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43.最後の願い
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「また、お前たちか……」
クリフ神官長は小さな声で言った。
「クリフ神官長、アルフレッド様たちが……助けてくださったのです」
カイルがクリフ神官長に言うと、クリフ神官長は眉をひそめた。
「放っておけばよかったものを……」
「……お礼の一つもないんですか?」
アルフレッドがあきれたように言った。
「私はもう、長くない。魔女の刻印を刻みすぎた。これはその報いだ」
クリフ神官長はそれだけ言うと目を閉じた。
「クリフ神官長、今、回復魔法を……」
フローラがクリフ神官長の体に手をかざそうとしたとき、クリフ神官長がはっきりとした声で言った。
「やめてくれ、フローラ」
「ですがクリフ神官長……」
フローラの手をアルフレッドが抑えた。
「クリフ神官長の話を聞こう、フローラ」
クリフ神官長は、少しだけ目を開けて、話し始めた。
「私は……教会のためを思い、民衆が堕落しないために何が出来るかを考え、生きてきたつもりだ……」
カイルが頷いた。
「でも、その気持ちも、いつからか、ゆがんでしまったのかもしれない」
「クリフ神官長、これ以上はお体に障ります。どうか、静かにお眠りください」
カイルが言った。
「いや、私はもうだめだ。……カイル、レイス、お前たちはまだやり直せる」
クリフ神官長は苦しそうだ。
「アルフレッド様、この手紙を大陸の教会本部へ送ってください」
クリフ神官長は懐から封をした手紙を取り出した。
「ここには、アビントンを次期神官長にしてほしいということと、カイルとレイスは教会のためによく働いているということが書いてあります」
クリフ神官長はカイルとレイスに微笑みかけた。
「二人には……悪いことをしてしまった。私は……神に仕える身として……間違った選択をしていたようだとやっと気づいた」
「クリフ神官長!」
カイルとレイスがクリフ神官長の手を取った。
「お前たちは……正しい道を歩んでくれ」
クリフ神官長は目を閉じた。呼吸が浅くなる。
「私は神のもとで裁きを受けるだろう……」
クリフ神官長の手が、だらりと下がった。
「クリフ神官長……」
回復魔法をかけようと手を伸ばしたフローラの肩に、アルフレッドが手を乗せて首を横に振った。
「フローラ、私たちにできることはもう何もない。できるのは、この手紙を……協会本部に送ることだけだ」
「……はい」
「……アルフレッド様、フローラ様、ありがとうございました」
カイルはそういうと頭を下げた。
「あなたたちがクリフ神官長を殺したのよ!」
レイスが叫んだ。
カイルはそれを制止すると、アルフレッドに言った。
「私たちは、なにか大きな間違いをしていたようです。その手紙に何が書かれているのかはわかりませんが……私たちは神の意志に従います」
「……それでは、僕たちはこれで失礼します」
アルフレッド達は自宅に向け、馬車を走らせた。
自宅に着き、馬車を降りるとアルフレッドはトレヴァーに声をかけた。
「トレヴァー、この手紙を教会の本部に送ってくれ」
「かしこまりました」
「アルフレッド様……」
フローラが不安そうな顔でアルフレッドに話しかけた。
「どうしたの? フローラ?」
「これでよかったのでしょうか?」
「うーん。僕たちには……分からないよ」
アルフレッドはそれだけ言うと、自分の部屋に戻っていった。
クリフ神官長は小さな声で言った。
「クリフ神官長、アルフレッド様たちが……助けてくださったのです」
カイルがクリフ神官長に言うと、クリフ神官長は眉をひそめた。
「放っておけばよかったものを……」
「……お礼の一つもないんですか?」
アルフレッドがあきれたように言った。
「私はもう、長くない。魔女の刻印を刻みすぎた。これはその報いだ」
クリフ神官長はそれだけ言うと目を閉じた。
「クリフ神官長、今、回復魔法を……」
フローラがクリフ神官長の体に手をかざそうとしたとき、クリフ神官長がはっきりとした声で言った。
「やめてくれ、フローラ」
「ですがクリフ神官長……」
フローラの手をアルフレッドが抑えた。
「クリフ神官長の話を聞こう、フローラ」
クリフ神官長は、少しだけ目を開けて、話し始めた。
「私は……教会のためを思い、民衆が堕落しないために何が出来るかを考え、生きてきたつもりだ……」
カイルが頷いた。
「でも、その気持ちも、いつからか、ゆがんでしまったのかもしれない」
「クリフ神官長、これ以上はお体に障ります。どうか、静かにお眠りください」
カイルが言った。
「いや、私はもうだめだ。……カイル、レイス、お前たちはまだやり直せる」
クリフ神官長は苦しそうだ。
「アルフレッド様、この手紙を大陸の教会本部へ送ってください」
クリフ神官長は懐から封をした手紙を取り出した。
「ここには、アビントンを次期神官長にしてほしいということと、カイルとレイスは教会のためによく働いているということが書いてあります」
クリフ神官長はカイルとレイスに微笑みかけた。
「二人には……悪いことをしてしまった。私は……神に仕える身として……間違った選択をしていたようだとやっと気づいた」
「クリフ神官長!」
カイルとレイスがクリフ神官長の手を取った。
「お前たちは……正しい道を歩んでくれ」
クリフ神官長は目を閉じた。呼吸が浅くなる。
「私は神のもとで裁きを受けるだろう……」
クリフ神官長の手が、だらりと下がった。
「クリフ神官長……」
回復魔法をかけようと手を伸ばしたフローラの肩に、アルフレッドが手を乗せて首を横に振った。
「フローラ、私たちにできることはもう何もない。できるのは、この手紙を……協会本部に送ることだけだ」
「……はい」
「……アルフレッド様、フローラ様、ありがとうございました」
カイルはそういうと頭を下げた。
「あなたたちがクリフ神官長を殺したのよ!」
レイスが叫んだ。
カイルはそれを制止すると、アルフレッドに言った。
「私たちは、なにか大きな間違いをしていたようです。その手紙に何が書かれているのかはわかりませんが……私たちは神の意志に従います」
「……それでは、僕たちはこれで失礼します」
アルフレッド達は自宅に向け、馬車を走らせた。
自宅に着き、馬車を降りるとアルフレッドはトレヴァーに声をかけた。
「トレヴァー、この手紙を教会の本部に送ってくれ」
「かしこまりました」
「アルフレッド様……」
フローラが不安そうな顔でアルフレッドに話しかけた。
「どうしたの? フローラ?」
「これでよかったのでしょうか?」
「うーん。僕たちには……分からないよ」
アルフレッドはそれだけ言うと、自分の部屋に戻っていった。
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