まさか貴方も!?

山葵

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「シュリが生きている」あのカルラス殿下の呟きは何だったのだろう?

私は6年前に、このインデグラス国で生を受け生きている。

それにカルラス殿下に会うのは、今日が初めてだ。
なのに何故か私を愛称呼びしてたよね?
どういう事?

はっ!それよりも。

「お父様。お父様とお母様は、国王陛下と王妃様と親しかったのですか?」

「親しいなんて、そんな恐れ多い。私と陛下は学園で同じクラスだったのだよ。クラリスと王妃様、その時は陛下の婚約者のマルスモイ公爵令嬢であったが、2人は一学年下で同じクラスでね。当時、王妃様は、クラリスをいたく気に入ってくださり、王宮に輿入れの際には、是非クラリスを王太子妃付き侍女にとお声を掛けて頂いたのだよ。しかしクラリスは、卒業したら直ぐに私と結婚がしたいと、その申し出を断ってしまった。義父上は、とても残念がっていたが、私もクラリスと直ぐに結婚したかったからね、王妃様に断りを入れるクラリスを止める事もなく、あぁ私の婚約者は何て愛しいのだろうと…」

顔を赤らめながら、何を娘にノロケているのだ。

しかしお母様、王妃様の申し入れを断ったの!?
よくお祖父様もお許しになったよね。
ロンド伯爵家の事を考えたら、お父様に嫁がせるよりも、王妃様の侍女の方が覚えが良いだろうに。
リレッセロ侯爵家だけでなく、お母様の実家ロンド伯爵家も欲無しなのか。

「今、思うと本当に怖い物知らずだったと思うよ。まあ陛下も王妃様も気にしてはいなかった様で、結婚式には2人で参列して頂き、たまには王宮に遊びに来る様にとお声も掛けて頂いたからね。」

そんな昔話を聞いていると、全ての者達との挨拶も終わった様で、陛下のお言葉の後に新しいお茶が淹れられた。

これから目の前にある数々のお菓子を手に取って食べられる至福の時間。

(なにから食べようかなぁ~♡)なんて考えているのは、この場に居る人達の中で、私とお父様だけだろう。

他の人達は、高級なお茶やお菓子にも手を付けずにカルラス殿下や陛下、王妃様の元へ自分(娘)をアピールしに行くのである。

「はぁ~♡お父様、このケーキとても美味しいですわ。もうほっぺが落ちそうです~」

「あらあら、ぷっくりほっぺが落ちたら、貴女の可愛い顔が台無しになってしまうわ!」

突然の王妃様の登場に、私もお父様も腰を抜かしそうになりながらも、慌てて椅子から立ち上がり礼をする。

「リレッセロ卿も、シュリアーナちゃんも楽にして構わないわ。あぁ~やっぱりクラリスに似てシュリアーナちゃんは本当に可愛いわねぇ~♡うんうん…これは決まりね…」

お母様に似ていると言われたのは嬉しかったが、王妃様が扇で口元を隠し、頷き呟いている。
囁きは、余りにも小さく聞き取れなかったが、王妃様の様子を見て、何故か嫌な予感がして身震いがした。

まさか…小説の中で私達が婚約していたのは王妃様の希望でとかではないわよね?
王妃様も政略結婚されたんですもの、その大切さは分かっているはず。
我が家などと縁を結ぼうとする筈がない。
大丈夫、大丈夫と思いながらも震えが止まらない。

その後のお茶やお菓子が、まったく味が感じられなくなってしまったのは言うまでもない。
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