19 / 23
19.盗賊団
しおりを挟む
「ブラッド、大丈夫かしら……」
ブラッド様が盗賊団を討伐するために出かけてから、ずいぶん時間がたっている。もう外は暗くなり始めていた。
「ハロルド! 怪我の手当てを頼む!」
「ブラッド!?」
玄関の方から聞こえたブラッド様の声を聞いて、私は血の気が引いた。
怪我? ブラッド様が!? 私は慌ててブラッド様のもとに向かう。
「ブラッド! 怪我をしたの!? 大丈夫!?」
「ああ、ローラ。怪我をしたのは私ではない。モーリスだ」
「あはは、ちょっとしくじっちゃいました」
モーリスさんの左腕を縛っている布に血が染みている。
モーリスさんは「大した怪我じゃないんですよ」と笑った。そして、モーリスさんは言った。
「捕まえた盗賊団は、第三小隊長が城に連れて行きました。ブラッド様が俺の怪我を早く手当てしたほうが良いと言って、ここに連れてきてくれたんです」
ブラッド様は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
「このけだものをローラに近づけたくはないが、私をかばって怪我をしたのだから仕方ない」
「けだものって、ひどいですよ、ブラッド様」
モーリスさんがへらへらと笑いながら抗議をしていると、ハロルドが急ぎ足でやってきた。
「モーリス様、こちらへ」
「ハロルドさん、すいません」
モーリスさんはハロルドの案内に従って屋敷に入って行った。
残された私はブラッド様に尋ねた。
「ブラッドは怪我をしていない? 大丈夫?」
「ああ、私は大丈夫だ」
ブラッド様は優しい笑みを浮かべて私を見つめた。鎧のあちこちについているのは返り血だろうか。
「ブラッドとモーリスさんも、この後は城に行くのですか?」
「そうだ。事後処理がいろいろあるから、今夜は戻れないかもしれない」
「……わかりました。気を付けてね、ブラッド」
私が不安な気持ちでブラッドを見上げると、ブラッドは私のおでこにキスをした。
「なるべく早く帰る」
「あ、またブラッド様、奥様といちゃついてる!」
怪我の手当てを終えたモーリスさんが戻ってきた。
「その口をふさいでやろうか?」
モーリスさんをぎろりと睨む、ブラッド様の目が怖い。
「ローラ様、お騒がせして申し訳ありませんでした」
モーリスさんが右手を差し出すと、またブラッドがその手を払った。
「何度言えばわかるんだ? ローラに触ろうとするな!」
「うわ、盗賊団を叩きのめした時より殺気を感じるんですけど!?」
モーリスさんは手を引っ込めて、私にウインクした。
「モーリス!! 殺されたいのか!?」
「やだなあ、ブラッド様。そんなに怒らないで下さいよ。それじゃあ、行ってきます」
モーリスさんとブラッド様が城に向けて屋敷を出て行った。
「モーリスさんとブラッドは仲がいいのかしら」
私は小さくなっていく二人の後姿を見送った。
ブラッド様が盗賊団を討伐するために出かけてから、ずいぶん時間がたっている。もう外は暗くなり始めていた。
「ハロルド! 怪我の手当てを頼む!」
「ブラッド!?」
玄関の方から聞こえたブラッド様の声を聞いて、私は血の気が引いた。
怪我? ブラッド様が!? 私は慌ててブラッド様のもとに向かう。
「ブラッド! 怪我をしたの!? 大丈夫!?」
「ああ、ローラ。怪我をしたのは私ではない。モーリスだ」
「あはは、ちょっとしくじっちゃいました」
モーリスさんの左腕を縛っている布に血が染みている。
モーリスさんは「大した怪我じゃないんですよ」と笑った。そして、モーリスさんは言った。
「捕まえた盗賊団は、第三小隊長が城に連れて行きました。ブラッド様が俺の怪我を早く手当てしたほうが良いと言って、ここに連れてきてくれたんです」
ブラッド様は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
「このけだものをローラに近づけたくはないが、私をかばって怪我をしたのだから仕方ない」
「けだものって、ひどいですよ、ブラッド様」
モーリスさんがへらへらと笑いながら抗議をしていると、ハロルドが急ぎ足でやってきた。
「モーリス様、こちらへ」
「ハロルドさん、すいません」
モーリスさんはハロルドの案内に従って屋敷に入って行った。
残された私はブラッド様に尋ねた。
「ブラッドは怪我をしていない? 大丈夫?」
「ああ、私は大丈夫だ」
ブラッド様は優しい笑みを浮かべて私を見つめた。鎧のあちこちについているのは返り血だろうか。
「ブラッドとモーリスさんも、この後は城に行くのですか?」
「そうだ。事後処理がいろいろあるから、今夜は戻れないかもしれない」
「……わかりました。気を付けてね、ブラッド」
私が不安な気持ちでブラッドを見上げると、ブラッドは私のおでこにキスをした。
「なるべく早く帰る」
「あ、またブラッド様、奥様といちゃついてる!」
怪我の手当てを終えたモーリスさんが戻ってきた。
「その口をふさいでやろうか?」
モーリスさんをぎろりと睨む、ブラッド様の目が怖い。
「ローラ様、お騒がせして申し訳ありませんでした」
モーリスさんが右手を差し出すと、またブラッドがその手を払った。
「何度言えばわかるんだ? ローラに触ろうとするな!」
「うわ、盗賊団を叩きのめした時より殺気を感じるんですけど!?」
モーリスさんは手を引っ込めて、私にウインクした。
「モーリス!! 殺されたいのか!?」
「やだなあ、ブラッド様。そんなに怒らないで下さいよ。それじゃあ、行ってきます」
モーリスさんとブラッド様が城に向けて屋敷を出て行った。
「モーリスさんとブラッドは仲がいいのかしら」
私は小さくなっていく二人の後姿を見送った。
2
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる