きだったお前が他に好きな人など有り得ないはずだが…どうなんだ?」

「アラン兄様。私、ドミニク様とシャルラインが一緒になるべきだと思うのです。2人はお互いに恋心を抱いています。2人の幸せを願い、私は身を引くべきだと…」

「待て、待て!ドミニクがシャルラインを好き?有り得ん!お前は、何を見てそう思う?俺にはドミニクは、お前しか見えてないと思うぞ。」

「アラン兄様の眼は節穴ですか!?あんなに好き合っている2人の心が見えないのですか?そんなのでは婚約者のリリー様に棄てられますわよ!」

「面倒事になるから俺は関与しないからなっ。ドミニクともっと話しをしろっ!」とアランの様は言うけれど、婚約解消はシャルラインがお披露目されてからの方が良い。

シャルラインの可愛い姿を見れば、ドミニク様が私よりもシャルラインを選んだ事に納得し、異議を唱える者などいないはず。


お披露目パーティーが近付くにつれ、ドミニク様とシャルラインが話している姿を良く見掛ける様になった。

胸が少し痛むけれど大丈夫。

最近は、こっそりと鞄に荷造りをしている。
2人が婚約したら、元婚約者の私が近くに居るのは、2人に気不味い思いをさせてしまう。
置き手紙を残し、修道院に入る事に決めていた。

お披露目パーティーでのシャルラインのドレスは、私が決めた。
ドミニク様の瞳の色に近い水色のドレス。
本当は紺色にしたかったのだけれど、お披露目には華やかなドレスが良い。
色白のシャルラインにピッタリのドレス。

私は、目立たない様にクリーム色のドレスにした。
裾にドミニク様の瞳の紺色の糸で刺繍を施した。
最後にその位は良いわよね…。

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