僕が学校帰りに拾ったのは天然で、大食いな可愛い女勇者でした

茜カナコ

文字の大きさ
上 下
6 / 35

6、登校

しおりを挟む
「おはよう、晴人」
「おはよう、ユイって!? なんで僕の布団に入ってるの!?」
「寒かったから」

 僕はユイから慌てて離れると、布団から飛び起きた。
「ふあーあ。眠い……」
「起きて、ユイ。あともう僕の布団に入らないで!!」
 ユイは僕のことをチラリと見て、布団をかぶった。

「ユイ、時計読める? 朝ご飯食べる時間無くなっちゃうよ?」
「何!? それは困る!!」
 ユイはそう言うと布団から勢いよく飛び出した。
「じゃあ、顔洗って歯を磨いて、制服に着替えて」
「はーい」

 ユイが朝の準備をしているうちに、僕は昨日作っておいた豚汁を温めながらプレーンなオムレツを焼いた。
「朝ご飯、出来たよ」
「やった。お腹がペコペコだよ!」
 ユイは食卓に着くと僕が椅子に座るのを待ってから言った。
「いただきます!」
「召し上がれ」

 ユイは器用に箸を使ってオムレツを食べた。
「この赤いのは何だ?」
「ケチャップ。トマトで出来たソースだよ」
「そうか。美味しいな」

 ユイはオムレツでご飯を食べ、豚汁を二回おかわりして満腹になったようだった。
「それじゃ、そろそろ学校に向かうけど、荷物は大丈夫だよね?」
「ああ、この小さなカバンにノートだの鉛筆だの入れてあるぞ」
 昨日、僕が使い方を説明しながら、ユイと一緒に学用品を準備していたから心配はしていない。

「食事はどうすれば良いんだ?」
「あ、学食で好きなものを食べれば良いよ」
「学食?」
「うん、お金を渡しとくね」
 そう言って僕はユイに五千円札を渡した。

「行ってきます」
「行ってきます」
 僕とユイはアパートを出て、駅に向かった。

 駅に行く途中、車が急に歩道に飛び出してきた。
「危ない!!」
 ユイはそう言うと、僕をかばって車の方に走り出し、素手で車を止めた。
「ええ!? ユイ!? そんなこと出来るの!?」

「ドラゴンに比べれば、こんな鉄の塊は大したことないぞ。毒も無いし、炎も吐かない!」
 ユイは車のタイヤの動きが止まったのを見て、持ち上げた車の前面を地面に下ろした。
「うわ、なんだ、いまの女の子!?」
「ヤバい!!」
 道ばたの高校生達が騒ぎ出した。
 スマホで写メや動画を取っている人も居る。

「ユイ、早く行こう」
「分かった」
 ユイは振り返って、見ている人たちに手を振った。
「ユイ、そんなことしないで」
「え!? だって皆見てたから……」

 僕は時計を見て慌てた。
「学校に遅れちゃうよ」
「そうか。急ごう」
 僕たちは電車に乗って、学校の最寄り駅まで行った。

「ユイ、どうしたの?」
「尻になにか当たってる。人の手みたいだ」
「え!? 痴漢!?」
 僕が確かめるより先に、ユイは痴漢の手をひねり上げた。
「痛い!!」

「人の尻を触るな!!」
 ユイはそう言って、痴漢をねじ伏せた。
「くそ! なんて力だ!!」
「アンタ、手を切り落としてやろうか?」
 ユイが凄んだ。目が本気だ。まずい、ユイを犯罪者にするわけには行かない。

「あの、次の駅で降りるから、駅員さんに引き渡そうよ」
 僕は慌ててユイを説得した。
「うん? 私の尻を触ったんだぞ? そんな奴、殺しても良いだろう?」
「ユイ、この世界には警察っていう人たちがいるから。悪い人は警察に連れて行くんだよ」
 ユイは不機嫌な様子で、痴漢を睨み付けた。
「命拾いしたな、アンタ」

 ユイは電車が駅で止まると、痴漢を駅員さんに突き出した。
「コイツ、私の尻を触った。処分してくれ」
「分かりました。ご協力感謝致します」
 駅員さんは頭を下げた後、痴漢を連れてどこかへ行った。

「さあ、学校まで急いで行こう」
「分かった」
 僕は小走りで学校に向かった。ユイはその後を大股で歩いてついてくる。

「さあ、学校に着いたよ」
「……結構大きな建物だな」
 僕はユイと学校に入って、職員室に向かった。

「じゃあ、僕はこれで教室に行くから。ユイは職員室に入って名乗れば大丈夫なはずだよ」
「分かった」
 ユイは職員室の扉を開けると、大きな声で言った。
「伊口ユイと申す! 本日から世話になる!!」
「……」
 職員室がざわついたけれど、僕は気にしないことにして自分の教室に向かった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

平木明日香
ファンタジー
年に一度の筆記試験に失敗した『見習い天使』勅使河原サユリは、下界への修行を言い渡される。 下界での修行先と住まいは、夏木りんという先輩天使の家だった。 りんは彼女に天使としての役目と仕事を指導する。 魔族との戦い。 魔法の扱い方。 天使の持つ「属性」について。 下界に転送され、修行を重ねていく最中、街に出現した魔族が暴走している場面に遭遇する。 平和だったはずの烏森町で暗躍する影。 人間の魂を喰らう魔族、「悪魔」と呼ばれる怪物が彼女の目の前に飛来してきた時、彼女の中に眠る能力が顕現する。 ——痛快バトルファンタジー小説 ここに開幕!!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...