1 / 15
1、アルトの旅立ち
しおりを挟む「模擬店の権利、手に入れました~!」
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
*
「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
光琉に甘すぎだって? うん、それは俺が一番分かってる。
昼休み、嬉しそうに報告しながら教室に入ってきたのは文化祭委員の松本さん。なにげに彼女ともまた同じクラスで…松本さん、去年も文化祭委員やってたよな。
模擬店は出店数に上限があるから、希望が多いと抽選になってしまう。その抽選を見事当ててきてくれたようだ。
次に文化祭準備にと充てられている時間で決まるよう、何を扱うのか、コンセプトはどうするか、案を出しておいてほしいと。
「光琉はなにかある?」
「シフトが一緒の時間で、日向が接客しないなら何でもいいよ」
「俺、接客しちゃダメなの?」
「ダメ」
これは…いつもの心配性か?
「でも俺も光琉に接客してほしくない」
光琉目当てで来るお客さん、絶対多いと思うし。女子とかオメガとか…心配だし。
「うん。俺もしない。一緒に調理担当したいね」
「それいいな! 前に一緒に作って楽しかった…から///」
やばっ。なんでこんな時に思い出すんだよ。
「日向、顔赤いけど、何考えてるの?」
「なっ!? 別にっ! 何も思い出してないしっ!」
「思い出し…? ふっ。日向のエッチ」
「んなっ!」
だから、一緒に料理した日に初めて最後までしたとか、そんな事思い出してなんかないってば。
あの日と前回の発情期でしかしてないからって…発情期中より記憶が残ってるからって、思い出したりしてないからな!
「ひーなた、拗ねないで?」
「拗ねてないし」
「可愛い。ねぇ、ちゅーしていい?」
「っ!! ダメに決まってるだろっ」
結局何の案もないまま昼休みを終えるチャイムが鳴ってしまった。
「無駄でしょうが一応お願いしておきますね。そういうのは2人きりでやってください」
「「どういうの?」」
「………もういいです」
諦めて席に戻っていった稜ちゃん。蓮も程々にねって言ってくるし…いやいや、今日は咎められるようなことしてないぞ? 俺も光琉もそれぞれ自分の席に座ってるし、キスだってちゃんと断ったし。
「あー、俺も彼女ほしい」
「なに日比野寂しいの? 俺が相手してやろうか?」
「おっ! 宇都宮、俺の彼女になる?」
「なんで俺が彼女なんだよ。日比野が彼女な」
なんて一樹と宇都宮はじゃれているけど、さっさと席に戻れよな。
*
「では飲み物はパック飲料とペットボトルで用意して、ケーキはスポンジケーキに生クリームを添える、これで決定にします」
スポンジケーキは予め用意しておき、数種類の生クリームのうちから注文が入った物を添える。これなら俺でも問題なくできそうだ。
「では次に担当を割り振ります! 希望がある人~」
「俺と日向は調理担当で」
早々に希望を伝えた光琉。
「えっ!? 香坂くんはできたら接客に回ってほしいんだけど…」
やっぱりそうだよな。光琉と宇都宮、稜ちゃんと蓮は集客が見込めるし、接客に回ってほしいって思うよな。
「岩清水くんは絶対に接客に回さないようにするし、シフトだって香坂くんと一緒にするから……お願いできないかな?」
「日向が俺に接客してほしくないって言ってるから、無理」
ちょっと待て。俺ってそんなに接客向いてないのか!? 失礼じゃね?
「俺だって接客くらいできるし…」
「日向、ダメだよ? 一緒に調理担当するって約束したでしょ?」
小さい声で呟いただけなのに、光琉には声が届いていたようで、俺の手を取り、真剣な顔でそう言ってきた。
「そうだけどさ…」
「一緒に調理しようね?」
「……うん」
俺だってそれが一番いいけど…光琉を接客に回したくないって、俺のわがままを聞いてもらっていいのかな?
「あの~香坂くん? 接客に回っては…?」
「無理」
「あ、はい」
絶対にやらないとの姿勢を崩さない光琉に、松本さんも諦めてくれたようだ。
ほんっとごめんな。でも俺は安心した。
話し合いの結果、俺、光琉、蓮、稜ちゃんは調理担当で、一樹と宇都宮は接客担当になった。松本さんは4人を順番に接客のシフトに入れたかったようだけど、それも諦め、俺達みんな同じシフト時間にしてくれるそう。
やったね!
「文化祭を楽しむ権利は俺達にもあるからね」
「それもそうだな」
みんなだって文化祭を回る友達と同じ時間にシフト希望を出すんだし、俺達が希望を出しちゃいけない理由なんてないしな。
「俺は日向と一緒なら4人はどっちでも良いんだけどな」
「あのさ…どっちかはみんなで、どっちかは……2人で回りたい…」
「っ!! 俺も! 日向~」
俺から文化祭デートを誘った事が嬉しかったようで、一応授業中なのに光琉の膝の上に横抱きにされてしまった。
「しないからな」
「いいじゃん」
「ダメ」
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
「ダメって言っただろ」
「口にはしてないよ?」
「…………もう、好きにすれば」
光琉に甘すぎだって? うん、それは俺が一番分かってる。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる