17 / 65
17.調理
しおりを挟む
朝になった。天気はあまりよくなく、雨がぽつぽつと降っていた。
「うーん、なんか不安になる天気だなあ」
大翔は空を見てため息をついた。
「大翔、天気なんて気にするなよ」
俺が声をかけると、大翔は少し微笑んだ。
「今日はハンバーグとクリームシチューを中心にしたメニューだよな」
俺が大翔に確認すると、大翔は元気よく頷いた。
「うん」
「ハンバーグってなあに?」
いつのまにか起きたアイラが、大翔の肩にとまって俺たちに質問した。
「肉を細かくして、丸めて焼いた料理だよ。肉汁がじゅわって出てきてとっても美味しいんだよ」
大翔がアイラに優しく説明する。
「そうなんだ。アイラも食べられる?」
アイラは心配そうに大翔にたずねる。
「うん、ちゃんと人数分作るから大丈夫だよ」
「やったあ!」
アイラは大翔の肩から飛び立つと、ひらひらと俺たちの周りを飛び回った。
「じゃあ、朝ごはんを食べたら、今夜の食事会に向けて料理を始めよう」
「分かった」
俺が笑顔で返事をすると、大翔も笑顔でエプロンを身に着けた。
大翔は手作りのベーコンと目玉焼き、サラダと白いご飯をみんなの分、準備すると食堂に並べた。
「大翔、ベーコンなんていつ作ったんだ?」
「びっくりした? 健、ベーコン好きでしょう?」
俺はベーコンを一口食べた。良い香りで、肉の味も良く、とても美味しかった。
「実は、今日のクリームシチューに使おうと思って、昨日のうちに、このベーコンを作っておいたんだ」
「大翔、すごいな」
「へへっ」
大翔は得意げに笑った。
「大翔、健、おいしいね」
アイラは口の周りを半熟の目玉焼きの黄身で真っ黄色にしたまま、嬉しそうに言った。
「ごちそうさま」
俺が言うと、大翔も言った。
「ごちそうさま」
「美味しかった!」
アイラはご機嫌で大翔のそばを飛んでいる。
「じゃあ、片づけをして……今日の食事会の準備に取り掛かろう」
「そうだな」
大翔と俺は、汚れた食器をキッチンに運んだ。俺が食器を洗い始めると、大翔は夕食の材料をキッチンの作業場に並べ始めた。
固まり肉を包丁でミンチにし、クリームシチューの材料を刻む。
パンケーキの材料は計って、冷蔵庫にしまった。
サラダの材料を見て、大翔はため息をついた。
「うーん……やっぱりしなびてる……。健、森の入り口まで行って、サラダの材料になりそうな野草を探したいんだけど……いいかな? 料理の下ごしらえは大体できてるし……」
俺は大翔の言葉を聞いて、ちょっと考えた後に頷いた。
「分かった。でも、食材を探すのは、森の入り口だけだぞ? 奥にはモンスターがいそうだし」
「うん」
大翔は俺の返事を聞くと、すぐに二階に行って武器と防具を身に着けて、冒険の準備をした。もちろん、食材をいれるためのおおきなカバンを肩にかけている。
俺も身支度をすませると、アイラに聞いた。
「アイラも一緒に食材を探しに行くか?」
「……うん。大翔と健が一緒なら、行く」
俺たちはアイラを連れて、森の入り口で食材を探すことにした。
森の入り口にはいろいろな野草が生えていた。
「あ、この木の芽、食べられる野草の本に載ってた。……こっちの草も載ってたよ」
「大翔、この草も……レタスに似てないか?」
「そうだね! うん……ちゃんと、食べられる野草の本に載ってる。こっちは小さな玉ねぎみたいだ……無毒って書いてある!」
思っていたより、たくさんの野草を手に入れることができたので俺たちは、ほっとしていた。
「健、大翔、これ、おいしいよ」
アイラが少し森の入り口より奥のほうから、両手に何かをもって戻ってきた。
「……これ、木苺みたいだね」
大翔がアイラの持ってきた木の実を本と見比べて、言った。
「食べてみて!」
アイラが大翔の口元に、木苺を一つ近づけた。
「うん……甘くておいしいね。これ、まだあるの?」
「うん。もう少し奥にいっぱい、なってるよ」
アイラの案内で森の中に大翔が入っていった。
「おい! あんまり奥にはいかないって言っただろう!?」
「少しだから平気だよ……」
大翔はそう言ってアイラの後をついて行った。
「しかたないな……」
俺も大翔の後に続いた。
森の中は雨のせいかひんやりとしていた。
「ここだよ!」
アイラの指さす方向には、木苺がたわわに実っていた。
「やった。これだけあれば、ジャムも作れるよ」
大翔が一生懸命木苺を摘んで袋に入れていった。
「……大翔、気をつけろ! 何か……生き物の気配がする!」
「え?」
俺のほうを向いた大翔の後ろに、大きな角を持ったウサギが現れた。
「大翔! アイラ! 逃げろ!」
俺は角ウサギに向かって、剣を振り上げた。
「わ!」
「きゃあ!」
大翔とアイラが俺の後ろに逃げた。
俺は剣を角ウサギに振り下ろした。
「ぎいいぃ」
角ウサギが血を流している。俺は剣を角ウサギの喉あたりに突き刺した。
「!!」
角ウサギはおとなしくなった。
「大翔、アイラ、大丈夫か?」
「う、うん」
「大丈夫」
大翔は動かなくなった角ウサギに近づいた。
「……死んでる」
「……ああ」
「角ウサギって、おいしいのかな?」
大翔が興味深そうに、角ウサギの死体を観察している。
「持って帰るか?」
「うん」
俺は角ウサギの足を縛って、肩に担いだ。
「それじゃ、家に帰ろう」
「うん」
「はーい」
俺たちは食材をもって、家に帰った。
「うーん、なんか不安になる天気だなあ」
大翔は空を見てため息をついた。
「大翔、天気なんて気にするなよ」
俺が声をかけると、大翔は少し微笑んだ。
「今日はハンバーグとクリームシチューを中心にしたメニューだよな」
俺が大翔に確認すると、大翔は元気よく頷いた。
「うん」
「ハンバーグってなあに?」
いつのまにか起きたアイラが、大翔の肩にとまって俺たちに質問した。
「肉を細かくして、丸めて焼いた料理だよ。肉汁がじゅわって出てきてとっても美味しいんだよ」
大翔がアイラに優しく説明する。
「そうなんだ。アイラも食べられる?」
アイラは心配そうに大翔にたずねる。
「うん、ちゃんと人数分作るから大丈夫だよ」
「やったあ!」
アイラは大翔の肩から飛び立つと、ひらひらと俺たちの周りを飛び回った。
「じゃあ、朝ごはんを食べたら、今夜の食事会に向けて料理を始めよう」
「分かった」
俺が笑顔で返事をすると、大翔も笑顔でエプロンを身に着けた。
大翔は手作りのベーコンと目玉焼き、サラダと白いご飯をみんなの分、準備すると食堂に並べた。
「大翔、ベーコンなんていつ作ったんだ?」
「びっくりした? 健、ベーコン好きでしょう?」
俺はベーコンを一口食べた。良い香りで、肉の味も良く、とても美味しかった。
「実は、今日のクリームシチューに使おうと思って、昨日のうちに、このベーコンを作っておいたんだ」
「大翔、すごいな」
「へへっ」
大翔は得意げに笑った。
「大翔、健、おいしいね」
アイラは口の周りを半熟の目玉焼きの黄身で真っ黄色にしたまま、嬉しそうに言った。
「ごちそうさま」
俺が言うと、大翔も言った。
「ごちそうさま」
「美味しかった!」
アイラはご機嫌で大翔のそばを飛んでいる。
「じゃあ、片づけをして……今日の食事会の準備に取り掛かろう」
「そうだな」
大翔と俺は、汚れた食器をキッチンに運んだ。俺が食器を洗い始めると、大翔は夕食の材料をキッチンの作業場に並べ始めた。
固まり肉を包丁でミンチにし、クリームシチューの材料を刻む。
パンケーキの材料は計って、冷蔵庫にしまった。
サラダの材料を見て、大翔はため息をついた。
「うーん……やっぱりしなびてる……。健、森の入り口まで行って、サラダの材料になりそうな野草を探したいんだけど……いいかな? 料理の下ごしらえは大体できてるし……」
俺は大翔の言葉を聞いて、ちょっと考えた後に頷いた。
「分かった。でも、食材を探すのは、森の入り口だけだぞ? 奥にはモンスターがいそうだし」
「うん」
大翔は俺の返事を聞くと、すぐに二階に行って武器と防具を身に着けて、冒険の準備をした。もちろん、食材をいれるためのおおきなカバンを肩にかけている。
俺も身支度をすませると、アイラに聞いた。
「アイラも一緒に食材を探しに行くか?」
「……うん。大翔と健が一緒なら、行く」
俺たちはアイラを連れて、森の入り口で食材を探すことにした。
森の入り口にはいろいろな野草が生えていた。
「あ、この木の芽、食べられる野草の本に載ってた。……こっちの草も載ってたよ」
「大翔、この草も……レタスに似てないか?」
「そうだね! うん……ちゃんと、食べられる野草の本に載ってる。こっちは小さな玉ねぎみたいだ……無毒って書いてある!」
思っていたより、たくさんの野草を手に入れることができたので俺たちは、ほっとしていた。
「健、大翔、これ、おいしいよ」
アイラが少し森の入り口より奥のほうから、両手に何かをもって戻ってきた。
「……これ、木苺みたいだね」
大翔がアイラの持ってきた木の実を本と見比べて、言った。
「食べてみて!」
アイラが大翔の口元に、木苺を一つ近づけた。
「うん……甘くておいしいね。これ、まだあるの?」
「うん。もう少し奥にいっぱい、なってるよ」
アイラの案内で森の中に大翔が入っていった。
「おい! あんまり奥にはいかないって言っただろう!?」
「少しだから平気だよ……」
大翔はそう言ってアイラの後をついて行った。
「しかたないな……」
俺も大翔の後に続いた。
森の中は雨のせいかひんやりとしていた。
「ここだよ!」
アイラの指さす方向には、木苺がたわわに実っていた。
「やった。これだけあれば、ジャムも作れるよ」
大翔が一生懸命木苺を摘んで袋に入れていった。
「……大翔、気をつけろ! 何か……生き物の気配がする!」
「え?」
俺のほうを向いた大翔の後ろに、大きな角を持ったウサギが現れた。
「大翔! アイラ! 逃げろ!」
俺は角ウサギに向かって、剣を振り上げた。
「わ!」
「きゃあ!」
大翔とアイラが俺の後ろに逃げた。
俺は剣を角ウサギに振り下ろした。
「ぎいいぃ」
角ウサギが血を流している。俺は剣を角ウサギの喉あたりに突き刺した。
「!!」
角ウサギはおとなしくなった。
「大翔、アイラ、大丈夫か?」
「う、うん」
「大丈夫」
大翔は動かなくなった角ウサギに近づいた。
「……死んでる」
「……ああ」
「角ウサギって、おいしいのかな?」
大翔が興味深そうに、角ウサギの死体を観察している。
「持って帰るか?」
「うん」
俺は角ウサギの足を縛って、肩に担いだ。
「それじゃ、家に帰ろう」
「うん」
「はーい」
俺たちは食材をもって、家に帰った。
135
あなたにおすすめの小説
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる