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50.市場
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市場に着くと、ジーンに会った。
「よう! あれ? そのチビ達……」
「あ、あの、今日から僕たちの手伝いをしてくれているポールとステラです」
大翔がポールとステラに挨拶を促した。
「ポールです」
「ステラです」
「よろしく、俺はジーン」
ジーンはポールとステラと握手をして。にかっと笑った。その後で大翔の方を向いて、ジーンが問いかけた。
「最近、お前らの店を騙る奴がいるって聞いたんだが、大丈夫か?」
「あ、もう大丈夫だと思います」
大翔は焦ったような笑みを浮かべジーンに応える。
「そうか? 何かあったらいつでも声をかけてくれ」
「ありがとうございます」
ジーンは手を振って人込みに消えていった。
「びっくりした」
大翔はため息をついてから、ポールとステラの肩を軽くたたいた。
「さあ、おむすびとサンドイッチを売ろう。ポール君は僕と、ステラちゃんは健と一緒に動いてね」
「分かった」
ポールとステラが頷いた。
大翔は荷物をごそごそといじり、それぞれの大きなカバンにサンドイッチとおむすびを入れなおした。
「僕とポール君は時計の下あたりで売るね。健はステラちゃんと出入り口のあたりで売ってもらえるかな?」
「了解」
俺はそう答えると、ステラの小さな手を取り、出入り口の方に向かった。
出入り口で「おむすびとサンドイッチはいかがですか?」と声を上げていると、初老の男性が話しかけてきた。
「おい、この前このチビから買ったサンドイッチ、いまいちだったぞ?」
「今日は俺たちが一緒に作ってるので大丈夫だと思います」
俺はサンドイッチを一つ開き、その一切れを初老の男性に渡した。
「味見してください」
「ふん……」
初老の男性はサンドイッチを食べ終わると表情をすこし柔らかくした。
「今日は大丈夫そうだな。サンドイッチとおむすびを一つずつ頼む」
「はい、少々お待ちください」
ステラがカバンからおむすびとサンドイッチを取り出し、初老の男性に渡した。
「ほらよ」
初老の男性は代金をステラに渡すと去って行った。
「ステラ、君もお客さんを呼んでくれるか?」
「分かった。おいしいおむすびとサンドイッチ、いかがですか?」
俺たちの持っているおむすびとサンドイッチがあと少しで売り切れそうになった頃、大翔とポールがやってきた。
「健、ステラちゃん、順調? 僕たちの方は売り切れたから来たんだけど」
「ああ、こっちももうすぐ売り切れだ」
俺が言うと大翔はほっとしたように微笑んだ。
「いつもよりかなり多く作ったから、今回は残っちゃうかもって心配だったんだ」
話していると、お客さんが来てまたサンドイッチとおむすびが売れた。
「よし、俺たちも売り切れだ」
「じゃあ、宿に戻ろうか。みんな、お疲れさまでした」
大翔と俺は空になったカバンを下げ、帰路についた。ポールとステラも大人しく後をついてくる。
宿に着くと荷物を片付けてから、今日の売り上げを数えた。
「ポール君、ステラちゃん、これが君たちのお給料だよ」
小さな袋がパンパンになるくらい銅貨が詰まっている。それを大翔がポールに渡すと、ポールは目を丸くした。
「こんなにもらっていいのか?」
「うん。お仕事頑張ってくれたでしょう?」
大翔が微笑みかけると、ポールは気まずそうに視線をずらした。
「じゃあ、明日も来てね」
大翔がポールに言うと、ポールは頷いてから宿を出ようとした。
「ちょっとまって。パンの耳も、よかったら持って行って」
大翔はパンの耳を中くらいの袋一杯に詰め、ステラに渡した。
「ありがとう」
ステラは嬉しそうに笑った。
「また明日、よろしくね」
大翔は帰って行くポールとステラに、ずっと手を振っていた。
「よう! あれ? そのチビ達……」
「あ、あの、今日から僕たちの手伝いをしてくれているポールとステラです」
大翔がポールとステラに挨拶を促した。
「ポールです」
「ステラです」
「よろしく、俺はジーン」
ジーンはポールとステラと握手をして。にかっと笑った。その後で大翔の方を向いて、ジーンが問いかけた。
「最近、お前らの店を騙る奴がいるって聞いたんだが、大丈夫か?」
「あ、もう大丈夫だと思います」
大翔は焦ったような笑みを浮かべジーンに応える。
「そうか? 何かあったらいつでも声をかけてくれ」
「ありがとうございます」
ジーンは手を振って人込みに消えていった。
「びっくりした」
大翔はため息をついてから、ポールとステラの肩を軽くたたいた。
「さあ、おむすびとサンドイッチを売ろう。ポール君は僕と、ステラちゃんは健と一緒に動いてね」
「分かった」
ポールとステラが頷いた。
大翔は荷物をごそごそといじり、それぞれの大きなカバンにサンドイッチとおむすびを入れなおした。
「僕とポール君は時計の下あたりで売るね。健はステラちゃんと出入り口のあたりで売ってもらえるかな?」
「了解」
俺はそう答えると、ステラの小さな手を取り、出入り口の方に向かった。
出入り口で「おむすびとサンドイッチはいかがですか?」と声を上げていると、初老の男性が話しかけてきた。
「おい、この前このチビから買ったサンドイッチ、いまいちだったぞ?」
「今日は俺たちが一緒に作ってるので大丈夫だと思います」
俺はサンドイッチを一つ開き、その一切れを初老の男性に渡した。
「味見してください」
「ふん……」
初老の男性はサンドイッチを食べ終わると表情をすこし柔らかくした。
「今日は大丈夫そうだな。サンドイッチとおむすびを一つずつ頼む」
「はい、少々お待ちください」
ステラがカバンからおむすびとサンドイッチを取り出し、初老の男性に渡した。
「ほらよ」
初老の男性は代金をステラに渡すと去って行った。
「ステラ、君もお客さんを呼んでくれるか?」
「分かった。おいしいおむすびとサンドイッチ、いかがですか?」
俺たちの持っているおむすびとサンドイッチがあと少しで売り切れそうになった頃、大翔とポールがやってきた。
「健、ステラちゃん、順調? 僕たちの方は売り切れたから来たんだけど」
「ああ、こっちももうすぐ売り切れだ」
俺が言うと大翔はほっとしたように微笑んだ。
「いつもよりかなり多く作ったから、今回は残っちゃうかもって心配だったんだ」
話していると、お客さんが来てまたサンドイッチとおむすびが売れた。
「よし、俺たちも売り切れだ」
「じゃあ、宿に戻ろうか。みんな、お疲れさまでした」
大翔と俺は空になったカバンを下げ、帰路についた。ポールとステラも大人しく後をついてくる。
宿に着くと荷物を片付けてから、今日の売り上げを数えた。
「ポール君、ステラちゃん、これが君たちのお給料だよ」
小さな袋がパンパンになるくらい銅貨が詰まっている。それを大翔がポールに渡すと、ポールは目を丸くした。
「こんなにもらっていいのか?」
「うん。お仕事頑張ってくれたでしょう?」
大翔が微笑みかけると、ポールは気まずそうに視線をずらした。
「じゃあ、明日も来てね」
大翔がポールに言うと、ポールは頷いてから宿を出ようとした。
「ちょっとまって。パンの耳も、よかったら持って行って」
大翔はパンの耳を中くらいの袋一杯に詰め、ステラに渡した。
「ありがとう」
ステラは嬉しそうに笑った。
「また明日、よろしくね」
大翔は帰って行くポールとステラに、ずっと手を振っていた。
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