上 下
11 / 20

11、訓練

しおりを挟む
「起きて、司! 朝よ!」
「はいはい」
ミクルの声がドアの外からする。
司は起きたままの姿で、ドアを開けた。

「何よ、まだ寝間着なの!? だらしないわね」
「今日は何だ?」
まくし立てるミクルの声に、ウンザリしながら司は答えた。
「今日から、司にも訓練があるのよ」
「そういうのは前日に言っておいてくれよ」
「悪かったわね!」
ミクルは全然悪気のない様子で言った。

「ちょっと待ってくれ、着替えるから」
「あ、これ、着替え。昨日渡すの、忘れてたわ」
ミクルはそう言って、司にチノパンとTシャツの様なものを渡した。
「あの、俺の着替え見たいの?」
「馬鹿じゃないの!?」
ミクルは司に向かって、怒鳴りつけるとドアをバタンと閉めた。

司は渡された服に着替えて、剣と盾を装備した。
服のサイズはぴったりだった。

「おまたせ」
「遅い!」
ミクルは司の格好を見て、呟いた。
「まあまあ、似合うじゃない」

「あ、ミクルさんに司さん、そろそろ朝のミーティング始まりますよ」
ユーリは鎧をまとっていた。
そういえばミクルも戦闘用のローブを身にまとっている。

「城では毎日、兵士の訓練が行われています」
ユーリが言った。
「司も参加することになったのよ」
ミクルが言葉を続けた。
「なんで俺まで」
司は一人で呟いた。

「司は一般兵と同じ訓練から始めるのよ」
「はいはい」
「はい、は一度だけ!」
「はい」
司はミクルの言葉に素直に従った。

王宮の広場に行くと、兵士達はもうすでに整列していた。
兵士達が格子状に並んでいる正面の真ん中が空いていた。
「ほら、あそこ、司の場所」
「え!? 一番目立つじゃないか!?」

「早くしたまえ! 新人君!」
騎士の総長、ラリーが司に声をかけた。
「はい!」
司は、空いている場所に駆けていった。

「私たちは、いつも通り一緒に戦いましょう」
「そうですね」
ミクルとユーリは目を合わせて頷いた。

司の受けた訓練は、地味なものだった。
腕立て伏せに、剣の打ち合い、スクワットなど基本的な体力の増強に当たるものだった。
それでも、毎日訓練している他の兵士達にはかなわなかった。
「どうした、新人? もうギブアップか!?」
「まだまだ大丈夫です」
司は何とか他の兵士達に追いつくことが出来た。

「よし、今日はここまで」
「ありがとうございました!」
午前中一杯体を動かした所為で、司は体中に痛みを感じていた。

「司、終わったわね」
「ミクル、ユーリ。二人は特別メニューなのか?」
「ええ、私たちにかなう者はいないから、二人で訓練することになっちゃうのよ」
ミクルはそう言うと両手を広げてため息をついた。

「ねえ、午後から東の丘に行かない?」
「ちょっと司さんには早いんじゃないですか?」
ミクルの提案にユーリが異をとなえた。
「東の丘?」
司が二人に尋ねると、ユーリが答えた。

「ミニドラゴンの巣があるんですよ」
ミクルも頷いている。
「ミニドラゴンね、面白いじゃん」

司は微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

深淵に眠る十字架

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
悪魔祓いになることを運命付けられた少年がその運命に逆らった時、歯車は軋み始めた… ※※この作品は、由海様とのリレー小説です。 表紙画も由海様の描かれたものです。

娘と二人、異世界に来たようです……頑張る母娘の異世界生活……ラブ少し!

十夜海
ファンタジー
母一人、子一人。 天涯孤独でたった二人の家族。 でも、高校の入学式へ向かう途中に居眠り運転のダンプカーに突っ込まれて二人仲良く死亡……。 私はどーでもいい、だって娘まで生まれた。でも、娘はまだ16歳なりかけ。なんで?なんで死ななきゃならない。 厳しい受験を乗り越えて、ようやくキャピキャピ楽しい高校生活だ。彼氏だってできるかもしれない。 頑張ったのに。私だって大学までやるために身を粉にして頑張ったのだ。 大学どころか、高校生活までできないなんて! ひどい。 願ったのは、娘の幸せと恋愛! 気づけば異世界に……。 生きてる?やったね! ん?でも高校ないじゃん! え?魔法?あ、使える。 あれ?私がちっさい? あれ?私……若い??? あれぇ? なんとか娘を幸せな玉の輿に乗せるために頑張る母。 そんな母娘の異世界生活。 でも……おかしいな?なんで私が子供なんですか? ##R18で『なろう』で投稿中です。 ラブ少なめなので、R15でファンタジー系で手直ししつつ、こちらに投稿させていただきます。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

死にかけたときに助けてくれた王家に一生を捧げます〜黒髪赤目が理由で殺されそうになりましたが助けてもらって生き延びます〜

RM
ファンタジー
『一条家』 この世界において王家に近い血をもつ貴族のトップである。この一条家にある日、男の子が生まれた。その子は黒髪赤目で、神に背いた反神とよばれる者の呪い子の特徴がでていた。七年後、その子はとある儀式の生贄に捧げられることになってしまった。彼は一体どうなるのだろうか。

処理中です...