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14、飲み屋でロイドに会いました

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 あおいは恐る恐るビストロに入った。
「こんばんは」
「はい、いらっしゃい!」
 店員はあおいをカウンター席に通した。

 カウンターの隣には、先客がいた。
「失礼します」
「おう、どうぞって、あれ? あおいじゃないか?」
「あら、ロイド様、珍しいところでお会いしましたね」
 ロイドはすでに料理を頼んでいて、一杯飲みながら食事を楽しんでいた。

「あの、私、こういう所は初めてなのですが、お薦めとか有りますか?」
 ロイドにあおいは尋ねた。
「腹、減ってるのか?」
「それなりに」
 あおいが答えると、ロイドは言った。

「じゃあ、ここの店は煮込みが美味いぞ」
 ロイドは食べかけの煮込みを指さした。たしかにゴロゴロと煮込まれた肉や野菜が転がっていて美味しそうだった。
「そうですか。それなら、煮込みと葡萄酒を頂きましょう」
 あおいは店員を呼び止め、煮込みと葡萄酒を注文した。

「でも、良いのか? 俺と飲んでたなんて、アレックス様に知られたら、怒られるんじゃないか?」
「なんでそこでアレックス様が出てくるんですか?」
 あおいはまだ飲んでいないのに、赤い顔で抗議した。
「だって、ふたりは付き合ってるんだろう?」

「まだ違います!!」
「まだ、ね」
 ロイドはあおいの言葉を受けて、ニヤニヤと笑った。
「ううう……」
 あおいは言葉につまって、コップの水を飲み干した。

「お料理と葡萄酒です」
「あ、ありがとうございます」
 店員が煮込みと葡萄酒を運んできた。
「いただきます」
 あおいが言うと、ロイドが答えた。
「召し上がれ」

「美味しい!!」
「だろ!?」
 ロイドは自分が作ったかのように、得意げに言った。
「葡萄酒も、久しぶりに飲んだし、煮込みも美味しいし、人に作ってもらった料理って美味しい」
 ロイドはパクパクと食べながら、葡萄酒を飲むあおいをみて微笑んだ。

「また、冒険に行こうな」
「そうですね。錬金術も練習してますし」
「あいかわらず、お菓子を作ってるのか?」
 ロイドはニヤリと笑って言った。
「私は真面目に錬金術をつかってるんですから、からかわないで下さい!」
 あおいは目が据わっていた。

「おい、大丈夫か? 飲み過ぎるなよ」
「このくらい大丈夫です」
 あおいは葡萄酒をおかわりした。

 ロイドとあおいが店を出たのは夜が更けた頃だった。
「うわー、町が回ってる」
「だから、飲み過ぎるなって言ったのに」
 ロイドはあおいの腕を掴んで、あおいを支えていた。
「だって、久しぶりのお酒、美味しかったんだもん」

 あおいは楽しそうに口笛を吹いた。
「おい、夜中だぞ。やめとけ」
「はーい」
 ロイドは心配して、あおいを家まで送った。
「まったく、酔っ払いの面倒は見切れないぜ」
 ロイドがため息をつくと、あおいはロイドの顔をじっと見た。

「ロイドさんもアレックス様も、ほんとに美形ですよね」
「そうか?」
 ロイドは照れて俯いた。
「う、気持ち悪い……」
「おい、大丈夫か?」
 ロイドはちょっと引いている。

「……大丈夫、おやすみなさい」
 あおいはロイドにハグをして、家に入っていった。
「まったく、あおいは危なっかしいな」

 ロイドは赤い顔で町に戻っていった。
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