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37.王宮の舞踏会2

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「あら、シェリー様、ダンスはお嫌いかしら?」

「シャラ王女、そんなことはございません」

 シェリーはシャラ王女に微笑み返した。

「あら、アシュトン子爵も……おなかがすいていらっしゃるの?」

 アシュトンはあわてて食べ物と飲み物を空いているテーブルに置いて返事をした。

「……この国の料理はどれもおいしいので……夢中になっていました」

 照れて笑うアシュトンと、シェリーを見て、シャラ王女は言った。


「貴方たち、すこし踊ってきたらいかが? せっかくの舞踏会ですよ?」

「ええ、そう致します」

 アシュトンはシェリーの手を取って、広間の中心にすいっと進んだ。

 新しい音楽が流れ始める。ゆったりとしたワルツだった。アシュトンはシェリーを巧みにリードしながら優雅に踊った。

「アシュトン様……踊りが上手なのですね……」

「驚かれましたか? 音楽は嫌いじゃないんですよ。ただ、人前に出るのはあまり……得意ではないですね」

「……でも、周りの方々が私たちを見ています」

 アシュトンの優美な動きに、他の舞踏会参加者たちは見とれていた。

 ターンするたびにドレスの裾がふわりとひろがり、シェリーの姿も美しく見えた。


 曲が終わり、元居た場所に二人が戻るとシャラ王女が拍手をしていた。

「あいかわらず、踊りが上手ですわね。アシュトン子爵」

「ありがとうございます」

 アシュトンは照れながら、シャラ王女にお礼を言った。

「それでは、お二人ともお楽しみください」

「はい、シャラ王女」

 アシュトンの返事の後、シェリーも言った。

「ありがとうございます」

 シャラ王女はシェリーに意味ありげな視線を送ってから、その場を去っていった。


「アシュトン様、こんなに上手に踊れるなら、もっといろいろな方を誘えばいいのに」

 シェリーがあたりを見ると、令嬢たちが熱い視線をアシュトンに送っていることに気づいた。

「いえ、目立つことは苦手なんです」

 アシュトンは苦笑して、頭をかいた。

「家で輝石を見ているほうが、落ち着きますか?」

「はい、そうですね」

 屈託のない笑みを浮かべるアシュトンを見て、シェリーも笑った。


 シェリーはスパイ疑惑がかけられていたことなど、すっかり忘れてしまっていた。


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