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11.お墓

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「そういえば……みんなの亡骸はどこにあるのかしら?」
 私はふと気になってウォルター王子に尋ねた。
「ペアデ国王たちのお墓は……どうなったのですか?」

「……共同墓地に埋められたと聞いている。父はペアデ王たちを町の外に打ち捨てたらしいが、ペアデ国の国民たちが亡骸を集め、共同墓地の一番いい場所に埋葬したらしい」
「……そうですか」
 私は唇をかみしめて、悔し涙をこらえた。
「墓に行くか?」
「……はい」
 私たちは共同墓地に向かった。

「ここか」
「はい」
 共同墓地には新しい墓がたくさん増えていた。
 その一番日当たりのよい場所に、お父様とお母さま、私の墓がたっていた。中には父たちと私の代わりに殺されたメイドのリディが葬られているのだろう。私とウォルター王子はペアデ国王たちに祈りをささげた。

「おいおい、何してんだ? ……ここは立ち入り禁止だぜ?」
 墓のそばから、兵士が二人現れた。鎧の形から見て、ペアデ国の兵士ではない。いや、鎧を見るまでもなくペアデ国の兵士はもう……いないだろう。
「また、殴られに来たのか? 死んだ王のために。馬鹿な国民だな」
「民を愚弄するのですか!?」
 私は思わず言い返してしまった。

「なんだ? このお嬢ちゃんは。俺たちの相手をしたいのか? まあ、見られない顔ではないから相手をしてやってもいいぜ?」
「まて、お前たちはフォルツァ国の評価を落としたいのか?」
「あ? お前は……」

 ウォルター王子が兵士たちを睨んだ。兵士たちがこそこそとお互いに話しているのが聞こえる。
「おい、なんでウォルター王子がこんなところにいるんだよ?」
「知らねえよ。王子がこんな場所にいるわけないだろ?」
「じゃあ、偽物か?」

 ウォルター王子が剣に手をかけた。
「お前たち、無力な人民に暴力をふるっているのか?」
「俺たちは……ただ、治安を守ろうと……」
 兵士たちはじりじりと、ウォルター王子から距離を取った。
「……失せろ」
 ウォルター王子の言葉を聞き、兵士たちは逃げて行った。

「すまない、リネ。この調子では、この国の治安は……ひどいことになっていると思う」
「そうですね」
 私は父たちの眠る墓地を見た。
「城に入ったら、兵士たちの教育から始める。手伝ってくれるか? リネ」
「……私にできることなら」

 平和で美しかったペアデ国の変わり果てた姿を見た私は、胸が重く、痛むのを感じた。
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