結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵

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あれから2ヶ月。

お兄様の学園時代に我が国に留学に来ていたメイベルク国のドライマス公爵家のエリック様が遊びに来た。
エリック様は次男の為、爵位は継がないが副騎士団長として名を馳せている。
功績から伯爵の爵位を賜ったとか。

「久しぶりだな、ハリー!今回は気遣い感謝する」

「良く来たね。卒業以来だね!エリック、私の妹でクラリスだ。実は君と一緒で傷心したばかりでね」

「ドライマス公爵子息様、お初にお目に掛かります。ステフィン伯爵家娘クラリスと申します。お兄様、余計な事は言わないで下さいませ」

今回のエリック様の訪問は、婚約者に裏切られた彼を慰め様とお兄様が招待した。
彼の立場から長期休暇は、難しいのだが、彼の落ち込み様から団長も快く休暇を許してくれたらしい。

我が家に滞在するのは2週間。
お兄様もお父様に全ての執務を任せてエリック様に付き合う。
そして何故か私も…。

滞在最終日。
お兄様は、急に用事が出来たと言って私とエリック様だけで出掛ける事になった。

この頃には、エリック様ともすっかり打ち解け、仲良くなっていたので2人で出掛ける事も気にならなかった。

エリック様と街に行きお土産を買う。
その時間が、とても楽しかった。
明日にはエリック様は帰国する。
もう会う事は無いかもしれない。
そう思うと心が痛み悲しくなった…。

エリック様が妹にネックレスを買うと言って宝石店に向かう。
私と同じ歳だと言われクラリスが着けたいと思う物はどれか聞かれた。
私が1つ選ぶと、他には?と言われて、もう1つ選ぶ。

帰りの馬車の中で、エリック様は何故かソワソワして落ち着かない。

「エリック様、どうかされましてか?」

「いや、あの…ク、クラリスは、前の結婚を引き摺っているのか?」

「結婚していた元夫に未練が有るという事でしょうか?御座いません。離婚出来て清々しております。婚約破棄よりも酷い離婚しての出戻りですので、再婚は難しいかもしれませんが、ゆくゆくは領地に戻り離れにでも住まわせてくれればと思っております」

「そうか…」

「エリック様は心の傷は少しでも癒えましたか?」

「私は婚約破棄した方だ。彼女は清楚な振りをして王太子の婚約者を虐め罵っていた。彼女は王太子妃の座を狙っていたのだ。彼女が虐めている姿を見た時の衝撃は無かった。その後、彼女は修道院に送られた。彼女との婚約は親が決めたものだったし、副騎士団長になったばかりで殆ど会っていなかった。彼女には申し訳ないが婚約破棄になっても悲しくは無かった。ただ王太子に近付く為に騎士団の私と婚約したと聞いた時は王太子と王太子の婚約者にも危害を加える可能性もあったのかと思うと落ち込んだんだ」

エリック様は親が決めた政略結婚でも自分が婚約者ともう少し接していれば、王太子の婚約者に嫌がらせをする前に食い止められたのではと落ち込んだのだ。
早い段階でエリック様が気が付き対処したので、エリック様にもドライマス公爵家にもお咎めは無かったそうだ。

そろそろ屋敷に着く。
エリック様と2人で最後に過ごせて良かった。

「クラリス。この2週間、私はとても楽しく過ごせた。勿論、ハリーのお陰でも有るが、君が側に居てくれたから。帰国の日が近付くと私は悲しくなった。君と…クラリスと離れたくないと。クラリス、私と一緒にメイベルク国に来てくれないだろうか?異国の地で大変な事も有ると思うが、必ず私が君を守る。クラリス、君が好きだ。こんな気持ちは初めてだ。どうか私と結婚して欲しい!」

「わ、私は離婚したばかりの傷者で……本当に私で宜しいのですか?本当ならとても嬉しいです。私もエリック様をお慕いしております」

エリック様は、私に包装された箱を渡す。
開けてみれば、先程選んだネックレス。

彼は私の横に座るとネックレスを手に取り、私の首に着けてくれた。

良く似合ってると言って照れているエリック様が何か可愛い。

屋敷に戻ると、丁度ランスが訪ねて来た所だった。

ランスは、今にも泣きそうな顔をして「リンカに騙された。彼女あっちこっちの子息と遊んでいたんだ。商人の男の子を妊娠したらしくて子爵家から追い出された。やっぱり僕にはクラリスしか居ないよ。君も離婚して傷者になってしまったし高位貴族から低位貴族になってしまうけれど僕と結婚して欲しい」と言うランスの言葉にも心は動かされなかった。
幼馴染みで近くに居すぎて、それが恋愛感情だと勘違いしていたみたいだ。

私は、ランスに「私の婚約者のエリック様よ。私、メイベルク国へ行くの。もうランスとも会う事もないわ。ランスもどうか幸せになってね」と笑顔で言う事が出来た。

エリック様と一緒にメイベルク国へ行くと言ったら両親は反対したが、お兄様が説得してくれた。

お兄様は、エリック様が婚約破棄したと聞いて、私と結婚させ様とエリック様を誘ったのだと笑って言った。

「エリックならクラリスをきっと幸せにしてくれると思ったのだ」

こうなると分かっていたお兄様は、私達が買い物に行っている間に、私の荷物を纏めさせていた。

「私、今度こそ必ず幸せになるわ♪」と言ってエリックと共にクラリスはメイベルク国へと向かったのであった。



END

*****

最後まで読んで頂き ありがとうございます。
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