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1、アルトの旅立ち
しおりを挟む 俺は稜里大学に通っている。
入学してすぐ、校内にあるカフェでバイトを始めた。高校時代の先輩から、校内施設でのバイトはシフトに融通が利くと聞いて選んだバイト先。
ここは高校のテスト期間中、高校生で満席になる。
バイトを始めてすぐのころ、高校の中間テストの時期にとあるグループがカフェにやってきた。見た感じアルファ3人とベータ2人の5人組。
取り出した教科書を見て、1年生だと気が付いた時は驚いた。だってアルファの生徒の3人、どう見ても1年生に見えないから。
「3つも年下に見えねぇ」
「うん?」
ついうっかり声に出してしまったせいで、隣で注文品を準備していた、バイト先の先輩に聞き返されてしまった。
「いえ。あのグループ、大人っぽいなって」
「本当だ。もしかして妹が言ってた子たちかも」
「松本さん、妹いるんですか?」
「うん。その妹が今年稜里高校に入学したんだけど、ものすごく人気のアルファがいるらしいのよ」
曰く妹さんのクラスにいるアルファの男子が、ものすごく人気があるそうで。ちょうどあのグループのような感じらしい。
「そのアルファの人気男子、同じクラスのベータ男子のことが好きだと思う。って言ってたのよ」
「へぇ。あれだけイケメンなら選びたい放題だろうに」
「中々いないレベルのイケメンよね。ベータ男子がいけるなら私もいけないかしら?」
その発言には聞こえないふりをさせてもらった。松本さんって良くも悪くも普通っていうか…イケメン君の想い人のベータ男子の方が、整った顔をしているし。まぁ、彼も可愛いって感じじゃないけど。
そんな彼らは、テスト期間中毎回利用するようになった。イケメン君と想い人君の距離がグッと近くなったのは高校の文化祭後くらいだろうか。
こっそりとイケメン君を応援していた俺は、2人の距離が徐々に近づいていくのが嬉しかった。
新年度となり、更に親密になり…というか普通に友達の前でもいちゃいちゃいている姿を見て数ヶ月。さすがにあれで付き合ってないなんてことはないよな。
「あの2人付き合ってるわよ」
「え?」
びっくりした。俺、声に出してたのかと思った。
そういえば松本さんと被るの久々だな。確かインターンに行くからと、しばらくバイトを休んでいたはず。
「しかもあの子、オメガだったみたいなの」
え? 今更? いつからか、アルファの独占欲丸出しのネックガード付けてたじゃん。オシャレなデザインでパッと見じゃ分からないかもしれないけど。
それに夏終わりくらいからだろうか? 想い人くんがどんどんキレイになって、ベータよりもオメガって言われた方がしっくりくるようになったのは。
「松本さん、狙わなくてよかったですね」
「本当よ。命拾いしたわ」
「………冗談ですよね?」
「さぁ?」
さぁって……想い人君にイヤな思いをさせたって、社会的に抹消されても知らないぞ? なにより火の粉が飛んで来ないよう、このまま大人しくしておいてほしい。
「そうそう、私ここのバイトやめるの」
「そうなんですか?」
「就活に集中しようと思って」
そこからはインターンの話や、3年時にしておいた方が良いことなんかをアドバイスしてもらった。
なんてことがあった数週間後、想い人君……岩清水くんがバイト仲間になるなんてな。しかも俺が教えるのかよ。
「俺、アップルティーを淹れれるようになりたいんです!」
なんて初っ端に宣言されたけど。あっちで胸を抑えているイケメン君、今物凄く嬉しいんだろうなぁ。
イケメン君、いっつもアップルティーを注文するもんな。想い人…岩清水くんはホットバニラのシナモン追加。聞かないけど恐らくお互いのフェロモンの匂いな気がする。
「うん。でもまずはレジからね」
「はい!」
基本的なことを教え、1人でやってみようかって言った瞬間動き出したイケメン君。
顔を真赤にしながらレジを打つ岩清水くんにずっとスマホを向けて…カメラに入らないよう少しズレてあげた俺って優しくないか?
まだネックガードを付けてるってことは、この2人まだ番ってないのか?
番ってない自分のオメガがバイトなんてそりゃあ心配だよなぁ。……ってやばっ! 少し悪寒が…。首元を見すぎてしまった。今後は気をつけよう。
ってさ、いくら心配だからって…まさか毎回ずっと居座るなんて誰が思うよ?
何度も注文しに来るし、来るななんて言えないけど、本音は来ないでほしい。一緒に働く俺の身にもなってほしい。毎回神経磨り減るんですけど!
はぁ…。そもそも恋人のバイト先に居座るほどの執着ってヤバすぎじゃね? 岩清水くんの一挙一動を見逃さないとするその姿、普通に怖いから。でも岩清水くんもそれを普通に受け入れてるし。やっぱりベータの俺には分からない世界だな。
「いつもすいません」
「気にしないで」
「ありがとうございます」
この会話も絶対聞いてるだろうし、下手なことなんて言えるはずない。
岩清水くん、どんどんキレイになっていくね。なんて軽々しく言わないように気をつけよう。なぜか俺、イケメン君の信頼を勝ち得てしまったし。
入学してすぐ、校内にあるカフェでバイトを始めた。高校時代の先輩から、校内施設でのバイトはシフトに融通が利くと聞いて選んだバイト先。
ここは高校のテスト期間中、高校生で満席になる。
バイトを始めてすぐのころ、高校の中間テストの時期にとあるグループがカフェにやってきた。見た感じアルファ3人とベータ2人の5人組。
取り出した教科書を見て、1年生だと気が付いた時は驚いた。だってアルファの生徒の3人、どう見ても1年生に見えないから。
「3つも年下に見えねぇ」
「うん?」
ついうっかり声に出してしまったせいで、隣で注文品を準備していた、バイト先の先輩に聞き返されてしまった。
「いえ。あのグループ、大人っぽいなって」
「本当だ。もしかして妹が言ってた子たちかも」
「松本さん、妹いるんですか?」
「うん。その妹が今年稜里高校に入学したんだけど、ものすごく人気のアルファがいるらしいのよ」
曰く妹さんのクラスにいるアルファの男子が、ものすごく人気があるそうで。ちょうどあのグループのような感じらしい。
「そのアルファの人気男子、同じクラスのベータ男子のことが好きだと思う。って言ってたのよ」
「へぇ。あれだけイケメンなら選びたい放題だろうに」
「中々いないレベルのイケメンよね。ベータ男子がいけるなら私もいけないかしら?」
その発言には聞こえないふりをさせてもらった。松本さんって良くも悪くも普通っていうか…イケメン君の想い人のベータ男子の方が、整った顔をしているし。まぁ、彼も可愛いって感じじゃないけど。
そんな彼らは、テスト期間中毎回利用するようになった。イケメン君と想い人君の距離がグッと近くなったのは高校の文化祭後くらいだろうか。
こっそりとイケメン君を応援していた俺は、2人の距離が徐々に近づいていくのが嬉しかった。
新年度となり、更に親密になり…というか普通に友達の前でもいちゃいちゃいている姿を見て数ヶ月。さすがにあれで付き合ってないなんてことはないよな。
「あの2人付き合ってるわよ」
「え?」
びっくりした。俺、声に出してたのかと思った。
そういえば松本さんと被るの久々だな。確かインターンに行くからと、しばらくバイトを休んでいたはず。
「しかもあの子、オメガだったみたいなの」
え? 今更? いつからか、アルファの独占欲丸出しのネックガード付けてたじゃん。オシャレなデザインでパッと見じゃ分からないかもしれないけど。
それに夏終わりくらいからだろうか? 想い人くんがどんどんキレイになって、ベータよりもオメガって言われた方がしっくりくるようになったのは。
「松本さん、狙わなくてよかったですね」
「本当よ。命拾いしたわ」
「………冗談ですよね?」
「さぁ?」
さぁって……想い人君にイヤな思いをさせたって、社会的に抹消されても知らないぞ? なにより火の粉が飛んで来ないよう、このまま大人しくしておいてほしい。
「そうそう、私ここのバイトやめるの」
「そうなんですか?」
「就活に集中しようと思って」
そこからはインターンの話や、3年時にしておいた方が良いことなんかをアドバイスしてもらった。
なんてことがあった数週間後、想い人君……岩清水くんがバイト仲間になるなんてな。しかも俺が教えるのかよ。
「俺、アップルティーを淹れれるようになりたいんです!」
なんて初っ端に宣言されたけど。あっちで胸を抑えているイケメン君、今物凄く嬉しいんだろうなぁ。
イケメン君、いっつもアップルティーを注文するもんな。想い人…岩清水くんはホットバニラのシナモン追加。聞かないけど恐らくお互いのフェロモンの匂いな気がする。
「うん。でもまずはレジからね」
「はい!」
基本的なことを教え、1人でやってみようかって言った瞬間動き出したイケメン君。
顔を真赤にしながらレジを打つ岩清水くんにずっとスマホを向けて…カメラに入らないよう少しズレてあげた俺って優しくないか?
まだネックガードを付けてるってことは、この2人まだ番ってないのか?
番ってない自分のオメガがバイトなんてそりゃあ心配だよなぁ。……ってやばっ! 少し悪寒が…。首元を見すぎてしまった。今後は気をつけよう。
ってさ、いくら心配だからって…まさか毎回ずっと居座るなんて誰が思うよ?
何度も注文しに来るし、来るななんて言えないけど、本音は来ないでほしい。一緒に働く俺の身にもなってほしい。毎回神経磨り減るんですけど!
はぁ…。そもそも恋人のバイト先に居座るほどの執着ってヤバすぎじゃね? 岩清水くんの一挙一動を見逃さないとするその姿、普通に怖いから。でも岩清水くんもそれを普通に受け入れてるし。やっぱりベータの俺には分からない世界だな。
「いつもすいません」
「気にしないで」
「ありがとうございます」
この会話も絶対聞いてるだろうし、下手なことなんて言えるはずない。
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