22 / 23
22.手料理
しおりを挟む
「ピピ、ダメよ。ここはブラッドの部屋なのよ?」
「くぅん」
ピピは前足でブラッドの部屋の扉を叩いている。
「しょうがないわね……そんなにブラッドに会いたいの?」
「わん」
私はため息をついて、ブラッド様の部屋の扉をノックした。
ドアが開いた。
「どうした? ローラ? ……!?」
「わんっ」
ピピがブラッド様に飛びついた。
「ピピ! ダメよ!」
「!!」
ブラッド様の足にじゃれつくピピを、私は慌てて抱き上げた。
「ごめんなさい、ブラッド」
眉間にしわを寄せ、ブラッド様がピピを叱る。
「私に抱き着いていいのはローラだけだ。わかったか? 犬」
真剣な顔で言うブラッド様に、私は思わず吹き出してしまった。
「ブラッド、そろそろ食事の時間だけど……ピピも食堂でご飯を食べさせてもいいかしら?」
「……それは……」
腕を組み渋い顔をしているブラッド様に、私は上目遣いでおねだりをする。
「だめかしら? ブラッド。ピピも一緒に食べたほうが楽しいと思うの」
ブラッド様は私の目を見て、ため息をついた。
「ローラが望むなら……仕方ない」
「ありがとう! ブラッド!」
私はブラッド様の頬にキスをしてから、ピピを抱いたまま食堂に向かった。
食堂の大きな机に、ブラッド様と私の食事が並べられていく。
ピピは、私の足元で食事をさせることにした。腰を曲げて、小鍋からピピ用の食器に肉と野菜のスープを入れていると、食卓の席に着いたブラッド様が首を傾げた。
「何をやっているんだ?」
「ピピに私の作ったスープをあげているの」
ブラッド様の眉がぴくりと上がった。
「何!? それを犬に独り占めさせるわけにはいかない! 私もいただこう!」
私は驚いて立ち上がった。
「え? でも、ピピ用に作ったから……塩もコショウも入っていないのよ?」
ブラッド様は憮然とした表情で言う。
「かまわない。ローラの手作りの料理なら、なんでも美味いにきまっている」
私はとまどいながらも、従僕に言って大きなスプーンをもらい、ブラッド様のスープ皿に野菜と肉のスープを取り分けた。
「本当に、美味しくないと思うわよ?」
「そんなことはない」
ブラッド様は食事を始めると、最初に私の作った味付けをしていないスープを飲んだ。
「うん、よく煮込まれている。さすがローラだ」
ブラッド様の満足そうな顔を見て、私は眉を八の字にした。
「私の作ったものが食べたいのなら言ってくれればいいのに。ちゃんとブラッドのために作るから」
私がつぶやくように言うと、ブラッド様はすました表情で答えた。
「犬は何も言わないのにローラに料理を作ってもらっているが?」
「ピピはしゃべれないもの」
ブラッド様はピピのことを犬と呼ぶ。今はまだピピと打ち解けていないみたい。
「犬のくせにローラの愛情を受けるとは贅沢な奴だ」
ブラッド様は方眉を上げ、ピピをひと睨みしてからスープを飲み干した。
「くぅん」
ピピは前足でブラッドの部屋の扉を叩いている。
「しょうがないわね……そんなにブラッドに会いたいの?」
「わん」
私はため息をついて、ブラッド様の部屋の扉をノックした。
ドアが開いた。
「どうした? ローラ? ……!?」
「わんっ」
ピピがブラッド様に飛びついた。
「ピピ! ダメよ!」
「!!」
ブラッド様の足にじゃれつくピピを、私は慌てて抱き上げた。
「ごめんなさい、ブラッド」
眉間にしわを寄せ、ブラッド様がピピを叱る。
「私に抱き着いていいのはローラだけだ。わかったか? 犬」
真剣な顔で言うブラッド様に、私は思わず吹き出してしまった。
「ブラッド、そろそろ食事の時間だけど……ピピも食堂でご飯を食べさせてもいいかしら?」
「……それは……」
腕を組み渋い顔をしているブラッド様に、私は上目遣いでおねだりをする。
「だめかしら? ブラッド。ピピも一緒に食べたほうが楽しいと思うの」
ブラッド様は私の目を見て、ため息をついた。
「ローラが望むなら……仕方ない」
「ありがとう! ブラッド!」
私はブラッド様の頬にキスをしてから、ピピを抱いたまま食堂に向かった。
食堂の大きな机に、ブラッド様と私の食事が並べられていく。
ピピは、私の足元で食事をさせることにした。腰を曲げて、小鍋からピピ用の食器に肉と野菜のスープを入れていると、食卓の席に着いたブラッド様が首を傾げた。
「何をやっているんだ?」
「ピピに私の作ったスープをあげているの」
ブラッド様の眉がぴくりと上がった。
「何!? それを犬に独り占めさせるわけにはいかない! 私もいただこう!」
私は驚いて立ち上がった。
「え? でも、ピピ用に作ったから……塩もコショウも入っていないのよ?」
ブラッド様は憮然とした表情で言う。
「かまわない。ローラの手作りの料理なら、なんでも美味いにきまっている」
私はとまどいながらも、従僕に言って大きなスプーンをもらい、ブラッド様のスープ皿に野菜と肉のスープを取り分けた。
「本当に、美味しくないと思うわよ?」
「そんなことはない」
ブラッド様は食事を始めると、最初に私の作った味付けをしていないスープを飲んだ。
「うん、よく煮込まれている。さすがローラだ」
ブラッド様の満足そうな顔を見て、私は眉を八の字にした。
「私の作ったものが食べたいのなら言ってくれればいいのに。ちゃんとブラッドのために作るから」
私がつぶやくように言うと、ブラッド様はすました表情で答えた。
「犬は何も言わないのにローラに料理を作ってもらっているが?」
「ピピはしゃべれないもの」
ブラッド様はピピのことを犬と呼ぶ。今はまだピピと打ち解けていないみたい。
「犬のくせにローラの愛情を受けるとは贅沢な奴だ」
ブラッド様は方眉を上げ、ピピをひと睨みしてからスープを飲み干した。
11
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる