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「マリアを虐めた挙げ句、亡き者にしようとしたなっ!そんな愚かなお前とは婚約破棄だ。なお、お前に加担してラガン男爵家を破滅させようとしたブラヴァス侯爵家も同罪。そこに居るマーガレットと姉のシャーリアを引っ捕らえて牢屋に連れて行けっ!!騎士団は直ぐにブラヴァス侯爵家に向かえっ!」

「待って下さい、クーレン殿下!わたくしは、マリアさんに虐めなどしておりません。まして殺そうなどと考えた事も御座居ません。何かの間違えです。どうかきちんと調査をして下さい!いやぁー止めて!ああ、お姉様、どうして、どうしてこんな事に…」

妹マーガレットの言葉を嘲笑うかの様に、クーレン第2王子は、マリアさんを抱き寄せると「マリア、怖い思いをさせたね~」「マリアぁ~、本当に怖かったですぅ~。クーレンが助けてくれなければ死んでましたぁ~」と大根役者の様な棒読みの台詞を吐いた。

私は、兵士に連行されながら、壇上に座る国王陛下と王妃様を見る。
顔色の悪く朦朧とした眼の陛下と不適な笑いを浮かべた王妃がいた。

王妃が笑っている?……やられた。これは全て仕組まれた事だったのだ。

最近、国王陛下の体調が思わしくない。顔色も常に悪く、床に伏す事もおおくなったとお父様が話していた。

国王陛下の代理として立ちたかった王妃だが、国王陛下は、自分が伏している時の権限をギルハルト王太子に委ねた。

ギルハルト王太子は、前正王妃であるジャンナマ王妃の子で、クーレン第2王子は、その時に側妃であったバトレシア妃の子だった。

自分が正妃となっても、クーレン殿下が王太子になれない事に苛立ちを隠さないバトレシア王妃。
今ではギルハルト王太子は目の上のタンコブ、排除したい存在なのだ。

クーレン殿下の後見人として王妃の目に止まったのがブラヴァス侯爵。
王妃の願いで同い年のマーガレットが婚約者となった。

しかし最近、王妃の動きが怪しいとギルハルト王太子と宰相であるお父様は、秘密裏に調べていた。

その矢先に、私達の卒業パーティーで我が家の断裁が行われた。

ああ私の大切な家族が………。



ハッ!

侍女キリアのカーテンを開ける音で目が覚める。

今のは夢?

「おはようございます、シャーリアお嬢様。えっ?どうされたのですか?顔色が…ご気分でも悪いのですか?直ぐに侍医を呼んで…」

「大丈夫よ。ちょっと悪夢を見てしまったの。そんなに心配そうな顔をしないで。ほらっ、元気でしょう?」

無理矢理笑ってみたが、さっき見た夢が頭から消えない。

あんなのただの夢だと思いたいのに、手の震えが止まらないのだ。

マーガレットとクーレン殿下の仲は良好だと聞いている。

それに我が家と敵対関係にあるラガン男爵家にマリアなどという名の娘は居なかった筈だ。

全てが夢の中の話。


そんな夢の中の話を忘れかけていた頃に、1つの噂話が聞こえて来た。

ラガン男爵が婚外子の娘マリアを引き取り、学園に入学させると…。

入学してきたマリアさんは、高位貴族の御子息と分かると近付き「マリア~分かんな~い。ねぇ、教えてくださいなぁ~♡」と色目を使っていた。

婚約者がいてもお構い無し。

マリアさんに溺れた御子息達は、取り巻きとなり、まるでイソギンチャ…護衛騎士の如くマリアさんを守っていた。

その中の1人が、第2王子であるクーレン殿下。
誰よりも鼻の下を伸ばしマリアさんと寄り添っていた。

「マーガレットは、私達の事を思って相談しなかったのね…。」

学年が違う私には、クーレン殿下の気持ちがマーガレットから離れていた事も、マリアが学園でハーレムを作っていた事も知らなかった。

私が予知夢を見た事で変えられるかも知れない。

私は、マーガレットに内緒でお父様に頼んでマーガレットに影を付けて貰った。

「なぜマーガレットに影を?」と疑問に思うお父様に予知夢の事など話せる訳もなく、それとなくクーレン殿下とマリアさんの話をすると、さすが宰相、学園の事も分かっていましたわ。

国王陛下もギルハルト王太子もクーレン殿下に注意はしてくれている様なのですが、聞く耳を持たないそうです。

お父様は、婚約解消も申し入れたそうなのですが、国王陛下が愚息には優秀な妻を娶らねばならないと首を縦に振らないそうです。


この頃の国王陛下は、まだ元気でいらっしゃいましたので、もう1つだけお父様にお願いをしました。

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