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1、新世界
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「健(たける)、今日暇?」
「ああ、大翔(ひろと)。空いてるよ」
「じゃあさ、新しくできたラーメン屋行かない?」
「いいな」
高校の帰り道、人なつっこい笑顔で大翔は頷いた。
俺はいつもの交差点に向かうと、遠くからふらついて進んでくるトラックに気付いた。
「あ!? なんだ? あのトラック……信号赤なのに止まる気配ないじゃねえか!」
焦って交差点の横断歩道を見ると、黄色い帽子をかぶった小学生の姿が見えた。
「ちっ!!」
「健!?}
俺が急いで小学生に駆け寄ると大翔もついてきた。
「お前は待ってろ! 大翔!」
「健だけを危ない目にあわせられないよ!!」
俺が小学生の手を引っ張って、道路の向こう側に投げ飛ばした瞬間、辺りが真っ暗になった。
頭がぐわん、と打ち付けられた気がした。
「うっ・・・・・・」
「・・・・・・健・・・・・・」
「大翔・・・・・・・」
どれくらいの時間が経ったのだろう。
俺は目を覚ました。
辺りを見回すと、土の道と草原が広がっていた。
「なんだ? ここは・・・・・・。っと! 大翔!?」
俺の隣に、大翔が倒れている。
特に外傷は無いようだ。
「ここ、どこだろう……?」
「さあ……」
俺たちは見たことのない風景と、わりあい近くにある街並みを見てため息をついた。
「ん? なんか声が聞こえない? 健」
「……ああ、あっちから聞こえるな」
俺たちは茂みの方に足音を立てないようにして近づいた。
「助けて!」
「こんな所に誰も来ないぜ?」
女性が、いかにも悪そうな男に襲われていた。
「おい! お前、何してるんだ!?」
「ああ! 助けて下さい!!」
「なんだ!? 貴様ら」
男は健に飛びかかってきた。
健は男の持っていたナイフをたたき落とすと、男の腕を掴んで組み伏せた。
「くっ……」
「お前、盗賊か!?」
「ちっ!!」
男は健の事を蹴り上げて、逃げ出した。
「待て!」
「健! 今はこの人の手当の方が先だよ」
「……大翔……そうだな。怪我はありませんか?」
「……はい、ありがとうございます」
女性はお礼を言うと、健と大翔に微笑みかけた。
日に透けるブロンドヘアが波打ち、うすい青色の目が美しかった。
「お嬢様!!」
「あ!」
町の方から、付き人らしき二人組が駆けつけてきた。
「……ご無事でよかったです。一人で町を抜け出してはいけないとあれほど申し上げておりましたのに……」
「申し訳ありません。……盗賊に襲われたところをこの方達に助けて頂きました」
二人の付き人は健と大翔に礼をしてから、小袋を鞄から取り出し大翔に渡した。
「これは……お礼です。今回のことはどうぞご内密に」
「……?」
大翔と健が小袋を開けると、そこには金貨が10枚ほど入っていた。
「え!? こんなもの頂けません」
「そうだ。俺たちは困っている人が居たから助けただけだ」
女性はそれを聞いて、にっこりと笑った。
「私を助けて頂いたお礼です。どうぞ受け取ってくださいませ」
「それでは、お嬢様。町に戻りましょう」
「……はい。それでは失礼致します……」
女性は付き人に囲まれて、町に向かっていった。
「健、どうしよう……」
「くれるっていうんだから貰っておこう、大翔。……俺たちも町に向かおう」
大翔は俺の顔と遠ざかっていく女性の姿を見てから頷いた。
「うん、そうだね」
俺たちはとりあえず町に向かって歩き出した。
「ああ、大翔(ひろと)。空いてるよ」
「じゃあさ、新しくできたラーメン屋行かない?」
「いいな」
高校の帰り道、人なつっこい笑顔で大翔は頷いた。
俺はいつもの交差点に向かうと、遠くからふらついて進んでくるトラックに気付いた。
「あ!? なんだ? あのトラック……信号赤なのに止まる気配ないじゃねえか!」
焦って交差点の横断歩道を見ると、黄色い帽子をかぶった小学生の姿が見えた。
「ちっ!!」
「健!?}
俺が急いで小学生に駆け寄ると大翔もついてきた。
「お前は待ってろ! 大翔!」
「健だけを危ない目にあわせられないよ!!」
俺が小学生の手を引っ張って、道路の向こう側に投げ飛ばした瞬間、辺りが真っ暗になった。
頭がぐわん、と打ち付けられた気がした。
「うっ・・・・・・」
「・・・・・・健・・・・・・」
「大翔・・・・・・・」
どれくらいの時間が経ったのだろう。
俺は目を覚ました。
辺りを見回すと、土の道と草原が広がっていた。
「なんだ? ここは・・・・・・。っと! 大翔!?」
俺の隣に、大翔が倒れている。
特に外傷は無いようだ。
「ここ、どこだろう……?」
「さあ……」
俺たちは見たことのない風景と、わりあい近くにある街並みを見てため息をついた。
「ん? なんか声が聞こえない? 健」
「……ああ、あっちから聞こえるな」
俺たちは茂みの方に足音を立てないようにして近づいた。
「助けて!」
「こんな所に誰も来ないぜ?」
女性が、いかにも悪そうな男に襲われていた。
「おい! お前、何してるんだ!?」
「ああ! 助けて下さい!!」
「なんだ!? 貴様ら」
男は健に飛びかかってきた。
健は男の持っていたナイフをたたき落とすと、男の腕を掴んで組み伏せた。
「くっ……」
「お前、盗賊か!?」
「ちっ!!」
男は健の事を蹴り上げて、逃げ出した。
「待て!」
「健! 今はこの人の手当の方が先だよ」
「……大翔……そうだな。怪我はありませんか?」
「……はい、ありがとうございます」
女性はお礼を言うと、健と大翔に微笑みかけた。
日に透けるブロンドヘアが波打ち、うすい青色の目が美しかった。
「お嬢様!!」
「あ!」
町の方から、付き人らしき二人組が駆けつけてきた。
「……ご無事でよかったです。一人で町を抜け出してはいけないとあれほど申し上げておりましたのに……」
「申し訳ありません。……盗賊に襲われたところをこの方達に助けて頂きました」
二人の付き人は健と大翔に礼をしてから、小袋を鞄から取り出し大翔に渡した。
「これは……お礼です。今回のことはどうぞご内密に」
「……?」
大翔と健が小袋を開けると、そこには金貨が10枚ほど入っていた。
「え!? こんなもの頂けません」
「そうだ。俺たちは困っている人が居たから助けただけだ」
女性はそれを聞いて、にっこりと笑った。
「私を助けて頂いたお礼です。どうぞ受け取ってくださいませ」
「それでは、お嬢様。町に戻りましょう」
「……はい。それでは失礼致します……」
女性は付き人に囲まれて、町に向かっていった。
「健、どうしよう……」
「くれるっていうんだから貰っておこう、大翔。……俺たちも町に向かおう」
大翔は俺の顔と遠ざかっていく女性の姿を見てから頷いた。
「うん、そうだね」
俺たちはとりあえず町に向かって歩き出した。
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