上 下
5 / 5

5、婿がやって来ました

しおりを挟む
 コリーは家を出て、ロールズ男爵のいる町へやって来た。

 まずはじめに宿を決め、次にロールズ家へ挨拶にやって来た。
「ロールズ様、初めまして。コリー・パーカーと申します」
「クレアがお世話になっております。ロールズ家へ、ようこそいらっしゃいました」
「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」
 コリーが頭を下げた時、クレアがやって来た。

「コリー様!? どうしてこちらに!?」
「家を出たんです。しばらくはこの町の宿に居る予定です」
「まあ、それなら我が家にいらっしゃればよろしいのに。ねえ、お父様?」
 クレアの問いかけに父親は頷いた。
「部屋なら空いております。コリー様がよろしければ、ご滞在頂いても当家は構いませんよ」

 笑顔で言うロールズ男爵にコリーは恐縮して言った。
「先日はクレア様にパーカー家が失礼な言動を行いまして、申し訳ございませんでした」
 クレアの母親が出て来て言った。
「本当のことです。当家は貧しい貴族ですから」

「高名で裕福なパーカー家を出たというのは、どういうことでしょうか?」
 クレアはコリーに尋ねたが、ロールズ男爵が間に入った。
「ここで立ち話も何ですから、どうぞ中にお入り下さい」
 ロールズ男爵の言葉に、コリーは従った。

 四人は応接室に移動すると、コリーはあらためて自己紹介をした。
「パーカー家次男のコリー・パーカーです。クレア様にはお世話になっております」
「ロールズ家当主、バリー・ロールズです。こちらは妻のアーリンと申します」
 クレアの母親はお辞儀をした。
「クレアからコリー様のお話は伺っております」
「どのようにでしょうか」
 コリーは緊張しながら尋ねた。

「将来を誓い合った仲だと」
「お母様!?」
 クレアは顔を真っ赤にして、うろたえた。
「クレア様もそう思って下さっていたならば、嬉しい限りです」
 コリーは笑顔でクレアを見つめた。

「私にあるのは、この体と頭脳のみです。パーカー家とは絶縁したいと考えております」
 ロールズ男爵は難しい顔をした。
「家を捨てるというのは、大変なことです。考え直された方がよろしいのでは無いですか?」
「いいえ。パーカー家は重い税で民を苦しめる一方、贅沢三昧です。あのような家には戻るわけには参りません」
「それでは、子爵の息子という地位を捨てて、ロールズ家に婿に来ますか? コリー様の名声は私も伺っております」
「お父様!?」

 クレアは顔を赤くして言った。
「コリー様、そんな大切な話を急にされても困ります!!」
「そうですね、クレア様のお気持ちが一番大切です」
 コリーはそう言って、クレアの元に歩み寄った。
「クレア様、私と人生をともに歩んで下さいますか?」
「……はい」
 クレアは急展開する話に、クラクラする頭で頷いた。

 それを聞いたロールズ男爵はコリーに言った。
「コリー様、パーカー家との争いは避けたいと考えております」
「パーカー家は兄が継ぐことになっております。私が家を出ることは両親とも納得しております」
「それでは、当家の跡取りとして婿に来て頂くということでよろしいでしょうか」
「クレア様とご家族様がよろしければ、私は喜んでパーカーの名を捨てましょう」

「コリー様。お金の大切さを学ばせてくださったのは……パーカー家です。ご実家をそんなに悪く言ってはバチが当たりますよ」
「クレア様、あのようなことを言われたのにパーカー家のことを思ってくださるのですね」
 コリーは俯いた。

「婚約は出来ますが、結婚はパーカー家を納得させてからにして下さいませ」
 クレアの言葉にコリーは真面目な顔で頷いた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません

Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。 彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──…… 公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。 しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、 国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。 バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。 だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。 こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。 自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、 バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは? そんな心揺れる日々の中、 二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。 実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている…… なんて噂もあって────

「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です

朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。 ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。 「私がお助けしましょう!」 レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)

義妹が本物、私は偽物? 追放されたら幸せが待っていました。

みこと。
恋愛
 その国には、古くからの取り決めがあった。  "海の神女(みこ)は、最も高貴な者の妃とされるべし"  そして、数十年ぶりの"海神の大祭"前夜、王子の声が響き渡る。 「偽神女スザナを追放しろ! 本当の神女は、ここにいる彼女の妹レンゲだ」  神女として努めて来たスザナは、義妹にその地位を取って変わられ、罪人として国を追われる。彼女に従うのは、たった一人の従者。  過酷な夜の海に、スザナたちは放り出されるが、それは彼女にとって待ち望んだ展開だった──。  果たしてスザナの目的は。さらにスザナを不当に虐げた、王子と義妹に待ち受ける未来とは。  ドアマットからの"ざまぁ"を、うつ展開なしで書きたくて綴った短編。海洋ロマンス・ファンタジーをお楽しみください! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

デブでブスの令嬢は英雄に求愛される

陸路りん
恋愛
元のタイトル『ジュリア様っ!』から変更して副題のみにしました。 デブでブスな令嬢ジュリア。「私に足りないのは美貌と愛嬌だけよ」と豪語し結婚などとは無縁で優秀な領主としての道をばく進する彼女に突如求婚してきたのは魔王殺しの英雄ルディ。はたしてこの求婚は本気のものなのか、なにか裏があるのか。ジュリアとルディの人生を賭けた攻防が始まる。 この作品はカクヨム、小説家になろうでも投稿させていただいています。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」

まほりろ
恋愛
 聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。  だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗 り換えた。 「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」  聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。  そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。 「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿しています。 ※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。 ※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。 ※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。 ※二章はアルファポリス先行投稿です! ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます! ※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17 ※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。

処理中です...