調律師カノン

４１．異変

「元気な皆さんと再会できてうれしく思っています」
　クリス学園長が挨拶をしていると、突然轟音が鳴り響いた。

　台地が割れるような、大きな雷が間近に落ちたような衝撃が、あたりを駆け抜ける。
「なんだ！？」
　グラウンドに大きな影が落ちた。
「ちょっと、空が変よ？　何？　あの暗闇は！？」

　生徒たちが叫び声をあげた。空には大きな亀裂が走り、青い空に暗闇がのぞいている。
「みなさん！　学校の中に避難してください！　先生方は結界を張ってください！！」
　クリス学園長の厳しい声に、みんな動きをとめた。

「ベンジャミン、アデル、学校の中へ逃げよう！」
「うん！」
　ベンジャミンが空を見つめたまま、上ずった声を上げた。
「おい、なんだよ、あれ……」

　暗闇の中から、大きな顔がのぞいている。
「……ドラゴンだ……。クリスタルドラゴンだ……！！」
　アラン先生の声が聞こえた。

　暗闇から姿を現したのは、小さな家ほどの大きさをした、キラキラと輝く美しいドラゴンだった。
「綺麗だ……」
　見とれているベンジャミンの手をカノンは引っ張った。
「危ない！！　早く逃げよう！！　ベンジャミン！！」

　ドラゴンがこちらを見た。次の瞬間、ドラゴンの口から炎が吐かれた。
「うわあ！」
「きゃあ！！」
「皆さん、学校に入って！！！」

　カノンはしりもちをついたベンジャミンを引きずりながら後者に向かった。
「皆さん！　早く逃げて！！」
　空から声がした。

　みんなが見上げると、一人の女性が空を飛び、ドラゴンに氷の剣を投げつけている。
「あの人は……！？」
「……ライラ・クローク！？」
　エリス先生が叫んだ。