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40.話し合いの後で

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 教会の扉が開きアルフレッド達が表に出ると、ダリルが駆け寄ってきた。
「話し合いはどうだった!?」
「……」
 アルフレッドが首を横に振ると、ダリルは「くそっ」と言い舌打ちしてから教会をにらんだ。
「教会を燃やせ!」
「いけません!」
 アルフレッドがダリルを止めた。

「お父さん、もうやめて!」
「……!? お前、なぜここに来た!?」
「あなた、馬鹿なことはやめて。家に帰りましょう……」
 ダリルの妻と娘が、ダリルを迎えに来ていた。

「こんなところに来るんじゃない! ここは危険なんだ!」
 ダリルが妻と娘を追い返そうとしたとき、カイルが現れた。
「おや? まだ皆さん帰っていらっしゃらないのですか?」
 ダリルの顔が真っ青になった。ダリルは妻と娘がカイルから見えないようにしようとしたが、遅かった。

「ああ、この騒ぎの首謀者の……ご家族の方ですか? ……ふむ、あなたが魔女と言われているお嬢さんですね」
 カイルはダリルの娘に歩み寄ると、彼女の額に手をかざした。
「やめろ! なにをするつもりだ!?」
「ダリルさん、あなたが悪いのですよ。これは当然の報いです……」
「フローラ!」
 アルフレッドに名前を呼ばれたフローラは、カイルとダリルの娘の間に割り込んだ。

「魔女の刻印は……刻ませません!」
「……ふっ」
 カイルが呪文を唱えると、ダリルの娘の額に魔女の紋章が淡く光った。
「……させない!」
 フローラはダリルの娘に抱き着き、反射の呪文を唱えた。
「!?」
 カイルの右手に、魔女の紋章が刻まれた。

「くっ」
 カイルが膝をつき、うずくまる。
「何の騒ぎですか?」
「クリフ神官長様……」
 今にも倒れそうなカイルを見て、神官長クリフは眉をひそめた。
「カイル様が、また魔女の刻印を刻もうとしたので止めました」
 アルフレッドがそう言うと、クリフはカイルの右手を見て首を振った。

「待っていろ、カイル。今、解除の呪文を……」
「大丈夫です、神官長。そんなことをしたら、ただでさえ弱っているお体が……」
「お待ちください、神官長! 魔女の刻印の解除なら、私にもできますわ!」
 レイスが教会から飛び出してきた。

「レイス、魔女の刻印を解くには、大量の魔力が必要だ……。お前にそんな危険なことはもうさせたくない……」
「神官長……」
「さあ、神よ、奇跡を起こしたまえ!」
 神官長クリフが天を仰ぎ、呪文を唱えてから、カイルの右手に魔力を放った。
「クリフ神官長様……」

 カイルの顔に血の気が戻ってきた。反対にクリフの顔は青ざめている。
「神官長様、中でお休みください!」
「……」
 クリフは気を失っていた。カイルはクリフを抱え上げると、教会の中に運んで行った。
「今日のことは……ゆるしません」
 カイルがつぶやくと、ダリルが言った。

「お前らが、勝手に騒いで、勝手に傷ついただけじゃねえか!」
 カイルたちは民衆の声を背中に受けながら、教会の中に帰っていった。
「……お前たち、もう解散だ」
 アビントンがみんなに言った。
「……そうするか。みんな! 帰ろう!」
 ダリルは妻と娘を連れて、一番先に町に戻っていった。

 ばらばらと集まっていた町の人たちも、町へ帰っていった。
 教会の前には、アルフレッドとトレヴァー、フローラ、アビントンだけが残っていた。
「クリフ神官長は……大丈夫かなあ?」
「アルフレッド様、今は私たちにできることは何もないかと思いますが」
「だよねえ。僕たちも帰ろうか」
「俺は……教会でクリフの様子を見ていく」
「そうですか……。何かあったら、教えてください」
「分かったよ、ありがとうな、アルフレッド」

 トレヴァーが馬車を用意して、アルフレッド達は屋敷に帰った。
「カイル君もやりすぎだよね」
 アルフレッドの言葉に、フローラが反応した。
「……クリフ神官長が無事ならよいのですが……」
「そろそろ屋敷につきますよ」
 トレヴァーの声をきいて、アルフレッドとフローラは顔を上げた。

 三人は屋敷に着くと、それぞれの仕事に戻っていった。

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