調律師カノン

茜カナコ

文字の大きさ
上 下
9 / 42

9.基礎魔法

しおりを挟む
「みなさん、そろいましたか? それでは基礎魔法の授業を始めます」
 アラン先生が校庭にならんだ生徒たちに言った。
 カノンたちはまだ上がっている息を整えながら、アラン先生の説明を聞いた。
「まず、火の魔法のページを開いて最初に書いてあるファイアーボールの項目を……ミランさん、読んでください」

「はい」
 ミランは茶色の髪をかき上げてから、教科書を読んだ。
「ファイアーボールは火の魔法の基礎です。炎の球をイメージして魔力を放つと、小さな火球が飛び出します。火球の大きさは魔力の大きさに比例します」
「はい、よろしい」
 アラン先生は満足そうに頷いた。

「ファイアーボールなんて、習わなくてもできるよな?」
 ベンジャミンがカノンに言った。
 カノンはあいまいな笑みを浮かべて、何も言わなかった。

「それでは、ファイアーボールの練習をしましょう。みなさん、横一列にならんでくだい」
 生徒たちはアラン先生の言葉に従って、一列に並んだ。
「手を前に出して……炎をイメージして……ファイアーボール!」
 アラン先生が言うと、みんなも手を前に伸ばして「ファイアーボール」と叫んだ。
 いっせいに、小さな火球が一列になって飛び出した。

「カノンさん、真面目にやってください!」
 アラン先生は、ファイアーボールの魔法が使えなかったカノンを見とがめた。
「先生、まじめにやっています!」
「じゃあ、もう一度」
「……ファイアーボール!」
 カノンは叫んだが伸ばした両手の先には、なにも現れなかった。

「おいおい、まじかよ?」
 クラスの誰かの声が聞こえた。くすくす笑いも聞こえてくる。
 カノンは顔を赤くして、もう一度呪文を唱えた。
「ファイアーボール!!」
 しかし、カノンの手からは何も出てこない。

 アラン先生はため息をついた。
「もういいですよ、カノンさん。あなたには火の魔法の適性がないようですね」
 カノンはアラン先生の言葉を聞いて、がっかりした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?

夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。 1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。 転生先で期待して初期ステータスを確認すると0! かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。 Ωといえば、なんか強そうな気がする! この世界での冒険の幕が開いた。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...