上 下
1 / 48

1、転生しちゃった

しおりを挟む
「朝葉大丈夫!?」
「お姉ちゃん!?」
く、苦しい。
声が出ない。
息が出来ない。

ガタン、と椅子と一緒に私はひっくり返った。
ああ、お餅を喉に詰まらせて死ぬなんて。
20個も食べるんじゃ無かった。

後悔しても、もう遅かった。
「朝葉、朝葉!!」
お母さん、夕葉、お父さん、ごめんなさい。
私はもう、駄目です。

・・・・・・。

あれ?
苦しくない。
どうしたんだろう、私。

ここ、何処だろう。
なんか、テレビで見た王宮みたいな所にいる。

「気づきましたか、勇者様」
「え、私のこと?」
私は周りを見渡した。
ローブをまとった人たちに囲まれている。

「はい、勇者様」
「私、勇者なんかじゃ無い。普通の高校生だよ」
「貴方は異世界から転生されたのです」
美しい女性が歩み寄ってきた。
年は20代半ばだろうか。長いまつげに見とれてしまった。

「貴方のスキルは調理師と騎士。面白い組み合わせですね」
その女性は、私の手を取り私を立ち上がらせた。
「今、この世界は魔物があふれています」
「私、何も出来ないよ」
「大丈夫です。貴方には天性の才能があり、選ばれたからこそ、ここにいるのです」

私はそのとき気づいた。
ステータス、と言う物が空中に表示されている。

騎士LV1
調理師LV1
特殊能力 毒の見識 解体スキル 

「ステータスって何?」
「貴方に秘められた能力のことです」
女性は長い髪を靡かせながら言った。

「貴方には、モンスター退治をお願いしたいのです」
「えええ! そんなの急に出来ないよ」
私は困った。レストランでバイトはしていたし、家で料理もしていたけれど。
モンスターなんてゲームの中でしか倒したこと無い。

「初めのうちは、一人では心細いでしょう。一人、補助員をつけます」
そう言うと、女性の後ろから鎧をまとった美青年が現れた。
「サイゼル・トワロです。魔法騎士です。よろしくお願いいたします、勇者様」
「皆、私のこと勇者様って言うけど、そんな力無いよ。朝葉あさはって呼んで下さい」
私がそう言うとトワロは頷いて言った。

「朝葉様、よろしくお願い致します」
「トワロさん」
「トワロとお呼び下さい」
「トワロ、色々と教えて下さい」
私は、もう頼れる物は何でも頼ろうと決めた。

「それでは、トワロ、朝葉様をよろしく頼みましたよ」
「はい、女王陛下」
「女王様!?」
私が思わず大きな声を上げると、女王はふふふと笑った。

「朝葉様、それでは城下町をご案内致しましょう」
「トワロ、よろしくお願いします」
「はい」
私はトワロについて行った。

お城は広くて迷子になりそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】私は、愛しい貴方に毒を盛る

春野オカリナ
ファンタジー
 エスメラルダ・アルバート伯爵令嬢は、婚約者アンドリュ・ドメイク侯爵令息の浮気性に悩まされていた。  ある時【魔女の薬屋】からある毒薬を買って、アンドリュに飲ませる事にした。  その毒薬とは…  『浮気性が治る毒薬』だった。  さて、どんな効果が表れるのかな?

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...