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15クロウサギ開演
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夜10時を回って街の市民会館大ホールで「裏公演」が開演。出演者は結局数名だった。
各々団にバレない様バスやタクシー、葛西の出す車に乗って向かった。
もう逃げられない玲於奈は体が冷たくなってゆくのを押さえられない。今すぐに舞台を駆け下りてどこかへ逃げてしまいたい。
舞台袖から覗くと客席には色とりどりのベネチアンマスクをした蝶ネクタイの男性が大勢詰めかけていた。
開演前の、あの「ざわめき」が全くない。観客は誰もしゃべらない。余りに静かだ。
むっとする雄の臭いを嗅いだ。あの紳士たちから発散される臭いだ。
背筋がぞくぞくする。
今にも倒れそうだ。
眩暈がしてきた。
「玲於奈。大丈夫?真っ青だ。これを飲むと良い」
余りに気分が悪くて玲於奈は毒でもなんでも飲んでしまいたかった。
渡されたタンブラーの中身をゴクリと飲んだ。
強い酒だった。
炭酸が入っている。
「これーーーー」
「シードルだよ。『気付け薬』になっただろ?」にやりと笑う。
「ええ」そのまま残り全部を飲んでしまった。
開演のブザーが鳴った。
オーケストラボックスの指揮者がタクトを振り上げた。
一番最初は『瀕死の白鳥』のオデットだ。
上級クラスのバーで一緒になる子だ。私より若いよね。
それにしてもチャイコフスキーが泣くよ。
コスチュームは白鳥の羽根を存分にあしらったクラシック・ボンだ。
でもーーーー胴体の部分が透けてる。胸元に二つの白い羽根が交差しているだけで幼い乳房がはっきりと晒されている。
静寂の中進んでゆくアダージオの美しい旋律。
なんてこと!!
優美な鳥の羽根の動きをする両腕が関節を感じさせないで上下しながらブレブレで回転すると平たいチュチュの羽根が散ってゆくのだ。
舞台にゴミを落としながら踊るなんて危険すぎる!!
どうするのかハラハラしていると床のセリから大きな真っ白い十字架がしずしずと現れた。
白鳥が床に伏せてラストではないらしい。
灰色の子白鳥たちが出てきてオデット姫を十字架に固定した。
まあ。こういう演出は結構ありきたりだ。
え??
十字架に磔になったオデットのクラシック・ボンのスカート部分が子白鳥によって取り去られた。
あり得ない!
オデットの半身は鼠径部まで露わで辛うじて秘所が薄い羽根で隠されているのみ。
舞台は暗転する。
スポットライトはオデット姫の胸から上だけに集中する。
!?
十字架の後ろから沢山の腕が伸びてきて姫の白い双丘を後ろから揉みしだきだした。
恥辱に眉をひそめた白い顔は横に背く。
今。音に乗って動いているのは腕やその手だ。鈍く光るブロンズ色に塗られている。
三人分の男の両腕だ。
乳房を下から上へ持ち上げたり、乳首を摘まんで離したり。手の蹂躙は延々と続いた。
段々胸だけでなく首や肩にも滑る。
それに透けている腹や細い腰にも。
段々さがってゆく。
観客達のオペラグラスがあちこちでキラキラしている。
ーーーーいやらしく昂っているだわ。
玲於奈は自身もそうだとは気づかずに見守った。
暗くてよく解らないがもうあそこを嬲っているのがはっきりと判る。
それは十字架のオデット姫の表情が何もかも物語っている。
曲が進むにつれ下半身へ動く手の数も多くなってゆく。
きっとーーーーーーー玲於奈は想像するだけで自らも濡れてきて戸惑った。
小さく首を振って拒んでいた。
眉がさがり唇が半開きでやっと息をしているような有様だ。
両腕が緊張するとティアラを載せた頭がのけ反り顎があがった。
逃れようともがいている瀕死のオデット姫。
悲鳴にもならない絶叫もオーケストラにかき消された。
やわやわと揉まれる双丘も忙しく揺れた。
やがて小刻みな震え。
急速な弛緩。
瞑る瞼の睫毛の泪に一瞬の煌めきが宿った。
昔読んだ本を思い出した。
敵国から連れ去られてきた王女を木に縛りあげ、その膣内に麝香の木端を挿れ極限まで疼き出すのを待つ。
ずっと裸同然の王女は衆目の目に晒され昂る男達が取り囲む。
時が来て次々と男達が犯す。
何人目で王女の命が尽きるか賭けをするのだ。
暗闇に浮かぶ『乙女オデット』の胸像は法悦の『女』へと変化していった。
ベネチアンマスクの男たちはここに来て感嘆のどよめき。
はっきりと果てたのが判った。きっと客席の男達にも判ったのだ。
なんて辱めを!
いいえ、そんな事を考えながらこの私は、
今すぐに自分で自分を慰めたい。
こんな舞台前の緊張感でいっぱいになるはずのこの時に何を考えてるの!?
この後は樹里の番だ。
観ていられそうにない。
総リハーサルは無かったから樹里がどんな衣装かも知らない。今日も楽屋が離れていて一度も会っていない。
舞台の上ではスポットライトが次第に消えて真っ暗な照明が赤茶けたセピア色に変化している。
それと同時に十字架が斜め後ろに倒れ始めた。
完全に水平に倒れると最初に出て来た灰色のチュチュの子白鳥達が登場してオデットの拘束を解いて十字架から降ろして、定位置へと両手を取って案内する。
オデットはここから、さっきの続きを踊らされるのかーーーなんて無謀。あの子はもう踊れないでしょうに。
なんとかプロ根性で板に付いたオデット姫は羽根を幾枚か張り付けただけの裸同然の姿だった。
それでも最後の静謐の中で死んでゆく踊りを始めた。
ゆっくりゆっくりーーーーー死へ向かって。
ブラボーの声がかかる。
床に伏しての最期の腕の動きも素晴らしかった。
普通に技術もあって情緒性も出せる優秀なダンサーだ。
何もこんなところに出なくてもーーーーあの子なら十分やっていける。
やっと瀕死のバリエーションが終わった。
随分な演出だったけど。
カーテンが降りる。
オデットはまだ動かない。
玲於奈は気の毒過ぎて思わず駆け寄ろうとしたが腕を翔に掴まれて
「なによ。あの子は歩けないわ」
「いいから。同情は禁物だよ。逆の立場を考えてごらん」
なるほど。そうね。こんな時だからこそ誰かに触られたくないだろう。そっとしておいて欲しいだろう。女性ダンサーは誰もプライドが高い。
半端な同情は返って傷つける。
翔の声は真剣だった「これは官能の芸術なんだ」くるりと踵を返して玲奈の両手を取った。
探るような目で玲奈の目を覗く。
「解ったかい?」
玲於奈には全く理解できない。
舞台の上に散乱した羽をスタッフが慌ただしく片付けに入っていた。
急なアナウンスに驚く。
「お手持ちの掲示板に数字を入力して掲示してください」
舞台袖から客席を覗くと
『100』や『350』『500』など電光掲示板のプラカードを男たちが掲げている。
なんなの?オークション??
「競りが始まったのさ。あの子の値段だよ。
あの程度で500万もいくんだ。君は桁違いだろうね」
「そんなお金どこから出るの?払うのは誰?」
「心配要らない。ただオーションはやるけど現物は動かないよ。値段をつけるとハッキリするだろ?そのバレリーナの実力がさ」
各々団にバレない様バスやタクシー、葛西の出す車に乗って向かった。
もう逃げられない玲於奈は体が冷たくなってゆくのを押さえられない。今すぐに舞台を駆け下りてどこかへ逃げてしまいたい。
舞台袖から覗くと客席には色とりどりのベネチアンマスクをした蝶ネクタイの男性が大勢詰めかけていた。
開演前の、あの「ざわめき」が全くない。観客は誰もしゃべらない。余りに静かだ。
むっとする雄の臭いを嗅いだ。あの紳士たちから発散される臭いだ。
背筋がぞくぞくする。
今にも倒れそうだ。
眩暈がしてきた。
「玲於奈。大丈夫?真っ青だ。これを飲むと良い」
余りに気分が悪くて玲於奈は毒でもなんでも飲んでしまいたかった。
渡されたタンブラーの中身をゴクリと飲んだ。
強い酒だった。
炭酸が入っている。
「これーーーー」
「シードルだよ。『気付け薬』になっただろ?」にやりと笑う。
「ええ」そのまま残り全部を飲んでしまった。
開演のブザーが鳴った。
オーケストラボックスの指揮者がタクトを振り上げた。
一番最初は『瀕死の白鳥』のオデットだ。
上級クラスのバーで一緒になる子だ。私より若いよね。
それにしてもチャイコフスキーが泣くよ。
コスチュームは白鳥の羽根を存分にあしらったクラシック・ボンだ。
でもーーーー胴体の部分が透けてる。胸元に二つの白い羽根が交差しているだけで幼い乳房がはっきりと晒されている。
静寂の中進んでゆくアダージオの美しい旋律。
なんてこと!!
優美な鳥の羽根の動きをする両腕が関節を感じさせないで上下しながらブレブレで回転すると平たいチュチュの羽根が散ってゆくのだ。
舞台にゴミを落としながら踊るなんて危険すぎる!!
どうするのかハラハラしていると床のセリから大きな真っ白い十字架がしずしずと現れた。
白鳥が床に伏せてラストではないらしい。
灰色の子白鳥たちが出てきてオデット姫を十字架に固定した。
まあ。こういう演出は結構ありきたりだ。
え??
十字架に磔になったオデットのクラシック・ボンのスカート部分が子白鳥によって取り去られた。
あり得ない!
オデットの半身は鼠径部まで露わで辛うじて秘所が薄い羽根で隠されているのみ。
舞台は暗転する。
スポットライトはオデット姫の胸から上だけに集中する。
!?
十字架の後ろから沢山の腕が伸びてきて姫の白い双丘を後ろから揉みしだきだした。
恥辱に眉をひそめた白い顔は横に背く。
今。音に乗って動いているのは腕やその手だ。鈍く光るブロンズ色に塗られている。
三人分の男の両腕だ。
乳房を下から上へ持ち上げたり、乳首を摘まんで離したり。手の蹂躙は延々と続いた。
段々胸だけでなく首や肩にも滑る。
それに透けている腹や細い腰にも。
段々さがってゆく。
観客達のオペラグラスがあちこちでキラキラしている。
ーーーーいやらしく昂っているだわ。
玲於奈は自身もそうだとは気づかずに見守った。
暗くてよく解らないがもうあそこを嬲っているのがはっきりと判る。
それは十字架のオデット姫の表情が何もかも物語っている。
曲が進むにつれ下半身へ動く手の数も多くなってゆく。
きっとーーーーーーー玲於奈は想像するだけで自らも濡れてきて戸惑った。
小さく首を振って拒んでいた。
眉がさがり唇が半開きでやっと息をしているような有様だ。
両腕が緊張するとティアラを載せた頭がのけ反り顎があがった。
逃れようともがいている瀕死のオデット姫。
悲鳴にもならない絶叫もオーケストラにかき消された。
やわやわと揉まれる双丘も忙しく揺れた。
やがて小刻みな震え。
急速な弛緩。
瞑る瞼の睫毛の泪に一瞬の煌めきが宿った。
昔読んだ本を思い出した。
敵国から連れ去られてきた王女を木に縛りあげ、その膣内に麝香の木端を挿れ極限まで疼き出すのを待つ。
ずっと裸同然の王女は衆目の目に晒され昂る男達が取り囲む。
時が来て次々と男達が犯す。
何人目で王女の命が尽きるか賭けをするのだ。
暗闇に浮かぶ『乙女オデット』の胸像は法悦の『女』へと変化していった。
ベネチアンマスクの男たちはここに来て感嘆のどよめき。
はっきりと果てたのが判った。きっと客席の男達にも判ったのだ。
なんて辱めを!
いいえ、そんな事を考えながらこの私は、
今すぐに自分で自分を慰めたい。
こんな舞台前の緊張感でいっぱいになるはずのこの時に何を考えてるの!?
この後は樹里の番だ。
観ていられそうにない。
総リハーサルは無かったから樹里がどんな衣装かも知らない。今日も楽屋が離れていて一度も会っていない。
舞台の上ではスポットライトが次第に消えて真っ暗な照明が赤茶けたセピア色に変化している。
それと同時に十字架が斜め後ろに倒れ始めた。
完全に水平に倒れると最初に出て来た灰色のチュチュの子白鳥達が登場してオデットの拘束を解いて十字架から降ろして、定位置へと両手を取って案内する。
オデットはここから、さっきの続きを踊らされるのかーーーなんて無謀。あの子はもう踊れないでしょうに。
なんとかプロ根性で板に付いたオデット姫は羽根を幾枚か張り付けただけの裸同然の姿だった。
それでも最後の静謐の中で死んでゆく踊りを始めた。
ゆっくりゆっくりーーーーー死へ向かって。
ブラボーの声がかかる。
床に伏しての最期の腕の動きも素晴らしかった。
普通に技術もあって情緒性も出せる優秀なダンサーだ。
何もこんなところに出なくてもーーーーあの子なら十分やっていける。
やっと瀕死のバリエーションが終わった。
随分な演出だったけど。
カーテンが降りる。
オデットはまだ動かない。
玲於奈は気の毒過ぎて思わず駆け寄ろうとしたが腕を翔に掴まれて
「なによ。あの子は歩けないわ」
「いいから。同情は禁物だよ。逆の立場を考えてごらん」
なるほど。そうね。こんな時だからこそ誰かに触られたくないだろう。そっとしておいて欲しいだろう。女性ダンサーは誰もプライドが高い。
半端な同情は返って傷つける。
翔の声は真剣だった「これは官能の芸術なんだ」くるりと踵を返して玲奈の両手を取った。
探るような目で玲奈の目を覗く。
「解ったかい?」
玲於奈には全く理解できない。
舞台の上に散乱した羽をスタッフが慌ただしく片付けに入っていた。
急なアナウンスに驚く。
「お手持ちの掲示板に数字を入力して掲示してください」
舞台袖から客席を覗くと
『100』や『350』『500』など電光掲示板のプラカードを男たちが掲げている。
なんなの?オークション??
「競りが始まったのさ。あの子の値段だよ。
あの程度で500万もいくんだ。君は桁違いだろうね」
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