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「余は、モルダバル帝国王妃レジーナだ。…のう、ドレンホス国王。そなたの国の貴族は、王族に対し敬意を払わぬのか?それとも余を見下しておるのかのう?国王であるそなたが、余に礼を取っておるのに、なんとも無礼な者達よのう。」
ランバルド殿下とジラルダ侯爵夫妻は慌てて礼を取るが、もう遅い。
マリアーナは、私を睨み付けるのが忙しいのか礼も取らずにいた為、ジラルダ侯爵に無理矢理、頭を押さえられて痛がっていた。
ドレンホス国王陛下の彼らへの怒りはピークに達しているのだろう。
顔を赤らめてワナワナと怒りで震えているのが見える。
ドレンホス国は、モルダバル帝国の属国。
モルダバル帝国を敵にまわせば、小さなドレンホス国など直ぐに侵略され潰されてしまうのだ。
「まあ良い。皆の者、面を上げよ。ドレンホス国王も席に着くが良い。さて、先ずはジラルダ侯爵には、礼を言わねばならぬなぁ。今まで余の可愛い姪シンシアを、姉が儚くなってからも育ててくれたのだからのう。」
「あ、ありがたきお言葉に御座います。シャルロッテが儚くなり、私の心に空いた穴を埋めてくれたのが、愛くるしいシンシアで御座いました。まさか私の愛するシャルロッテが流行り病で呆気なく儚くなるとは思いもせず……」
涙など出てないくせに目頭なんか押さえて、よく言うわよ!
お母様が儚くなった1ヶ月後には、愛人であったマリアと娘のマリアーナをジラルダ侯爵家に呼び寄せた。
マリアは私に、2歳下のマリアーナは貴方と血の繋がった妹だと笑いながら言った。
私は、その時のマリアの勝ち誇った顔を忘れはしない。
2人が屋敷に来てから、あの人達の家族は3人だけ。
私は居ない者の様に扱われた。
使用人達が居たから寂しくはなかったけれどね。
「ほう。ジラルダ侯爵は、シャルロッテお姉様とシンシアを愛していたと言うか。しかし、その愛するシンシアを勘当し屋敷から身ぐるみ1つで追い出すとは、矛盾したものよのう。」
「そ、それは誤解で御座います。…そのシンシアが…そう、私に口答えしたので、脅かすつもりで勘当などと言っただけで本気では御座いませんでした!本気でないからこそ身ぐるみ1つで出て行けと、その場の勢いで言ったのですが、まさか本当に出て行くとは思いも寄りませんでした。あぁシンシア、あれは冗談なのだよ。もう怒ってはいないから屋敷に戻って来なさい。」
なに言ってるのでしょうか?
私を除籍するのは決定事項とばかりに書類を用意して有ったじゃない。
除籍届を書き終えた貴方達は、私の事を嘲笑っていたじゃありませんか。
「そ、そうよシンシア。貴女がマリアーナを虐めるから躾のつもりで勘当などと言っただけなのよ。本気で言った訳ではないのよ」
マリアも、私の立場を理解したのか、ジラルダ侯爵の言葉に乗って来た。
しかし、まだ私がマリアーナを虐めてたと言うのか。
嘘つき達の言葉を誰が信じるのだろう。
「もう、2人共どうしたのよ!?お父様もお母様も可笑しいわ。シンシアが家に居れば、私と結婚して婿入するランバルド様が気まずいからと言って勘当して追い出したのに、なぜまた戻って来いなどと分けのわからない事を言うのよ!?あんなに皆で喜んでいたじゃない!」
本当に、この子って馬鹿よね。
どうして私が此処に居るのか、まだ私が何者なのか理解が出来ないなんて。
「……えっ!?ちょっと待って…シンシアの母上がモルダバル帝国の王妃の姉だと?それは、つまりシンシアは王妃の姪!?何でシンシアは、今までそれを私に黙っていたんだ!?告げていれば婚約破棄などしなかった。はっ!私はマリアーナに暗示に掛けられていたのだ。私の真に愛する者はシンシア、君だ!君は私の運命の人だ。あぁ婚約破棄は破棄するよ。どうか私を許し、私と結婚して欲しい!」
黙って何か考えているなぁーとは思いましたが、やっとことの重大さに気が付いたのですか?
理解するのに随分と時間が掛かりましたね。
馬鹿だとは思っていましたが、ここまでとは驚きです。
「ちょっとランバルド!シンシアが運命の人とはどういう事よ!マリアーナの事を愛していると言ったじゃない!!運命の人だと言うから、だから純潔を捧げたのにぃー!!!」
「お前、余計な事を言うなっ!俺が愛しているのはお前ではない、シンシアだ!!大体、お前が俺に色目を使って来たのだろう。シンシア、俺はこの女に騙されたんだ。きっと薬か何かを俺に盛ったのだろう。俺が本当に愛しているのはシンシア、君だけだ!」
き、気持ちが悪い!!
何が運命の人だ。
何が愛しているだ!
どの面下げて言ってるの?
まさか私との婚約を破棄する前から身体の関係まで持っていたなんて、信じられない。
「はぁー。貴様らは、シンシアが、余の姪だと分かると急に態度を変えるか。ドレンホス国王、この愚かな者達の処分は、そなたに全て任せる。余が望む処分になる事を期待するが、シンシアは、そこまで非道な処分を望むまい。それと、シンシアを我が帝国に連れ帰りたかったが、姉との思い出の地を離れとうないと言うのでな、これからもドレンホス国王にはシンシアを頼む。」
「シンシア、また貶める者が出ようものなら、次は直ぐに帝国に連れ帰るからな。ドレンホス国王も、次はないと心得よ!」
レジーナ叔母様は、国王陛下に釘を刺すと、私に別れを告げて急ぎモルダバル帝国へと帰って行った。
忙しい身で在りながら、私を助けるためだけに来てくれたのだ。
ランバルド殿下とジラルダ侯爵夫妻は慌てて礼を取るが、もう遅い。
マリアーナは、私を睨み付けるのが忙しいのか礼も取らずにいた為、ジラルダ侯爵に無理矢理、頭を押さえられて痛がっていた。
ドレンホス国王陛下の彼らへの怒りはピークに達しているのだろう。
顔を赤らめてワナワナと怒りで震えているのが見える。
ドレンホス国は、モルダバル帝国の属国。
モルダバル帝国を敵にまわせば、小さなドレンホス国など直ぐに侵略され潰されてしまうのだ。
「まあ良い。皆の者、面を上げよ。ドレンホス国王も席に着くが良い。さて、先ずはジラルダ侯爵には、礼を言わねばならぬなぁ。今まで余の可愛い姪シンシアを、姉が儚くなってからも育ててくれたのだからのう。」
「あ、ありがたきお言葉に御座います。シャルロッテが儚くなり、私の心に空いた穴を埋めてくれたのが、愛くるしいシンシアで御座いました。まさか私の愛するシャルロッテが流行り病で呆気なく儚くなるとは思いもせず……」
涙など出てないくせに目頭なんか押さえて、よく言うわよ!
お母様が儚くなった1ヶ月後には、愛人であったマリアと娘のマリアーナをジラルダ侯爵家に呼び寄せた。
マリアは私に、2歳下のマリアーナは貴方と血の繋がった妹だと笑いながら言った。
私は、その時のマリアの勝ち誇った顔を忘れはしない。
2人が屋敷に来てから、あの人達の家族は3人だけ。
私は居ない者の様に扱われた。
使用人達が居たから寂しくはなかったけれどね。
「ほう。ジラルダ侯爵は、シャルロッテお姉様とシンシアを愛していたと言うか。しかし、その愛するシンシアを勘当し屋敷から身ぐるみ1つで追い出すとは、矛盾したものよのう。」
「そ、それは誤解で御座います。…そのシンシアが…そう、私に口答えしたので、脅かすつもりで勘当などと言っただけで本気では御座いませんでした!本気でないからこそ身ぐるみ1つで出て行けと、その場の勢いで言ったのですが、まさか本当に出て行くとは思いも寄りませんでした。あぁシンシア、あれは冗談なのだよ。もう怒ってはいないから屋敷に戻って来なさい。」
なに言ってるのでしょうか?
私を除籍するのは決定事項とばかりに書類を用意して有ったじゃない。
除籍届を書き終えた貴方達は、私の事を嘲笑っていたじゃありませんか。
「そ、そうよシンシア。貴女がマリアーナを虐めるから躾のつもりで勘当などと言っただけなのよ。本気で言った訳ではないのよ」
マリアも、私の立場を理解したのか、ジラルダ侯爵の言葉に乗って来た。
しかし、まだ私がマリアーナを虐めてたと言うのか。
嘘つき達の言葉を誰が信じるのだろう。
「もう、2人共どうしたのよ!?お父様もお母様も可笑しいわ。シンシアが家に居れば、私と結婚して婿入するランバルド様が気まずいからと言って勘当して追い出したのに、なぜまた戻って来いなどと分けのわからない事を言うのよ!?あんなに皆で喜んでいたじゃない!」
本当に、この子って馬鹿よね。
どうして私が此処に居るのか、まだ私が何者なのか理解が出来ないなんて。
「……えっ!?ちょっと待って…シンシアの母上がモルダバル帝国の王妃の姉だと?それは、つまりシンシアは王妃の姪!?何でシンシアは、今までそれを私に黙っていたんだ!?告げていれば婚約破棄などしなかった。はっ!私はマリアーナに暗示に掛けられていたのだ。私の真に愛する者はシンシア、君だ!君は私の運命の人だ。あぁ婚約破棄は破棄するよ。どうか私を許し、私と結婚して欲しい!」
黙って何か考えているなぁーとは思いましたが、やっとことの重大さに気が付いたのですか?
理解するのに随分と時間が掛かりましたね。
馬鹿だとは思っていましたが、ここまでとは驚きです。
「ちょっとランバルド!シンシアが運命の人とはどういう事よ!マリアーナの事を愛していると言ったじゃない!!運命の人だと言うから、だから純潔を捧げたのにぃー!!!」
「お前、余計な事を言うなっ!俺が愛しているのはお前ではない、シンシアだ!!大体、お前が俺に色目を使って来たのだろう。シンシア、俺はこの女に騙されたんだ。きっと薬か何かを俺に盛ったのだろう。俺が本当に愛しているのはシンシア、君だけだ!」
き、気持ちが悪い!!
何が運命の人だ。
何が愛しているだ!
どの面下げて言ってるの?
まさか私との婚約を破棄する前から身体の関係まで持っていたなんて、信じられない。
「はぁー。貴様らは、シンシアが、余の姪だと分かると急に態度を変えるか。ドレンホス国王、この愚かな者達の処分は、そなたに全て任せる。余が望む処分になる事を期待するが、シンシアは、そこまで非道な処分を望むまい。それと、シンシアを我が帝国に連れ帰りたかったが、姉との思い出の地を離れとうないと言うのでな、これからもドレンホス国王にはシンシアを頼む。」
「シンシア、また貶める者が出ようものなら、次は直ぐに帝国に連れ帰るからな。ドレンホス国王も、次はないと心得よ!」
レジーナ叔母様は、国王陛下に釘を刺すと、私に別れを告げて急ぎモルダバル帝国へと帰って行った。
忙しい身で在りながら、私を助けるためだけに来てくれたのだ。
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