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9.馬上槍試合
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馬上槍試合の日、王宮についた私はブラッド様を探して厩舎の方を歩いていた。
「ブラッドは、この辺にいるかしら?」
厩舎を覗こうと近寄っていくと、厩舎から出てきた人がいた。赤い帽子をかぶった小柄な男性だ。
「あの……」
私が話しかけようとすると、その人は顔を隠して走り去ってしまった。
「変な人」
私は厩舎を覗いて人がいないことを確認すると、そこを離れた。
ファンファーレが響いた。
「あ、試合が始まってしまうわ。急がなきゃ」
私は馬上槍試合の会場に早足で向かった。
会場に着き、兵士に「騎士団長ブラッドの妻、ローラです」と名乗ると、招待席に案内された。王家の方々や公爵家の方々が座っている場所の隅っこに、私の席があった。
私はおじぎをしながら、自分の席に着いた。
会場には馬に乗った騎士が二組向かい合っていた。
試合開始の合図とともに、剣を交わす。
やがて片方の騎士がもう片方の騎士の首に剣を当てて、勝敗が決まった。
馬に乗ったまま剣を操る姿が雄々しく、私は見とれていた。
試合は次々と行われ、休憩が挟まれた。
「次は国王と騎士団長の試合ですわね」
「ええ、楽しみですわ」
「騎士団長のブラッド様といえば最近結婚されたそうですね」
「あのブラッド様を射止めるとは幸運な方ですわね。どんな方なのでしょうかね」
私はうつむき、背を丸めた。
ファンファーレが奏でられ、立派な鎧をまとった国王と、黒い鎧をまとったブラッド様が現れた。
「国王様! 勝利を!」
「国王様!」
「国王様!」
みんな、国王を応援しているみたい。それはそうか、と思いながら私はブラッド様を見つめた。
ブラッド様は真剣な面持ちで国王と対峙している。
二人が兜をかぶり、向き合った。
試合開始の合図とともに、二人の剣がお互いを狙っている。
先に剣をふったのは国王だった。
ブラッド様は国王の剣を交わし、国王の胸元に自分の剣の切っ先を突き付けた。
「勝者、ブラッド」
歓声が上がった。
え? 国王に勝ってしまっていいのかしら? 私が不安に思い見守っていると、兜を脱いだ国王がブラッドに笑いながら声をかけた。
「お前は手加減をしないな。今回は勝てると思ったが、お前はやはり強い」
「恐縮です」
ブラッド様も兜をとり、国王に頭を下げた。
その時、ブラッド様の乗っている馬が棹立ちになった。
「な!?」
ブラッド様はやさしく手綱を交互に引いて、馬を人々から遠ざけようとした。
「ブラッド様!!」
騎士たちが馬をなだめようと駆け寄る。
「国王をお守りしろ!」
私は厩舎から出てきた怪しい人物のことを思い出した。
「ブラッド! 何者かが馬に細工をしたかも!!」
ブラッド様は私の声を聞き、暴れる馬をなだめながら馬から落ちないようにしっかりと足と手で馬にしがみついた。
兵士たちがブラッド様の馬を取り囲み、四人がかりで馬を抑えた。
馬をなんとかなだめ、馬から降りたブラッド様は、馬の様子を観察し、渋い顔をした。
「蹄鉄に細工がしてある、これでは馬が痛みを感じるはずだ」
「なんてことだ!」
「馬の手当をしてやってくれ」
「はい」
兵士が馬を連れ下がると、ブラッド様は皆に向かってお辞儀をした。
「騒がせてしまい、申し訳ない」
ブラッド様は国王に駆け寄ると、その身の安全を確認し、王の隣に立った。
「ブラッド、けがはないか?」
「私は大丈夫です。国王こそお怪我はございませんか?」
「この通り、傷一つない」
「よかった」
ブラッド様が私の方にやってきた。
「ローラ、君は厩舎で何を見たんだ?」
「赤い帽子をかぶった小柄な男が厩舎から出てきました」
「そうか……」
ブラッドは部下たちに赤い帽子をかぶった小柄な男を探すように指示し、自らは国王の護衛に戻った。
しばらくして、ブラッドの部下の一人が赤い帽子をかぶった小柄な男を捕えてきた。
「ローラ、この男か?」
ブラッド様の問いかけに私は頷く。
「ええ、この人だと思います」
「クソッ、俺は何もしていない!」
小さな男は私を睨んだ。
「こいつを牢に入れておけ。後で俺が話を聞く」
ブラッド様は男を見据えたまま、部下に指示した。
「はい」
男は兵士に連れられ、城の離れに連れていかれた。
「ブラッドは、この辺にいるかしら?」
厩舎を覗こうと近寄っていくと、厩舎から出てきた人がいた。赤い帽子をかぶった小柄な男性だ。
「あの……」
私が話しかけようとすると、その人は顔を隠して走り去ってしまった。
「変な人」
私は厩舎を覗いて人がいないことを確認すると、そこを離れた。
ファンファーレが響いた。
「あ、試合が始まってしまうわ。急がなきゃ」
私は馬上槍試合の会場に早足で向かった。
会場に着き、兵士に「騎士団長ブラッドの妻、ローラです」と名乗ると、招待席に案内された。王家の方々や公爵家の方々が座っている場所の隅っこに、私の席があった。
私はおじぎをしながら、自分の席に着いた。
会場には馬に乗った騎士が二組向かい合っていた。
試合開始の合図とともに、剣を交わす。
やがて片方の騎士がもう片方の騎士の首に剣を当てて、勝敗が決まった。
馬に乗ったまま剣を操る姿が雄々しく、私は見とれていた。
試合は次々と行われ、休憩が挟まれた。
「次は国王と騎士団長の試合ですわね」
「ええ、楽しみですわ」
「騎士団長のブラッド様といえば最近結婚されたそうですね」
「あのブラッド様を射止めるとは幸運な方ですわね。どんな方なのでしょうかね」
私はうつむき、背を丸めた。
ファンファーレが奏でられ、立派な鎧をまとった国王と、黒い鎧をまとったブラッド様が現れた。
「国王様! 勝利を!」
「国王様!」
「国王様!」
みんな、国王を応援しているみたい。それはそうか、と思いながら私はブラッド様を見つめた。
ブラッド様は真剣な面持ちで国王と対峙している。
二人が兜をかぶり、向き合った。
試合開始の合図とともに、二人の剣がお互いを狙っている。
先に剣をふったのは国王だった。
ブラッド様は国王の剣を交わし、国王の胸元に自分の剣の切っ先を突き付けた。
「勝者、ブラッド」
歓声が上がった。
え? 国王に勝ってしまっていいのかしら? 私が不安に思い見守っていると、兜を脱いだ国王がブラッドに笑いながら声をかけた。
「お前は手加減をしないな。今回は勝てると思ったが、お前はやはり強い」
「恐縮です」
ブラッド様も兜をとり、国王に頭を下げた。
その時、ブラッド様の乗っている馬が棹立ちになった。
「な!?」
ブラッド様はやさしく手綱を交互に引いて、馬を人々から遠ざけようとした。
「ブラッド様!!」
騎士たちが馬をなだめようと駆け寄る。
「国王をお守りしろ!」
私は厩舎から出てきた怪しい人物のことを思い出した。
「ブラッド! 何者かが馬に細工をしたかも!!」
ブラッド様は私の声を聞き、暴れる馬をなだめながら馬から落ちないようにしっかりと足と手で馬にしがみついた。
兵士たちがブラッド様の馬を取り囲み、四人がかりで馬を抑えた。
馬をなんとかなだめ、馬から降りたブラッド様は、馬の様子を観察し、渋い顔をした。
「蹄鉄に細工がしてある、これでは馬が痛みを感じるはずだ」
「なんてことだ!」
「馬の手当をしてやってくれ」
「はい」
兵士が馬を連れ下がると、ブラッド様は皆に向かってお辞儀をした。
「騒がせてしまい、申し訳ない」
ブラッド様は国王に駆け寄ると、その身の安全を確認し、王の隣に立った。
「ブラッド、けがはないか?」
「私は大丈夫です。国王こそお怪我はございませんか?」
「この通り、傷一つない」
「よかった」
ブラッド様が私の方にやってきた。
「ローラ、君は厩舎で何を見たんだ?」
「赤い帽子をかぶった小柄な男が厩舎から出てきました」
「そうか……」
ブラッドは部下たちに赤い帽子をかぶった小柄な男を探すように指示し、自らは国王の護衛に戻った。
しばらくして、ブラッドの部下の一人が赤い帽子をかぶった小柄な男を捕えてきた。
「ローラ、この男か?」
ブラッド様の問いかけに私は頷く。
「ええ、この人だと思います」
「クソッ、俺は何もしていない!」
小さな男は私を睨んだ。
「こいつを牢に入れておけ。後で俺が話を聞く」
ブラッド様は男を見据えたまま、部下に指示した。
「はい」
男は兵士に連れられ、城の離れに連れていかれた。
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