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12、初バイト完了
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佐藤さんは事務所で留守番をすることになった。
引っ越しチームのリーダーは吉田さんだ。
ユイ達は引っ越しする教授の家に着くと、吉田さんの指示に従って動き出した。
ユイは本のつまった段ボールを、軽々と持ち上げた。
「すごいな、ユイちゃんは力持ちだね」
「そうか?」
ユイは部屋から持ち出した段ボールをトラックに運び込む。
小林さんや加藤さん、中村さんも本や本棚、食器などの荷物をトラックに積み込んだ。
そうこうしていると、二トントラックの荷台が満杯になっていった。
「二人暮らしだけど荷物が多くって。ごめんなさいね」
教授の奥さんが、お昼前にお茶を差し入れしてくれた。
「ありがとう」
ユイもお茶を貰うと礼を言って、それを一気に飲み干した。
「お昼、近所の定食屋さんが量もあってお薦めですよ」
教授が吉田さんに声をかけた。
「それじゃ、ちょっと行ってきます。お弁当の人は居る? 一緒に定食屋に行く?」
加藤さんと中村さんは、お弁当があるので公園に行くと行った。
「じゃあ、小林さんと俺とユイちゃんで定食屋さんに行こうか」
「分かった」
「行きましょう」
三人は近所の定食屋に入ることにした。
紹介された店は、こじんまりとしていて老夫婦が切り盛りしている町の古い定食屋という感じだった。
三人は奥の小上がりの席に着くと、メニューを見て注文した。
「それじゃ、俺は野菜炒め定食で」
「僕は生姜焼き定食」
「私は唐揚げ定食を二つ!!」
ユイの注文を聞いて、吉田さんと小林さんはユイの顔をまじまじと見た。
「なんだ? 私の顔に何かついているのか?」
ユイは首をかしげた。
「ここ、美味しくて量もたっぷりあるって有名な定食屋だって行ってたけど、そんなに食べられるの?」
「問題ない。控えめにしたくらいだ」
ユイは胸を張って答えた。
「はい、おまたせしました」
料理が運ばれてきた。
「うわ、けっこうありますね」
吉田さんが運ばれてきた料理を見ていった。
「うん、ユイちゃん……大丈夫?」
小林さんは、心配そうにユイの前に並んだ二つの唐揚げ定食とユイを見比べている。
「問題ないと言っただろう? いただきます!!」
「いただきます」
「……美味い!!」
三人は黙々と食事を取り始めた。
「それにしても、ユイちゃんはなんでこんなキツい仕事選んだの?」
「吉田……さん、この程度の仕事はキツくないぞ? 昔はもっと命がけの仕事に就いていたからな!!」
それを聞いて小林が訊ねた。
「何の仕事してたの?」
「勇者だ!!」
吉田さんと小林さんは顔を見合わせてから、苦笑いをした。
「ああ、そっか」
「厨二病……」
ユイは二人の会話を無視して、二つ目の唐揚げ定食を食べ始めた。
食事を終えた三人は、会計を済ませてお店を出た。
吉田さんが何気なくユイに聞いた。
「ユイちゃんは何でアルバイト始めたの?」
「それは、食事代を稼ぐためだ」
「そっか。納得」
吉田さん達三人が戻ってから、少し休憩を挟んで午後の仕事に取りかかった。
荷物は結局、トラック一台に入りきらず二台のトラックに分けて入れることになった。
一台目は吉田さんが運転して、ユイが助手席に乗った。
二台目は小林さんが運転して、加藤さんと中村さんが助手席と荷台に乗っている。
しばらく車を走らせる。やがて、目的地に到着した。
「荷下ろしするときは、家や家具を傷付けないように気をつけてね」
「了解した」
ユイは腕まくりをして、吉田さんの指示に従った。
「ユイちゃんは仕事が丁寧だし、力持ちだし、即戦力だったね」
吉田さんはにっこりと笑った。
「まだ、仕事は終わってないぞ? 油断は禁物だ」
ユイは真面目な顔で吉田さんのことを見た。
「そうだね」
すべての荷物を新しい家に運び込んだ。仕事が終わったのは、まだ明るい時間だった。
「君たち、ずいぶん仕事が早かったね。助かったよ」
「ありがとうございました」
教授と奥さんから礼を言われ、吉田さん達とユイは笑顔になった。
「また、よろしくお願いします」
吉田さんの挨拶に、教授は笑顔を浮かべた。
「引っ越す予定はないけどね。なにかあったら、またお願いします」
「じゃ、今日の代金。仕事が早かったから、ちょっと大目に入れてあります」
「いいえ、社長に叱られますから契約通りのお値段でお願いします」
吉田さんはそう言って封筒の中から契約していた代金だけ引き抜くと、残りを教授に返した。
「そう? じゃあ、社長さんによくやってくれたって電話しておきますね」
吉田さんは返された封筒をじっと見て、ユイに渡した。
「これは、ユイさんにあげる。小柄な女の子なのに、一番重い荷物を運んでくれてたからね」
「貰って良いのか?」
ユイは吉田さんと教授に尋ねた。
「そうだね、良いんじゃ無いかな」
「分かった。ありがたく受け取ろう」
ユイは作業着の胸ポケットに封筒をしまった。
「それじゃ、僕たちはこれで帰ります。なにかお気づきのことがあったら、電話して下さい」
「はい、ありがとう」
吉田さん達とユイは引っ越し会社に帰って行った。
「ただいま戻りました」
「おお、皆、お疲れ様。仕事が丁寧でしかも早かったって、教授からお礼の電話が来てたよ」
「よかった」
佐藤さんの言葉を聞いて、吉田さんもアルバイトの皆も笑顔になった。
「小遣いをもらったぞ? これは私が貰って良いのか?」
ユイが佐藤さんに尋ねると、佐藤さんは笑顔で頷いた。
「ユイちゃん、凄く頑張ってたって教授が言ってたよ。だからご褒美だって」
「そうか、なら頂戴する」
こうして、ユイの初バイトは大成功に終わった。
引っ越しチームのリーダーは吉田さんだ。
ユイ達は引っ越しする教授の家に着くと、吉田さんの指示に従って動き出した。
ユイは本のつまった段ボールを、軽々と持ち上げた。
「すごいな、ユイちゃんは力持ちだね」
「そうか?」
ユイは部屋から持ち出した段ボールをトラックに運び込む。
小林さんや加藤さん、中村さんも本や本棚、食器などの荷物をトラックに積み込んだ。
そうこうしていると、二トントラックの荷台が満杯になっていった。
「二人暮らしだけど荷物が多くって。ごめんなさいね」
教授の奥さんが、お昼前にお茶を差し入れしてくれた。
「ありがとう」
ユイもお茶を貰うと礼を言って、それを一気に飲み干した。
「お昼、近所の定食屋さんが量もあってお薦めですよ」
教授が吉田さんに声をかけた。
「それじゃ、ちょっと行ってきます。お弁当の人は居る? 一緒に定食屋に行く?」
加藤さんと中村さんは、お弁当があるので公園に行くと行った。
「じゃあ、小林さんと俺とユイちゃんで定食屋さんに行こうか」
「分かった」
「行きましょう」
三人は近所の定食屋に入ることにした。
紹介された店は、こじんまりとしていて老夫婦が切り盛りしている町の古い定食屋という感じだった。
三人は奥の小上がりの席に着くと、メニューを見て注文した。
「それじゃ、俺は野菜炒め定食で」
「僕は生姜焼き定食」
「私は唐揚げ定食を二つ!!」
ユイの注文を聞いて、吉田さんと小林さんはユイの顔をまじまじと見た。
「なんだ? 私の顔に何かついているのか?」
ユイは首をかしげた。
「ここ、美味しくて量もたっぷりあるって有名な定食屋だって行ってたけど、そんなに食べられるの?」
「問題ない。控えめにしたくらいだ」
ユイは胸を張って答えた。
「はい、おまたせしました」
料理が運ばれてきた。
「うわ、けっこうありますね」
吉田さんが運ばれてきた料理を見ていった。
「うん、ユイちゃん……大丈夫?」
小林さんは、心配そうにユイの前に並んだ二つの唐揚げ定食とユイを見比べている。
「問題ないと言っただろう? いただきます!!」
「いただきます」
「……美味い!!」
三人は黙々と食事を取り始めた。
「それにしても、ユイちゃんはなんでこんなキツい仕事選んだの?」
「吉田……さん、この程度の仕事はキツくないぞ? 昔はもっと命がけの仕事に就いていたからな!!」
それを聞いて小林が訊ねた。
「何の仕事してたの?」
「勇者だ!!」
吉田さんと小林さんは顔を見合わせてから、苦笑いをした。
「ああ、そっか」
「厨二病……」
ユイは二人の会話を無視して、二つ目の唐揚げ定食を食べ始めた。
食事を終えた三人は、会計を済ませてお店を出た。
吉田さんが何気なくユイに聞いた。
「ユイちゃんは何でアルバイト始めたの?」
「それは、食事代を稼ぐためだ」
「そっか。納得」
吉田さん達三人が戻ってから、少し休憩を挟んで午後の仕事に取りかかった。
荷物は結局、トラック一台に入りきらず二台のトラックに分けて入れることになった。
一台目は吉田さんが運転して、ユイが助手席に乗った。
二台目は小林さんが運転して、加藤さんと中村さんが助手席と荷台に乗っている。
しばらく車を走らせる。やがて、目的地に到着した。
「荷下ろしするときは、家や家具を傷付けないように気をつけてね」
「了解した」
ユイは腕まくりをして、吉田さんの指示に従った。
「ユイちゃんは仕事が丁寧だし、力持ちだし、即戦力だったね」
吉田さんはにっこりと笑った。
「まだ、仕事は終わってないぞ? 油断は禁物だ」
ユイは真面目な顔で吉田さんのことを見た。
「そうだね」
すべての荷物を新しい家に運び込んだ。仕事が終わったのは、まだ明るい時間だった。
「君たち、ずいぶん仕事が早かったね。助かったよ」
「ありがとうございました」
教授と奥さんから礼を言われ、吉田さん達とユイは笑顔になった。
「また、よろしくお願いします」
吉田さんの挨拶に、教授は笑顔を浮かべた。
「引っ越す予定はないけどね。なにかあったら、またお願いします」
「じゃ、今日の代金。仕事が早かったから、ちょっと大目に入れてあります」
「いいえ、社長に叱られますから契約通りのお値段でお願いします」
吉田さんはそう言って封筒の中から契約していた代金だけ引き抜くと、残りを教授に返した。
「そう? じゃあ、社長さんによくやってくれたって電話しておきますね」
吉田さんは返された封筒をじっと見て、ユイに渡した。
「これは、ユイさんにあげる。小柄な女の子なのに、一番重い荷物を運んでくれてたからね」
「貰って良いのか?」
ユイは吉田さんと教授に尋ねた。
「そうだね、良いんじゃ無いかな」
「分かった。ありがたく受け取ろう」
ユイは作業着の胸ポケットに封筒をしまった。
「それじゃ、僕たちはこれで帰ります。なにかお気づきのことがあったら、電話して下さい」
「はい、ありがとう」
吉田さん達とユイは引っ越し会社に帰って行った。
「ただいま戻りました」
「おお、皆、お疲れ様。仕事が丁寧でしかも早かったって、教授からお礼の電話が来てたよ」
「よかった」
佐藤さんの言葉を聞いて、吉田さんもアルバイトの皆も笑顔になった。
「小遣いをもらったぞ? これは私が貰って良いのか?」
ユイが佐藤さんに尋ねると、佐藤さんは笑顔で頷いた。
「ユイちゃん、凄く頑張ってたって教授が言ってたよ。だからご褒美だって」
「そうか、なら頂戴する」
こうして、ユイの初バイトは大成功に終わった。
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