6 / 21
6、おっさん友達が増える
しおりを挟む
朝が来た。
俺は大きく、のびをした。
今日はバイトが休みだ。
特にすることもないから、近所の大きな公園に出かけていった。
公園の中を散歩していると、ベンチに小学生が座っていた。
「おう、どうした坊主?」
俺は話しかけてみた。
少年は訝しげな目を向けたが、18才の女性ということで油断したらしい。
俺の話しかけに返事をした。
「学校、行きたくない」
「そっか、俺もそうだった」
「お姉さんも!?」
「ああ、あんな狭くて苦しいところ、大嫌いだったよ」
俺がそう言うと、少年はちょっと難しい顔をして答えた。
「で、お姉さんは今何してるの?」
「バイト休みで、暇してる」
「ふうん」
少年は俯いた。
「まあ、生きてりゃ色々あるし、大学は楽しかったよ」
「僕は今が苦しいんだよ?」
小学生とは思えない言葉だ。
俺は、可哀想に思った。
「学校を一日くらいサボったって、死んだりしないぜ」
「お姉さん、言葉使い悪いね」
そう言って少年は笑った。
とは言っても、このままこの少年を一人公園に置いておく訳にもいかない。
「ライン、やってるか?」
「うん」
俺は、少年とラインを交換した。
「千草って言うんだ。お姉さんの名前、シワシワだね」
「うっせーよ」
俺は早速少年にラインを送った。
<よろしく>
少年の名前は西川 正人にしかわ まさとと言った。
ラインの返信が来た。
<よろしくお願いします>
「なあ、今日は学校遅れて行かないか?」
俺は仕方なく、そう言った。
「そうだなあ」
正人が暗い表情で俯いた。
「行って、早退すれば良いじゃん」
「うん」
「愚痴くらいならいつでも聞くから、ラインくれよ」
正人は戸惑っていた。
「僕、知らない人と口聞いちゃ駄目ってお母さんに言われてたんだった」
「そっか、そりゃ悪かったな」
俺が、がははと笑うと正人も微笑んだ。
「大人って学校に行ってないと、怒るものだと思ってた」
「そりゃ、人それぞれで上手くいかないもんだってあるさ」
正人が急に真面目な顔になった。
「お姉さんは大人なんだから、ちゃんとしないと駄目だよ」
「はいはい」
正人はそう言って、立ち上がった。
「なんか、学校行けそうな気がしてきた」
「おう、凄いぞ! 嫌ならすぐ帰れ」
「分かった」
俺は正人に手を振りながら、微妙な気分になった。
「小学校か。しんどかったな、あれは」
俺は一人呟いた。
「正人は登校拒否か? 一人で公園にいるなんて、家にも居場所がないのか?」
俺はちょっと、寂しい気持ちになった。
気分転換にバイト先のコンビニに寄った。
すると店長が笑顔で出迎えてくれた。
「小野さん! 良いところに来てくれたよ! 暇ならシフト入ってくれないか?」
「いいですよ」
俺はすることもないので、結局働くことにした。
夜になって、バイトが終わるころ、正人からラインが来た。
<学校、いられた>
俺は慌てて返信した。
<偉いぞ、正人。俺には出来なかったことだ。胸張って良いぜ>
すぐに正人から返事が来た。
<うん>
一応、人助けになったんだろうか。
俺はすこしだけ、ホッとした気持ちになった。
正人からまたラインが来た。
<お姉さん、言葉使い気をつけた方が良いよ、女の子なんだから>
<わかったよ>
こうして、俺に友達が一人増えた。
俺は大きく、のびをした。
今日はバイトが休みだ。
特にすることもないから、近所の大きな公園に出かけていった。
公園の中を散歩していると、ベンチに小学生が座っていた。
「おう、どうした坊主?」
俺は話しかけてみた。
少年は訝しげな目を向けたが、18才の女性ということで油断したらしい。
俺の話しかけに返事をした。
「学校、行きたくない」
「そっか、俺もそうだった」
「お姉さんも!?」
「ああ、あんな狭くて苦しいところ、大嫌いだったよ」
俺がそう言うと、少年はちょっと難しい顔をして答えた。
「で、お姉さんは今何してるの?」
「バイト休みで、暇してる」
「ふうん」
少年は俯いた。
「まあ、生きてりゃ色々あるし、大学は楽しかったよ」
「僕は今が苦しいんだよ?」
小学生とは思えない言葉だ。
俺は、可哀想に思った。
「学校を一日くらいサボったって、死んだりしないぜ」
「お姉さん、言葉使い悪いね」
そう言って少年は笑った。
とは言っても、このままこの少年を一人公園に置いておく訳にもいかない。
「ライン、やってるか?」
「うん」
俺は、少年とラインを交換した。
「千草って言うんだ。お姉さんの名前、シワシワだね」
「うっせーよ」
俺は早速少年にラインを送った。
<よろしく>
少年の名前は西川 正人にしかわ まさとと言った。
ラインの返信が来た。
<よろしくお願いします>
「なあ、今日は学校遅れて行かないか?」
俺は仕方なく、そう言った。
「そうだなあ」
正人が暗い表情で俯いた。
「行って、早退すれば良いじゃん」
「うん」
「愚痴くらいならいつでも聞くから、ラインくれよ」
正人は戸惑っていた。
「僕、知らない人と口聞いちゃ駄目ってお母さんに言われてたんだった」
「そっか、そりゃ悪かったな」
俺が、がははと笑うと正人も微笑んだ。
「大人って学校に行ってないと、怒るものだと思ってた」
「そりゃ、人それぞれで上手くいかないもんだってあるさ」
正人が急に真面目な顔になった。
「お姉さんは大人なんだから、ちゃんとしないと駄目だよ」
「はいはい」
正人はそう言って、立ち上がった。
「なんか、学校行けそうな気がしてきた」
「おう、凄いぞ! 嫌ならすぐ帰れ」
「分かった」
俺は正人に手を振りながら、微妙な気分になった。
「小学校か。しんどかったな、あれは」
俺は一人呟いた。
「正人は登校拒否か? 一人で公園にいるなんて、家にも居場所がないのか?」
俺はちょっと、寂しい気持ちになった。
気分転換にバイト先のコンビニに寄った。
すると店長が笑顔で出迎えてくれた。
「小野さん! 良いところに来てくれたよ! 暇ならシフト入ってくれないか?」
「いいですよ」
俺はすることもないので、結局働くことにした。
夜になって、バイトが終わるころ、正人からラインが来た。
<学校、いられた>
俺は慌てて返信した。
<偉いぞ、正人。俺には出来なかったことだ。胸張って良いぜ>
すぐに正人から返事が来た。
<うん>
一応、人助けになったんだろうか。
俺はすこしだけ、ホッとした気持ちになった。
正人からまたラインが来た。
<お姉さん、言葉使い気をつけた方が良いよ、女の子なんだから>
<わかったよ>
こうして、俺に友達が一人増えた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
GOOD-BYE HONEY
野良にゃお
大衆娯楽
さよならハニー
雨雲が 夜の空を覆い
幾つもの 冷たい粒を落とす
その粒の 幾つかに叩かれ
吐く息が 白く靄がかる
ウチは今 想い人に寄り添われ
町を出る
追われる身となる前に
視線を向けると
笑顔で包み込んでくれた
ウチは頼りないけれど 誰にも渡したくない
漸くこうして 叶ったのだから
知ってしまったの もう忘れられないのよ
過ちの先で 結ばれたとしても
泣いてなんかない 頬を伝うのは雨
失いたくないの
進み行く この道は険しくて
行くあては 何一つ浮かばない
けれどでも 期待せずにいられない
温もりが 未来を照らす
ウチはもう 後戻りデキない
咎を背負い
その代わり愛を得た
いつまでこうして
二人でいられるのだろうか
ウチは頼りないけれど 誰にも渡したくない
漸くこうして 叶ったのだから
知ってしまったの もう忘れられないのよ
過ちの先で 結ばれたとしても
泣いてなんかない 頬を伝うのは雨
失いたくないの
寂しかったのよ
ずっと苦しかったのよ
悲しかったのよ
アナタとこうなるまでは
ウチは頼りないけれど 誰にも渡したくない
漸くこうして 叶ったのだから
知ってしまったの もう忘れられないのよ
過ちの先で 結ばれたとしても
雨上がり夜の空 流れ星を見る
届け ウチの声
手淫部~DT高校生たちの至高なるソロコンサート~
いえつん
大衆娯楽
県立御数高校(おかずこうこう)に通う増田部翔(ますたべしょう)は、授業中にトイレでソロ活動をすることがルーティーンであった。しかし倍部美結(ばいぶみゆ)にそのことがバレてしまう。高校生活が終わるかと思いきや、かえって謎の部活「手淫部」での活動が始まることになる。彼に再び平和な一人での性活は訪れるのだろうか。
隊員の内部事情
元次三蔵
大衆娯楽
自衛隊の内部の内部。
いわゆる駐屯地の中で暮らしてる隊員たち(営内者)のドタバタヒューマンコメディ?を書いていこうと思います。(`ー´ゞ
一作品500~1000文字前後でサクッと読める感じでいきたいと思います。
めんどくさいからじゃないよ(-。-)y-~
なるべく毎日更新したいけど、たまには1週間くらい空いちゃうよね🎵
あっ、横書きの方が見やすいよ~🎵
人情居酒屋おやじ part1 常連の山ちゃん
双葉なおき
大衆娯楽
料金を作るのが趣味という親父が、早期退職をして居酒屋を始めた。
その親父の人柄に人が集まるお店を皆が「人情居酒屋」と呼ぶようになった。
そんな、「人情居酒屋おやじ」での人情あふれるお話である。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる