生徒会長殿は疲れていた

茜カナコ

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イザック

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「それじゃ、いきますよ」
ハナはそう言うとドラゴンに変化した。
ハナの背に乗れば、セントラルパークまでは一時間でいける。

「きもちいいね、学」
翼が抱きついてきた。ライトブラウンのショートヘアが鼻先をくすぐる。
「ちょっとこわいです、学さん」
あやのも抱きついてきた。黒髪のロングヘアーがなびいている。

「あれ?下を歩いているのイザックさんじゃありませんか?」
ハナはそう言うと道の端に降り、変化を解いてから人の形に変化した。
「イザックさん?」
学が声をかけるとイザックは驚いて声を上げた。
「学さんじゃないですか」

よくみるとイザックは大きな本を持っていた。
「それ、何ですか?」
「魔道書だよ。ハンナの依頼で、聖女フローレンスに届けに行くんだ」
イザックはそう言って、大事そうに魔道書を抱きしめた。
「最近は盗賊もいないし、魔物も姿を消したし、僕にもできるだろうって」

イザックの胸元を見ると、銅色のバッジが付いていた。
「そのバッジは何ですか?」
学が訊ねると、イザックは得意げに言った。
「冒険者の館で冒険者登録をしたんだ。まだ駆け出しだけどね」
どうやら、冒険者の証らしい。
「それじゃ、いそぐから」
そういうとイザックは手を振って走り出した。

イザックとの話を終えて、学たちはまたドラゴンに変化したハナに乗った。
セントラルパークへはその後特に事件もおこらず無事についた。

「えっと、ハンナのビストロの脇って言ってたよな?」
学はそう言うとハンナのビストロの出入り口から隣の建物を観察した。
すると、ツタに覆われた大きな廃墟のような建物があるのに気づいた。
「ここかな?」
学たちは入り口を探すと、ツタの隙間からドアのようなものが見えた。
「こんにちは」
「ああ、順番だからちょっとまって」

30代くらいの美女が番号札を投げてよこした。
3番とかいてある。学たちは素直に待つことにした。
館の中は整然としていて、冒険者たちの話し声があふれていた。
「ねえ、学、私たち冒険者になるのね。わくわくしちゃう」
翼がそういうとあやのが言った。
「私は怖いです」
あやのはそう言って学の腕を掴んだ。

「はい、3番さんどうぞ」
先ほどの美女に番号を呼ばれた。
学たちは番号札を渡すと単刀直入に言った。
「冒険者の登録をしたいんだが」
「はいはい、登録ね」
「ハンナから聞いてるわ、異世界の服を着たパーティが近々現れるだろうって」
「私はレイラ。よろしくね」
「レイラ、俺たちの冒険者ランクはどのくらいなんだ?」

「魔法が使えるパーティで、スライムの巣をやっつけてドラゴンの卵を持ってきた」
学が説明するまでもなく、レイラはパーティのことを把握していた。
「うん、シルバーランクかな」
「それはどのくらいのランクなんだ?」
学が訊ねるとレイラはあっけらかんと答えた。
「真ん中より結構上、みんな魔法が二つ以上使えるパーティーなんて初めてよ」

「冒険者登録はどうすればいい?」
「この紙に名前を書けばいいわ。パーティ名は?」
「学騎士団」
翼が元気よく答えるとレイラは笑った。
「もし嫌になったらまたここに来ればパーティー名も変えられるわ」
「依頼はハンナのビストロでも受けられるし、ここでも受けられるわ」
学は今受けられる依頼があるか訊ねると、レイラは答えた。

「今ね、ドワーフの村と連絡が途絶えてるの。件と鎧を10着引き取りに行くっていう案件があるわ」
「わかった、みんな、引き受けていいか?」
学がそう言うと、翼もあやのもハナも頷いた。
「それじゃあ、地図をあげるわね」
レイラはそう言って地図をとりだした。

「ドラゴンの森の向こう側ね」
翼はそう言うと、あやのが言った。
「学さんの闇魔法があれば大丈夫ですね」
学は難しい顔をした。
「闇魔法は精神力の消耗が激しいんだ。なるべくドラゴンとは戦いたくない」
レイラはそれを聞いて驚いた。

「闇魔法までつかえるの?」
学はしまったと思ったがうなずいた。
「それならゴールドランクになるのも、きっとすぐね」
レイラはそう言って、学たちにシルバーのバッチを手渡した。
「荷物が多くなるから、馬車を用意してあるわ」
レイラはそう言うと建物からでて、馬車の場所まで案内した。

「きをつけてね」 
こうして学たちはドワーフの村を目指すこととなった。
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