14 / 51
14、飲み屋でロイドに会いました
しおりを挟む
あおいは恐る恐るビストロに入った。
「こんばんは」
「はい、いらっしゃい!」
店員はあおいをカウンター席に通した。
カウンターの隣には、先客がいた。
「失礼します」
「おう、どうぞって、あれ? あおいじゃないか?」
「あら、ロイド様、珍しいところでお会いしましたね」
ロイドはすでに料理を頼んでいて、一杯飲みながら食事を楽しんでいた。
「あの、私、こういう所は初めてなのですが、お薦めとか有りますか?」
ロイドにあおいは尋ねた。
「腹、減ってるのか?」
「それなりに」
あおいが答えると、ロイドは言った。
「じゃあ、ここの店は煮込みが美味いぞ」
ロイドは食べかけの煮込みを指さした。たしかにゴロゴロと煮込まれた肉や野菜が転がっていて美味しそうだった。
「そうですか。それなら、煮込みと葡萄酒を頂きましょう」
あおいは店員を呼び止め、煮込みと葡萄酒を注文した。
「でも、良いのか? 俺と飲んでたなんて、アレックス様に知られたら、怒られるんじゃないか?」
「なんでそこでアレックス様が出てくるんですか?」
あおいはまだ飲んでいないのに、赤い顔で抗議した。
「だって、ふたりは付き合ってるんだろう?」
「まだ違います!!」
「まだ、ね」
ロイドはあおいの言葉を受けて、ニヤニヤと笑った。
「ううう……」
あおいは言葉につまって、コップの水を飲み干した。
「お料理と葡萄酒です」
「あ、ありがとうございます」
店員が煮込みと葡萄酒を運んできた。
「いただきます」
あおいが言うと、ロイドが答えた。
「召し上がれ」
「美味しい!!」
「だろ!?」
ロイドは自分が作ったかのように、得意げに言った。
「葡萄酒も、久しぶりに飲んだし、煮込みも美味しいし、人に作ってもらった料理って美味しい」
ロイドはパクパクと食べながら、葡萄酒を飲むあおいをみて微笑んだ。
「また、冒険に行こうな」
「そうですね。錬金術も練習してますし」
「あいかわらず、お菓子を作ってるのか?」
ロイドはニヤリと笑って言った。
「私は真面目に錬金術をつかってるんですから、からかわないで下さい!」
あおいは目が据わっていた。
「おい、大丈夫か? 飲み過ぎるなよ」
「このくらい大丈夫です」
あおいは葡萄酒をおかわりした。
ロイドとあおいが店を出たのは夜が更けた頃だった。
「うわー、町が回ってる」
「だから、飲み過ぎるなって言ったのに」
ロイドはあおいの腕を掴んで、あおいを支えていた。
「だって、久しぶりのお酒、美味しかったんだもん」
あおいは楽しそうに口笛を吹いた。
「おい、夜中だぞ。やめとけ」
「はーい」
ロイドは心配して、あおいを家まで送った。
「まったく、酔っ払いの面倒は見切れないぜ」
ロイドがため息をつくと、あおいはロイドの顔をじっと見た。
「ロイドさんもアレックス様も、ほんとに美形ですよね」
「そうか?」
ロイドは照れて俯いた。
「う、気持ち悪い……」
「おい、大丈夫か?」
ロイドはちょっと引いている。
「……大丈夫、おやすみなさい」
あおいはロイドにハグをして、家に入っていった。
「まったく、あおいは危なっかしいな」
ロイドは赤い顔で町に戻っていった。
「こんばんは」
「はい、いらっしゃい!」
店員はあおいをカウンター席に通した。
カウンターの隣には、先客がいた。
「失礼します」
「おう、どうぞって、あれ? あおいじゃないか?」
「あら、ロイド様、珍しいところでお会いしましたね」
ロイドはすでに料理を頼んでいて、一杯飲みながら食事を楽しんでいた。
「あの、私、こういう所は初めてなのですが、お薦めとか有りますか?」
ロイドにあおいは尋ねた。
「腹、減ってるのか?」
「それなりに」
あおいが答えると、ロイドは言った。
「じゃあ、ここの店は煮込みが美味いぞ」
ロイドは食べかけの煮込みを指さした。たしかにゴロゴロと煮込まれた肉や野菜が転がっていて美味しそうだった。
「そうですか。それなら、煮込みと葡萄酒を頂きましょう」
あおいは店員を呼び止め、煮込みと葡萄酒を注文した。
「でも、良いのか? 俺と飲んでたなんて、アレックス様に知られたら、怒られるんじゃないか?」
「なんでそこでアレックス様が出てくるんですか?」
あおいはまだ飲んでいないのに、赤い顔で抗議した。
「だって、ふたりは付き合ってるんだろう?」
「まだ違います!!」
「まだ、ね」
ロイドはあおいの言葉を受けて、ニヤニヤと笑った。
「ううう……」
あおいは言葉につまって、コップの水を飲み干した。
「お料理と葡萄酒です」
「あ、ありがとうございます」
店員が煮込みと葡萄酒を運んできた。
「いただきます」
あおいが言うと、ロイドが答えた。
「召し上がれ」
「美味しい!!」
「だろ!?」
ロイドは自分が作ったかのように、得意げに言った。
「葡萄酒も、久しぶりに飲んだし、煮込みも美味しいし、人に作ってもらった料理って美味しい」
ロイドはパクパクと食べながら、葡萄酒を飲むあおいをみて微笑んだ。
「また、冒険に行こうな」
「そうですね。錬金術も練習してますし」
「あいかわらず、お菓子を作ってるのか?」
ロイドはニヤリと笑って言った。
「私は真面目に錬金術をつかってるんですから、からかわないで下さい!」
あおいは目が据わっていた。
「おい、大丈夫か? 飲み過ぎるなよ」
「このくらい大丈夫です」
あおいは葡萄酒をおかわりした。
ロイドとあおいが店を出たのは夜が更けた頃だった。
「うわー、町が回ってる」
「だから、飲み過ぎるなって言ったのに」
ロイドはあおいの腕を掴んで、あおいを支えていた。
「だって、久しぶりのお酒、美味しかったんだもん」
あおいは楽しそうに口笛を吹いた。
「おい、夜中だぞ。やめとけ」
「はーい」
ロイドは心配して、あおいを家まで送った。
「まったく、酔っ払いの面倒は見切れないぜ」
ロイドがため息をつくと、あおいはロイドの顔をじっと見た。
「ロイドさんもアレックス様も、ほんとに美形ですよね」
「そうか?」
ロイドは照れて俯いた。
「う、気持ち悪い……」
「おい、大丈夫か?」
ロイドはちょっと引いている。
「……大丈夫、おやすみなさい」
あおいはロイドにハグをして、家に入っていった。
「まったく、あおいは危なっかしいな」
ロイドは赤い顔で町に戻っていった。
0
お気に入りに追加
238
あなたにおすすめの小説
白花の咲く頃に
夕立
ファンタジー
命を狙われ、七歳で国を出奔した《シレジア》の王子ゼフィール。通りすがりの商隊に拾われ、平民の子として育てられた彼だが、成長するにしたがって一つの願いに駆られるようになった。
《シレジア》に帰りたい、と。
一七になった彼は帰郷を決意し商隊に別れを告げた。そして、《シレジア》へ入国しようと関所を訪れたのだが、入国を断られてしまう。
これは、そんな彼の旅と成長の物語。
※小説になろうでも公開しています(完結済)。
魔女の弾く鎮魂曲
結城芙由奈
ファンタジー
【魔女フィーネが姿を消して300年…その名は今も語り継がれる】
かつて親族と愛する婚約者に裏切られ、恐ろしい魔女と化したフィーネ。彼女はこの上ないほどの残虐非道な方法で城中の人間を殺害し…城を燃やし、その痕跡は何も残されてはいない。しかし今尚、血に塗れたアドラー城跡地は呪われた場所として人々に恐れられ、300年を隔てた今も…語り継がれている―。
『闇に捕らわれたアドラーの魔女』の続編です
※他サイトでも投稿中
※10話以内の短編です
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
悪役令嬢に転生出来なかったので、フォローに回ります。
haru
ファンタジー
夢にまで見た異世界転生!
スマホもコンビニも、テレビも冷暖房もないけど、
この転生を求めてたのよ!
ストーリー通りに逆ハーレムで素敵な日常を過ごしちゃう?
悪役令嬢になって、ストーリーを変えちゃう?
それとも何か特殊な能力を持っちゃう?
……って夢を見てたんだけどね。
現実は転生したとて、モブはモブでした。
モブは何をしても世界は変わらない。
はずだった、はずだと思ってた。
だって、ここは、物語のなかでしょ?
なのに何で……何が起こってるの。
※ふんわりサスペンス要素が含まれる為、R15指定に変更いたしました。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる