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3、悪魔紳士との出会い
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神殿に入って最初の夜、フローラは寝付けなかった。
「もう、深夜だというのに……眠れない」
フローラはベッドから起き出すと、部屋の中を細かく観察した。
部屋はベッドを6個並べられるくらいには広く、ベッドの横には胸の高さくらいの簡素な棚が有った。
入り口の重いドア、格子のついた窓、ここから抜け出すことは出来なそうだと思った。
「あら? なんだか冷たい空気が流れ込んできている?」
フローラは棚の裏から、ほんの少しだけれども冷たい風が部屋の中に流れ込んでくるのを感じた。
「レイスに気付かれないよう、そっと、棚を動かしてみましょう……」
フローラはまだ空っぽのタンスをグッと押してみた。
タンスは少し動いた。
「これなら私にも動かせそうですね」
フローラは音を立てないよう慎重に棚を横にずらした。すると、棚の後ろには小さな扉が隠されていた。
「この扉から、外に出られないかしら?」
フローラが小さな扉を押してみると、扉はギシッと音を立てて動いた。
小さな扉をくぐると、外につながっていた。どうやら隠し扉だったらしい。
「今なら、一人で散歩くらい出来そう……」
フローラはあたりが寝静まっていることを確認してから、神殿を抜け出した。
神殿の傍には禁足地となっている沈黙の森がある。
「あら? 何か聞こえますね……人の声かしら?」
フローラは音の聞こえてきた沈黙の森に入ってみることにした。
沈黙の森は、月明かりに照らされているとは言えやはり暗かった。
フローラは光の魔法を使い、足下を照らした。
「おや、めずらしい。こんな時間に何をしているのですか? お嬢さん」
「!!」
フローラが声の方に振り向くと、そこには背の高い青年紳士が立っていた。
眉目秀麗とはこのことか、と思うくらいに整った顔立ちをしていて、灰色の髪はオールバックに撫でつけられている。その目はダークグレーで、月の光を宿しているように輝いていた。
「ここが禁足地だと知って入ってきたのですか? それとも迷子かな?」
「私は……散歩をしていただけです。貴方こそ、禁足地に入って何をしていたのですか?」 そう言うと青年紳士は面白そうに微笑んで、両手の間に小さな雷をつくって見せた。
「貴方は魔法使い?」
「いいえ、魔法道具を作って居るものです。それにここは私の土地ですから」
それを聞いて、フローラは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「まさか、あなたは人嫌いで有名なアルフレッド・ダグラス伯爵!?」
アルフレッドは帽子を取って苦笑した。
「……心外ですね。人間ほど面白い観察対象は無いと思っておりますよ? まあ、私のことを悪魔と呼んで嫌う方も多いですけれどね」
面白そうに言うアルフレッドの台詞を聞いて、フローラは絶句した。
「おや、その靴と服は……よく見たら神殿の物ではありませんか?」
アルフレッドの言葉に、フローラは焦った。
「はやくお帰りなさい、お嬢様。神殿を抜け出したことが知れたら罪になってしまいますよ?」
「……はい、それでは失礼します」
「それでは、またお会いしましょう。不良の神子様」
アルフレッドは帽子を振ってフローラに別れの挨拶をした。
「どうしよう……よりにもよって、ダグラス伯爵に見つかってしまうなんて」
フローラはダグラス伯爵の悪評を思い出し、身を震わせながら神殿に帰っていった。
「もう、深夜だというのに……眠れない」
フローラはベッドから起き出すと、部屋の中を細かく観察した。
部屋はベッドを6個並べられるくらいには広く、ベッドの横には胸の高さくらいの簡素な棚が有った。
入り口の重いドア、格子のついた窓、ここから抜け出すことは出来なそうだと思った。
「あら? なんだか冷たい空気が流れ込んできている?」
フローラは棚の裏から、ほんの少しだけれども冷たい風が部屋の中に流れ込んでくるのを感じた。
「レイスに気付かれないよう、そっと、棚を動かしてみましょう……」
フローラはまだ空っぽのタンスをグッと押してみた。
タンスは少し動いた。
「これなら私にも動かせそうですね」
フローラは音を立てないよう慎重に棚を横にずらした。すると、棚の後ろには小さな扉が隠されていた。
「この扉から、外に出られないかしら?」
フローラが小さな扉を押してみると、扉はギシッと音を立てて動いた。
小さな扉をくぐると、外につながっていた。どうやら隠し扉だったらしい。
「今なら、一人で散歩くらい出来そう……」
フローラはあたりが寝静まっていることを確認してから、神殿を抜け出した。
神殿の傍には禁足地となっている沈黙の森がある。
「あら? 何か聞こえますね……人の声かしら?」
フローラは音の聞こえてきた沈黙の森に入ってみることにした。
沈黙の森は、月明かりに照らされているとは言えやはり暗かった。
フローラは光の魔法を使い、足下を照らした。
「おや、めずらしい。こんな時間に何をしているのですか? お嬢さん」
「!!」
フローラが声の方に振り向くと、そこには背の高い青年紳士が立っていた。
眉目秀麗とはこのことか、と思うくらいに整った顔立ちをしていて、灰色の髪はオールバックに撫でつけられている。その目はダークグレーで、月の光を宿しているように輝いていた。
「ここが禁足地だと知って入ってきたのですか? それとも迷子かな?」
「私は……散歩をしていただけです。貴方こそ、禁足地に入って何をしていたのですか?」 そう言うと青年紳士は面白そうに微笑んで、両手の間に小さな雷をつくって見せた。
「貴方は魔法使い?」
「いいえ、魔法道具を作って居るものです。それにここは私の土地ですから」
それを聞いて、フローラは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「まさか、あなたは人嫌いで有名なアルフレッド・ダグラス伯爵!?」
アルフレッドは帽子を取って苦笑した。
「……心外ですね。人間ほど面白い観察対象は無いと思っておりますよ? まあ、私のことを悪魔と呼んで嫌う方も多いですけれどね」
面白そうに言うアルフレッドの台詞を聞いて、フローラは絶句した。
「おや、その靴と服は……よく見たら神殿の物ではありませんか?」
アルフレッドの言葉に、フローラは焦った。
「はやくお帰りなさい、お嬢様。神殿を抜け出したことが知れたら罪になってしまいますよ?」
「……はい、それでは失礼します」
「それでは、またお会いしましょう。不良の神子様」
アルフレッドは帽子を振ってフローラに別れの挨拶をした。
「どうしよう……よりにもよって、ダグラス伯爵に見つかってしまうなんて」
フローラはダグラス伯爵の悪評を思い出し、身を震わせながら神殿に帰っていった。
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