僕が学校帰りに拾ったのは天然で、大食いな可愛い女勇者でした

茜カナコ

文字の大きさ
上 下
13 / 35

13、冬休み

しおりを挟む
「冬休み始まったけど、何か予定できた? ユイ?」
 僕の問いかけにユイが答える。
「佐藤さんから31日から1月3日までは休みだと聞いているぞ?」
 僕は驚いた。
「え!? そんなに働くの?」
「別に用事も無いしな」
 ユイが笑顔で答えたので、僕はそれ以上何も言わなかった。

「両親も今年は帰れそうに無いって言ってたから、ユイと二人で年越しとお正月か」
「年越し? お正月? カウントダウンパーティーのことか?」
 僕は首を横に振った。
「違うよ、ユイ。年越しにはそばを食べて、年明けにはおせち料理を食べてお祝いするんだよ」

 ユイは首をかしげている。
「そば? おせち? それは美味しいのか!?」
「うーん、美味しいって言うか、風物詩というか」
「食べてみたい!」
「わかった。じゃあ、年越しの買い物は一緒に行こう」

 大晦日の前日に、ユイと年末年始の買い物に出かけた。

「すごい人だな」
「ユイ、はぐれないようにね」
「分かった」
 そう言うとユイは僕と手をつないだ。

「これなら、はぐれないだろう?」
「……うん」
 僕はちょっと恥ずかしかったけど、人混みではぐれるよりはマシだと思って手をつないだままにした。

「なあ、晴人、この白いのはなんだ?」
「お餅だよ。ユイ」
 ユイはお餅を手に取ると、クンクンと匂いを嗅いだ。
「焼くと膨れて、醤油を付けて食べると美味しいよ。あんことかでも良いし」

「食べてみたい」
 ユイは上目遣いで僕のことを見ている。僕はユイの可愛さにドキドキした。
「分かった。じゃあ、かごに入れて」
「ああ」

 ユイはピザや、中華まんでも同じことを繰り返した。
 かごの中身は一杯になった。
「ちょっと、おそばとおせちも買わないといけないから!」
 僕はユイにこれ以上かごに食べ物を入れないように注意すると、ユイはしょんぼりとした。
「分かった」
 僕はそばを四人前と、四人分のおせちを選んでかごに入れた。
 ユイをお腹いっぱいにするには、三人前は必要だと思ったからだ。
「ずいぶん買うんだな」
「ユイは食べるからね」

 僕たちはレジに並んでお会計を済ませた。
 レジを出て、袋に食材を移す。
 僕もユイも、両手に荷物を提げてバス停まで歩いた。
「じゃあ、帰ろう」
「そうか」
 僕たちは家に帰って、冷蔵庫に食べ物をしまった。

 翌日、起きるとユイは僕に訊ねた。
「なあ、晴人、おもちとやらを食べてみたいんだが」
「いいよ。じゃあいくつ食べる?」
「6つ!」
「分かった。それなら七つ焼こう」

 僕はお餅を焼いて、醤油と、きなこを用意した。
「これを付けて食べると良いよ」
「うむ」
 ユイは焼きたてのお餅を手で掴むと、あちあちと言いながら、醤油を付けて一口かじった。
「むむ!? もちもちとして、なかなか噛み切れないぞ!?」
「よく噛んでると、口の中でとろけてくるよ。喉につまると大変だからゆっくり食べて」
「了解した」
 ユイはお餅をもぐもぐと噛みながら、次はきなこを付けて食べた。
「こっちは甘いな。どちらも美味い」
「良かった」

 本当は、新年のお雑煮に入れるつもりだったお餅は、半分になってしまった。

「除夜の鐘、聞きに行く?」
「いや、寒いから家にいる」
 ユイはきっぱりと言った。

 僕たちはテレビで音楽番組を見てから年越し番組を見た。
 新年の神社が映ると、そこでは沢山の人がはしゃいでいた。
「なんだか、沢山の人が集まるんだな」
「そうだね。明けましておめでとう、ユイ」
「明けましておめでとう、晴人」

 僕とユイは年越しそばを食べ終えて、それぞれの寝床に着いた。

 目を覚ますと、ユイがおせちを机にのせて、僕が来るのを待っていた。
「遅いぞ! 晴人!」
「ユイ、おはよう。早いね」
「おせちが楽しみだったからな!」

 僕がおせちを開ける。小皿をユイに渡し、僕も一つ目の前に置いた。
「改めて、今年もよろしく」
「よろしく頼む。もう食べても良いか?」
「いいよ」

 ユイはおせちを一通り食べて、ため息を着いた。
「けっこう味が濃いな」
「まあ、三日間食べるからね」
「え!? こんな量じゃ、三日も食べられないぞ?」
 ユイは半分からになったおせちを見つめて、驚いている。

「じゃあ、お昼はお雑煮を作るね」
「お雑煮?」
「お餅の入った、お吸い物って言えばいいかな?」
「なんだか美味しそうだな、頼んだ!」
 僕たちは食事を終えると、ちょっと暇になった。

「新年だし、お参りに行こうか、ユイ」
「お参り?」
「神様に挨拶するんだよ」
「神様に会えるのか!?」
 ユイが驚いているのを見て、僕は吹き出した。

「神社って言うところに行くんだよ」
「そうか、テレビで見たあの人混みに行くんだな!?」
「うーん、近所の神社はあんまり人いないと思うよ」

 僕とユイは着替えて、近所の神社にお参りをした。
「なんだ? あの人だかりは?」
「ああ、破魔矢とか、お札とか、お守りを売ってるんだよ」
「私も買ってみたい」
「いいよ」

 僕たちはお守りを見に行った。
 ユイは白い、厄除け守りを選んだ。
「こっちも可愛いな」
「って、ユイ、安産祈願は違うよ……」

 僕とユイはお揃いのお守りを買うと、神社を後にして家に帰った。

「お雑煮、楽しみだな」
「うん、待っててね」
 僕は鳥肉と野菜を少し入れた、お吸い物風のお雑煮を作った。
 そこに焼いたお餅を入れる。
「ユイはどのくらいお餅を食べる?」
「6つ!!」

 年末に買ったお餅はもう無くなりそうだった。
 明日はまた買い出しに行かないといけないな、と僕は思った。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

平木明日香
ファンタジー
年に一度の筆記試験に失敗した『見習い天使』勅使河原サユリは、下界への修行を言い渡される。 下界での修行先と住まいは、夏木りんという先輩天使の家だった。 りんは彼女に天使としての役目と仕事を指導する。 魔族との戦い。 魔法の扱い方。 天使の持つ「属性」について。 下界に転送され、修行を重ねていく最中、街に出現した魔族が暴走している場面に遭遇する。 平和だったはずの烏森町で暗躍する影。 人間の魂を喰らう魔族、「悪魔」と呼ばれる怪物が彼女の目の前に飛来してきた時、彼女の中に眠る能力が顕現する。 ——痛快バトルファンタジー小説 ここに開幕!!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...