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「最後まで可愛げの無い女だ。さっさと荷物を纏めて出ていけ!」
夫であったマウイに離縁を言い渡され有無を言わさず離婚届にサインをさせられた。
屋敷の使用人達は絶句し、動けないでいる。
「おいビルダ!何を呆けているのだ。この届けを直ぐに役所に届けろ」
「旦那様、本当に宜しいのですか?」
「宜しいに決まっているだろう?ああそうだ。離婚届を出した序でに婚姻届を貰ってきてくれ。ライナが妊娠したから早急に籍を入れる予定だ。国王陛下に許可を出してくれる様に手紙も頼む」
「ではマウイ…いえ、グローマ侯爵様、それではご機嫌よう、さようなら」
マウイは早く行けとばかりに手をヒラヒラさせた。
私はビルダと共に部屋を出る。
「ビルダ、今まで世話になったわね。皆も元気で頑張って頂戴」
私は、侍女に荷造りを手伝って貰い馬車に乗り実家へと向かった。
「お義父様、本日マウイ・クローマと離縁致しましたのでご報告に上がりました」
家族団欒でお茶を飲んでいた両親と兄に離縁を告げると驚いて固まっている。
まぁそれはそうだよね。
マウイとの結婚生活は1年ももったのだ。
これでお義父様も前グローマ侯爵に恩は返せたはず。
私も育てて貰った恩を返した。
「お義父様、お義母様、お義兄様、私はこれから平民として生きていきますわ。プリス伯爵家に戻っても出戻り女に縁談なんて来るのは後家か問題あり子息。問題あり子息はマウイだけで十分ですわ。それに私の様な穀潰しが戻りましても皆様に迷惑が掛かるかと…。それでは皆様、今までお世話になりました。ご機嫌よう、さようなら」
両親と兄は呆然としてカップを持つ手が止まっていた。
私は馬車に乗りローズ商会へと向かう。
ローズ商会は、私が立ち上げた私の城。
やっと売り上げも軌道に乗り始めた頃にマウイと婚約させられ結婚させられた。
救いは子供が出来なかった事だ。
勿論、結婚したのだから妻としての務めはしていたが授かる事はなかった。
「社長!こんな時間にどうしたんですか?屋敷は大丈夫なんですか?」
「マウイと離縁したから、もう何も気にする事無く働けるわ。今までありがとう!」
私の突然の訪問に驚き声を掛けて来たのは、副社長のライナス。
彼は私の同級生で伯爵家の三男。
爵位を継ぐ事が出来なかったが、とても優秀だったので私が声を掛けローズ商会で働いて貰ったのだ。
私はプリス伯爵夫妻の子では無い。
両親は、前プリス伯爵夫妻だった。
領地への視察に行く途中で事故に合い帰らぬ人となってしまったのだ。
その知らせの後、当然の様な態度で屋敷に入ってきたのは父の弟であった現プリス伯爵。
叔父は、父とは違い愚かな人で、伯爵家を継いで直ぐに散財をし仕事もせずに遊び呆けた。
叔母もドレスや貴金属類を買い込み散財した。
いくら父が優秀であれど、散財しまくる2人が度を超していた為に伯爵の資産は半分以下になってしまった。
従兄のルイスがそれに気が付き経営を立て直そうとしたが資金が足りない。
このままでは領地経営も出来なくなる。
そこに手を差し出してくれたのが、前グローマ侯爵だ。彼は父の友人で、このままではプリス伯爵家が没落してしまうと助けてくれたのだ。
まぁ融資の条件が私との婚約だったのだけれど。
マウイの事を考えると、手を差し伸べたのは善意からだったのか疑問だけれど…。
前グローマ侯爵も私達の結婚式が終わると突然の心臓発作で亡くなってしまった。
マウイが当主になったのだけれど、義父が心配していた通り、彼は無能だった。
簡単な書類でさえまともに決裁出来ない。
私はマウイにバレない様に陰で仕事をしていた。
そのお陰で、今もグローマ侯爵家は維持出来ているのだが、離縁された私は今後どうなろうと知らない。
勿論、グローマ侯爵家が傾けば、優雅にお茶を飲んでいたプリス伯爵家への融資も止まる。
それも家を出た私には関係の無い事だ。
私は今まで携わっていなかった分、商会に力を入れて働いた。
半年後には皆の働きもあり倍の売り上げを出していた。
その頃、グローマ侯爵は、経営が上手く回らない事態に陥り、周りの貴族達も巻き込まれない様に離れて行っていた。
早産?に産まれた元気な男の子は、なぜかマウイにもライナとも違う髪色と瞳の子だったそうだ。
叔父のプリス伯爵は、ルイスお義兄様の言う事も聞かずに賭博場で知り合った人に融資をすれば倍になって還ってくると騙され多額の融資をし逃げられた。
ルイスお義兄様は、叔父から伯爵当主を受け継ぎ領民の為に奮闘していると聞いた。
そんなお義兄様なら融資をしても良いかな?と思っている。
「リリア、何を考えているの?」
「フフ…幸せだなぁ~と思って」
「僕も幸せだよ。愛してるよ、リリア」
「私も愛しているわ」
今、私の横には礼服を着たライナスが立っている。
今日は従業員の結婚式に参列しているのだ。
来年には私達も式を挙げる事になっている。
END
*****
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
夫であったマウイに離縁を言い渡され有無を言わさず離婚届にサインをさせられた。
屋敷の使用人達は絶句し、動けないでいる。
「おいビルダ!何を呆けているのだ。この届けを直ぐに役所に届けろ」
「旦那様、本当に宜しいのですか?」
「宜しいに決まっているだろう?ああそうだ。離婚届を出した序でに婚姻届を貰ってきてくれ。ライナが妊娠したから早急に籍を入れる予定だ。国王陛下に許可を出してくれる様に手紙も頼む」
「ではマウイ…いえ、グローマ侯爵様、それではご機嫌よう、さようなら」
マウイは早く行けとばかりに手をヒラヒラさせた。
私はビルダと共に部屋を出る。
「ビルダ、今まで世話になったわね。皆も元気で頑張って頂戴」
私は、侍女に荷造りを手伝って貰い馬車に乗り実家へと向かった。
「お義父様、本日マウイ・クローマと離縁致しましたのでご報告に上がりました」
家族団欒でお茶を飲んでいた両親と兄に離縁を告げると驚いて固まっている。
まぁそれはそうだよね。
マウイとの結婚生活は1年ももったのだ。
これでお義父様も前グローマ侯爵に恩は返せたはず。
私も育てて貰った恩を返した。
「お義父様、お義母様、お義兄様、私はこれから平民として生きていきますわ。プリス伯爵家に戻っても出戻り女に縁談なんて来るのは後家か問題あり子息。問題あり子息はマウイだけで十分ですわ。それに私の様な穀潰しが戻りましても皆様に迷惑が掛かるかと…。それでは皆様、今までお世話になりました。ご機嫌よう、さようなら」
両親と兄は呆然としてカップを持つ手が止まっていた。
私は馬車に乗りローズ商会へと向かう。
ローズ商会は、私が立ち上げた私の城。
やっと売り上げも軌道に乗り始めた頃にマウイと婚約させられ結婚させられた。
救いは子供が出来なかった事だ。
勿論、結婚したのだから妻としての務めはしていたが授かる事はなかった。
「社長!こんな時間にどうしたんですか?屋敷は大丈夫なんですか?」
「マウイと離縁したから、もう何も気にする事無く働けるわ。今までありがとう!」
私の突然の訪問に驚き声を掛けて来たのは、副社長のライナス。
彼は私の同級生で伯爵家の三男。
爵位を継ぐ事が出来なかったが、とても優秀だったので私が声を掛けローズ商会で働いて貰ったのだ。
私はプリス伯爵夫妻の子では無い。
両親は、前プリス伯爵夫妻だった。
領地への視察に行く途中で事故に合い帰らぬ人となってしまったのだ。
その知らせの後、当然の様な態度で屋敷に入ってきたのは父の弟であった現プリス伯爵。
叔父は、父とは違い愚かな人で、伯爵家を継いで直ぐに散財をし仕事もせずに遊び呆けた。
叔母もドレスや貴金属類を買い込み散財した。
いくら父が優秀であれど、散財しまくる2人が度を超していた為に伯爵の資産は半分以下になってしまった。
従兄のルイスがそれに気が付き経営を立て直そうとしたが資金が足りない。
このままでは領地経営も出来なくなる。
そこに手を差し出してくれたのが、前グローマ侯爵だ。彼は父の友人で、このままではプリス伯爵家が没落してしまうと助けてくれたのだ。
まぁ融資の条件が私との婚約だったのだけれど。
マウイの事を考えると、手を差し伸べたのは善意からだったのか疑問だけれど…。
前グローマ侯爵も私達の結婚式が終わると突然の心臓発作で亡くなってしまった。
マウイが当主になったのだけれど、義父が心配していた通り、彼は無能だった。
簡単な書類でさえまともに決裁出来ない。
私はマウイにバレない様に陰で仕事をしていた。
そのお陰で、今もグローマ侯爵家は維持出来ているのだが、離縁された私は今後どうなろうと知らない。
勿論、グローマ侯爵家が傾けば、優雅にお茶を飲んでいたプリス伯爵家への融資も止まる。
それも家を出た私には関係の無い事だ。
私は今まで携わっていなかった分、商会に力を入れて働いた。
半年後には皆の働きもあり倍の売り上げを出していた。
その頃、グローマ侯爵は、経営が上手く回らない事態に陥り、周りの貴族達も巻き込まれない様に離れて行っていた。
早産?に産まれた元気な男の子は、なぜかマウイにもライナとも違う髪色と瞳の子だったそうだ。
叔父のプリス伯爵は、ルイスお義兄様の言う事も聞かずに賭博場で知り合った人に融資をすれば倍になって還ってくると騙され多額の融資をし逃げられた。
ルイスお義兄様は、叔父から伯爵当主を受け継ぎ領民の為に奮闘していると聞いた。
そんなお義兄様なら融資をしても良いかな?と思っている。
「リリア、何を考えているの?」
「フフ…幸せだなぁ~と思って」
「僕も幸せだよ。愛してるよ、リリア」
「私も愛しているわ」
今、私の横には礼服を着たライナスが立っている。
今日は従業員の結婚式に参列しているのだ。
来年には私達も式を挙げる事になっている。
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