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1 シルビア視点

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私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。

その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。

2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を婚約者の私は見ていた。

そんな時だった…。

ナリーシャ様のお父様が脱税、横領の罪で捕まったのだ。

ナリーシャ様のお父様は処罰され伯爵家は取り潰し、残された家族は爵位を剥奪され平民になった。

勿論、侯爵家の嫡男ギルス様とナリーシャさんとの婚約は解消された。

それを聞いたグリード様は、ギルス様の胸ぐらを掴み叫んだ。

「お前はナリーシャを好きだったのではないのか!?ナリーシャが平民になれば簡単に捨てる存在だったのか!?」

「何を言っているのだ?ナリーシャとは、家同士の政略結婚だ。私達の間に恋愛感情はなかった。平民となったナリーシャと結婚するなんて有り得ない。お前も貴族なら、そのくらい分かるだろう?」

「お前はナリーシャを助けたいとは思わないのか!?お前がそんな奴だとは思わなかったよ。ギルス、お前との付き合いもこれまでだなっ!」

帰りの馬車の中で私はグリード様に尋ねた、

「わたくしとの婚約を解消しますか?」

私の言葉にグリード様は驚いている。

「ナリーシャ様が好きなのですよね?困っている彼女に寄り添い助けて上げたいのですよね?」

「……」

「わたくしは結婚前から愛人がいる方との結婚は了承致しかねます。グリード様がどうしたいのか…わたくしは出された答えに従いますわ」

侯爵家を捨て庶民になるのか…私と婚約破棄をして結婚前から愛人が居る人に理解ある婚約者を捜す、これはお互いの家にメリットがないと難しいわよね。
それとも、このまま私と黙って結婚するのか…。


1週間が過ぎた頃、お父様に執務室へと呼ばれる。

そこにはグリード様の父、スバイル侯爵様も居た。

やっとグリード様が答えを出したのね。

「シルビア…とても残念な事だが、グリード君との婚約は破棄となった」

「そうですか…」

「シルビア嬢、申し訳ない。うちの愚息は廃嫡し、スバイル侯爵家から追い出した」

彼はナリーシャと共に平民になる事を選んだ様だ。
それ程にグリード様はナリーシャさんを愛しているのだろう。

「グリード君は、スバイル侯爵に結婚前から愛人を囲いたいと言って来たそうだ。いくら高位貴族が妾や愛人を囲っている者が居るとは言え、それは結婚後の事。婚約中になど流石に有り得ん。スバイル侯爵も説得した様だが…」

「大丈夫です。婚約破棄の事はお父様に全てお任せ致します」

週末明けに学園に行くと、ギルス様が入口で私を待っていた。

「おはよう、シルビア。グリードと婚約破棄したと聞いたのだが…」

「もうお聞きになりましたか?」

「まさかと思うが、ナリーシャが原因か?」

「……」

「はぁー。あいつがナリーシャを好きなのは薄々気が付いていたが…馬鹿な奴だ」

「身分を捨てても共に居たい方なのでしょう」

「それが馬鹿だと言うのだ。ナリーシャは、気が強く我が儘で贅沢が大好きな女だ。そんなあいつが平民の暮らしなど出来る筈がない。噂では昔のつてを頼って愛人にしてくれそうな女好きの高位貴族に声を掛けているとか…」

「そうなんですか?ナリーシャさんが、そんな方だとは知りませんでしたわ。ではグリード様は…」

「ああ廃嫡されたと知れば見向きもされないだろうね」

「まぁ…」

「彼が心配?」

「いえ、性格が悪いと言われるでしょうが、いい気味ですわ」

その後、ギルス様の言った通り、グリードが平民になったと知らなかったナリーシャは、訪ねて来たグリードを喜んで招き入れた。
グリードの告白を受け入れた後に逃がしてなるものかと早々に身体の関係を持った。
次の日の朝、グリードが廃嫡された話すと激怒し家から追い出した。

ナリーシャに追い出され途方に暮れたグリードは、スバイル侯爵に謝って許して貰おうと屋敷を訪れたが門が開かれる事はなかった。
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