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8.ブラッド様の弱点
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「……ローラ……、ローラ……!」
なんだろう……ブラッド様の声がする? あれ? 私……?
「!!」
私が目を開けると、目の前にブラッド様の顔があった。その目には涙が浮かんでいる。
「ローラ!! よかった、目を覚ましたか!?」
ブラッド様が私の右手を強く握りしめ、悲愴な顔つきをやわらげた。
「ブラッド……手が痛いです……」
「あ、ああ、すまない。……でも良かった、何もなくて」
ブラッド様はベッドに寝ている私に覆いかぶさるようにして、私に体を添わせると、私の頭を優しくなでた。
「ブラッド? ちょっとお昼寝をして寝すぎただけですよ? そんなに取り乱すなんてどうしたのですか?」
「ただ、心配だっただけだ」
ブラッド様は起き上がると、ベッドに腰かけた。
「もう、大事な人を亡くしたくない」
つぶやくように言うブラッド様は、硬く思い詰めた様子だった。
「……妹さんのこと?」
「!! ハロルドから聞いたのか?」
ブラッド様の視線がハロルドさんに向けられる。ハロルドさんはうつむいている。
「私が無理に聞き出したんです。……夫の悩みを少しでも軽くできれば、と思って」
私が夫と言った瞬間、ブラッド様の表情が少し明るくなった。
「そのことは放っておいて大丈夫だ、ローラ。君が元気ならそれでいい」
ブラッド様は私の頭を優しく撫でながら言った。
壊れやすいものを触っているかのような、優しい手の動きだった。
「あの、今何時ですか?」
「ん? いつもなら夕食を食べている頃だが」
「まあ大変! お食事が冷めてしまうわ!」
「ローラ、私たちが食堂にいくまでは、食事の用意はされないよ。安心してゆっくり休むといい」
ブラッド様は柔らかに微笑んだまま、そう言った。
「私は大丈夫です! ブラッド、おなかがすいているでしょう?」
「君のことが心配でそれどころではなかった」
ブラッド様が顔を近づけて私の頬を指先でなでる。
「食堂へ行きましょう」
私は起き上がると、赤面した。
「やだ、私ったらネグリジェだったわ。ブラッド、着替えるので部屋から出てください」
「でも……」
「早く!」
私は渋るブラッド様を部屋から追い出し、普段着に着替えた。
着替え終わり、部屋から出るとブラッド様が待っていた。
「ローラ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。さあ、食事に行きましょう」
私はブラッド様の手を引いて食堂に向かった。
夕食の席に着くと、ブラッド様が私に話しかけた。
「ローラは馬上槍試合に興味はあるか?」
「あります!」
私は騎士たちが馬にのり戦う馬上槍試合を昔見たことがあった。
馬を操りながら剣を繰り出す騎士たちの戦いのかっこよさに心を奪われたっけ。
「そうか。こんど王宮で馬上槍試合を行うことになったのだが、ローラも見に来るか?」
「行きます! ブラッドも出られるんですか?」
「ああ。私と国王との模擬試合を予定している」
「絶対に行きます!」
私が、試合が楽しみで顔をほころばせると、ブラッド様は渋い顔をした。
「そんな可愛らしい表情は、俺以外に見せないでくれ」
「はい?」
「もし君に懸想(けそう)するものが現れたら、私はきっとそいつを殺してしまう。国王だったとしても」
「ブラッドったら、冗談がお好きですね」
私は笑って、魚のパイを一口、くちに運んだ。
なんだろう……ブラッド様の声がする? あれ? 私……?
「!!」
私が目を開けると、目の前にブラッド様の顔があった。その目には涙が浮かんでいる。
「ローラ!! よかった、目を覚ましたか!?」
ブラッド様が私の右手を強く握りしめ、悲愴な顔つきをやわらげた。
「ブラッド……手が痛いです……」
「あ、ああ、すまない。……でも良かった、何もなくて」
ブラッド様はベッドに寝ている私に覆いかぶさるようにして、私に体を添わせると、私の頭を優しくなでた。
「ブラッド? ちょっとお昼寝をして寝すぎただけですよ? そんなに取り乱すなんてどうしたのですか?」
「ただ、心配だっただけだ」
ブラッド様は起き上がると、ベッドに腰かけた。
「もう、大事な人を亡くしたくない」
つぶやくように言うブラッド様は、硬く思い詰めた様子だった。
「……妹さんのこと?」
「!! ハロルドから聞いたのか?」
ブラッド様の視線がハロルドさんに向けられる。ハロルドさんはうつむいている。
「私が無理に聞き出したんです。……夫の悩みを少しでも軽くできれば、と思って」
私が夫と言った瞬間、ブラッド様の表情が少し明るくなった。
「そのことは放っておいて大丈夫だ、ローラ。君が元気ならそれでいい」
ブラッド様は私の頭を優しく撫でながら言った。
壊れやすいものを触っているかのような、優しい手の動きだった。
「あの、今何時ですか?」
「ん? いつもなら夕食を食べている頃だが」
「まあ大変! お食事が冷めてしまうわ!」
「ローラ、私たちが食堂にいくまでは、食事の用意はされないよ。安心してゆっくり休むといい」
ブラッド様は柔らかに微笑んだまま、そう言った。
「私は大丈夫です! ブラッド、おなかがすいているでしょう?」
「君のことが心配でそれどころではなかった」
ブラッド様が顔を近づけて私の頬を指先でなでる。
「食堂へ行きましょう」
私は起き上がると、赤面した。
「やだ、私ったらネグリジェだったわ。ブラッド、着替えるので部屋から出てください」
「でも……」
「早く!」
私は渋るブラッド様を部屋から追い出し、普段着に着替えた。
着替え終わり、部屋から出るとブラッド様が待っていた。
「ローラ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。さあ、食事に行きましょう」
私はブラッド様の手を引いて食堂に向かった。
夕食の席に着くと、ブラッド様が私に話しかけた。
「ローラは馬上槍試合に興味はあるか?」
「あります!」
私は騎士たちが馬にのり戦う馬上槍試合を昔見たことがあった。
馬を操りながら剣を繰り出す騎士たちの戦いのかっこよさに心を奪われたっけ。
「そうか。こんど王宮で馬上槍試合を行うことになったのだが、ローラも見に来るか?」
「行きます! ブラッドも出られるんですか?」
「ああ。私と国王との模擬試合を予定している」
「絶対に行きます!」
私が、試合が楽しみで顔をほころばせると、ブラッド様は渋い顔をした。
「そんな可愛らしい表情は、俺以外に見せないでくれ」
「はい?」
「もし君に懸想(けそう)するものが現れたら、私はきっとそいつを殺してしまう。国王だったとしても」
「ブラッドったら、冗談がお好きですね」
私は笑って、魚のパイを一口、くちに運んだ。
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